【投稿日】 2022年9月5日 【最終更新日】 2022年9月22日

相続が発生した際に、相続人全員で遺産の分け方について話し合いをすることを「遺産分割協議」と言います。

「遺産分割協議」は、相続人全員が参加して合意しなければ無効となってしまいますので、相続人のうちの誰かが行方不明となっている場合には、行方不明者を探し出して「遺産分割協議」に参加してもらう必要があります。

しかし、現実的には行方不明者をどうしても探し出せないというケースもあり得ます。

このような場合の「遺産分割協議」は、どのように進めればいいのでしょうか?

この記事では、相続人が失踪して行方不明になっている場合の「遺産分割協議」の方法や相続手続きなどについて詳しく解説します。

連絡が取れない相続人がいる場合にやるべきこと

相続人と連絡が取れない状況としては、次のようなケースが考えられます。

そこで、それぞれの場合に、どのような方法を取るべきなのかについて説明します。

相続人の連絡先が不明な場合

疎遠にしていたため、相続人の連絡先が分からないというケースは比較的よく起こり得ることです。

このような場合は、自分以外の誰かがその相続人の連絡先を知っている可能性もありますので、その相続人に近い親族などに連絡先を知らないかを確認してみましょう。

その他の方法としては、その相続人の戸籍を辿って現在の本籍地を確認し、本籍地の市区町村で発行される「戸籍の附票」を調べる方法があります。

「戸籍の附票」とは、本籍地の市区町村で戸籍の原本と一緒に保管されている書類で、その戸籍が作られてから現在までの住所が記録されていますので、現住所を調べることができます。

このようにして現住所が分かれば、その住所宛に手紙を送ってみたり直接訪ねてみたりして、相続が発生したことを伝えて、遺産分割協議への参加を促すことができます。

相続人が国外にいて連絡先が不明な場合

相続人が国外にいることは分かっているものの連絡先や住所が不明な場合もあります。

この場合も、相続人の現住所を調べる必要がありますので、外務省領事局海外邦人安全課に「所在調査」を依頼して調べてもらいます。

この「所在調査」には数カ月かかる場合があるということです。

しかしながら、相続人がどこの国に滞在しているのかが不明という場合には「所在調査」が困難となります。

行方不明の相続人がいる場合にやるべきこと

連絡が取れない相続人がいる場合に、前項で説明したようなことを行ったとしても、どうしても行方が分からないことがあります。

このようなときに利用できる制度として、「失踪宣告制度」と「不在者財産管理人制度」があります。

遺産分割協議には、いつまでにやらなければいけないというような期限はありませんが、相続税は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に申告・納付しなければなりません。

従って、「失踪宣告制度」か「不在者財産管理人制度」のどちらかを利用して遺産分割協議を行って相続税の申告をすることになります。

もし、遺産分割協議が行われなければ相続財産は未分割となり、不動産の相続登記が行えない、不動産の売却ができない、銀行口座の解約ができないなどの問題が発生します。

失踪宣告の申し立てをする

失踪宣告制度とは、「従来の住所又は居所を去った者で容易に帰ってくる見込みのない者(不在者と言います)」の生死不明の状態が継続した場合に、その者を死亡したものとみなして、身分上・財産上の法律関係を確定させるための制度です。

失踪宣告には、「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。

「普通失踪」は、不在者の生死が7年間以上不明であるときに、「利害関係人」が失踪宣告を家庭裁判所に申し立てをすることができ、失踪宣告の審判を受けて、7年間が満了したときに死亡したものとみなされます。

「特別失踪」は、従軍や船舶の沈没・冬山登山の遭難などの危難に遭った者の生死が、危難が去ってから1年間以上不明であるときに、「利害関係人」が失踪宣告を家庭裁判所に申し立て、失踪宣告の審判を受けて、危難が去ったときに死亡したものとみなされます。

「利害関係人」とは、不在者の配偶者や相続人にあたる者、財産管理人、遺言書による受遺者などで、失踪宣告を求めることについて法律上の利害関係を有する者を言います。

「普通失踪」も「特別失踪」も、行方不明者の最後の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。

当然のことですが、失踪宣告を受けた人が生存していることが確認された場合で、本人や利害関係人から請求があった場合には「失踪宣告の取り消し」が必要になります。

不在者財産管理人の選任の申し立てをする

「不在者財産管理人制度」とは、生きている可能性が高いものの相続人の所在がわからない場合や行方不明になってから7年未満の場合に、相続人などの利害関係人が、行方不明者の最後の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を申し立てることができるというものです。

