【投稿日】 2023年7月10日 【最終更新日】 2023年7月20日

「結婚生活の破綻」がある場合、離婚に関する裁判や争いに大きな影響があります。

不倫された側が慰謝料などを請求した時に、不倫した側が「結婚生活の破綻があったので支払う必要はない」という主張をする場合があります。

一方不倫された側にとっては、「結婚生活の破綻があったので離婚をしてほしい」と主張できるなど、一定の根拠になるのです。

結婚生活の破綻があったかどうかによって離婚が可能か、あるいは慰謝料を支払う義務があるのかどうかなどが異なってくるのです。

したがって結婚生活の破綻があったのか、同期間における夫婦間の様子はどうだったかなどが離婚調停では重要なポイントになっています。

そこで今回は、どういったケースが結婚生活の破綻として認められるのか、必要な条件や定義について解説していきます。

結婚生活の破綻とは?

まずは結婚生活の破綻の状態と定義について解説します。

どちらも法律で明確にされているわけではなく、各種条件に注目する必要があります。

結婚生活が破綻している状態

結婚生活の破綻とは、次のような状態のことを指します。

  • 夫婦に結婚生活を継続する意思がない状態
  • 今後ともに結婚生活を行う見込みがない状態

夫婦として同居したり、共に生活を送ることが見込めない・する意思がない夫婦関係だと「結婚生活が破綻している」と判断されます。

具体的には「コミュニケーションがほとんど取れていい」、「夫婦が食事を別々に取る」、「別居している」といった状態が長く続いている場合です。

結婚生活が破綻しているのであれば離婚調停を進めやすくなります。

しかしながら、「結婚生活が破綻している」ということを客観的に認めてもらう必要も生じます。

結婚生活が破綻しているとみなされる定義

結婚生活が破綻しているとみなされる定義は明確に定められてはいません。

しかし、民法においては「夫婦相互の義務」というものが定められています。

(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

夫婦間に生じる各種「義務」について詳しくは以下の通りです。

  • 同居義務:夫婦が一緒に住む義務
  • 扶助義務:夫婦が生活費を出し合って、同じ生活レベルで過ごす義務
  • 協力義務:夫婦で協力して生活を送る義務

したがって、同居をしておらず、協力も扶助もない場合には「結婚生活が破綻している」といえるでしょう。

また、夫婦はお互い貞操を守る義務があると考えられています。

不倫関係がどちらにもある場合には、結婚生活が破綻していると認められる可能性が高くなります。

結婚生活の破綻が認められやすい8つの条件

法定離婚事由に「婚姻を継続し難い重大な事由」というものがあります。

この「重大な事由」とは、ひとつの事柄だけではなく、複数の事柄を複合して考慮し判断されます。

裁判によって結婚生活が破綻していると認められやすい条件は、以下の8つになります。

  • 長期間の別居
  • 長期間の家庭内別居
  • DV、モラハラ
  • 不就労、飲酒癖、浪費癖
  • 性格・性の不一致
  • 家庭の放置
  • 犯罪行為
  • 親族との不和

