【投稿日】 2022年11月19日 【最終更新日】 2022年11月21日
2022年10月13日に、消費者庁が「ネットワークビジネス」で有名な日本アムウェイに対して勧誘などの一部業務を6カ月間停止するという命令を出したという報道がありました。
ネットワークビジネスは正しいやり方であれば合法であり、特に問題ありません。しかし、中には、違法行為を平気で行っている悪質な団体やグループがあるのも事実です。
相手の将来への不安や、恋心、向上心などにつけこみ、知らず知らずのうちにネットワークビジネスに加入させられている、などその手口は時代に合わせて巧妙化しています。
国民生活センターに寄せられるネットワークビジネス(マルチ商法)に関する相談件数は、次のようにパンデミックや規制や摘発の強化により2020年、2021年落ち着きを見せてはいますが、過去の傾向から見て、今後増えていく可能性も十分に考えられます。
年度 | 件数(件) |
---|---|
2010 | 12,603 |
2011 | 9,749 |
2012 | 9,887 |
2013 | 9,793 |
2014 | 10,457 |
2015 | 11,182 |
2016 | 11,805 |
2017 | 11,415 |
2018 | 11,005 |
2019 | 11,708 |
2020 | 10,175 |
2021 | 8,767 |
参考元:国民生活センター「各種相談件数や傾向」、消費者庁「第1部 第1章 第4節(5)マルチ商法に関するトラブル」
今後悪質なネットワークビジネスに知らず知らずのうちに騙されてしまう可能性も決して0ではないのです。
そうならないためにも、まずは悪質なネットワークビジネスに関する正しい知識や対処法を身につけておきましょう。
この記事では、「ネットワークビジネス」とはそもそもどういうものなのか、また勧誘の最新手口や断り方、もし契約してしまった場合のキャンセル方法などについても詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
ネットワークビジネスとは何?
「ネットワークビジネス」とは、会員が口コミで商品を販売していくビジネス手法のことで、「MLM(Multi-level marketing:マルチ・レベル・マーケティング)」または日本語では「マルチ商法」と言います。
会員は新しい購入者を会員として勧誘し、勧誘された会員はさらに別の人を会員として勧誘していくというビジネスモデルです。
会員組織はピラミッドのような構造になっており、一般的な会社が自社製品を販売する場合は、広告によってユーザーに知ってもらい購入につなげますが、「ネットワークビジネス」では広告宣伝費をかけずに会員の口コミなどを通じて認知してもらいます。
「ネットワークビジネス」は、150年ほど前に始まったアメリカのエイボンによる香水販売が起源で、その後1959年には「ネットワークビジネス」で有名なアムウェイが創業しました。
日本には、1963年にアメリカのタッパーウェアが進出し、その後アムウェイが参入しました。
現在、日本だけでも1,000社以上の「ネットワークビジネス」の会社があると言われており、大きな市場を形成しています。
日本における代表的な「ネットワークビジネス」としては、日本アムウェイ(日用品・栄養補助食品など)、ミキプルーンで有名な三基商事(栄養補助食品・化粧品など)、ノエビア(化粧品や栄養補助食品など)などがあります。
ネットワークビジネスは合法?