「不在者財産管理人」は、家庭裁判所が利害関係を考慮した上で選任しますので、利害関係のない親戚や友人などを候補者にすることもできますが、弁護士や司法書士などの専門家を候補者にすることが多いようです。

申し立ての際に、不在者財産管理人の選任のための管理費用を家庭裁判所に予納する必要があり、弁護士が不在者財産管理人となる場合の予納金は30~50万円程度となります。

失踪宣告後の遺産分割協議

失踪宣告を受けると、その行方不明の相続人は法律上「死亡したもの」として扱われますので、相続人ではなくなり遺産分割協議に参加する必要もなくなります。

これによって、「失踪宣告を受けた行方不明の相続人」を除く相続人の参加による遺産分割協議を行うことができるようになります。

なお、失踪宣告を受けた行方不明の相続人に法定相続人がいる場合は、遺産分割協議に参加する必要があります。

不在者財産管理人を交えての遺産分割協議

選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所に「権限外行為の許可」を申請して認められると、遺産分割協議に参加することができるようになります。

不在者財産管理人は、不在者の財産に関する保存行為、目的の物や権利の性質を変えない範囲における利用や改良行為を行うことができますが、遺産分割協議への参加はこれらを超える行為に当たるからです。

このとき、家庭裁判所は「不在者が不当な不利益を受けないように配慮」しますので、「不在者が法定相続分を下回るような遺産しか取得しないという内容」の遺産分割協議案になっている場合は、原則として「権限外行為の許可」を認めません。

つまり、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加することを認めないということです。

従って、「不在者が法定相続分以上の遺産を取得するという内容」で遺産分割協議がまとまることになります。

その後も、不在者財産管理人は、不在者(行方不明の相続人)が現れるまで取得した遺産を預かって管理します。

不在者財産管理人の職務はいつまで続くのか?

不在者財産管理人の職務は、遺産分割協議への参加だけで終わることはなく、そのまま不在者の財産として管理しなくてはならなくなります。

しかし、この不在者財産管理人の職務は、「不在者が現れたとき」「不在者の死亡が確認されたとき」「不在者の失踪宣言がされたとき」のいずれかの場合に終了します。

不在者が現れた場合は、「不在者だった人物」が財産を管理することになります。

不在者の死亡が確認されたり、失踪宣言がされた場合は、「不在者の相続人」がその財産を相続します。

【参考】連絡先は分かっているのに無視される場合

行方不明だった相続人の現住所が判明し、その住所に住んでいることが確認できたにもかかわらず、こちらの連絡に対して無視され続けたり、遺産分割協議への参加を拒否される場合もあります。

このような場合は、この相続人の生存が確認できていますので、失踪宣告制度や不在者財産管理人制度を利用することができません。

このような場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てをすることになります。

調停の申立先は、「相手方(他の相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所」となりますが、相手方が複数の場合には、いずれの相手方(他の相続人)の住所地でもかまいません。

調停が始まると、一般的に月1回程度その家庭裁判所に通う必要があります。

調停によって、相続人全員が遺産分割の内容に合意できれば「調停が成立」しますが、全員が合意できずに「調停が不成立」となれば、審判官(裁判官)が遺産分割の方法を決定することになります。

審判が出ると、自宅宛に審判書が送付されてきますので、それに基づき不動産の相続登記などの相続手続きができるようになります。

相続人が行方不明の場合は不在者財産管理人を選任して遺産分割協議を行うことが多い

本記事では、相続人が失踪して行方不明になっている場合の遺産分割協議の方法や相続手続きについて解説しました。

相続人が行方不明の場合は、失踪宣告制度と不在者財産管理人制度のいずれかを利用することができますが、失踪宣告の手続きは半年~1年ほどの時間がかかりますので、相続税の申告期限である10ヶ月以内に間に合わないこともあり得ます。

このようなことから、相続人が行方不明の場合は不在者財産管理人を選任して遺産分割協議を進めることが多いようです。

行方不明者、失踪者の捜索は、探偵事務所SATにお任せください!

相続人が行方不明の場合には、遺産分割協議など相続手続きを進めることができません。その場合は、不在者財産管理人を選任するなどの対応をすることが多いですが、やはり相続人が見つかるのが一番です。

行方不明者、失踪人の捜索は、スピードが命です。行方不明者になってから1週間以上経過すると発見される確率がぐんと下がり、捜索の難易度も上がります。

そんな時は警察だけではなく、人探しのスペシャリストである、探偵事務所SATに一度ご相談ください。探偵事務所SATでは、警察OBの探偵が在籍し、探偵業法に基づくあらゆる手法を用いて捜索を行います。

まずは、メールやお電話にてご相談ください。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00

※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。