【投稿日】 2022年4月6日 【最終更新日】 2022年5月10日

2020年4月1日に施行された改正民法では、これまでの「瑕疵担保責任」が廃止されて、代わりに新たに「契約不適合責任」が制定されました。

この改正は、不動産取引にも大きな影響を与える約120年ぶりの大改正と言われています。

この記事では、契約不適合責任とは何か、契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利、契約不適合責任の観点から買主が気をつけるべきポイントなどについて詳しく解説します。

契約不適合責任とは?一体どんな責任?

「契約不適合責任」とは、「売主が買主に引き渡した目的物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合に発生する責任」のことです。

簡単に言えば、目的物が契約内容に適合していなかった場合は、売主が責任を負うということです。

不動産取引においても、売主は売買契約の内容に適合した目的物を買主に引き渡す義務を負っており、もし契約内容に適合しない不動産を引き渡した場合には、売主が「契約不適合責任」を負うことになります。

例えば、売主が雨漏りしていることを知っていながら契約書に明記していなかった場合は、契約内容に不適合な不動産を売ったことになりますので、「契約不適合責任」が発生します。

また、売主が雨漏りしていることを知らず雨漏りがないことを前提とした契約書を作成していた場合も、売主は「契約不適合責任」を負わなければなりません。

なぜならば、たとえ契約書に雨漏りのことについて書かれていなかったとしても、「住むための用」として契約した不動産に雨漏りがあった場合は、「住むための用を満たさない不動産を売った」ことになるからです。

しかし、売主が雨漏りしていることを知っていてかつ契約書に明記している場合は、「契約内容に適合した不動産を売った」ことになりますので、売主は「契約不適合責任」を負うことはありません。

このように、契約書の記載内容によって「契約不適合責任」が発生するかしないかが決まるということに注意する必要があります。

契約不適合責任になった経緯や、かつての瑕疵担保責任との違いとは?

旧民法には「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときに売主は担保責任を負う」という「瑕疵担保責任」がありました。

この旧民法の「瑕疵担保責任」は、「債務不履行責任」とは異なる特別の「法定責任」だと解釈されていたのですが、改正民法では「契約不適合責任」は「債務不履行責任」の一種だと考えられることになりました。

実は、旧民法の「瑕疵担保責任」については、「法定責任説」と「契約責任説(債務不履行責任説)」という2つの見解があり対立していたのですが、今回の改正民法では「契約不適合責任」は「債務不履行責任」だという考え方になったということです。

また、民放改正の特徴として、法体系の標準が国際取引に通用する考え方に変更されたという意見もあり、具体的には今後の不動産取引においては物件に対する調査が綿密に行われるようになり、海外の不動産取引のような分厚い売買契約書になっていく可能性があると言われています。

契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利とは?

旧民法の「瑕疵担保責任」では、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合に買主がとり得る手段は、契約した目的を達成できない場合の「契約解除」と「損害賠償請求」だけでした。

しかし、改正民法では「追完請求」と「代金減額請求」もできるようになり、買主が請求できる権利が増えたことが大きな特徴です。

契約不適合責任では、買主が「追完請求」「代金減額請求」「催告解除」「無催告解除」「損害賠償請求」の5つの権利を持つことになります。

ここでは、買主が売主に請求できる5つの権利について解説していきます。

【1】追完請求権

「追完請求権」とは、「改めて完全な給付を請求する権利」のことで、契約不適合責任の中でも最も重要な請求権です。

引き渡された売買の目的物が、種類や品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、買主が売主に対して完全なもの(目的物の補修、代替物の引渡し、不足分の引渡し)を請求できる権利です。

不動産取引においては、この「追完請求権」は「修補請求権」に該当し「欠陥箇所の修理を請求できる権利」になります。

例えば、雨漏りしていないという契約内容で購入した中古住宅で雨漏りが発生した場合は、売主は契約不適合責任を負うことになり、買主は売主に対して「追完請求権(修補請求権)」に基づく雨漏りの修理を請求できるようになります。

逆に、契約書に雨漏りがあると書かれていた場合は、契約に適合していることになり契約不適合責任は発生しませんので、「追完請求(修補請求)」はできないことになり、買主は自分で雨漏りの修理をしなければなりません。

