【投稿日】 2022年10月15日 【最終更新日】 2022年10月25日

記憶障害とはどのような障害なのでしょうか。

身近なものでは、認知症になった方が記憶障害を併発し、今まで覚えていたことを忘れてしまうことがあります。

記憶障害により覚えていたことを忘れられてしまうと、日常生活に支障をきたしてしまいます。

そこで今回は記憶障害がどのようなものであるのかを解説します。また記憶障害にどんな種類のものがあり、記憶障害の周囲にいる人はどのように対応すべきなのか、どのような環境づくりをすべきかについても解説します。

もし身近に記憶障害を持っている方や、家族に記憶障害の方がいる人がいる場合に参考にしてみてください。

記憶障害とは?

「そもそも記憶障害とはどういうことなのか」について解説します。

記憶障害とは、過去に自分が体験した記憶や覚えていたことを忘れてなくしてしまったり、新しく何かを覚えられなくなったり、新しいことが覚えられないことです。身近な記憶障害の例として、高齢者の認知症進行に伴う物忘れ等が挙げられます。

認知症の方には、新しい出来事、つまり決まり事やルーティーンなどが覚えられなかったり、毎日会っている人の名前や顔が覚えられなくなってしまうといった症状が表れます。左記は認知症の進行に伴い、さらに悪化する恐れがあります。

記憶障害が起こる理由

先に解説したように、代表的な記憶障害の原因として認知症があります。

他にも、一例として以下のような要因が挙げられます。

  • 加齢、認知症、認知障害(MCI)
  • うつ病(記憶障害を自覚できることが多い。他に睡眠障害など重大な疾患を抱えることがある)
  • 脳の病気(脳卒中、脳外傷、低酸素脳症を原因とする高次脳機能障害)
  • ストレスが引き起こすPTSD(ストレスで頭が一杯になり、他のことに意識が向かなくなってしまう。ただ重度でないストレスの場合、逆に記憶力が高まることもある)
  • 慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下、ビタミンB12欠乏症、アルコール過剰摂取

特に、MCIと呼ばれる軽度認知障害は発病してしまうと3~5年以内には認知症を発症してしまうとされています。軽度認知障害の場合、日常生活に必要な注意力などはなくさないものの、直近の記憶や約束事などを忘れてしまうことがあります。

また加齢による記憶障害は必ずしも認知症やアルツハイマー病と結びつくものではなく、記憶力の低下と表現されます。記憶力が低下すると、新しいことを思い出す、および保存するのに時間がかかります。このため認知症のように、大切なものをどこに置いたかなどを忘れてしまうこともありますが、認知症のように実生活に支障を来してしまうほど思考能力が失われることはないとされています。

そもそも「記憶」とは?

それでは記憶とは何を指すのでしょうか。本章で「記憶」という言葉が意味することについて解説しますので、改めて把握しておきましょう。

記憶とは、一度覚えた情報です。さらに、また必要な時に思い出せる、情景などのような形で再生できるという特徴があります。脳の海馬が記憶を司ります。

人間は常に新しい情報を覚えていくことができます。しかし情報とは刺激であり、新しい情報の刺激が弱ければ、その当時は覚えていてもすぐに忘れてしまうということが起こりえます。

記憶できることは、以下のように人間の持つ五感と直結しています。

  • 視覚:目で見る
  • 聴覚:耳で聞く
  • 触覚:皮膚で触る
  • 嗅覚:鼻で嗅ぐ
  • 味覚:舌で味わう

上記「五感」を通じて体験したことはまず「覚える」プロセスを経て、次にその覚えた内容を忘れずに保存し続け、最終的にいつでも思い出して再生できるようになります。左記が記憶の特徴を細かく分解したものです。

記憶はよく物を保存するための壺や箱に例えられます。その入口には情報を取捨選択するための手や触覚のようなものがあるものの、認知症などにより記憶障害の進行が進むと、それら情報の取捨選択器官が衰えてしまい、情報を壺の中に貯められなくなったり、情報を記憶として保管できるはずの壺事態が壊れてしまうとされています。

