【投稿日】 2022年7月10日 【最終更新日】 2022年8月26日

最近、うつ病や適応障害で会社を休職したり退職したりする人が増えています。

厚生労働省「患者調査」によると、2002年の精神障害者数223.9万人に対し、2017年は2倍の389.1万人とここ10数年で150万人以上も増加しています。

参考元:厚生労働省「患者調査」

また、上記勢いは止まらず、年々精神障害者数は増加し続けています。

こういった社会背景の中で、うつ病を装って業務をサボったり、休職したりする「偽装うつ病」が出現しています。

この記事では、偽装うつ病とは何か、というところから、偽装うつ病が疑われる場合に会社がやるべきことや、偽装うつ病とわかった場合の対応方法などについて解説していきます。

偽装うつ病とは

偽装うつ病とは、うつ病や適応障害を装って、業務をサボったり、休職したりすることを言います。

ただし、うつ病や適応障害によって、会社に認められた形で業務を短縮したり、休職したりすることは、基本的には医師の診断書がないとできないので、彼らは医師に嘘をついて、或いは事実を誇張して伝え、偽りの診断書を書いてもらっていることになります。

しかし、なぜこのようなことをするかというと、ただ単に業務をサボりたいから、というよりは、背景に職場の人間関係のトラブルや、パワハラ・セクハラなどの理由が隠れている場合があるのです。

そのため、偽装うつ病と認定するには、それ相応の詳しい調査が必要であり、その調査にのっとった正しい判断が必要になります。

では、偽装うつ病と認定するために、会社は何をすべきなのか、次項にて解説していきます。

偽装うつ病が疑われる場合に会社がやるべきこと

ここでは、偽装うつ病が疑われる社員(以下、本人)に対して、会社がやるべきことを7つ挙げています。

  1. 本人に話を聞く
  2. 上司や同じ部署の同僚・部下に話を聞く
  3. 本人の主治医に話を聞く
  4. 産業医など第三者の医師に判断を仰ぐ
  5. 家族に話を聞く
  6. 社労士に相談する
  7. 探偵や調査機関に依頼して、本人の行動を調査する

一つひとつについて、詳しく見ていきましょう。

やること1:本人に話を聞く

会社が最初に行うべきことは、その社員本人との面談の場を設けて、本人のメンタル疾患の状況や、本人が認識している事実関係の聞き取りを行うことです。

面談の際には、「本人の言い分を聞く」という姿勢を徹底し、共感を示しながら、真摯に話を聞くようにしましょう。

間違っても、「偽装うつ病なのではないか」「仮病を使っているのではないか」などと疑っていることは、おくびにも出してはいけません。

会社側が疑うような態度を見せると、労基署や弁護士に相談されて、紛争に発展する可能性もあるからです。

まずは、低姿勢で話を聞くことに努めましょう。

本人に話を聞く時の注意点

本人に話を聞く時には、注意したい点が4点あります。

①あまり大人数で対応しない

偽装うつ病の調査に限ったことではありませんが、個々の社員と面談をする時に、会社側があまり大人数で対応することは、避けた方がいいでしょう。

会社側の人数が多ければ、それだけ圧迫的になりやすく、後になって「圧力を感じて言いたいことが言えなかった」と主張される可能性も生じます。

会社側は3名程度で対応し、そのうちの1名は記録を残す担当であるくらいが妥当でしょう。

②弁護士や第三者に立ち会ってもらう

弁護士や社労士、或いは調査機関の調査員など、第三者に立ち会ってもらうことは有効です。

本人に対しては、第三者が立ち会うことで、嘘をつきにくくなり、ボロが出る可能性があります。

また、会社の担当者にとっては、第三者が立ち会うことで、心強さを感じるでしょう。

内部の人間には思いつかないような質問を投げかけてもらえることで、嘘を見抜くことができる場合もあります。

③直属の上司や同じ部署の人間は同席させない

もし、本人の偽装うつ病の原因が、直属の上司のパワハラにある場合、その上司が同席していては、何も言うことができません。

その可能性があってもなくても、本人に近しい存在の同席は避けるべきでしょう。

④念のため録音しておく

後々の紛争を避けるためにも、本人に自覚を促すためにも、録音は本人に秘密で行うのではなく、「<言った、言わない>のトラブルを避けるため、念のために録音させてもらいたい」という趣旨の説明をし、本人の同意を取った上で録音するのがいいでしょう。

