【投稿日】 2022年5月19日 【最終更新日】 2022年6月7日

「終身雇用」の時代は終わり、転職するのが当たり前という流れになってきた社会ですが、中途採用を行う際に、その人がどんな人となりなのか知っておきたいとは思いませんか。そんなときには、応募書類や面接において虚偽や経歴詐称かないかを調査するバックグラウンドチェックを採用してみましょう。

応募者の能力・適正を見抜けないまま採用にならない為に、バックグラウンドチェックとは一体何なのか、どういう形で進めていけばよいのかを解説していきます。

経営者なら知っておきたい、バックグラウンドチェックとは?

バックグラウンドチェックとは、一般的に採用の際に行う信用調査のことを言います。

外資系の企業や、アメリカなどでは既に導入されており、アメリカのHR.comが2018年に発表したレポート「How Human Resource Professionals View the Use and Effectiveness of Background Screening Methods」によれば、アメリカの95%以上の企業が何かしらのバックグラウンドチェックを行っているという結果が出ています。

参考元:HR.com「How Human Resource Professionals View the Use and Effectiveness of Background Screening Methods」

また、正社員のみならず、パートタイムの従業員までバックグラウンドチェックを行っており、HRその調査を義務化している企業もあるほどです。

アメリカでは主に、事故歴、犯罪歴、自己破産歴、その他信用情報の調査、学歴や職歴の確認、前職での人間関係、ドラック(薬物)テストなどから求職者が職位に適切かどうか判断します。会社に不利益を与える可能性のある人物の採用を未然に防ぎ、不祥事を起こすことなく利益をもたらしてくれる人を採用するためにバックグラウンドチェックは行います。

日本では一部の企業は取り入れていますがまだまだ一般的に知られているわけではありません。

一般的に企業から委託された調査会社が、データベースでの照合や電話での聞き込み調査で実施することが多くなっており、企業が独自で調査することはあまりありません。

1:バックグラウンドチェックを行う目的

採用候補者は、自分をよく見せるため、実績を高く見積もったり、悪質な場合は経歴詐称を行ったりすることも少なくありません。

採用企業において、虚偽の経歴や査証を行う求職者を事前に調査することで会社に不利益をもたらす人材の採用を防ぐことができます。会社にとってマイナスの要素を早期に発見できるのもバックグラウンドチェックを行う目的でもあります。

アメリカをはじめとした海外の企業ではバックグラウンドチェックは珍しいことではなく頻繁に行われており、日本でも最近はバックグラウンドチェックを採用する企業も増えてきました。

これまでも国内の外資系企業や金融系の企業ではバックグラウンドチェックを実施する企業はありました。しかし、コロナ禍などにおいて1人あたりの転職回数が増え、雇用形態が多様化する中で、過去の実績や経歴を正確に把握した上で採用判断をしたい企業が増えたことでバックグラウンドチェックが再注目されています。

採用してから教育などの時間を経て育てた社員が期待していたほどパフォーマンスが発揮できなかったり、経歴詐称や過去のトラブルが元で企業に損失を与えたりする事も十分に考えられるため、日本でも採用を決定する前にバックグラウンドチェックを実施することが増えてきました。 以前は役職者などの転職者に絞ってチェックを実施する事が多かったですが、最近では一般職やアルバイト採用でも失敗のリスクを排除するためにチェックするようになってきています。

2:バックグラウンドチェックを行うメリット

採用した後におこる、社員の過失採用による法的請求から会社を守るためにバックグラウンドチェックを行うことは有効です。雇用主が雇用において十分な注意を払ったことの強力な証拠になります。

また、求職者によって提供される学歴や資格、前職での在職期間およびその他のデータに関する情報を照会することは、採用時に必須としていた資格や能力を図るだけではなく、応募者が詐称などを行っていない人間であることを見極めることが出来ます。採用リスクを減らし、より良い人材確保を行えるのがメリットになります。

2018年にHR.comが発表した、レポート「How Human Resource Professionals View the Use and Effectiveness of Background Screening Methods」によれば調査に回答した雇用者の85%が、採用候補者の申告内容や履歴書に書かれた内容の嘘や不実表示がバックグラウンドチェックで明らかになったと発表しています。

アメリカでは、採用時にバックグラウンドチェックを行わないと、セキュリティ面の管理が甘い企業だと思われてしまうといったケースもあります。そのため、企業の信頼としても社員に対してしっかり調査を行っているという事実が必要になります。

3:バックグラウンドチェックを行う際の注意点

バックグラウンドチェックを行う際に気を付けなければならないことが2つあります。

「必ず求職者の同意を求めること」「個人の尊厳を侵害する調査は行わないこと」の2つです。これらを侵害すると、訴えられる可能性もあるので注意しましょう。

求職者の同意を求めること

バックグラウンドチェックは、専門の調査会社によって調査を実施しますが、虚偽や経歴詐称の調査が目的となります。そのため、採用候補者にとっては自分が疑われているのかもしれないというネガティブな印象が強くなりますが、予めきちんと伝え、合意を得なければなりません。