記憶の種類

記憶は種類により以下4つに分類できます。

  • 記憶の持続性が関わる種類:短期記憶(即時記憶)、長期記憶(近時記憶・遠隔記憶)、展望記憶など
  • 情報の内容が関わる種類:意味記憶、エピソード(出来事)記憶、手続き記憶など
  • 情報の形式が関わる種類:言語的記憶、視覚的記憶など
  • 記憶のしかたが関わる種類:陳述的記憶(脳で記憶)、手続き記憶(体験的に記憶)など

さらに、以下のように長期記憶と短期記憶を軸とした分類の仕方もできます。

長期記憶
  • 陳述的記憶(言葉として再現できる)→意味記憶(言葉の意味など)→エピソード記憶(自分の経験した体験・思い出など)
  • 非陳述的記憶(言葉にできない)→手続き記憶(車の運転など身体が覚えている)
短期記憶
  • ワーキングメモリ(作業記憶、一時的に覚えている記憶)

長期記憶はなかなか忘れにくく、短期記憶は一定期間がすぎると忘れやすいという特徴があります。短期記憶による記憶の保存期間は数十秒~1分とすらなることも。

短期記憶と長期記憶は、脳の中で異なる場所に保管されます。特に長期記憶は、脳の領域を多く使って保存されることになります。海馬は、そんな記憶を種類ごとに分類し、既存の記憶と関連付ける機能を持っています。

その中においては短期記憶が長期記憶として保管されることもあります。これは記憶の定着と言われるように、短期記憶が頻繁に思い出されて利用された結果、長期記憶として残り得るよう属性が変えられたとみられます。

記憶障害にはどんな種類・症状・行動傾向があるの?

本章では記憶障害の種類について解説します。記憶障害の種類を知る上では、前章で解説した「記憶の種類」を把握しておく必要があります。

記憶の種類をベースとして記憶障害を分類すると、下記の表のようになります。

記憶障害の種類 該当する記憶の種類(前章も参照) 症状と例・行動傾向
短期記憶障害す 持続性 【何が起こる?】脳において海馬(新しい記憶をしまっておく機能を持つ)の機能が低下
【症状】数10秒~1分程度の短期記憶に障害が生じる
【症状例】
・その日の日付や曜日を忘れてしまう、思い出せない、間違える
・同日中に同じことを複数回たずねる
・自分で置いた物品をどこに置いたか思い出せない
・台所の火などを点火したまま忘れてほったらかしにしてしまう
※認知症の初期に起こりがち。新しいことが覚えられない、たった今のことを忘れる
長期記憶障害 持続性 【症状】数分~数ヶ月程度の最近の期間において、以前記憶した内容に消失や間違いが起こる
【症状例】
・かつて通っていた教育機関の名称、勤め先の名称、現在の職業、近親者の名前・顔などを忘れる
・一般的な事項を忘れる(有名人の名前、祝日の意味や名前、親族が存命かどうか等)
※認知症の進行次第で長期記憶障害が起こる。毎日共に過ごしていた家族の顔や名前ですら忘れてしまうのは長期記憶障害の影響
エピソード記憶の障害 情報の内容 【症状】かつて実際に自分が体験したはずの内容・エピソードについての記憶に起こる障害
【症状例】
・直近の数日に体験したこと、進学前に体験した出来事、生活体験、家族旅行ほか、実際に起きた出来事そのものの存在を忘れる
・学歴や職歴など、自分に関する情報を忘れる
※その個人を形成していた重要な部分を忘れてしまうこととなると、周囲との話が噛み合わなくなる
意味記憶障害 情報の内容 【症状】共通言語ともなる名詞(花や虫、動物の名前)や常識(自然の摂理・著名人や歴史的人物の名前)など、これまでの人生において蓄えたはずの知識に起きる障害
【症状例】
・かつて知っていたはずの名詞およびその意味などを思い出せない
・支持語(あれ・それ)ばかりの会話になってしまう
※共通項目を忘れてしまうことにより、意思疎通自体が難しくなる
手続き記憶障害 情報の内容 【症状】かつて能動的に体験した学習・反復練習などによって身に付いたはずの技術や、体で正確に覚えていたはずの行為・作業などに障害が起こる
【症状例】
・自転車の乗り方を忘れる、道具の使い方・楽器の弾き方を忘れる、料理・洗濯などの手順を忘れる
・今までできていたはずの行為自体ができなくなる
※認知症となっても、学習により身につけた手続き記憶は忘れにくいことも

認知症による記憶障害の進行とはどのようなもの?

