【投稿日】 2021年11月11日 【最終更新日】 2022年10月27日

ネットやSNSが普及したことで身近になった誹謗中傷。

自分に向けたれたものでなくても、他人のプライバシーを侵害するような書き込みを見かけたことがある方もいるのではないでしょうか。

誹謗中傷は名誉毀損や侮辱罪などにあたる可能性がある犯罪ですが、実は警察がネットやSNSの誹謗中傷で加害者を検挙するケースはそれほど多くありません。

ではどうすれば警察に動いてもらうことができるのでしょうか。

今回はネットやSNSの誹謗中傷で警察に動いてもらうために必要な事について解説いたします。

ネットやSNSでの誹謗中傷は警察に相談できる?どんな罪に当てはまるの?

ネットやSNSでの誹謗中傷は名誉毀損罪や侮辱罪にあたる可能性があります。

特に「殴ってやる」「殺してやる」など、身体に危険が及ぶことをほのめかすような誹謗中傷や、繰り返し書き込まれるような悪質性の高い誹謗中傷を受けたらすぐに警察に相談しましょう。

誹謗中傷は警察に相談することが第一の選択肢ですが、「ネットやSNSのでの誹謗中傷では警察は動かない」というイメージを持つ方は多くいます。

なぜなら、誹謗中傷での検挙数は非常に少ないからです。

実際に警察庁が発表した「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」によると、平成30年に寄せられた名誉毀損・誹謗中傷等に関する相談11,406件のうち、名誉毀損の検挙件数は240件と相談件数の2%程度に留まっていることが分かりました。※1

ネットやSNSを介した誹謗中傷の検挙件数が2%に留まる一方で、相談件数は年々増加しています。

「誹謗中傷」で成立する犯罪というと、名誉毀損罪をイメージする人は少なくありませんが、実は書き込み内容によっては以下のような犯罪が成立します。

侮辱罪 広く人に知られるようなやり方で人を侮辱した場合
脅迫罪 危害を加えることを告知して脅した場合
威力業務妨害 脅迫や暴行、社会的地位などを用いて業務を妨害した場合
偽計業務妨害 事実に反することを広めて業務を妨害した場合

上記の4つの犯罪以外にも、個別法や市町村が定める条例に該当する事件があります。

このように、誹謗中傷は犯罪が成立する可能性があるものです。

ネットやSNSで誹謗中傷をされたらまずは警察に相談しましょう。

名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪!被害者が告訴をしなければ起訴することができない

通常、警察が捜査し犯人が逮捕されると、起訴されて刑事裁判にかけられます。

しかし、名誉毀損罪と侮辱罪に関しては被害者が告訴をしなければ起訴されることはありません。

このように被害者からの告訴があって初めて起訴される犯罪を「親告罪」と言います。

親告罪は、事件の事実が公に出ることで被害者のプライバシー侵害などの不利益が生じる可能性がある犯罪が該当します。

例えば、「Aさんは愛人が3人いる」などという情報が書き込まれた場合、情報が嘘であってもこのような書き込みをされたことが公になるのは避けたいと考える人もいるはずです。

このような場合に、検察が起訴をして事件が公になるのを防ぐために親告罪が設定されているのです。

親告罪で犯人に処罰を与えるためには警察に告訴状を提出する必要があります。

ネットやSNSの誹謗中傷で立件してもらうために必要な3つのこと

もしも警察に誹謗中傷を相談しても動かない場合は、警察が捜査するために必要な事を満たしていない可能性があります。

警察が捜査に移るために必要な事とは以下の3つです。

  • 必要な事1:客観的証拠
  • 必要な事2:被害届
  • 必要な事3:告訴状

被害届と告訴状は、被害内容によってどちらか一方が必要です。

親告罪である名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性がある誹謗中傷で警察に被害届を提出したい場合は告訴状が必要ですが、脅迫罪や威力業務妨害罪など他の犯罪が該当するような場合は、まず被害届を提出することになります。

告訴状も被害届も、提出する際は客観的証拠が必要となるため、できる限り集めておきましょう。

必要な事1:客観的証拠

誹謗中傷における客観的証拠とは、誹謗中傷された事実が分かる証拠や犯人が特定できる証拠のことです。

誹謗中傷された事実が分かる証拠には、書き込みのスクリーンショットなどが挙げられます。

書き込みのスクリーンショットは被害者本人でも簡単に収集することが可能ですが、犯人を特定できる証拠を集めるには発信者情報開示請求を行う必要があります。

発信者情報開示請求とは、プロバイダに対してネットやSNSで他者を誹謗中傷する行為を行った発信者の情報の開示を求める制度です。

2021年に公布されたプロバイダ責任制限法の改正により、今後はネットやSNSでの発信者情報開示請求は手続きが一体化することで以前よりも簡単により短期間で行うことができるようになります。

しかし現在はまだ施工されておらず、犯人の特定までには6ヶ月〜1年程度かかるのが現状です。

そのため、まずは書き込みのスクリーンショットを保存して証拠を確保するようにしましょう。

必要な事2:被害届

誹謗中傷は第三者が通報することで明るみに出ることもありますが、自分で被害を届け出て初めて警察が誹謗中傷を認知することがほとんどです。

そのため、名誉毀損罪や侮辱罪以外の誹謗中傷の場合、警察に動いてもらうためには被害届の提出が必要になります。

被害届に記載する内容は「届出人の情報」と「被害の詳細」の2つに分けられます。

主に以下のような内容を記載するのが一般的です。

届出人の情報 ・氏名
・連絡先
・住所
・所属先
被害の詳細 ・犯人に関する情報(特定できている場合は犯人の氏名や住所、アカウント情報)
・被害日時(誹謗中傷が書き込まれた日時)
・被害詳細(誹謗中傷の内容)
・被害内容(誹謗中傷によって生じた被害)