このように、「契約不適合責任が発生するかしないか」は、「契約書に書かれていたか書かれていなかったか」によります。

この「追完請求権」は、旧民法の瑕疵担保責任にはなかったもので、改正民法で導入されました。

新しく買主が請求できる権利が加わったことにより、売主の責任は瑕疵担保責任よりも重くなったと言うことができます。

【2】代金減額請求権

「代金減額請求権」とは、「買主が相当の期間を定めて追完請求をしたにも関わらず、その期間内に追完されないとき」に認められる「売買代金を減額する請求をする権利」です。

不動産取引においては、「追完請求(修補請求)」をしても売主が修補しないとき、あるいは修補が不能であるときに認められる権利ですが、修理できないことが明らかな場合は直ちに「代金減額請求権」が認められます。

この「代金減額請求権」も旧民法にはなかった権利で、前項の「追完請求権」を補う二次的な請求権ということになります。

【3】催告解除権

「催告解除権」とは、「追完請求をしたにも関わらず売主がそれに応じない場合に、買主が催告して契約を解除できる権利」です。

つまり、売主が「追完請求」に応じない場合、買主は前項の「代金減額請求」とこの「催告解除」のどちらかを選択できることになります。

売主が「追完請求」に応じない場合、買主としては「代金減額請求」では納得できず契約自体を解除して購入をやめたい場合があると考えられますが、このような場合に行使できるのがこの「催告解除」です。

「契約解除」された場合は、その契約はなかったものとなるため、売主は買主に売買代金を返還しなければなりません。

ただし、売主の債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは「催告解除」ができないこととなっています。

【4】無催告解除権

「無催告解除権」は、「契約不適合により契約の目的を達しないときに限って、買主が催告せずに契約を解除できる権利」です。

つまり、「無催告解除権」は、「契約の目的が達成できない」「相手方の履行が期待できない」「履行が不可能である」と考えられる場合に、催告せずに直ちに契約を解除することができるというものです。

旧民法の「瑕疵担保責任」にも、契約の目的を達しないときは解除できるという規定がありましたので、「無催告解除権」は、旧民法の契約解除の権利を引き継いだものとなります。

ただし、「催告解除」と同様に、売主の債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは「無催告解除」ができないこととなっています。

この「無催告解除」がどのような場合に適用できるのかについては、改正民法において次のように定められています。

  • 債務の全部の履行が不能であるとき
  • 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
  • 債務の一部の履行が不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
  • 定期行為の時期を経過したとき
  • 催告をしても契約の目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかなとき

【5】損害賠償請求権

「損害賠償請求権」は、「売主に故意や過失があった場合に、買主が被った損害の賠償を請求できる権利」です。

従来の瑕疵担保責任における「損害賠償請求権」と契約適合責任における「損害賠償請求権」には、次のような相違点がありますので注意が必要です。

瑕疵担保責任の「損害賠償請求」は、売主に故意や過失がなくても責任を負うという「無過失責任」でしたが、契約不適合責任では、売主に帰責事由(責められる落ち度や過失)がない限り「損害賠償」は請求されないこととなっています。

つまり、売主に故意や過失がない場合は、買主は「損害賠償」ができないということです。

また、瑕疵担保責任の「損害賠償請求」の範囲は「信頼利益」に限られましたが、契約不適合責任の「損害賠償請求」では「履行利益」も含まれるようになりましたので、売主が賠償しなければならない損害の範囲が格段に広くなりました。

ここで、「信頼利益」とは契約締結に向けての準備費用(登記費用など)のように、契約が不成立や無効となった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害のことです。