「ネットワークビジネス」は、特定商取引法では「連鎖販売取引」に分類される合法的な販売方法です。そのため、ネットワークビジネス自体が悪い訳ではありません。
しかし、その販売方法が「ねずみ講(無限連鎖講)」と近いイメージがあることなどから、特定商取引法による厳しい規制を受けていることも事実です。
例えば、事前に勧誘者の氏名と業者の氏名を名乗ること、商品の種類などを告げることなどの義務があり、勧誘の際には「事実を告げないこと」「事実と違うことを告げること」が禁止行為とされています。
違法な「ねずみ講」との違い
「ネットワークビジネス」も「ねずみ講」も、勧誘によって会員をピラミッド状に増やしていくことから、その違いが良く分からなかったり、混同したりしている人もいます。
「ネットワークビジネス」と「ねずみ講」の大きな違いは、商品やサービスの有無です。
「ネットワークビジネス」では、化粧品やサプリメントなどの販売する商品やサービスが存在しますが、「ねずみ講」の場合は販売する商品やサービスは存在しません。
「ネットワークビジネス」でも会員費が必要な場合もありますが、会社は商品やサービスの売り上げによって収益を得ることができますので、会員費があったとしても非常に低額です。
これに対して、「ねずみ講」は会員費だけが収益源ですから、会員費は高額となります。
なお、表向きは「ネットワークビジネス」の形態を取っていても、取り扱う商材の価値が価格と大きくかけ離れているような場合には「ねずみ講」としての違法性を問われることがあります。
ネットワークビジネスの報酬のしくみ
「ネットワークビジネス」には販売する商品やサービスがあり、会社はその販売によって収益を上げることができますが、会員は商品を販売したり新しい会員を勧誘することによって「紹介料」という報酬を得ることができます。
ここでは、「ネットワークビジネス」の基本的な報酬のしくみについて説明します。
商品やサービスの販売によって差額を得る
「ネットワークビジネス」を行っている会社の会員になると、その会社の商品やサービスを割安で購入することができるようになり、購入した商品を知人や友人などに販売することによってその差額を収入とすることができます。
しかし、これは「ネットワークビジネス」におけるメインの収入ではありません。
「ネットワークビジネス」で成功した人や成功をもくろむ人は、次に説明する新規会員を勧誘することによる「紹介料」を得ることを目標としています。
新規会員を勧誘することによって紹介料を得る
「ネットワークビジネス」では、知人などを新規会員として勧誘し入会させると「紹介料」を得ることができます。
また、自分が所属する会員のピラミッド内での売上高に応じて「還元報酬」を得ることができ、売上高が大きくなるほど還元率が高くなります。
これらの「紹介料」や「還元報酬」は、働かなくても得られる「不労収入」ですので、楽して儲けるためにも、新規会員を勧誘することに必死になってしまうのです。
ネットワークビジネスの勧誘の手口と断り方
「ネットワークビジネス」にはまってしまうと、先述のように新規会員を勧誘して入会させることによる「紹介料」と、自分のピラミッド内の売上高が増えることによる「還元報酬」の増加のために必死に勧誘行為を行うようになります。
もしこのような勧誘行為を受けた場合の最も良い対処法は「話を聞かないこと」です。
知っておこう!ネットワークビジネスの勧誘の手口
「ネットワークビジネス」の勧誘の手口の代表例と最新の手口を紹介しますので、もしこのような手口がみられた場合は、注意をすることはもちろんですが、毅然として断ることも大事です。
手口1:合わせたい人がいると言って勧誘される
「ネットワークビジネス」の勧誘手口で最も多いのが、この「会わせたい人がいる」と言って誘われることだと言われています。
この場合「何がすごい」のかを聞いてもちゃんとした答えが返ってくることはなく「とにかく会ってみればわかる」とか「私を信じて会ってみて」などと言われます。
この相手が親しい友人や近所の人だったりすると断りにくく、一度だけなら会ってみようという気持ちになりやすいのですが、もし会うとすれば相手は2人、こちらは1人となりますので、2人でしつこく勧誘されると断り切れなくなる可能性があります。
手口2:セミナーやホームパーティーへ誘われて勧誘される
「ネットワークビジネス」の勧誘手口で次に多いのはセミナーやホームパーティーへの参加の誘いです。
セミナーの場合は、投資セミナーや自己啓発セミナーの場合が多いのですが、前項と同様に何のセミナーなのか、誰のセミナーなのかについては答えてくれず、「とにかく一緒に行こう」「すごい人の話が聞けるチャンスだ」などと言われます。
