【投稿日】 2021年10月21日 【最終更新日】 2022年10月27日

ヤクザの構成員や暴力団関係者が資金調達のために経営する会社はフロント企業と呼ばれています。

近年、国内においてフロント企業をはじめとする反社会的勢力排除の動きが盛んになっており、2007年には「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が発表され、4年後の2011年には各都道府県で暴力団排除条例が施行されました。

反社会的勢力排除の動きが盛んになったことにより、フロント企業の役員や従業員にヤクザや暴力団関係者がいることが少なくなり、一般的な企業との見分けがますますつきづらくなっています。

もしフロント企業と知らずに契約を結んでしまえば、発覚した時に何らかのペナルティが科せられることは確実です。

では、どのようにして取引先の反社チェックを行えばよいのでしょうか。

今回は、取引前に行うフロント企業の見分け方や調べ方を解説いたします。

契約時に!フロント企業の見分け方

相手企業と契約を結ぶ際、暴力団排除条項を修正するように申し立てられたり、取引中止を申し出たりするような企業はフロント企業である可能性が高いです。

暴力団排除条項でフロント企業を見分けることができる理由は、暴力団排除条項を承認したのに実際は反社会的勢力であることが確認されれば、取引が催告なく解除される他、暴力団排除条例違反で逮捕されてしまうからです。

そのため、フロント企業は暴力団排除条項を定められた場合に、抜け道を作ろうと修正を申し立てたり、取引中止を申し出たりするという行動に出ます。

つまり、新規取引を行う際は暴力団排除条項を定めておくことでフロント企業を見分けることができるということです。

金融機関では、契約を行う前にすべての取引先に対して反社チェックを行っていますが、一般企業では反社会的勢力の関係者である疑いが出たときのみ反社チェックが実行されます。

反社チェックには時間や費用がかかりますが、暴力団排除条項の設定には費用や時間はかかりません。

暴力団排除条項に対しての反応を見ることは反社会的勢力との繋がりを見分ける有力な方法となります。

取引先がフロント企業かどうかを調べる前に最低限すべきこと

取引先がフロント企業かどうかを調べる際は契約を行う前の段階で最低限、以下の3つの項目を行っておきましょう。

  • 事務所・工場への訪問
  • 不動産登記簿謄のチェック
  • 商業登記簿謄本のチェック

事務所や工場を訪問することによって従業員の会話や行動をチェックし、商業登記簿謄本にて役員や本店所在地、営業目的などが不自然に変動していないかどを確認します。

法人の所在地や所有者、役員の住所、差し押さえの有無、抵当権などについては不動産登記簿謄本にて確認することが可能です。

法人の所在地や過去の所有者に疑わしい人物がいないか、聞いたことのない金融会社や個人から多額の貸付を受けていないかについてチェックしましょう。

疑わしい取引先はこの方法で反社チェック!フロント企業の調べ方

取引先の反社チェックを行う場合は、以下の3ステップで調査を進めていきましょう。

  • STEP1:自社で調査する
  • STEP2:探偵に依頼する
  • STEP3:警察・暴追センターに問い合わせる

まずは取引先の企業やその代表者、役員、外部の弁護士や税理士などを対象に、インターネットや新聞のデータベース、業界団体の照会システムなどを利用して調査していきます。

自社での調査によって疑わしい人物が浮上した場合は探偵に調査を依頼し、より詳細な情報を入手しましょう。

自社や探偵による調査を経て、危険性が高いと判断した場合は警察・暴力団追放運動推進センターに相談し、照会してもらうことでより正確な反社チェックを行うことができます。

反社チェックを行った場合はチェックの方法や日付、調査結果を記録しておくことが大切です。

検索した際のスクリーンショットなど、反社チェックを行った証拠を保管しておきましょう。

それぞれの調査方法の詳しい内容や手順は以下の通りです。

STEP1:自社で調査する

自社でフロント企業かどうかを調査する方法は以下の3つです。

  • インターネットで風評を調べる
  • 新聞のデータベース(日経テレコンなど)から調べる
  • 自社が所属する業界団体に問い合わせる

インターネットや新聞のデータベースによる調査では、代表者や役員、会社名、株主の氏名などを自分で検索して反社会的勢力との繋がりはないか、反社会的勢力との繋がりが疑われるような風評はないかを調査します。

