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社員の素行調査はどんな場合に違法になる?企業が探偵を利用する理由とは
【投稿日】2018年5月11日
素行調査とは、調査対象者が「いつ・どこで・何をしていたか」を監視して、証拠として記録に残したり、撮影したりする調査です。
調査の基本は尾行・張り込みと聞き込みですが、社員の素行調査を実施する場合は、出勤日だけでなく休日やプライベートの行動をも追跡することもあるでしょう。
会社が素行調査を実施した際、調査対象の社員に気づかれて個人情報保護法違反やプライバシーの侵害を社員に訴えられてしまっては、逆に会社が不利になる可能性すらあります。また、関連法令に疎いために、気づかないうちに違法行為を犯してしまうかもしれません。
そこで、素行調査がどのような場合に違法と見なされるかを確認してみましょう。そのうえで調査を探偵事務所に任せるべき理由をご紹介します。
社員の素行調査で取り扱う情報の特色
まず、素行調査で取り扱う情報について考えてみましょう。素行調査で調べることができるのは、「ターゲットの個人情報やプライバシーに関する情報」です。
では、個人情報やプライバシー情報とは、具体的にどのような情報なのでしょうか。
個人情報とは
個人情報の保護に関する法律(通称:個人情報保護法)によると、個人情報とは、直接個人を特定できる情報や、他の情報と照合することによって個人の特定が可能な情報を指します。
個人情報をわかりやすくまとめると、以下のようになります。
<直接個人を特定できる情報の例>
- 氏名
- 生年月日
- 家族構成
- 学歴
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 番号制度によって割り当てられた個人識別番号(マイナンバーや住民票コードなど)
- 本人が写っている写真や映像など
<他の情報と照合することで個人を特定できる情報の例>
- 身体的特徴
- 職業
- 収入
- 地位や身分など
プライバシー情報とは
プライバシーは個人情報のように法律によって厳密に定義こそされていませんが、「私生活上の情報をみだりに公開されない権利」として、憲法第13条が保障する人権に含まれています。つまり、「他人に知られたくない情報」を包括してプライバシーとして扱うのです。
プライバシーは以下に具体例を挙げたように、個人を推測することができるすべての属性情報や、私生活上の秘密などすべてを対象としています。
- IC交通カードやクレジットカードの利用履歴
- 検索サイトの検索履歴
- 医療機関の利用履歴
- 交友関係など
素行調査で得られる証拠は「個人情報・プライバシー情報」
下記の分類からもわかるように、社員の素行調査によって得られる証拠の大半は、社員本人あるいは社員の家族・知人・友人の個人情報やプライバシーに関する情報です。
<個人情報>
- ターゲットの自宅住所
- ターゲットの勤務先(会社名・所属部署・会社所在地など)
- ターゲットが接触した人物(氏名・職業・勤務先など)
- 聞き込みをした場合は、聞き込み中の会話に出てくる個人情報すべて
<プライバシー情報>
- ターゲットが出勤のために家を出る時間
- 通勤ルート
- 勤務時間中に外出する場合は、立ち寄り先
- 外出中の立ち寄り先での滞在時間
- ターゲットの交友関係
- その他、ターゲットの私生活やターゲットが隠したい事実
素行調査で得られる情報は個人情報やプライバシー情報であるため、情報の取扱い方が大変重要になってきます。情報の取得方法や利用方法次第では、違法行為として刑事罰や民事責任に問われる可能性もあることを理解しておきましょう。
社員の素行調査はどのような場合に違法になるのか
では、素行調査が違法性を孕むのはどのような場合なのでしょうか。
そもそも素行調査自体は違法行為ではありません。ですが、調査によって個人のプライバシーや平穏な生活が脅かされる場合は、調査のすべてあるいは一部が違法と判断されます。
そこで、どのような局面で素行調査が違法と判断されるのかを、法的根拠を交えながら徹底解説します。
調査内容の取扱い方次第で違法と見なされるケース
素行調査で得られる情報は個人情報やプライバシー情報であるため、情報の取扱い方は慎重でなければなりません。
情報の誤った利用が原因で法令違反になる場面は、以下のものがあります。
●調査対象者が接触した人物の個人情報を第三者に開示した場合
→以下の刑事・民事責任に問われる。
- 名誉毀損罪により、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金(刑法第230条)
- 名誉毀損により、損害賠償請求(民法第710条)
- プライバシーの侵害により、損害賠償請求(民法第709条・第710条)
- →個人情報保護法違反により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(同様第83条)
調査の過程に違法性が認められるもの
素行調査で収集する情報にまつわる法令違反以外にも、調査の進め方自体が違法行為と見なされる場合もあります。刑事・民事責任を問われる調査方法は、以下のとおりです。
- →ストーカー規制法違反により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法第18条)