このように、はっきりしないセミナーに誘われた場合は「ネットワークビジネス」への勧誘を疑った方が良いと思われます。
また、近所の人や知人などからホームパーティーに誘われるケースもあります。
ホームパーティー自体に怪しいと感じることは難しいかもしれませんが、その相手との親しさの程度から判断したり、即答を避けて別の人からの情報をもとに参加するかどうかを考えてみるなどが必要でしょう。
もし、参加することになった場合は、表面的にはパーティーですが「ネットワークビジネス」の商品の紹介などが織り込まれますので、その時点で勧誘だということが分かるはずです。
数人に囲まれてしまうと誘いを断る自信がないという人は、少しでも怪しいと感じたら参加しない方が無難です。
手口3:必ずもうかると言って誘われて勧誘される
「必ずもうかる」「絶対もうかる」などという誘い文句も良く使われます。
ちなみに、投資商品などの場合、「必ずもうかる」「絶対もうかる」と言って勧誘するのは、特定商取引法で禁止されていますので、違法行為です。
このパターンは比較的学生の場合に見られ、友達や先輩から誘われるケースが多いようです。
冷静に考えればわかることですが「必ず」とか「絶対」ということはあり得ないことですので、この点を強調する儲け話には、最初から話を聞かないことが大切です。
手口4:「アフィリエイト」と言い換えて勧誘する
アフィリエイトとは、自分のブログやサイトに広告を掲載し、その広告経由で販売された商品やサービスの一部を報酬として受け取ったり、広告経由での会員登録の対価として報酬を受け取ったりすることを言います。
アフィリエイトとネットワークビジネスは全く異なるビジネスモデルですが、「他の人に紹介して商品やサービスを購入してもらったり、会員登録をしてもらった対価として報酬を受け取る」という点で、アフィリエイトとネットワークビジネスは非常に似ているため、ネットワークビジネスやマルチ商法とは言わずに「アフィリエイト」と言い換えて勧誘を行っている場合もあります。
ネットワークビジネスやマルチにはいいイメージがないという方も多いので、最近ではネットワークビジネスやマルチという言葉は出さず、アフィリエイトという言葉を使う場合が増えています。
手口5:SNSのDMから仲良くなり、勧誘する
パンデミックでセミナーやホームパーティーなど代表的なネットワークビジネスの勧誘手法が下火となった今現在主流となっているのが、TwitterやTikTok、Facebook、Instagramなど、あらゆるSNSを使った勧誘です。
内容は「フォローありがとうございます」「お友達になってください」など、ごく普通なものから「今だけ教えます!」みたいなお得情報、イベントやボランティア活動への誘いなど実に様々ですが、共通点は早い段階で距離を詰めてくるということです。
SNSなどで突然見ず知らずの人からダイレクトメッセージが届き、早い段階で「会いませんか」「今度一緒にイベントに参加しませんか」「Zoomで話しませんか」など距離を詰めてくる場合には要注意です。
手口6:街頭での何気ない声かけで関係性を作り、勧誘する
町中で「アンケート調査をお願いします」だったり、「この辺りでおすすめのお店知りませんか?」だったり、何気ない声かけからきっかけを作り、その後LINEなどで距離を詰めてくるという手口もあります。
共通点は、LINEやメールアドレスなど連絡先をどこかのタイミングで聞かれたり、書かされたりするという点です。
通常のアンケート調査や道やお店を聞く場合には、相手と連絡先交換なんてしないのが普通です。もしそういった連絡先を聞かれる場合には注意しましょう。
ネットワークビジネスの断り方
「ネットワークビジネス」への勧誘の手口を紹介しましたが、自分にその気がないのであれば断り方の鉄則は次の3つです。
断り方1:毅然とした態度ではっきりと断る
「ネットワークビジネス」に関わりたくないと思ったときの最善策は、はっきりとストレートに断ることです。
人間関係が壊れるのが怖いと思って入会したりすると、それ以上のダメージを負うことになりかねません。
そもそもその相手が人間関係を重視しているのであれば、紹介料欲しさに友人を勧誘したりするはずはありません。
毅然とした態度で断ること、これが一番の断り方です。
断り方2:時間を空ける・距離を取る
ファミレスなどで友人と二人で話しているときなどに、急に「ネットワークビジネス」への勧誘を受けた場合は、トイレに行くなどして時間を空けたり、その場を離れて距離を取ることも有効です。
一旦その場を離れることによって、冷静に判断できるようになるでしょうし、場合によっては信頼できる他の友人を呼びだして同席してもらうことなどもできるでしょう。