しかし、調査内容は個人情報であることから個人情報保護法を受けるため、個人情報保護法第23条(第三者提供の制限)などの規定から、調査会社で調査するにあたって採用候補者の同意が必ず必要です。「信条」「社会的身分」「犯罪歴」など差別につながり得る要配慮個人情報(個人情報保護法第17条2項(適正な取得))は、採用候補者の同意を得なければ取得は認められません。

個人の尊厳を侵害する調査は行わないこと

思想・信条、労働組合への参加履歴、身辺の人間関係などの調査を厳しく行うと、個人情報保護法に抵触する恐れがある為、個人の尊厳に当たる部分の調査は身長に行いましょう。

実際のバックグラウンドチェックの調査内容

実際にバックグラウンドチェックを行うにあたって、調査内容を把握しておかなければなりません。バックグラウンドチェックは主に調査会社に依頼して行うことが多くなります。バックグラウンドチェックの調査内容は下記のようなものがあげられます。

  • 学歴
  • 職歴
  • 勤務態度
  • 反社チェック(反社会的勢力との関係がないか)
  • 破産歴
  • 犯罪歴
  • インターネットメディアの調査

これらについて、ひとつひとつ解説していきます。

調査内容1. 学歴

入学・卒業年月、学位、専攻、卒業の有無などについて卒業証明書の提出を求めて照合したり、過去の職場の関係者などに確認したりして整合性をチェックします。履歴書に書かれている学歴が正しいのか、確認していきます。採用候補者に対する卒業証明書の提出依頼や、在学中であれば学校への在籍確認を行うケースもあります。提出していた情報に誤りがあった場合、学歴詐称という扱いになります。

求職者が虚偽の報告をするような人物であれば、企業としては積極的に採用はしたくありません。これらから、求職者の人となりを見極めていきます。

調査内容2. 職歴

履歴書などに書類に記載されている、過去に勤務した企業の入退社日・雇用形態・職務内容に虚偽がないかを書類上に記されている職場に電話やメールなどで確認を取ります。入退社日を偽り失業期間を短くしたり雇用形態に虚偽がある場合、経歴詐称になります。過去には、全く働いたことのない職場を職歴に書いて経歴詐称を行っていた事例もあります。職歴の確認も、大切になります。

調査内容3. 勤務態度

普段の勤務態度や勤怠について、過去の勤務先の上司や同僚に電話やWebアンケートフォームなどで確認します。過去の職場の誰に確認をするかを候補者が指定でき、過去の人間関係や周りからの評価を知ることが出来ます。この方法は一般的にリファレンスチェックと呼ばれています。

調査内容4. 反社チェック(反社会的勢力との関係がないか)

候補者が反社会勢力との繋がりを持っていないか確認します。SNSや友好関係などを調査し、身内や周りに反社会勢力との関わりがないことをチェックします。

調査内容5. 破産歴

破産歴は官報に記載され公開されるので官報をチェックして確認をとります。

調査内容6. 犯罪歴

調査会社が独自のデータベースを元に情報を確認することが多くなっています。データベースの制作方法は企業によって異なる為、詳細は各社によります。

ネガティブ情報である「犯罪歴」についてはプライバシー保護の観点から、業務上必要な範囲内でのチェックに留めます。

しかし、業務を遂行する上で、問題となるような犯罪歴がある場合は、採用後に大きなリスクになりかねないので注意が必要です。犯罪歴があるかどうかは、一つの大きな基準になります。

調査内容7. インターネットメディアの調査

インターネット検索やSNSで候補者の名前を検索し、逮捕歴や社会人として不適切な発言、行為を過去にしていないかなどを確認します。

近年ではSNSなどを気軽に楽しめる為、リテラシーがどこまであるのかを調査しておく必要があります。WEB記事などでの発覚もあるため、SNSだけではなくインターネット検索も使用するのが良いでしょう。

SNS上で公序良俗に反するような投稿が普段から行われているケースや社会的なリテラシーの低さが伺える発言を繰り返している、などは、会社の信用問題につながる可能性もあるでしょう。

そういった発言が確認できた場合には、そのような人材を採用するのにはかなりのリスクが伴うことを把握しておきましょう。

バックグラウンドチェックの実施方法

では、実際にバックグラウンドチェックを実施するにはどうしたらいいのでしょうか。

その方法は3つあります。「調査会社に依頼する」「自社で独自に行う」「リファレンスチェックで代行する」の3つになります。これから自社でどの方法を取るのか検討してみて下さい。

①調査会社に依頼する

求職者の経歴や身辺調査も対象となるバックグラウンドチェックは、専門の調査会社が実施することが一般的です。実際に調査会社に依頼する場合は、調査内容やどのような形で行うかを綿密に打ち合わせすることが必要になります。

