【投稿日】 2019年11月19日 【最終更新日】 2021年10月21日

企業は従業員の増員や事業の強化を狙って、社会人経験のある中途採用者を募集することがあります。即戦力として期待をする反面、前職を辞めた理由や転職を考えた原因が気になるところです。

もし中途採用者側に問題があったとしたら、採用後に問題が起こるかも知れないというリスクを抱えてしまいます。しかし個人情報保護法が施行されて以降、中途採用者の身辺調査に対して厳しくなっているため、なかなか踏み切れないという経営者も少なくありません。

では、入社前に中途採用者を身辺調査することはどこまでなら可能で、どうすれば合法的に調査できるのでしょうか。今回は、中途採用者の身辺調査について、具体的な例をご紹介しながら詳しく解説していきます。

中途採用者の身辺調査でよくある疑問

中途採用者の身辺調査は、経営者にとっては大切な合否の判断基準です。しかし、仕事とまったく関係のない情報から合否を判断したり、中途採用者の権利を侵害するような調査をしてしまうと、逆に訴えられてしまいます。

では、経営者にとってリスクが少ない中途採用者の身辺調査とは、一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、経営者が抱える疑問の中でもとくに多い点をピックアップし、一つ一つを丁寧に解説していきます。

中途採用者の身辺調査は違法なのか?

中途採用者の身辺調査に関して、経営者側が一番多く持つ疑問点は、身辺調査自体が違法なのかということです。この疑問が生まれるきっかけとなっているのは、平成15年に施行された「個人情報の保護に関する法律(以下個人情報保護法)」です。

身辺調査は中途採用者の個人情報を調べることなので、この行為が違法になるのでは?と疑問を持つきっかけになっています。結論から先に言うと、特定の条件を満たしていれば違法にはなりません。違法とならない条件は、以下のようになっています。

  • 調査対象者本人に対し、身辺調査を行うことを伝える、または身辺調査をした後に事実を公表すること。
  • 調査対象者本人に対し、身辺調査で取得した情報の利用目的を伝えること。
  • 調査で知り得た情報は、目的以外に利用しないこと。
  • 配慮が必要な情報を調べる時には、調査対象者本人の同意をもらうこと。

これらの条件の中でとくに注意を払わなければならないのが、「個人に対して配慮が必要な情報」です。個人情報保護法では「要配慮個人情報」と明記されており、具体的には次のような情報のことを指します。

  • 人種(国籍など)
  • 信条(信仰しているもの、宗教など)
  • 社会的身分(家柄や出身など)
  • 病歴(通院歴や通院先、カルテの情報など)
  • 犯罪の経歴(過去に犯罪を犯していないか、罪に問われていないか)
  • 犯罪で被害者となった事実があるか
  • 差別や偏見、本人に不利益となるような情報

これらの項目に共通しているのは、「一歩間違うと差別や偏見に繋がってしまう情報」という点です。実際に、就職の面接でも要配慮個人情報とされる質問はしないよう配慮したり、進学や就職で面接のある学生に対し、「履歴書で提出した情報以外の個人情報や差別につながる質問は、お答えできませんと答えるように」と学校の指導も入っています。

また、要配慮個人情報はとてもデリケートなものですので、採用する判断として必要かどうかを良く考えなければなりません。

中途採用者の身辺調査は、本人に通知をして同意が得られれば違法ではありません。しかし、要配慮個人情報に関してはかなり取り扱いが厳しいので、違法となる可能性があることも理解しておきましょう。

中途採用者の前職調査でやってはいけないこととは?