認知症が進行すると、記憶障害もより悪化するとされています。

順番としては、短期記憶→エピソード記憶→意味記憶→手続き記憶、という順番で失われていきます。

上記は段階が次に移り変わるというものではなく、短期記憶の覚えやすさも悪くなりながらさらにエピソード記憶も思い出せなくなり、手続き記憶を忘れてしまう頃には初期症状はより悪化していきます。

記憶障害の対処法とは?

記憶障害の対処法や治療法はまだ確立されていません。

対症療法が可能なものと、そうでないものに分類されます。

例えば、ビタミン欠乏症が疑われる記憶障害なのであればビタミンを補充する治療が行われます。甲状腺機能低下症による記憶障害なのであれば甲状腺ホルモンを追加します。

ほかうつ病なのであれば、記憶に影響を与えないような抗うつ剤などを用いた薬物療法

精神療法の手段が選ばれるといった、それぞれ記憶の障害に直接働きかけるというよりは、その前の原因を潰していくような形での治療となっています。

対症療法が効かなく、根治できないとされている記憶障害の代表例は認知症です。現在メインの治療法とされているものは抗認知症薬(ほか抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬)などを用いた薬物療法、薬物を用いない療法では理学療法や作業療法でのリハビリテーション体験、音楽療法、回想法です。

記憶障害の方への対応、支援方法とは?

記憶障害を引き起こしてしまった本人は、もともとできていたはずのことができなくなっている状態です。本人の身の回りや社会との接し方も、もともとできていたことがずっと持続できるという前提がベースになっていたはずです。

つまり本人は非常に不安を抱えており、また不安定極まりない状態であると言えます。そこで記憶障害になってしまった人の周りの人は、当人が抱えている記憶障害という病気についてできるだけ正確に理解して、きちんと対応してあげられるようにすべきでしょう。

そこで本章では、記憶障害になってしまった身近な人に対してどんなアプローチをすべきかについて解説します。

【支援方法1】記憶障害における不安を理解し、共感する。現状を否定しない

記憶障害になってしまった人は、正確に状況を判断した発言ができなくなります。このため、記憶障害ではない人から見れば的外れであったり支離滅裂で一貫性がまるで見られない発言内容となってしまうこともあるでしょう。

そこで、記憶障害になってしまった当人の発言内容をひとつひとつ訂正し、指摘してあげつらうことは推奨されません。なぜなら本人は自分の発言内容を正しいと思っているためであり、場合によっては周囲の人々が自分に対して悪意を持っているなどと思いこんでしまい、怒りをぶつけたり混乱したり、最悪のパターンでは別な病気を発病してしまう可能性もあるからです。そうなってしまっては、場の混乱や不和は免れず、「人間関係のもつれ」など二次的な被害が増えてしまうことでしょう。

上記のようにならないために、たとえ本人の言動が間違っていてもできるだけ合わせていくことが肝要になります。これは本人の主観においては、実際にはどんなに正しい事実であったとしても記憶が抜け落ちたのであれば「嘘情報」となってしまうためです。

当たり障りのない範囲で本人の言動や行動を認めてあげることで、まず不安の解消につながります。まずは「記憶を正してやる」ことが必ずしも良いことではないのだと切り替え、それまでの思い込みを一旦しまいましょう。記憶障害を発症しても、本人の人生は続きます。話を合わせてあげれば、今後の人生を歩む上での安心や自信を芽生えさせてあげることができるでしょう。