ただ、被害届は犯罪が成立することが証明できない場合は受理されないことがあります。

警察には日々数多くの被害届が提出されています。

そのため、すべての届出内容に対応していては人員や時間が足りなくなってしまうのです。

限られた人員や時間の中で捜査の必要性が高いと判断した事件に注力するために、そもそも犯罪が成立する可能性が低い事件には対応できないことがあります。

被害届を提出する際は客観的証拠をできる限り集めて犯罪が成立することを証明できるように準備しておきましょう。

必要な事3:告訴状

親告罪である名誉毀損罪や侮辱罪が該当する場合は告訴状が必要です。

告訴状は受理されると警察に起訴するかどうかを判断した結果を被害者に報告する義務が生じます。

つまり、告訴状が受理されれば捜査を行う必要が生じるということです。

ただし、告訴状は被害届よりも法律的な観点からの説明が要求されます。

被害内容がそれぞれどの構成要件に該当するのかを説明する必要があるのです。

具体的には、告訴人の情報の他に以下のような内容を記載します。

告訴の趣旨 該当する罪名、罰条、処罰を求める意思表示を記載
告訴事実 いつ、誰が、誰に対して、何を、どのように、どうしたのか、犯罪に至るまでの背景や経緯、経過、動機などを詳細に記載
告訴に至る経緯 告訴に至った理由や心情を記載
証拠資料または立証方法 犯罪の事実を証明する証拠または立証方法を記載

告訴状は法律の専門的な知識が必要になるため、自分で作成するのは難しいでしょう。

可能であれば弁護士に依頼して作成することをおすすめします。

ネットやSNSでの誹謗中傷は客観的証拠が何よりも重要!

ネットやSNSの誹謗中傷は客観的証拠の有無によって立件すべきかどうかを判断されます。

つまり、誹謗中傷の客観的証拠がなければ警察は動く事ができません。

日本の法律には「疑わしきは罰せず」という原則があるため被疑者が誹謗中傷を行ったことが限りなく明白であっても100%確実にならなければ警察は動くことができないのです。

警察は誹謗中傷だからと言って軽んじて動かないわけではなく、客観的証拠が不十分であるために動くことができないということです。

逆に言えば、警察は客観的証拠が充分に揃っていれば捜査を開始します。

そのため、誹謗中傷で警察に動いてもらうためには客観的証拠を揃えることが重要です。

ネットやSNSでの誹謗中傷の客観的証拠はどのように集めればいいの?

ネットやSNSでの誹謗中傷の客観的証拠の集め方は以下の2つです。

警察に動いてもらうためには被害の事実を証明することや、犯罪が成立することを証明することが重要ですが、さらに犯人を特定できている状態であれば警察が捜査に乗り出す可能性は高まります。

証拠もなく、犯人も特定できていない状態では、限られた人員や時間を割いて一から捜査を行うことが難しいからです。

誹謗中傷の客観的証拠を集める際は犯人の特定も併せて行っておくことをおすすめします。

【1】自分で集める

誹謗中傷を刑事事件として届け出るためには、誹謗中傷が名誉起訴罪や侮辱罪などの犯罪にあたることを証明する必要があります。

自分で集める場合は、今ある客観的証拠を確保していく方法で集めていきます。

例えば誹謗中傷が書き込まれたSNSや掲示板の書き込みやアカウント情報などのスクリーンショットを保存しておくというのが一つの方法です。

ただ、書き込みのスクリーンショットだけでは客観的証拠としての力が弱いことがあります。

自分で集めた客観的証拠の力が弱い場合は、発信者情報開示請求を行って犯人を特定しましょう。

犯人の特定は警察に相談する際に必ずしも必要というわけではありません。

ただ、犯人の特定を行っておけば警察は動きやすくなります。

IPアドレスなどの情報が保管されている期間は3ヶ月程度と短いため早めに手続きを開始しておくと良いでしょう。

【2】探偵に依頼する

犯人の特定は必ずしも必要というわけではありませんが、行っておくことで警察に被害の事実を証明することができるため、動いてもらいやすくなります。

探偵に依頼することで、発信者情報開示請求を行わなくても犯人を特定することが可能です。

インターネットは匿名性が高いと思われがちですが、投稿した内容や時間などといった人物特定に繋がるヒントを残しているものです。

探偵はこれらのヒントから犯人を特定していきます。

探偵は発信者情報開示請求を行うことはできないものの、調査の専門家として様々なルートから犯人特定を行うことができる点が特徴です。

自分で集めた客観的証拠だけでは不十分であると判断した場合は探偵に調査を依頼しましょう。

ネットやSNSでの誹謗中傷は検挙数が年々増加している!泣き寝入りせずに証拠を集めて警察に相談しよう!

ネットや誹謗中傷で警察が動かない場合は客観的証拠が不十分であるケースがほとんどです。

ネットやSNSの誹謗中傷を解決するためには客観的証拠集めが重要になります。

特に探偵や発信者情報開示請求で得た犯人の情報は、警察に相談する時だけではなく、弁護士に依頼して損害賠償を請求する際にも役立つものです。

現在はまだプロバイダ制限責任法の改正が施行されていないことから、発信者情報開示請求で犯人を特定するまでには6ヶ月〜1年ほどの期間がかかります。

なるべく短期間で犯人を特定したいという場合は、探偵に依頼することで発信者情報開示請求を行うよりも手間なく短期間で犯人を特定することが可能です。

警察が動かない場合は探偵者に依頼して犯人を特定し、警察に被害の事実を証明しましょう。

※1:警察庁「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」

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