中途採用者の身辺調査で一番大切なのは、中途採用者に不利益とならないようにすることです。とくに中途採用者の前職調査は、やり方を間違えると中途採用者に多大な損害を与えかねません。やっていはいけない項目は、以下のようになります。

  • 中途採用者の前職場に直接電話を掛けてたずねない。
  • 退職前の職場に直接電話を掛けてたずねない。
  • 中途採用者の前職場に出向いてたずねない。
  • 退職前の職場に業務中に出向き仕事の邪魔をしない。
  • 中途採用者の情報を同業者間に回さない。
  • 噂話の真意を確かめず採用不採用の判断をしない。
  • 前職場の同僚を買収して情報を集めない。

ちょっと驚くような項目もありますが、これらはすべて実際に起こってしまったケースです。このような行動をとると、中途採用者本人を傷つけるだけではなく、会社そのものの評判も大きく傷ついてしまいます。

中途採用者には、前職場での繋がりや人間関係があります。もし直接たずねたり真相を確かめず噂を信じてしまうと、中途採用者の人間関係を崩すだけではなく、中途採用者から訴えられる可能性も出てきます。

中途採用者の前職調査を行う時には、本人に不利益にならないよう十分な配慮をするようにしましょう。

中途採用者の身辺調査は自力でどこまでできる?

経営者が身辺調査をする1番の目的は、「採用予定の人が信用できるかどうかを判断すること」ですよね。応募してきた人の中には、履歴書やエントリーシートに嘘の情報を書く人
いるので、信用するために調査をしたいと思うのも当然です。

中途採用者の身辺調査を自力で行う場合、履歴書やエントリーシートに記入された情報の確認程度であれば可能です。履歴書やエントリーシートは、個人情報の取り扱いについて本人に同意を得てから受け取っていますので、住所・氏名・電話番号程度なら自力で調べているという会社も少なくありません。

しかし、経歴や自己アピールといった情報は自力調査が難しく、無理な調査をして違法と判断されたり、中途採用者本人に不利益となることもあります。自力での調査が難しい場合には無理をせず、興信所や探偵事務所に依頼をする方が良いでしょう。

中途採用の身辺調査を探偵に頼んでも違法にならない?

個人情報保護法の施行後、中途採用者の身辺調査を探偵に依頼する企業が増えてきています。「探偵に頼んでも違法なのでは?」と疑問を持つ人もいますが、探偵が身辺調査を行うのは違法ではありません。

個人情報保護法が施行されたことにともない、探偵業者などの調査会社に対し、警察庁から特例措置が通達されました。

この特例措置では、探偵業者が調査を行うにあたり、以下の内容であれば調査対象者に通知しなくても調査ができると定められています。

  • 浮気調査
  • 家出人の捜索
  • いじめ関する調査
  • 素行調査
  • 結婚前調査
  • 身元調査
  • 身辺調査
  • 資産調査
  • ストーカー調査

つまり、探偵に中途採用者の身辺調査を依頼した場合、会社側には次のメリットがあるのです。

  • 中途採用者本人に通知をしなくても良い。
  • 違法にならない。
  • 本人に不利益とならないよう調査が出来る。

ただし、探偵であっても社会的差別につながる調査・犯罪につながる身辺調査は行いません。

探偵事務所の身辺調査では、事前の相談で会社側から知りたい情報や利用目的を詳細に聞き取り、社会的差別や犯罪に繋がらないかを判断します。もし中途採用者の身辺調査を探偵に依頼する時には、調査の目的や理由、知りたい情報について事前に詳しくまとめるようにしましょう。

探偵に身辺調査を依頼する費用はどのくらい?

探偵事務所に調査を依頼する時に気なるのは、調査費用がいくらなのかという点ですよね。探偵事務所によって費用の見積もり方法は異なりますが、次の点を押さえておくと費用を抑えることができます。

  • 対象となる中途採用者の基本情報をしっかり集めておく。
  • 調査したい内容や利用目的を決めておく。
  • 本採用決定前で中途採用者が複数人いる時には、2~3人まで人数を絞ってから相談する。

上記の三つの点を抑えるだけでも調査日数が減りますので、その分費用を削減できます。調査内容にもよりますが、調査対象者一人を1日調査した時の平均した金額は約8万円ほどとなっています。

