【投稿日】 2019年9月9日 【最終更新日】 2021年10月21日
業務上横領が起こった時、横領した犯人である社員が逃亡をしてしまうと、被害を受けた会社側は解決の糸口を見失ってしまいます。しかし、社員の逃亡にはいくつかのパターンがあるため、気がついた時には何から手をつければ良いかわからないことも少なくありません。
では、業務上横領をした社員が逃亡をした時には、どのような対応をすれば良いのでしょうか。社員の逃亡を具体的なケース別に分け、より適切な対応策について詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
業務上横領と社員の逃亡は別にして考えると対応しやすい
業務上横領をした社員の逃亡には、「自分だとバレないように」「バレても捕まらないように」という目的があります。正確に言うと、逃げられた会社側がそう思っていることが多く、本当の意思は逃亡した社員を見つけなければわかりません。
つまり、業務上横領・社員の行方不明という二つの問題が混在している状態で、会社側は判断がつきにくくなっているのです。業務上横領と社員の逃亡が重なっている時、どのように考えて対応するべきなのか、その内容を具体的にみていきましょう。
横領した社員の逃亡には3つのケースがある
横領した社員の逃亡には、大きく分けて3つのケースがあります。現在の状態がどのケースに当てはまるのか、まずは確認してみましょう。
確実に横領をしたことがわかっている社員が逃亡したケース
確実に誰が横領をしたかがわかっていて証拠もあり、その社員が逃亡をしているケースです。立証出来る証拠があるため警察にも届出が出しやすく、警察も積極的な捜査・捜索が可能となります。
横領の疑惑がある社員が逃亡したケース
横領があったという事実はあるものの、特定の社員が犯人だという証拠がないまま逃亡しているケースです。横領の事実はあるので警察には被害届を出せますが、明確な証拠がないので社員の身柄を確保することは難しく、あまり積極的には捜索しないこともあります。
社員が行方不明となった原因が横領だったケース
横領が発覚した前後に社員が行方不明となっており、因果関係が明確でないケースです。この場合は「見つかった社員に問い正したら横領を認めた」ということも多く、まず社員を探し出すことが目的となります。
上記の例を見てもわかるように、社員が逃亡したと言い切るためには明確な証拠が必要となり、疑いがある程度であればまずは社員を探し出すことが最優先となります。
最終的には横領した社員の逮捕・起訴・訴訟が目的ではありますが、横領と疑いのある社員の関係性がどの程度明らかであるかによって対応が変わってくるので、まずは現状をしっかり把握することが大切となります。
警察の対応は業務上横領か行方不明かで変わる
業務上横領と行方不明者の捜索は、両方とも警察に届け出るべき事案です。しかし、「業務上横領の犯人である社員が逃亡した」のか、「業務上横領が起こった時に行方不明となった社員がいる」のかでは大きな違いがあるので、相談する時には状況に合わせた対応策が必要となります。
横領の犯人として警察に届け出る場合
業務上横領をした社員がはっきりしていて証拠もある場合、警察に業務上横領の被害届を提出します。このケースでは社員=犯人という認識になりますので、警察は行方不明となっている社員の捜索を行います。業務上横領の証拠と同時に、逃亡した写真の顔写真や身体的特徴なども伝えておくと良いでしょう。
逃亡した社員を行方不明者として警察に届け出る場合
業務上横領のはっきりとした証拠がない場合でも、逃亡した社員を行方不明者として警察に届け出ることは可能です。
この時に、行方不明となった原因の1つとして業務上横領の犯人である可能性を伝えておくようにします。こうすることでより行方不明届を受理されやすくなるほか、警察のデータベースに登録されて発見率が高くなりますので、証拠が無い場合でも事実関係をきちんと話しておきましょう。
どちらの場合にも必要なのが、いなくなった社員を探し出すための情報です。具体的には以下のような項目になります。
- 逃亡した社員の顔写真を複数枚
- 年齢、性別、生年月日といった基本的情報
- 身長、体重、髪型などの身体的特徴
- いなくなる前後の詳しい情報
- 逃亡した社員の人間関係など(交友関係や仕事関係)
なお、行方不明者探しで必要な情報に関しては、下記の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも参考にしてみましょう。
横領の証拠と捜索の手がかりを同時に集めていく
業務上横領を解決するためには、次の3つの項目を確実にやっていく必要があります。
- 業務上横領が行われたことを立証するための証拠集め
- 業務上横領が誰によって行われたかを立証するための証拠集め
- 業務上横領を行った社員の身柄確保や居場所の把握
