【投稿日】 2022年3月22日 【最終更新日】 2022年4月4日

裁判は債権回収を行う上で有力な手段の1つです。

しかし実際は、裁判を起こして勝訴したとしても必ず債権回収を行うことができるわけではありません。

実際に「裁判で勝訴したものの、債務者に資産がないために債権回収を行うことができなかった」というケースは存在します。

このように裁判で勝訴すれば債権回収できると考えている方も多くいますが、実は勝訴するだけでは債権回収が実現しないケースがあるのです。

では、債権回収を行うためにはどのような条件が必要なのでしょうか。

そこで今回は裁判で原告側の債権回収を困難にする3つの壁について解説いたします。

裁判で原告側の債権回収を困難にする3つの壁

内容証明郵便を送付して催促したり、民事調停を行ったりしても債務者が支払う意思を示さない場合は、裁判を起こして債権回収を行うのが一般的です。

ただし、先ほど述べた通り、裁判を起こせば必ず債権回収できるというわけではありません。

裁判で債権者が債権回収を行うためには、以下の3つの壁を乗り越える必要があります。

壁1:勝訴する

弁護士を通して電話や面談、内容証明郵便、民事調停などの方法を使って督促しても債務者が債権を返済しない場合は、最終手段として訴訟を起こす必要があります。

訴訟は債権回収を行う上で有効な手段となりますが、手続きや訴訟は原告側の負担が大きいのが現状です。

例えば、以下のような点は原告側にとって負担になりやすい項目です。

  • 手続きが複雑
  • 判決が下るまでに時間がかかる
  • 費用がかかる

例えば、訴訟を起こすためには裁判所に訴状を提出する必要がありますが、訴状は法律で記載事項が定められており、請求する内容や、請求する内容についての法的根拠を記載する必要があります。

また、債務者から送付される答弁書の確認や反論など、書面のやりとりを行う場合は、自身の主張や相手への反論を行う書面である「準備書面」の他に準備書面での主張の根拠となる証拠を提出することが必要です。

さらに、準備書面のやりとりの後に行われる尋問手続では事前に十分な準備を行わなければなりません。

これらを全て自力で行うのは困難です。

そのため、ほとんどの場合は弁護士に依頼して手続きや訴訟を進めていくことになります。

訴訟を行うためには弁護士に依頼するための費用と訴訟費用の両方が必要です。

訴訟費用は、100万円を請求する裁判で1万円の手数料がかかり、1000万円を請求する場合でも5万円程度の手数料しかかかりません。

しかし、併せて弁護士に依頼する場合は着手金が10〜30万円かかります。

さらに勝訴して債権回収ができると成功報酬として債権回収で返金された額の10〜20%を支払うのが一般的です。

このように、勝訴するためには原告側の負担が大きくなるため、債権回収を行うことを困難にする原因の一つとなっています。

壁2:相手に資産がある

債権回収は債務者に資産や支払い能力がある場合にしか行うことができません。

債務者に支払い能力がないにも関わらず訴訟を起こしてしまうと、勝訴したとしても債権を回収できず、訴訟費用や弁護士費用、ここまで費やした労力や時間が水の泡になってしまいます。

そのため、訴訟前に債務者に支払い能力があるかどうかを確認しておくことが大切です。

支払い能力を確認するためには「資産調査」を行います。

「不動産を所有していないか」「金融機関に預貯金はあるか」などを調査することが可能です。

このように資産調査は債権回収の手続きの前に行うこともできますが、取引の前に支払い能力を確認する目的で行うのがおすすめです。

もしも資産があるにも関わらず「商品に不満がある」と言って債務者が債権を支払おうとしない場合は、裁判を経て強制執行などの手段を取るのが有効です。

壁3:資産隠しを防ぐ

裁判は手続きから判決まである程度時間がかかるため、裁判を行っている間に債務者が財産を処分したり、財産隠しを行ったりする可能性があります。

債務者が財産隠しを行うことを防ぐために利用できる制度には「仮差押え」や「財産開示手続き」があります。

仮差押えは、裁判を行っている間に債務者が財産を処分することを防ぐための制度です。

そのため、仮差押えの手続きは裁判を提起する前に行われます。

仮差押えを行うと、債務者は不動産や銀行預金などの財産を処分できず、通常業務に支障が出てしまうため、仮差押えが執行された時点で債務者が支払いを申し出るケースが少なくありません。