それぞれについて詳しく解説します。

条件1:長期間の別居

別居が長期間続いている夫婦は、同居の義務を果たせていません。

つまり、結婚生活が破綻していると認められやすくなります。

しかし、仕事や療養などの正当な理由がある場合には、別居していても夫婦関係の破綻とはなりません。

結婚生活が破綻していると認められる別居期間の目安は、約5年ほどといわれています。

1年や半年ほどでは長期間だとは認められず、結婚生活破綻の条件には結びつきません。

しかし例外的に、不貞行為などが明確で別居が続いた場合には、3年ほどでも長期間の別居と認められます。

条件2:長期間の家庭内別居

「一切口を聞かずに顔も合わせない、生活リズムも違う」というような徹底した家庭内別居状態が続いていれば、結婚生活が破綻していると認められます。

この場合も、5年以上その状態が続いていることが条件となっています。

しかし家庭内別居は、家庭内での事情であり外からは判断しにくいため、証拠を出しにくく証明できないという難点があります。

条件3:DV、モラハラ

結婚生活が破綻していると認められやすくなる条件の一つに、DVやモラハラも挙げられます。

DVやモラハラを認めてもらうためには、それらを裏付ける証拠が必要となります。

特にモラハラの場合は客観的な証拠がなかったり、モラハラたる根拠が足りなかったりすると結婚生活が破綻していると認められません。

モラハラは客観的な証拠を用意するのが困難なため、弁護士などに相談して有効な手段を見つける必要があります。

DVの場合、病院の診断書や怪我の状態といった明確な基準があるため、客観的な証拠が集めやすくなります。

しかしその証拠自体が有効なものであるかどうかは、弁護士などに相談するのが一般的です。

結婚生活が破綻していると認められるためには、DVやモラハラが始まった時期や期間、回数、内容などから複合的に判断する必要があります。

音声データや動画、写真などで地道に証拠を集めることで客観的な証拠と認められます。

条件4:不就労、飲酒癖、浪費癖

夫婦のどちらかが身体的な問題もないのに就労しなかったり、生活費を提供していなかったりする場合にも「結婚生活が破綻している」と認められる可能性があります。

これは、夫婦の義務である「協力と扶助」を放棄しているとみなされるからです。

また不就労にともない飲酒癖がひどく、暴力行為などのトラブルが起こった場合にはDVやモラハラにもつながります。

配偶者が過度な飲酒癖を抱えていると「夫婦での協力生活が送れない」として結婚生活が破綻していると認められる可能性が高くなります。

また浪費癖が酷く、生活に支障をきたすと考えられる場合、性格の不一致などに当てはまり、複合的に見て「結婚生活が破綻している」と認められることがあります。

条件5:性格・性の不一致

夫婦間での性格や性生活が合わない場合、結婚生活が破綻していると認められる可能性が高くなります。

性格・性の不一致については、以下のようなものが挙げられます。

  • 価値観の不一致:金銭感覚や子育てへの考え方、趣味、細かな生活面における価値観について
  • 性生活の不一致:どちらかに特殊性癖がある、不感症である、など
  • 過度な宗教活動:宗教活動にのめり込み過ぎて家庭での行動に異常がある

不一致改善のために話し合いが行われれば問題ないとされます。

身勝手な理由で寄り添うことができないと判断される場合には、「夫婦間での協力ができていない」とみなされるのです。

また、どちらかが夫婦の営みに応じていないと判断されると、結婚生活が破綻していると認められます。

性格・性生活は客観的な証拠が集めにくいので注意が必要です。

条件6:家庭の放置

夫婦の片方が仕事や趣味に没頭して家庭を顧みなくなる場合には、「家庭の放置」として結婚生活が破綻していると認められやすくなります。

単身赴任などの正当な理由なく仕事のために長年別居していたり、宗教活動に没頭して家庭での生活に支障が生じたりすると、夫婦としての「同居扶助協力の義務」を果たしていないと判断され、家庭の放置とみなされる可能性が高くなります。

条件7:犯罪行為

パートナーの一方の犯罪行為が発覚し、逮捕されて服役になったとき、もう一方の配偶者へ社会的な影響が及ぶことが懸念されます。

その影響によって誹謗中傷等を受ける恐れがあり、誹謗中傷等によって家庭生活が経済的・社会的にも困窮してしまわないように、結婚生活の破綻が認められるケースもあるのです。

犯罪行為による結婚生活の破綻は、他の条件よりも客観的事実がはっきりしているため、認められやすいといえます。

条件8:親族との不和

「配偶者の両親」をはじめとした親族との関係が悪化し、それをきっかけに夫婦関係が悪化してしまうというケースもあります。

事例としては嫁姑問題が特に多いです。

親族が原因の不和は、夫婦どちらの責任ともいえません。

しかし、親族間との関係が悪いのにもかかわらず夫がそれを放置したことにより家庭生活に支障をきたす場合、「夫婦としての協力・扶助ができていない」として結婚生活の破綻が認められる可能性があります。

結婚生活の破綻が認められない状態

「結婚生活の破綻が認められない状態」も存在します。

結婚生活の破綻が認められない状態とは、主にまだ夫婦として共に協力して生活できる余力があったり、関係の回復が見込める状態のことです。

具体的には以下の5ケースが結婚生活の破綻と認められない状態です。

  • 夫婦として同居しており、生活に支障がないケース
  • 夫婦としての性生活に問題がないケース
  • 家族で旅行などへ行き、仲良く過ごしているケース
  • 夫婦の一方の親を介護しているケース
  • 別居生活が短く、離婚に向けて準備していないケース

夫婦としての同居・協力・扶助と相互義務を果たしている事実が確認できる場合には結婚生活の破綻が認められません。

また別居期間が短いと、「離婚への準備をしているわけではない」と判断されてしまうため、結婚生活回復の見込みがあるとされてしまいます。

結婚生活の破綻だと認めてもらうのに必要なことは?

