家族や恋人が行方不明になった後、残された人の多くが次のような点で迷うことがあります。

  • 家出人の捜索願はいつ出せば良いのか
  • 家出人の残したものをどうすれば良いのか
  • 行方不明の後の法的手続きにはどういったものがあるのか

家出した人への心配や不安を抱える中、やらなければならないことを一つ一つ確認しながらこなしていくのは大変負担が掛かります。家族や恋人が家出した後、残された家族がやるべきことを時系列に説明しながら、それぞれに必要な準備や知っておくべき知識・いざという時の相談先を詳しく解説していきます。

家出人の「行方不明者届」の提出は早いタイミングであるほど良い

これまで警察への届け出は「捜索願」とされていましたが、2010年に「行方不明者発見活動に関する規則」が施行され、名称が「行方不明者届」となりました。

警察と聞くとどうしても構えてしまいがちですが、実は毎年多くの人が行方不明者届が提出され受理されています。具体的な家出の理由を挙げながら、行方不明者届の提出についてみていきましょう。

家出の理由と行方不明者届の状況

平成30年6月に警察庁生活安全局生活安全企画課から公表された資料を見ますと、家出して行方不明となった人の届出数と家出の理由は以下のようになっています。

行方不明者数と発見者数

行方不明者数は延べ人数で84,850人、このうち平成29年中に所在確認がされた行方不明者数は81,946人となっており、その多くが警察に届け出てから一週間以内に所在確認がされている。

行方不明となった理由

行方不明となった理由は、「痴呆症やその疑いがある場合などの疾病関係」「家庭関係」「事業・職業関係」「学業関係」「異性関係」「会社の金銭の使い込みや持ち逃げなどの犯罪を理由とした犯罪関係」と幅が広く、放浪癖や遊び癖がある人の行方不明者届も多い。

このデータを見るとわかってくるのが、「行方不明者届を出すことの重要性」です。受理された行方不明者届は警察のデータベースに登録され、その情報を元にして警ら中の警官が発見したり、情報を提供してもらえるというメリットがあります。そしてその情報は届出が早いほど確実性を持ち、行方不明者発見への近道となるのです。

命の危険性がある家出人「特異行方不明者」の届出は速やかに提出する

行方不明者の中でも、以下のような可能性がある人は「特異行方不明者」と呼ばれ、警察も積極的な捜査を行います。

  • 殺人や誘拐の可能性があり、怪我や命の危険性がある人
  • 未成年者で犯罪の被害者となる可能性がある人
  • 行方不明になる直前の行動から考えた時、事故や災害などに巻き込まれた可能性がある人
  • 日常の言動や遺書などから自殺の可能性が高い人
  • 精神状態が不安定で危険物を所持しており、自分や他人を傷つける可能性がある人
  • 高齢者や年少者、もしくは病人などで自力による救済が難しく、生命や身体に危険が及ぶ可能性がある人

行方不明となった人の状況を考えた時、もし上記のような状態に当てはまるようでしたらすぐに警察へ行方不明者届を提出し、早急に捜索してもらう必要性があります。

危険性が低い場合でも行方不明者届を提出する

命の危険性が低いと判断される行方不明者は「一般行方不明者」と呼ばれ、警察も積極的な捜査を行うことはありません。しかし、行方不明者届を出すこと自体が大きな武器となることがあります。

警察による捜索が行われない場合、行方不明者探しは自力・もしくは探偵事務所などに依頼して行うことになります。この時に行方不明者届が出ていると、警察へ正式に届け出ているという事実が安心感となり、周囲への聞き込み調査や情報提供などの協力要請がスムーズになるのです。

聞き込み調査や情報提供などは早ければ早いほど効果があるので、家出人が行方不明になったことがわかった段階ですぐに行方不明者届を提出し、行方不明者の捜索がスムーズになるようにしましょう。

「行方不明者届」を警察に提出するまでの流れとその後の行動を具体的に解説

家出した人の行方不明者届を提出するためには、いくつかの準備を行う必要があります。また、届出を受理された後にも残された人がやらなければならないことがあるのです。行方不明者届を提出するまでの流れと、その後にやらなければならない行動について、具体的な内容を挙げながら解説していきます。

家出人の詳細な情報を集めておく

行方不明者届を提出するためには、家出した人の詳細な情報を集めておく必要があります。以下の項目について可能な限り情報を集めておき、警察への説明がスムーズになるようにまとめてみましょう。