疑いのある社員が逃げていない場合には、社員の行動を見張りつつ証拠集めを進めていくのですが、社員が逃亡している場合には、居場所探しと証拠集めを同時進行しなければなりません。具体的には次のような行動を行うことになります。
- 逃亡して行方不明となっている社員の情報を集める。
- 社員の行動範囲を探す。
- 社員の交友関係を調べる。
- 公共交通機関の予約がないかを調べる。
- ホテルやウィークリーマンションなどの予約がないかを調べる。
- 海外に脱出していないかを探る。
- 銀行のATMやカードの引き落としがないかを調べる。
このような調査は普段やったことがない人には大変難しく、下手をすると協力者から連絡が行って逃亡した社員に逃げられる可能性があります。そうなってしまうと、折角証拠を集めても相手を訴えることが出来なくなるのです。
このようなケースの場合、被害を受けた会社の多くは社員探しを探偵に依頼し、分担して作業を進めることで負担を減らすなどの工夫をしています。証拠集めも逃亡した社員の確保も時間との勝負になるので、効率よく結果を出すためにも有効な方法です。
業務上横領の疑いがある社員の逃亡は、真実は見えていない段階では精神的負担や身体的疲労が大きくなります。一刻も早い証拠集めと社員探しを行い、早期解決へ向けて動き出すことが重要です。
業務上横領をした社員が逃亡した時の具体的な対応の流れ
業務上横領をした社員が逃亡をした時、その状況によって会社側が行うべき対応の流れに違いが生まれます。では、どのようなケースでどのような対応をするのが望ましいのか、具体的な例を挙げてみていきましょう。
確実に横領した社員が逃亡した時の対応の流れ
逃亡した社員が確実に横領したという証拠があるケースでは、かなりはっきりとした対応策を取ることが出来ます。具体的な流れとしては、以下のような内容です。
横領の証拠を持って警察に届け出る
明確な証拠があれば、警察は迷うことなく捜査・捜索に動くことが出来ます。犯人である社員の捜索も組織的に行われますので、まずは警察へ行き被害届を提出します。
社員を探すための手がかりを探す
警察への協力として、社員を探し出すための手がかりを集めていきます。行動範囲・人脈・所縁のある地域など、あらゆる情報が必要となりますので、どのような些細なことも手がかりとして集めておくようにしましょう。
集めた証拠や手がかりを持って探偵に相談する
もし警察への相談が上手くいかなかった場合、探偵に相談するのも1つの方法です。組織として動く警察とは異なり、探偵には自由に動けるメリットと捜査の技術が備わっています。この時、警察への相談や届出が済んでいると、公式な人探しとして探偵の聞き込み調査もやりやすくなりますので、一度警察に相談してから探偵に依頼すると良いでしょう。
横領の疑惑がある社員が逃亡した時の対応の流れ
業務上横領の事実はあるものの、疑いのある社員がはっきり犯人だと言えるだけの証拠がない時には、相談という形で次のような対応の流れを作るようにします。
警察に業務上横領と行方不明の両方を相談する
業務上横領が行われたという被害をまず警察に相談し、被害届を提出します。この時、現在行方不明である社員に疑いがあることも伝え、その後の行動についてアドバイスを貰うなどの対応をしましょう。
横領の証拠と行方不明者探しの手がかりを同時に集める
行方不明となっている社員が横領したという証拠と、社員の現住所を探すための手がかりを同時に集めていきます。この時点では、逃亡した社員が誰とどのように繋がっているかわかりません。あまり大々的な調査は行わず、無理をしない程度でとどめておきましょう。
可能な限り早い段階で探偵に相談する
証拠集めと社員探しは、時間が経つほど難しくなってきます。特に社員探しの場合、折角手がかりがあっても情報が古いと役に立たなかったり、気づかれて移動してしまうことも少なくありません。可能な限り早い段階で探偵に相談し、スピーディーな流れを作るように心掛けましょう。
行方不明の社員と横領の関係性が不明な時の対応の流れ
業務上横領と行方不明の社員との因果関係が全く不明の時には、警察や探偵などの第三者機関に相談する前の準備が大切になります。具体的な流れは以下のような内容です。
社員の足取りの手がかりと横領の証拠集めを同時に行う
業務上横領に関係する証拠集めと、行方不明になっている社員を捜索するための手がかりをそれぞれ集めていきます。この時、業務上横領と行方不明になっている社員をあえて関連づけるようなことはせず、業務上横領の証拠は秘密裏に行うようにしましょう。
警察に行方不明者届を出し横領の可能性も伝えておく
行方不明となった社員が犯人であるという証拠がない場合には、まず警察で社員を探すために行方不明届の相談をするようにします。この時に、もしかしたら社員が業務上横領に関係しているかも知れない可能性を伝えておき、今後の行動についてアドバイスを貰ってみましょう。