「結婚生活の破綻」が認められるのに必要な事柄とは何なのでしょうか。

具体的には「事実」や「証拠」が必要であり、以下からそれぞれ詳しく解説します。

【1】具体的かつ客観的な事実の主張

「結婚生活の破綻」を認めてもらうために必要なのは、「『夫婦関係の破綻の理由』が何であるのか」を客観的かつ具体的に主張することです。

例えば、相手からモラハラやDVを受けているとしたら「具体的にどんなことをされて、いつから始まったのか」といった内容などを含めて説明できるようにしなければなりません。

あくまで客観的な証拠に基づいた主張でないと意味がないため、注意が必要です。

【2】証拠

夫婦関係の破綻を裏付ける証拠がなければ、結婚生活が破綻しているとは認められません。

証拠として有効な例は以下です。

  • 別居している場合は、不動産の賃貸契約書
  • 配偶者の浮気の証拠となる写真や動画
  • DVを受けている場合は、傷跡や医師の診断書
  • モラハラの音声記録や発言内容、日時を書いたメモ
  • 夫婦関係の破綻を示す事象が詳細に書かれている日記
  • 夫婦間でのメールのやり取り

単純に「暴力を振るわれた」「別居している」などの情報だけでは証拠として認められないケースがあります。

離婚を希望するのであれば、日頃から証拠集めや日記をつける習慣を持つようにしましょう。

できるだけ細かく日記をつけ、メールなどをしっかり保存しておくことで証拠が「客観的事実」として認められやすくなります。

結婚生活が破綻している状態で浮気しても不法行為にならないのか?

不倫した人が慰謝料請求をされた時に「夫婦関係の破綻」を主張して慰謝料を免れようとすることがあります。

しかし、結婚生活の破綻は夫婦間だけの問題ではなく、客観的かつ総合的に判断されるものであるため、一方の主張だけで判断されるものではありません。

一方は夫婦関係の破綻だと思っていても、もう一方がそう思っていない場合など、さまざまなケースが想定されます。

例えば、結婚生活が破綻していると思っていても、それが明確ではない時期や、破綻している証拠のない時期に配偶者以外と性交渉をしてしまうことは危険です。

もし自分に他者との性交渉の事実が発覚した場合には、配偶者から自分や不倫相手に対して慰謝料請求をされる可能性もあります。

当人たちが「夫婦関係が破綻している」と認識していても、客観的には破綻していないと判断されてしまえば不倫された側の慰謝料請求が認められます。

そのため、離婚が成立していない段階での浮気は非常にリスクが高くなるといえるでしょう。

本章を踏まえると、「結婚生活が破綻している」と客観的に認められる前に、他の異性と交際(主に性交渉)を行ってしまうと、不法行為として認められる可能性が高くなります。

逆にいえば、離婚が成立した後(結婚生活の破綻が認められた後)であれば、不法行為に当たらないとも捉えられます。

「結婚生活の破綻」を判断するには法的知識が必要

「結婚生活の破綻」とは、夫婦のどちらも今後の生活を共に送る意思がなく、同居・扶助・協力の義務を果たしていない状態のことを指します。

結婚生活の破綻は、長期間の別居やDV、性格の不一致などの具体的な理由があれば認められやすくなるものです。

しかし、これらは客観的な証拠を集めて正当な説明ができなければ立証されません。

自分で証拠が客観的かどうか判断するのは非常に難しいです。

結婚生活の破綻が破綻しているのかどうかを知りたい場合には、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。

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結婚生活が破綻しているかどうか、は離婚調停や慰謝料請求などの際に重要視されるポイントです。

実際に、結婚相手の浮気が原因の慰謝料請求であっても、相手側が結婚生活の破綻を理由に慰謝料請求を免れようとするケースがよくあります。

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