また、こういった面談の場合、本人が秘密で録音している場合も考えられます。

そのため、会社側からの圧力と捉えられるような言動は避け、疑うようなそぶりも決して見せないようにしましょう。

 

やること2:上司や同じ部署の同僚、部下に話を聞く

 

本人の話を聞くだけでは、主観的な情報しか掴めません。

そのため、本人の直属の上司や、同じ部署の同僚・部下などに話を聞く事も重要です。

これは、本人の了解を取らなくてもいいため、できれば内密に話を聞きましょう。

普段の本人の勤務状況や働きぶり、言動、表情、対応の仕方など、細かい状況証拠を集めます。

同僚などに愚痴ったことや、会社や上司への悪口などが出てくれば、それも重要な証拠になるでしょう。

話を聞く人には、本人や外部には決して漏らさないことを約束しましょう。

やること3:本人の主治医に話を聞く

次に重要なのが、診断書を書いた医師に話を聞くことです。

本人は、医師には嘘をついたり、事実を誇張して話したりしているかもしれません。

しかし、実は医師には見破れていることもあるのです。

嘘や誇張とわかっていて、診断書を書く医師もいます。

したがって、診断書を書いた医師に、本当にうつ病や適応障害であると診断できるのかどうか、その根拠を詳しく聞くといいでしょう。

医師には、専門家として、本人から話を聞く以上に、本人の表情や話しぶり、口調や声音などから読み取れることがあります。

そういった情報を集めることで、偽装うつ病かどうか見破る手掛かりが増えるでしょう。

やること4:産業医など第三者の医師に判断を仰ぐ

ここまで、本人や周りの人間、主治医などに話を聞いた時点で、会社の産業医など第三者の医師に情報を提供して、判断を仰いでみましょう。

第三者の客観的な視点で状況を見てもらうことで、本人と直接交渉のあった主治医には見えなかったことが見えてくるかもしれません。

また、会社の産業医は、基本会社の利益を考えてくれるため、会社に利する判断を下してくれると思われます。

こういった第三者の医師の判断は、偽装うつ病を追及する際の根拠として使えます。

やること5:家族に話を聞く

本人の偽装うつ病が定かでない場合、本人の家族に話を聞くことも有効な場合があります。

会社ではうつ病のようなふりをしていても、家庭では元気にしているかもしれません。

また、家族に対して会社の愚痴や悪口を言っている場合もあるでしょう。

そういった話を聞くことも、状況証拠になります。

ただし、家族に本人のうつ病を疑っていると思われるような言動はしないように注意しましょう。

また、家族が結託して嘘をつく場合もあるので、注意深く話を聞く必要があります。

やること6:社労士に相談する

本人が、時短勤務や休職などを希望している場合、社労士に相談するのも有効です。

就業規則に照らし合わせて、どこまで認められるのか、また、偽装うつ病が発覚した場合、解雇できるのかどうかなど、社労士に相談できることは多いでしょう。

やること7:探偵や調査機関に依頼して、本人の行動を調査する

偽装うつ病かどうか疑わしい場合、探偵や調査機関に依頼して、本人の行動を調査するのもいいでしょう。

会社にはうつ病と言いながら、退社後に飲みに行っていたり、休日に遊びに行っていたりする場合もあります。

飲みに行った先での言動なども、判断の材料になるでしょう。

ただし、これはプライバシーの侵害に当たる場合があるので、慎重に行いましょう。

偽装うつ病とわかった場合の対応方法

以上のような調査によって、偽装うつ病とわかった場合、どのような対応方法があるでしょうか。

以下3点にわたって解説していきます。

  1. 主治医に診断書を撤回してもらう
  2. 人事部から勧告を行う
  3. 産業医もしくは心理士との面談を行う

主治医に診断書を撤回してもらう

偽装うつ病とわかったからには、主治医に診断書を撤回してもらいましょう。

主治医も、適切な状況証拠があれば、「休むべき」との診断書を撤回せざるを得ません。

うつ病による時短勤務や休職は、主治医の診断書ありきなので、診断書を撤回してしまえば、本人はそれ以上何もできません。

人事部から勧告を行う

偽装うつ病と確定した場合、人事部から勧告してもらうことができます。

もし今後再びこのようなことがあったら、退職勧告を行い自己都合退職にしてもらう、或いは、就業規則に照らし合わせて懲戒解雇する、といったような勧告です。

自己都合退職は、社員自らの意思で辞表を出してやめることですが、実際には合意において会社が主導権を握ることが多いでしょう。

したがって、本人に罪を認めさせるという意味での自己都合退職も有り得ます。

懲戒解雇の場合は、就業規則の懲戒事由に該当する必要があり、会社は簡単には社員を解雇することができないため、厳格な解雇要件をクリアしなければ、効力は認められません。