インターネットや新聞のデータベースでの調査を行う際は、「暴力団」「摘発」「行政処分」などのキーワードと一緒に検索することでよりスムーズに必要な情報に辿り着くことが可能です。

不動産登記簿謄本や商業登記簿謄本を手元に用意して、関与が疑われるような事件や出来事に関する記事内容と照会していきましょう。

インターネットや新聞のデータベースから調査する方法の他にも、自社が所属する業界団体に問い合わせるという方法があります。

業界団体の中にはフロント企業についての情報を独自に集めて情報として持っているところがあります。

例えば、不動産流通センターや全国銀行協会、日本証券協会などは独自の照会システムを持っている団体です。

取引先がフロント企業かどうかを調査する際は自社が所属している業界団体が情報を持っているかどうかを確認してみるとよいでしょう。

STEP2:探偵に依頼する

自社で反社チェックを行った際に、フロント企業である可能性が高いと判断した場合は探偵に依頼してより詳しく調査しましょう。

探偵は、公文書やメディアからの調査だけでなく、聞き込みや尾行、張り込みによって調査を実施します。

依頼内容によってはフロント企業であることを証明する写真などを撮影し、依頼者に調査報告書と共に提供することが可能です。

自社で調査する場合とは異なりある程度費用がかかりますが、より確実な情報を掴みたい場合は探偵に依頼するのがよいでしょう。

STEP3:警察・暴追センターに問い合わせる

自社や探偵で調査した結果、調査を続けるには危険度が高く、反社会的勢力に関する専門的な知識が必要であると判断した場合は警察や暴力団追放運動推進センターに相談しましょう。

相談する際は照会したい相手の氏名や生年月日、住所などが分かる資料や、反社会的勢力であると判断した理由となる資料を持参してください。

もし取引先に反社会的勢力の疑いがあり取引解除の提案をして裁判になった場合、探偵から得た証拠や警察からの情報を裁判で提出できなければ不当な契約解除を理由に損害賠償を請求される可能性があります。

探偵や警察・暴追センターに相談するのは手間がかかりますが、自社での調査だけで判断しないことが大切です。

フロント企業かどうかをチェックするタイミングと対象者

新規契約の場合、取引先がフロント企業かどうかの調査は契約を結ぶ前に実施します。

調査の対象となるのは取引先企業全体はもちろん、代表者や役員、株主、その企業に関わる税理士、弁護士など外部の関係者を含んだ人々です。

1人1人調査するのは手間がかかりますが、フロント企業であることを知らずに契約を締結してしまうと、反社会的勢力に資金提供を行ったコンプライアンス違反企業というレッテルを貼られてしてしまう恐れがあります。

それだけではなく、暴力排除条例違反により罰則が与えられたり、行政指導が入ったりする可能性や、上場廃止、金融機関からの融資停止などの措置が下される恐れがあるため、フロント企業かどうかの調査を行うことは今後の企業経営の上でとても重要になります。

取引前にはフロント企業である事実はなくても、取引後に繋がりを持つことも考えられるので、契約後も定期的に反社チェックを行いましょう。

フロント企業を見分けるのは難しい!クロかシロかを詳しくチェックをしたい場合は探偵に依頼しよう!

フロント企業の中には、従業員でさえも自社が反社会的勢力との関わりがあることを知らないケースがあり、見分けるのは非常に難しいと言われています。

フロント企業であることに気づかずに契約を結んでしまうと、今後の会社経営に関わる重大なペナルティを科せられることになるため、自社での調査の段階で違和感を感じたらすぐに探偵に詳しい調査を依頼しましょう。