家出人の基本情報

  • 氏名
  • 年齢
  • 性別
  • 現住所
  • 携帯電話番号
  • メールアドレス
  • 通学している学校名や勤め先の住所と連絡先
  • 身体的特徴(身長・体重・髪の毛の長さ・ほくろなど)
  • 写真や画像(可能な限り最新のもの)

などをまとめます。この他にも、警察から捜索にあたり必要な情報や資料を要請された場合には、可能な限り提出するようにしましょう。

家出人がいなくなった時の状況

  • 家出人がいなくなった日付
  • 家出人がいなくなった時間
  • 最後の会話、出来事など
  • 把握している限りの場所をまとめる。よく遊びに行く場所や行きつけのお店なども合わせて伝える

家出人の精神状態や家出する心当たりなど

家出人がいなくなる前にどのような精神状態であったか、悩み事やトラブルなどがなかったかを思い出してみましょう。その際、メールや電話の記録などが残っているとより警察も判断しやすくなりますので、それらのデータも提出するようにします。

行方不明者の相談だけなら電話でも可能ではありますが、正式な届け出は行方不明者の現住所の管轄内にある警察署で行うことになります。行方不明者届を出す時には必要な情報や書類・メモなどをしっかりと集めておき、管轄の警察署へ出向くようにしましょう。

行方不明者届の提出が出来る人とは

行方不明者届は、以下の条件が揃っている人が提出することが出来ます。

  • 行方不明者の親権者や後見人
  • 配偶者や婚約者及び内縁状態にある人
  • 親族にあたる人
  • 行方不明者の福祉関係に従事している人
  • 行方不明者の雇用主
  • 行方不明者と同居している人
  • 行方不明者の監護を行なっている人
  • 行方不明者との親密な関係を持っている人

行方不明者と付き合いがあった人にとって、心配するあまり警察へ相談することはごく当たり前の行動なのですが、規定により一定の条件が揃っている人でなければ正式な届出を行うことは出来ません。もし相談しても届出を受理してもらえない時には、行方不明者届の提出が出来る人にお願いして行動してもらうようにしましょう。

家出人からの「不受理届」が提出されている場合

家出人が提出できる「不受理届」とは、「誰にも知られずに意思を持って家出をしたので、探している人に自分の連絡先を教えないで下さい」という届を警察に提出したものです。

ほとんどのケースでは、家庭内の虐待やDVなどから逃げた人が警察へ提出しています。「行方不明者届の不受理」を届け出ている場合、明確な意図を持って家出したことがはっきりしているため、警察は捜索を行いません。このような状況の場合には、多くの人が探偵事務所に家出人の捜索を依頼しています。

法律的な問題が生じる場合には弁護士や司法書士に相談する

家族や恋人が行方不明になったことで、以下のような法律的問題が発生することもあります。

  • 月極駐車場に行方不明者の車が放置されており継続することが難しい。
  • 行方不明者が住んでいたアパートの引き払いを命じられた。
  • 行方不明者との遺産分割協議が必要となった。
  • 行方不明者の所持している財産管理。
  • 行方不明者の占有を離脱した財産の取得。

本来であれば行方不明者が担うべき債権や負債ですが、本人がいない状態では誰かがどうにかしなければいけません。

理想としては行方不明者が見つかるまで現状維持なのですが、状況によっては行方不明者の財産処分をしなければならないケースも出てきます。しかし、持ち主不在の財産を残された人が勝手に処分することは違法となるため、法的手続きが必要となるのです。

こうした問題が起こった時には、弁護士や司法書士などに相談する必要があります。法的手続きを踏むことで残された人に正当性が生まれるので、財産を巡る争いや管理問題をクリアにすることが可能となるのです。

探偵事務所へ調査を依頼する

警察への行方不明者届と同時に、探偵事務所へ調査依頼を行うことも重要です。調査のプロである探偵は、経験とノウハウを活かして個人では難しい調査を行います。発見する確率が高くなることもメリットの一つですが、この他にも重要となる点があるのです。

先述した法律的問題において、場合によっては裁判所へ申し立てを行わなければならないこともあります。この時に必要となるのが、裁判所へ状況を申し立てるための上申書です。簡単に言うと「残された人が出来る限りの捜索を行ったが相手の住所がわからなかった」という事実を訴えるものなのですが、この上申書に探偵事務所の報告書を添付することで、裁判所に対しより確実に現状を知らせることが出来るのです。

行方不明者の発見を目的とすることは勿論ですが、こうした状況を踏まえて探偵事務所に相談する人も少なくありません。多くの探偵事務所では無料相談を受け付けておりますので、まずは気負わず相談してみることから始めてみるのも良いでしょう。