- →ストーカー規制法違反により、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(同法第19条)
※ストーカー規制法に関する補足:
素行調査中の尾行や張り込みがストーカー行為に該当する、というのは意外に思われるかもしれません。
ストーカー等の規制等に関する法律(通称:ストーカー規制法)では、個人が同一人物に繰り返しつきまとったり、自宅・勤務先・学校などに繰り返し張り込んだりする行為はストーカー行為と見なし、ストーカー行為によって相手の身体、行動の自由、生活、名誉などを侵害することを禁止しているのです。
●盗聴器を仕掛ける目的で社員の自宅に侵入
- →住居侵入罪により、3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法第130条)
- →器物損壊罪により、3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料(1000円以上1万円未満の財産刑)(刑法第261条)
- →有線電気通信法違反により、1年以下の懲役または20万円以下の罰金(同法第9条・第14条)
以上からわかることは、個人で実施する素行調査は必ず法律の壁に阻まれて、必要な証拠(相手の個人情報やプライバシー情報)が得られない、あるいは得られにくいという点です。
法を犯してまで素行調査を行い、会社の社会的信用を損なってしまっては本末転倒です。
社員の素行調査を探偵に依頼すべき理由
ここまで、素行調査が違法になり得る要因が、特定の調査の内容や方法にあることをご紹介しました。ですが、前項のすべての項目が違法行為にあたらないケースもあるのです。
先ほど取り上げたもののうち、一部の調査内容や調査手法は、探偵業を営む人間が行った場合に限り、違法と見なされないケースがあります。
探偵の素行調査が違法行為でないケース
探偵事務所の素行調査には違法性がないと判断されるケースとして、ストーカー規制法の適用からの除外があります。
探偵が尾行中にターゲットに気づかれても、ストーカー規制法違反に該当しません。なぜなら、探偵が行う尾行は、「探偵業の業務の適正化に関する法律(通称:探偵業法) 」によって認められているからです。
探偵業の適正化に関する法律 第2条
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。引用元: 探偵業の業務の適正化に関する法律
調査で得られた情報の適切な取扱い
探偵業を営業する場合、探偵業法やその他の法令を遵守することが義務づけられています。それは調査の内容や手法に限らず、調査で得られた情報の取扱い方法にも及びます。
ここでポイントとなるのは、探偵業法第8条第3項と同法第10条です。
- 重要事項説明書内にて、個人情報保護法およびその他の法令遵守を記載する義務(探偵業法第8条第3項)
- 秘密保持義務(同法第10条)
このように、調査に関する個人情報やプライバシーの保護は探偵の義務なのです。
探偵に素行調査を依頼した場合は、調査で得られた情報はすべて適切に取り扱われるため、個人情報保護法違反や名誉棄損、プライバシー権の侵害などのリスクを心配する必要がありません。
探偵の素行調査でも違法行為となるケースがある
素行調査を探偵に依頼すれば、すべての調査が合法的に行えるかというと、そうではありません。「調査の過程に違法性が認められるもの」の項目でご紹介しましたが、次の行為は探偵であっても犯罪行為です。
- 執拗な尾行や張り込みで社員のプライバシーを侵害する(民法709条)
- 調査で得られた情報を、依頼人以外の第三者に公開する(民法709条)
- 証拠を探して社員の自宅に侵入する(刑法第130条)
- 盗聴器を設置する目的で住居等に侵入したり(刑法第130条)、住居等を損壊したりする(刑法第261条)
- 社員の所有する電話機に盗聴器を設置して、会話を傍受する(有線電気通信法第9条)
- 盗聴した内容を第三者に漏らす(電波法59条)
まとめ
ここまで、社員の素行調査のどのような場面が違法行為に該当するかをご紹介しました。調査の専門家でない一般の人々が素行調査を行うと、知らず知らずのうちに違反行為に及んでしまうリスクがあることをご理解いただけたのではないでしょうか。
素行調査は調査のプロであり、各種法令を遵守する探偵事務所に任せることをおすすめします。とは言っても、探偵事務所に相談・依頼を検討するときは、調査方法や情報の取扱い方法が適切かを見極めるべきです。
探偵事務所が法令順守しているかを判断するには、相談の際に具体的な調査手法、個人情報などの利用・保管方法などの説明を求める方法があります。
また、探偵業法やその他の法令の規定違反により、適正な業務運営が行われていないと公安委員会に判断された探偵事務所は、探偵業法第15条に基づき、一定期間の営業停止命令が下されます。詳しくはこちらの「浮気調査の選び方!探偵の探し方~信頼できる探偵の見極めポイント」をご確認ください。
処分を受けた探偵事務所は管轄の警察署ホームページ上で公開されているので、相談・依頼を検討している探偵事務所が処分を受けていないかを一度確認してみるのが良いでしょう。
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