調査会社によって費用形態は異なり、行う人数や調査内容によっても変動するものとなりますので、自社のニーズに合わせて調査会社を選ぶ必要があります。

調査会社に依頼する最大のメリットは、採用企業で実施困難な調査が可能なことです。

反社会的勢力とのかかわりや金銭トラブル、求職者の素行調査などには専門的な調査が必要となり、一般企業が調査を行うのは難しい為、そういった調査も一手に引き受けてくれる調査会社に依頼するのがおすすめです。

一方で、調査会社に依頼する主なデメリットは、採用企業が委託管理責任を負うことによって、調査会社が違法な調査をした場合、法令上の責任を負う可能性があることです。

差別につながるような個人情報は、採用候補者の同意を得ずに取得することは認められておらず、それらを侵害すると法的に訴えられる可能性もあります。また、仮に同意を得たとしてもプライバシーの侵害に当たる可能性もあり、身長にならざるを得ません。

しかし、そういった面でのコンプライアンスを徹底していない調査会社は違法な調査を行う可能性もある為、調査会社を選ぶ際には注意が必要です。

②自社で独自に行う

一般的に、自社でバックグラウンドチェックを行う際には「学歴」や「職歴」などの簡単な者のみ調査が可能になります。

基本的には、「学歴」であれば卒業証明書の取得で確認が取れ、「職歴」であれば、求職者に同意を得たうえで過去に勤めていた企業から雇用形態や職歴、役職、在籍期間などの情報が載った「職歴書」を得ることが可能です。

採用企業自身で行うメリットは、コスト削減となります。調査会社に依頼する必要がないため、費用はほとんどかからないでしょう。

ただし、自社企業で行える調査内容は「学歴」「職歴」といった簡易的なものに限られるうえに、求職者への同意手続きや各種書類の手配依頼を行わなければならないという事務的な負担がデメリットとして挙げられます。

③リファレンスチェックで代行する

採用候補者の調査手法として、バックグラウンドチェックのほかにリファレンスチェックがあります。

バックグラウンドチェックよりも簡易的に行えるため、こちらを採用する企業も増えてきています。リファレンスチェックとは、過去に勤めていた企業の上司や同僚などの求職者をよく知る者から、人物像やスキルなどを把握する調査です。

バックグラウンドチェックは、問題となりうる採用候補者の採用を未然に防ぐことが目的ですが、リファレンスチェックは、採用候補者が採用企業に合うかの相性をみることが目的です。そのため、前職の聞き込み調査というかたちになります。

具体的なチェック項目は以下の通りです。

リファレンスチェックの主な調査内容

  • 職歴や経歴
  • 退職理由
  • 人物像や勤務態度、素行
  • 職務能力やスキル
  • 配慮事項

バックグラウンドチェックを行ったことで発覚した実例

バックグラウンドチェックを行ったことにより、採用前に採用予定従業員の問題が発覚事例はいくつもあります。典型的な事例が以下になります。

事例①飲酒運転により2度も免許取消になったF

アメリカのとある州にて従業員が社用車を運転中に事故を起こし、その結果、過去に飲酒運転によって2度も運転免許を取り消されていたことが明らかになりました。この事件では、適切なバックグラウンドチェックを行わなかったとして、企業側は700万ドル(約7億円)の支払いを命じられました。海外では企業側に責任があるという判決になっています。

事例②:物流企業で20年間在籍し倉庫管理業務に携わり半年前に退職と申告しているA

職務歴に書いてある企業に対し、ヒアリング調査を行ったところ、退職年月を5年も長く申告していたことも分かり、「採用には支障あり」の判定で報告されました。

事例③:数社の職歴があるK

数社の企業職歴に詐称はなかったものの、インターネットの記事検索を行ったところ、該当の名前がヒット。詳細に確認したところ氏名・年齢・職業・勤務地域の4点が合致。「採用には支障あり」と判定されました。

事例④インターネットで不適切な発言を行うT

職歴・学歴に問題はなかったものの、SNS調査を行ったところ、該当者がSNS上で誹謗中傷や暴言を行い、リテラシーにかける行動が発見されました。採用には支障あり」と判定されました。

バックグラウンドチェックの費用相場

バックグラウンドチェックの費用は、調査項目や料金体系により変わります。

応募書類に虚偽がないかを確認する一般的な調査であれば、2万円〜6万円程度が相場とされています。バックグラウンドチェックは同じ調査項目であっても実際の方法や精度、調査内容によって価格がかなり変動します。

自社が何を求めているのか、よく検討しましょう。

会社選定時は必ず、複数社見積もりを取得することをおすすめします。

採用時には、バックグラウンドチェックを行おう!

中途採用が当たり前になってきた現代では、採用者の人柄や経歴は大切な判断材料となっています。全ての項目を調査することができなくても、反社チェックを行うだけでも企業全体に与える影響は抑えることができます。リスクを考えつつ、トラブルを未然に防ぐうえでもバックグラウンドチェックは導入していきたいですね。

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