行方不明者の失踪手続き、「失踪届」の提出について解説

行方不明者が長期間見つからず生死不明の状態が続くと、残された人は「失踪届」を提出することが可能となります。では、この失踪届を提出することにはどのような意味があるのでしょうか。失踪手続きの効果と一連の流れについて解説します。

失踪手続きは民事の法的手続き

行方不明者が長期に渡り見つからない状態が続くと、残された人には次のような問題が起こる可能性があります。

  • 行方不明者の財産管理を続けることが不可能になってきた。
  • 行方不明者との婚姻関係の解消をしたい。
  • 行方不明者の持ち物を相続したい。

行方不明者がいなくなった直後から続く現状維持の状態は、残された人にとって徐々に負担が大きくなることがあります。こうした状態になった時、長期間行方不明となっている人を法律上死亡したとみなすのが失踪宣告です。

失踪宣告が出来るようになる期間は、以下のようになっています。

普通失踪の場合

行方不明者が失踪してから7年以上生死不明の場合。

危難失踪

戦争や事故・震災などに遭遇した可能性があり、その危難が過ぎた後に行方不明者が1年以上生死不明の場合。

失踪手続きは、行方不明者の生死を法律上ではっきりさせるためのものです。もし手続き後に行方不明者が発見された場合、失踪宣告された本人・もしくは利害関係にある人が家庭裁判所に申し立てる事で失踪宣告の取り消しを行うことが出来ます。

その場合、行方不明者の法律上の権利は失踪宣告前の状態に戻されますが、すでに行われた遺産分割に関しては取り消しにはなりません。ただし、分割された遺産が残っている場合には、その分の遺産を返却することになります。

裁判所からの失踪宣告がなければ手続きが出来ない

失踪宣告は裁判所によって出されるので、まず最初に行方不明者の住所の管轄にある家庭裁判所へ失踪宣告の申し立てを行わなければなりません。失踪宣告がされるまでの流れは、以下のようになっています。

  1. 申し立てをした本人や行方不明者の親族に対する調査を行う。
  2. 行方不明者本人や行方不明者の生存を知っている人に対し、官報や裁判所の掲示板による告知を一定期間行い、届け出があるかどうかを待つ。
  3. 期間内に届け出がなければ失踪宣告される。

実際に申し立てをしてから失踪宣告がされるまでには、約半年程掛かります。裁判所のホームページでは、失踪宣告の申し立てに関する詳しい情報を公開しておりますので、そちらを参考にして準備をするようにしましょう。

失踪宣告を受けたらすみやかに市町村役場へ

裁判所からの失踪宣告を受けただけでは、戸籍上に記載は行われません。失踪宣告を申し立てた人は、裁判所の失踪宣告から10日以内に市町村役場へ出向き、失踪届を提出する必要があります。その時に必要となるのが、家庭裁判所から交付される審判書謄本と確定証明書です。

失踪届を行う際には、事前にこの二つの書類を家庭裁判所から交付してもらい、準備をしてから市町村役場へ行くようにしましょう。

まとめ

家出した行方不明者の届け出や準備・知識について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容をまとめてみましょう。

  • 警察に行方不明者届を出すことで、その後の捜索や情報集めなどにメリットがあるので、行方不明者の状況に関わらず出来るだけ早いタイミングで行方不明者届を出す。
  • 行方不明者届は「行方不明者の親権者」「親族」「恋人や内縁の者」「雇用主」「同居人」といった特に親しい人が行うことが出来る。
  • 行方不明者が意図的に家出をして「行方不明者届の不受理届」を警察に出している場合、警察は捜索を行わないので、個人的な調査や探偵事務所への依頼を行うことになる。
  • 家出人が行方不明となったことで起こる法律上の問題は、弁護士や司法書士などに相談し、財産管理や処分等で違法とならないようにする。
  • 法律上の問題を解決するにあたり、「残された人が可能な限り家出人の捜索を行った」ことが証明されると大変有利となるので、探偵事務所などを上手に利用して報告書を用意すると良い。
  • 失踪宣告は裁判所によって行なわれ、申し立てた人は失踪宣告がされてから10日以内に各市町村役場へ失踪届を出さなければならない。

家族や恋人など、大切な人が行方不明となっている状態において、様々な手続きをこなさなければならない状況は、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。警察を始め、弁護士・司法書士・探偵事務所といった第三者機関の助けを借りながら、少しでも負担を減らすように心がけてみましょう。