そのため、勧告は、基本的には本人の自覚を促し、二度とこのようなことをさせないためにするものです。

産業医もしくは心理士との面談を行う

偽装うつ病の背景には、職場の人間関係のトラブルや、パワハラ・セクハラなどが隠れていることがあります。

つまり、そういったことがストレスで、仕事をしたくない、と思ってしまうということです。

そのため、偽装うつ病を追及するばかりでなく、なぜ本人がそのようなことをするのに至ったかに思いを馳せることも大切です。

そのために、診断書を出した主治医とは別の、産業医や会社に所属する心理士やキャリアコンサルタントなどがいれば、そういった人たちと本人との面談を設定しましょう。

そうすることで、逆に社内の問題が浮き彫りになってくるかもしれません。

そこでもし、パワハラやセクハラなどの問題が出てきた場合には、早急に適切な対処をする必要があります。

また、人間関係のトラブルがあれば、よく事情を聞いた上で、人事異動や配置転換するなどの方策を取った方がいい場合もあるでしょう。

もし本物のうつ病だったら

偽装うつ病だと疑った社員が、調査の結果、もし本物のうつ病だったら、どのように対応すればいいでしょうか。

第一には、診断書に従うことです。

時短勤務なら時短勤務、休職なら医師が必要と認めた期間休職させるなど、診断書に従う必要があります。

これに従わなかった場合、うつ病の悪化を助長させたとして、会社の安全配慮義務違反が問われる事態になりかねません。

本人から損害賠償を求める民事訴訟のほか、うつ病の原因が過重労働であった場合は、労働基準監督署からの指導や是正勧告が入る場合もあり、さらには刑事告発により書類送検される可能性もあります。

第二に、うつ病を理由にした解雇は、基本的にはできません。

会社の就業規則にもよりますが、社員の病気やケガが業務に耐えられないほどのものであると客観的に判断できない限り、会社はそれを理由に解雇することはできないのです。

また、社員がうつ病を発症した原因が業務に関連すると認められる場合は、社員が安心して療養のため休業できるように、療養期間とその後30日間、会社は当該社員を解雇できないことになっていますので、注意しましょう。

ただし、療養期間が3年を超える長期にわたると見込まれる場合は、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払うことで、例外的に解雇することができます。(労働基準法第81条)

偽装うつ病の調査には第三者の目を入れよう!探偵事務所SATではそういった個人調査も可能!

以上、偽装うつ病が疑われる場合に会社がやるべきことと、偽装うつ病がわかった場合の対応方法、逆に、もしうつ病が本物だった場合の対応方法について解説してきました。

うつ病含めメンタル疾患は、多分に本人の主観から発するものであり、客観的に判断しにくいものではあります。

そのため、なかなか偽装うつ病を見抜けないという場合が多いでしょう。

しかし、実際に療養中と偽り、旅行に行っていたなどの事例が沢山あります。

それは、直属の上司や親しい人間には見抜けないでしょうし、人を見る目に長けている人事部の人間でも、難しいかもしれません。

その点、人の調査に特化した人間であれば、尾行調査や張り込み調査などで、本当に通院しているかなどを調査することが可能です。

わずかな言葉尻を捕らえることや、かすかな表情の動きや身体の動きからもわかるこがあるかもしれません。

したがって、偽装うつ病の調査には、探偵や専門の調査機関に一役買ってもらうことをおすすめします。

第三者の目が入ることで、本人もごまかせない厳しさを感じるでしょうし、客観的な状況証拠を集めることは、後々紛争などに発展した際にも会社にとって有利になります。

ただし、くれぐれも初めから偽装うつ病を疑っていることを本人に気取られないようにすることが重要です。

そのためにも、調査に長けた人間に依頼することが望ましいでしょう。

社員の偽装うつ病が疑われる場合には、まず専門の調査機関に相談してみましょう。

探偵事務所SATでは、そういった偽装うつに関する社員の個人調査を実施可能です。ぜひ、お気軽にメール・電話にてご相談ください。

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