探偵に相談して社員の捜索と横領の証拠集めを依頼する
業務上横領の証拠も社員の捜索も、一般の人には難しい作業です。特に業務上横領と行方不明となった社員との関係性がはっきりしない段階では、何が決めてとなるのか判断がつかないことも少なくありません。このような時には無理をせず、最初に疑問に思ったきっかけなどのメモや情報を集めて探偵に相談し、証拠集めや社員の捜索を依頼するようにしましょう。
横領した社員が逃亡したときの注意点
横領した社員の逃亡は、会社側にとって焦りを感じる状態でもあります。しかし、早期解決を望むあまり思いのままに行動してしまうと、折角のチャンスを逃してしまったり、責任追及を出来なくなる可能性もあるのです。
業務上横領をした社員が逃亡した時、会社側はどのような対応をすれば良いのか、その具体例をみていきましょう。
大々的な聞き込みや社内調査をしない
業務上横領で会社側が一番気をつけなければならないのは、業務上横領をして逃亡した社員ではなく、その社員と繋がりがある社内の人間です。特に逃げた社員に集中するあまり、探し出すために社内で大々的な聞き込み調査を行なったり、社内であからさまな証拠探しを行うと、逃げた社員と繋がっている社内の人間から情報が漏れる可能性が高くなります。
心身に受けたショックが大きい程落ち着いて行動出来なくなりますが、このような社内調査は逃げた社員に隠れるチャンスを与えるだけではありません。業務に支障をきたしたり、社内の和を乱すなどの悪影響も生まれます。
逃げた社員の捜査に役立つ情報や証拠集めは重要ですが、一番重要なのは相手に気づかれないようにすることです。自力での調査は出来る範囲内に留めておき、無理な場合はすぐに探偵などに依頼するよう心掛けておきましょう。
証拠がない場合には横領の件は伏せておく
確実な証拠がある場合を除いて、逃げた社員を業務上横領の犯人と断定して話をするのは大変危険です。業務上横領は刑法でも定められている犯罪であり、懲役10年以下の刑罰が科せられます。
参照リンク:刑法第253条 業務上横領
つまり、証拠がないまま社員を犯人だと断言してしまうと、万が一間違っていた時に名誉毀損で訴えられる可能性も出てくるのです。
証拠がない場合でも、逃げた社員本人が認めて自白した場合には有効ですが、それもまずは見つかってからでなければどうすることも出来ません。証拠がない場合には可能な限り横領の件は伏せておき、あくまで「失踪した社員を探している」という形を保つようにしておきましょう。
横領した社員の捜索を探偵事務所に依頼する
業務上横領で逃げた社員を探すことは、自分の意思で姿を消した行方不明者探しと同じ状態です。つまり、手がかりを可能な限り残さないように逃げているので、捜索が難航したり時間が掛かることも少なくありません。
このような場合、業務上横領で逃げた社員を探す会社側がよく利用するのが、探偵事務所の無料相談です。多くの知識と調査能力を持つ探偵は、一般の人があまり気にしないような情報からヒントを得たり、捜索の足がかりとして逃げた社員を探し出します。無料相談で得た情報だけでも気がつくことが多く、その結果捜索を依頼するという会社も多くあります。
「自力での調査には限界がある」「確実な証拠がどうしても掴めない」「まずは行方不明となっている社員を探し出して話をしたい」、このような悩みがある時には、出来るだけ早く探偵事務所に相談してみましょう。
まとめ
業務上横領をした社員が逃げた時の対応について、詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容を振り返り、簡単にまとめてみましょう。
- 業務上横領で社員が逃げるケースには、「確実な証拠がある場合」「証拠はないが社員が逃げている場合」「行方不明の社員が犯人だった場合」の3つのパターンがある。
- 警察への届け出は、逃げた社員が犯人である確実な証拠が揃っている時には有効である。
- 証拠が無い場合には、業務上横領の証拠集めと逃げた社員の捜索に必要な手がかりの両方を同時に集め、警察に相談したり探偵に調査の依頼をする。
- 社内の人間が逃げた社員と繋がっている可能性があるので、大々的な社内調査や証拠集めをしないようにする。
- 確実な証拠がないうちは逃げた社員を犯人とは断定せず、行方不明者を探すようにまずは社員を探すことを優先する。
- 証拠集めも社員探しも時間との勝負になるので、自力調査にこだわらず出来るだけ早い段階で探偵事務所に相談する。
業務上横領で逃げた社員の捜索は、証拠の有無や姿を消した時期などが大きく影響してきます。横領に気づいた時が一番早い時期であることを理解した上で、出来るだけ早く適切な捜索方法を見つけ出していきましょう。
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