【支援方法2】本人が日常を過ごしやすいようにしてあげる

本人が記憶障害を抱えている以上、複雑な行動は取れません。

つまり本人が行動する1日の予定をごく簡単にしてあげないと、様々なトラブルを発生させてしまう原因となってしまいます。

そのためには、記憶障害でも普通に生活できるような環境を整えてあげることが必要です。

例えば本人が暮らす住居をできるだけ簡素化し、かつ必要最低限の物がすぐ分かる範囲にある状態となるように環境を整えてあげた上で、1日の予定をごく簡単に始まり終わるものとしてあげるなどが考えられます。このことで、本人の不安を解消し、混乱の発生源を絶ちます。

このため、気分転換だからと模様替えなどをしてしまうことは絶対に避けましょう。必要なものが置いてあるはずの場所が変わってしまったり、覚えづらくなり混乱の原因にしかならないためです。

簡単なことであれば、繰り返すことで新しいことでも覚えられる可能性があります。かんたんなことであれば、繰り返しの説明も苦ではなくなるはずです。

【支援方法3】各種グッズを利用して生活をサポートする

記憶障害となってしまった人の生活を支えるためには、本人や周りの努力も必要となることもありますが、便利なグッズなど使えるものは何でも取り入れていくぐらいの精神が肝要です。

細かく言えば、例えばスマートフォンの目覚まし機能を使うなど。目覚ましを、何かをしなければならない時間になるようにした上で、メモ欄にto do事項を書いてあげることで、最悪一人でいる場合でも自分が何をすべきかを思い出せる可能性が高まります。

他にも、ます目の大きなカレンダーを使い、予定を書き込んであげるなどもいいでしょう。上記のスマートフォンのアラーム機能と予定を連動させてあげることも効果的です。

スマートフォンの目覚ましにはさらにスヌーズ機能がついていることも多いです。スヌーズ機能は一度アラームが鳴ったらもう終わりではなく、数分後にすぐリマインドしてくれるため、抜け漏れを防ぎやすくなります。

またどこかへ行く曜日や時間を変えないで、毎回同じ曜日・時間にしてあげることで、覚えやすくなるという効果も期待できます。

このように世の中には「記憶障害の本人に気づきを与える」ための便利なグッズが様々あるため、予算と相談の上検討してみてください。「気づきの多い環境」こそ、記憶障害になってしまったかた本人の平穏な生活のために必要と言えるでしょう。

【支援方法4】かかりつけ医をつくり、相談する

認知症であれば、専門医が症状の進行度をより正確に示してくれると期待できます。昨今では認知症の進行を遅らせるための薬が開発されたこともあり、実際に処方されることもあります。

主治医となってくれるかかりつけ医を持つことができれば、医学による適切な治療や現在の環境を少しでもよくするための助言を受けられる可能性が高まるでしょう。

記憶障害には様々な種類がある。一人で抱え込まず専門機関や制度の利用を

記憶障害について解説しました。記憶障害は、記憶の種類に応じて様々な障害が発生します。そのタイプにより、記憶障害のもたらす問題の種類も異なってきます。

中でも、長期記憶障害や意味記憶障害のような「共通事項として知っていることが前提となり会話が進むもの」を障害で失ってしまうと、そのことが生活にもたらすダメージは深刻なものとなります。

周囲が対応するためには、記憶障害の種類によってアプローチ方法も異なりますが、認知症の副作用としての記憶障害などは薬などを用いても回復が見込めないこともあります。

そのように治療方法が確立されていない記憶障害のケースに対応するには体力も精神力も必要になりますが、一人だけで抱え込まず医療機関や専門機関、制度を積極的に利用することで対応していきましょう。

失踪や人探しなら探偵事務所SATにお任せください!

失踪・行方不明者の捜索は何よりスピードが重要です。警察に届け出てから月日が経つにつれて、発見確率は低くなってしまいます。

失踪・行方不明が発覚した場合は、まずは探偵事務所SATにご相談ください。

警察に届け出てから月日が経ってしまっているという場合などであっても、ご依頼者のご要望に合わせて、探偵業法に基づきあらゆる調査手法を用いて、捜索を行います。

メール、もしくはお電話にてご相談ください。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00

※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。