中途採用者の情報に問題がなければ平均金額ですみますし、もし問題があっても追加調査をするかどうかは事前に相談されますので、決定権は依頼者となる会社側にあります。多くの探偵事務所では無料相談も行なっていますので、詳しい情報が知りたい場合は気軽に相談から始めてみましょう。

探偵に中途採用者の身辺調査を依頼する事前準備と流れ

探偵に中途採用者の身辺調査を依頼する場合、事前準備がきちんとされているとスムーズに話し合いを進めることができます。ここでは、探偵に身辺調査を依頼するまでの流れを具体的にご紹介していきます。

調査対象となる中途採用者の基本情報をまとめる

まず最初に、調査対象者となる中途採用者の基本情報をまとめるようにします。基本情報は調査対象者を尾行・張り込み・聞き込みするために必要で、出来るだけ多い方が調査もスムーズになります。具体的な項目としては以下のような内容です。

  • 住所、氏名、年齢、電話番号など
  • 顔写真や身体的特徴
  • 現在の勤め先や前職の勤め先
  • その他現時点で分かっている情報

上記の情報のほかにも、面接の時点で気がついたことがあった時にはメモにまとめ、探偵に相談した時に話すようにします。探偵は調査のプロなので、些細な情報から調査のヒントを得ることも少なくありません。「これはあまり関係ないかも」と判断せず、調査対象者となる中途採用者に関する情報はすべてまとめるようにしましょう。

身辺調査を行う理由や知りたい情報をまとめる

なぜ身辺調査を行うのか、その理由や目的をまとめます。先ほど解説した通り、身辺調査では差別や偏見に繋がる調査はできません。これは探偵にも適用されており、調査目的や内容が差別や偏見に繋がると判断された時には、探偵から依頼をお断りされることもあります。

探偵が行う身辺調査の主な内容は以下の通りです。

  • 履歴書の情報が正しいかを確かめる。
  • 前職での評判や成果を調べる。
  • 中途採用者の素行を調べる。
  • 中途採用者の人間性を調べる。
  • 中途採用者のよくない噂について真偽を確かめる。

これ以外にも、差別や偏見に繋がらない範囲であれば調査可能なこともありますので、一度リストを作ってまとめておくと良いでしょう。

探偵に見積もりを出して貰う

情報をまとめたら、探偵事務所に相談して具体的な見積もりを出して貰います。優良な探偵事務所では、本契約の前に調査方法や期間などを依頼者と話し合い、根拠のある見積もりを作成します。その場で本契約を急かしたり、慌てさせることはありません。

もし相談者に決定権がない時には、見積もりを会社へ持ち帰り検討することも可能です。信頼のできる探偵事務所かどうかを見極めるポイントにもなりますので、まずは相談して見積もりを出して貰うことから始めてみましょう。

まとめ

中途採用者の身辺調査について、具体的な例を交えて詳しく解説してきましたがいかがでしたか?最後にもう一度内容をふりかえり、ポイントをまとめてみましょう。

  • 中途採用者の身辺調査は、事前に本人に通知して同意を得ていれば違法にはならない。
  • 差別や偏見につながる「要配慮個人情報」を調べることは、中途採用者に不利益につながと判断されて違法となることもある。
  • 中途採用者の前職調査は、中途採用者が不利益にならないことを大前提にとらえ、直接職場に接触したり、悪い噂を信用しないようにする。
  • 探偵による身辺調査は、個人情報保護法の特例措置により違法ではなく、中途採用者への通知も必要としない。
  • 探偵による身辺調査は違法ではないが、差別や偏見に繋がる調査は断られる。
  • 身辺調査を探偵に相談する時には、現在わかっている範囲の中途採用者の情報をすべてまとめ、身辺調査をする理由や目的をはっきり定めるようにする。

個人情報保護法により、会社が行う身辺調査も大変厳しくなりました。しかし、中途採用者に対する身辺調査は会社にとっても不可欠であり、多くの経営者が頭を悩ませる問題でもあります。自力調査も一部可能ではありますが、より安全で詳しい情報を得たいと考える時には、無理をせず探偵事務所に相談するようにしましょう。

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