断り方3:信頼できる第三者に相談する
基本的には自分で毅然とした態度で断ることが一番ですが、そういうことが苦手な人もいるかも知れません。
そういう場合は信頼できる他の友人や先輩、親などに相談して断ってもらいましょう。
人を介することによって、自分の気持ちを伝えることができるでしょうし、相手もそれ以上強く誘ってこなくなる可能性があります。
また、周囲にそういった友人や先輩、親などがいなければ、弁護士や国民生活センターなどに相談するのも1つの手です。
自分で断ったり、時間を空けたり、距離を取ったりすることができない場合には、信頼できる第三者に相談して助言をもらうのがおすすめです。
ネットワークビジネスのキャンセル方法
「ネットワークビジネス」は、「特定商取引法」において「連鎖販売取引」として規定されており、法律に則ってキャンセルすることができます。
独立行政法人「国民生活センター」では「ネットワークビジネス」などによる消費者被害の相談に応じていますので、具体的な対策方法などについてアドバイスをしてくれます。
電話で「消費者ホットライン:188」に電話してみてください。
キャンセル方法1:クーリングオフ
「ネットワークビジネス」の契約書面を受け取った日から数えて20日以内であれば「クーリングオフ」によって契約解除をすることが可能で、商品は業者に返還し、支払ったお金は全額返金してもらうことができます。
「クーリングオフ」は、消費者がその意思を示した時点から効力が生じますので、日本郵便の「内容証明郵便」や「配達証明」を利用して、いつ書面を発送したのか、いつ書面が相手に届いたのか証明できるようにしておきましょう。
また、「クーリングオフ」の場合は、契約解除に伴う違約金を支払う必要はなく商品の返還に要する費用も業者負担となります。
キャンセル方法2:契約意思の取り消し
次のような場合は「特定商取引法」による「取消権」によって、クーリングオフ期間が過ぎていても契約解除が可能です。
- 脅迫されて契約させられた場合
- 契約時に「クーリングオフができない」という「不実告知」を受けていた場合
- 契約時に販売業者の「不実告知」や「事実不告知」によって誤認があった場合
- 契約書などに虚偽があるなど明らかな不備があった場合
キャンセル方法3:中途解約
入会して1年経っていないなどの一定条件を満たしていれば、商品販売契約を中途解約し、一定金額を返金してもらうことができます。
ただし、中途解約の場合、解約料(違約金)が必要となることがあるため注意が必要です。
キャンセル方法4:専門家への相談
クーリングオフや契約意思の取消、中途解約などがよく理解できない場合や、自分でこれらを行うのが怖いという場合には、弁護士や国民生活センターなど専門家に依頼するのがおすすめです。
よく、ネットワークビジネス運営会社や、ネットワークビジネスの団体などに相談したりする人がいますが、当事者に相談をしても「法律ではこうなっているから難しいです」など、都合よく説得されてしまうだけなので、第三者の専門家への相談が一番です。
すでに国民生活センターに同様の相談が寄せられているのであれば、対処法などをアドバイスしてもらえる可能性がありますし、法テラスなど弁護士に無料で相談ができる公的機関もあります。
ネットワークビジネスへの勧誘に対しては毅然として断ることが一番!
この記事では、「ネットワークビジネス」とは何か、勧誘の最新手口や断り方、もし契約してしまった場合のキャンセル方法などについて解説しました。
日本には1,000社以上の「ネットワークビジネス」の会社があるということですので、中には怪しい詐欺まがいのものが紛れている可能性もありますし、そもそも誰もが絶対もうかるというようなことはないはずです。
このような「ネットワークビジネス」との関係を持たないための一番の方法は、毅然とした態度で勧誘を断ることです!
悪質なネットワークビジネスに関する調査や、証拠収集なら探偵事務所SATまで!
ネットワークビジネス自体は合法ですが、やり方として悪質かつ違法な手口での勧誘が増えています。
もし、こうした悪質なネットワークビジネスで不利益を被っていたり、今後裁判を検討しているのであれば、そのネットワークビジネスの団体が悪質な違法行為を行っているという調査や証拠収集が重要です。
探偵事務所SATには、警察OBの探偵が在籍しており、ネットワークビジネスなどに関する調査や証拠収集を、探偵業法に基づくあらゆる手法で行っています。
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