一方で財産開示手続は、債務者本人が裁判所に財産目録を提出し、裁判官の前で保有している財産をすべて開示する手続きです。

債務者が開示した情報に対して債権者は裁判所の許可を得た上で質問をすることができます。

つまり、分かりやすく言えば、財産開示手続は「財産隠しの有無の取り調べ」です。

財産開示手続を申し立てる際は確定判決や和解調書があれば裁判所に申し立てることができます。

確定判決や和解調書は「債務名義」と呼ばれるものですが、仮執行宣言付判決や仮執行宣言付支払督促、確定済みの支払督促、公正証書といった債務名義では財産開示請求を行うことができません。

もしも債務者が財産開示手続を拒否したり、虚偽の説明を行ったりした場合は30万円の過料を支払う必要があるため、財産開示請求は財産隠しを暴くための有効な手段となります。

裁判で債権回収を行うために必要な資産調査とは?

資産調査とは、主に銀行預貯金や不動産、有価証券など、相手がどの程度保有しているのかについての調査を指します。

取引前に支払い能力の有無について調査する目的で行われるのが一般的ですが、裁判や仮差押えなど、債権回収のために行われることも多い調査です。

せっかく裁判で勝訴して、強制執行を行うことができるようになったとしても、差押えできる資産がない場合は絵に描いた餅になってしまいます。

「強制執行を行ったのに債権を回収できない」ということがないよう、債権回収を進める前の段階で資産調査を行っておきましょう。

資産調査はどこに依頼すればいいの?

資産調査を行う方法は以下の3つです。

  1. 自社で行う
  2. 弁護士に依頼する
  3. 探偵に依頼する

つまり、資産調査を外部に依頼する場合は「弁護士」または「探偵」のどちらかに依頼することになります。

弁護士と探偵の資産調査における違いは、「調査方法」と「料金」です。

弁護士の調査方法の一つに「弁護士会紹介制度」があります。

弁護士は弁護士会紹介制度によって相手方の口座情報の開示を金融機関に申し出ることができますが、強制力はないため、実際は金融機関は口座情報の開示に応じないことが多いのが現状です。

一方で探偵は、一般的に用いられる決算書や不動産登記簿謄本からの情報収集と並行して、張り込みや尾行によって隠し口座や隠し預金を調査することができます。

隠し口座がある銀行名が判明すれば、個人で対象の銀行口座の情報を入手することが可能です。

上記の方法は、すでに債権者となっており、債権回収のために資産調査を行う場合に有効な手段です。

2つ目の違いは依頼するためにかかる料金です。

弁護士と探偵を比較すると弁護士のほうが1口座あたりの料金が安くなっています。

しかし、弁護士が隠し口座を見つけ出すことは業務の範囲外なので、「開示されている資産から隠し口座の有無まで調査したい」という場合は探偵に依頼するのがよいでしょう。

裁判で確実に債権回収を行うためには事前の資産調査が重要!

裁判は債権回収を行う上で有効な手段です。

裁判で勝訴判決を受けることができれば、強制執行も行うことが可能になります。

しかし、そもそも債務者に債権を支払うことができるだけの資産がない場合は、裁判で勝訴しても債権を回収することはできません。

絵に描いた餅になってしまわないためには、事前に資産調査を行っておくことが重要です。

まずは資産調査を行い、債権を回収できるだけの資産を保有していることを確認した上で、裁判の提起をしましょう。

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