また、「履行利益」とは、転売利益や営業利益などのように、契約が履行された場合に買主が得られたであろう利益を失った損害のことです。

過去の事例から読み解く!不動産の買主が契約不適合責任の観点から気をつけるべき4つのポイント

前述のように、改正民法の「契約不適合責任」では、従来の瑕疵担保責任よりも買主が請求できる権利が増えています。

このことから不動産取引においても、買主が請求できる権利が増えているということになるのですが、だからといって安心はできません。

それは契約不適合責任が「契約の内容に適合しない場合に発生する責任」だからです。

契約書の記載内容をしっかりとチェックしておかないと、かえって買主の不利益になってしまうということにもなりかねません。

ここでは、実際の不動産取引において、買主が契約不適合責任の観点から気をつけなければならない重要なポイントについて説明します。

<ポイント1>一般的な責任追求可能な期間との比較

1つ目のポイントは、一般的な責任追求可能な期間と比べて極端に短くなっていないかということです。

契約不適合責任には「契約不適合を発見後、1年以内に売主に通知をしなければならない」という時間制限があります。

つまり、不具合を発見してから1年以内に売主に通知をしなければ、買主は契約不適合責任で売主を請求できる権利を失うということです。

しかし、売主によっては時間制限を「不具合を発見後6ヵ月以内」などに変更して、契約不適合責任を負う期間を短縮していることがあります。

さらには、「納品後、6ヵ月以内」までというように、責任の起算点を「不具合発見後」ではなく「納品後」に変更しているケースもあり、この場合だと買主が売主に契約不適合責任を請求できる時間制限がさらに短くなってしまいます。

契約を結ぶときは、売買契約書を隅々までしっかりと読んで、時間制限が極端に短くなっていないかを必ずチェックするようにしましょう。

<ポイント2>契約不適合責任の重さによる代金への影響

2つ目のポイントは、契約不適合責任の重さによる代金への影響を考慮するということです。

例えば、契約前に中古住宅の木部に腐食があることが判明したため、売主が相応の費用をかけてリフォームを行ったような場合、購入代金が大きく上昇してしまいます。

しかし、買主によっては、物件の損失(木部の腐食)分だけ減額してもらった方が良いという場合もあるはずです。

あまりにも契約不適合責任の重さを警戒しすぎると、逆に購入代金などに跳ね返ってくる可能性があり、買主にとっての不利益となる可能性にも注意しましょう。

<ポイント3>その他特約・容認事項

3つ目のポイントは、その他特約・容認事項を入念にチェックするということです。

契約不適合責任が発生するかしないかは、契約書に書かれていたか書かれていなかったかによります。

しかし、契約書に書かれていなかった場合でも、改正民法の規定や社会通念によって契約不適合責任が発生することもありますので、売主としては特約や容認事項に極力免責となるような記載をしておこうとします。

このように、契約不適合責任は契約書のどこかに記載しておくことによって免責ができますので、特約や容認事項などについても入念にチェックすることが大切です。

なお、あまり多くはないですが「売主の契約不適合責任を全面的に免責する」という特約が設けられている場合もあります。

<ポイント4>書面には出てきづらい欠陥

4つ目のポイントは、書面には出てきづらい欠陥を事前に調査しておくことです。

近隣からの騒音、ゴミ屋敷からの虫被害、隣家から伸びる木の枝が邪魔などの近隣トラブルや、3年以内の自殺や殺人事件などによる心理的瑕疵は契約不適合責任が認められる可能性が高いと考えられます。

しかし、購入時には判明しなかった欠陥、自然死や3年以上前の自殺・殺人事件による心理的瑕疵などは契約不適合責任が認められないこともあり、売主とのトラブルに発展するケースが多いと言われています。

そのため、契約書に書かれていない場合でも、主に「近隣トラブルの有無」「心理的瑕疵の有無」「周辺環境(暴力団事務所の有無、ゴミ屋敷などの有無など)」「過去の居住者の経歴」などについてはリスクヘッジとして調査しておき、契約時にしっかりと売主に提示することが無難です。

このような目に見えない近隣の人間関係や周辺環境、過去の経歴などは一般的なホームインスペクションでは調査することができませんので、探偵事務所などに依頼することがおすすめです。

契約不適合責任を理解し、しっかりと事前に調査しておこう!

この記事では、2020年4月1日の改正民法において導入された契約不適合責任に関して、不動産取引の際に買主が気をつけるべきポイントについて解説しました。

土地や建物などの不動産取引では高額なお金が動きますので、安心して取引が行えるように売買契約書を取り交わします。

特に中古物件の場合は、契約後に欠陥などの不具合が見つかったりすると、時間やお金が余計にかかってしまったり、トラブルに発展したりすることが多くなりますので、契約前にきちんとした調査を行い、契約時にしっかりと売主と取り決めをしておくことが重要です。

土地や建物に関する欠陥や不具合はホームインスペクションを利用することによって把握することができますが、周辺の環境や近所トラブル、犯罪被害歴、過去の住人については自分で調査することも難しいものです。

これらの問題は、将来的にトラブルに発展するケースが多いとも言われていますので、探偵事務所などを活用して事前に調査することをおすすめします。

不動産購入前にこのような一般的ではない事項についても調べておくと、リスクヘッジや安心につながります!

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