【投稿日】 2022年9月21日 【最終更新日】 2022年9月28日

近年、施設の地震リスクに対する関心が高まり、地震リスクの定量的評価についても注目が集まっています。

日本は地震の多い国となっているため、自身に対する意識は常に持ち合わせている必要があります。私たちが生活している中で、特に、建築基準法などで定められた耐震設計は世界の基準から見てもかなり高い水準を誇っています。

しかし、耐震技術が卓越していても、予想だにしていない大地震が来てしまった場合には被害が甚大なものになることは明確です。大きな地震を過大に意識するのではなく、そのリスクを考えて合理的に評価しようという考え方が近年では普及してきています。

その地震リスクというものは一体どういったものなのでしょうか。専門用語等を出来るだけ避け、わかりやすく解説していきます。

地震リスク評価(PML評価)とは、予想最大損失率のこと!

地震リスク評価とは、地震リスク分析における予想最大損失率のことを指します。

英語にするとPML(Probable Maximum Loss)と言われています。

これは、アメリカで発生した保険情報の一つです。

もともと火災保険の保険料などを考える資料として生まれました。

地震や火災以外の各種損害にも同じ概念が存在する。

これは、元来「対象施設あるいは施設群に対し最大の損失をもたらす地震(PME)が発生し、その場合の90%信頼性水準に相当する物的損失額」と定義されています。

不動産屋建築業界で自身の危険度を指し示す場合に用いられる評価です。

建物の使用期間の中で予想される最大規模の地震と、それに対して予想される最大的損失額の再調達の額面(新しく建物などを再建した時にかかるお金)の割合を出したものになります。

この評価を計算するためには、まず初めに地震危険度(地震ハザード)の評価を行う事から始まります。

地震ハザードとは、地震が特定の地域で、特定の時間枠内で発生し、地震動が特定のしきい値を超える確率のことを指します。

民間用でも各自治体が地震ハザードマップを発行しています。

地震リスク評価を考えるうえで使用する地震ハザードは通常の、特定の地震を想定して地震動を評価する方法とは異なり、起こる全ての自身原因を対象都市、その発生から確率的に考慮しながら作成したものになります。

その後、建物の耐震性の評価を解析・イベントツリー解析を行い、前述した地震ハザードを組み合わせて地震リスクを分析していきます。

地震の分野にPMLの概念が入ってきたころは、最も大きな被害をもたらす揺れを想定して耐震設計に役立てるという考え方が主流でしたが、1960年代後半に入り、ただ揺れの被害を想定するだけではなく、地震の発生確率を加味した算出方法の開発が始まりました。その後、1970年代には確率論的な被害算出方法の開発が行われます。

1980年代には保険料などを計算する上で、保険の分野へ地震PMLの考え方が広まり、地震に関するリスク評価が定義されていきました。

地震リスク評価の使いどころは、主に不動産業や保険業界とされています。

企業がかかわるものやリスク管理などに置いて利用されています。

不動産の場合、この地震リスク評価の値が一定以上の場合には地震保険などを用いたり、投資対象から外さなければならないという基準も設けられています。

地震リスク評価(PML評価)算出の方法

地震リスクの計算方法は、以下の通りになります。

PML=最大予想損失額/再調達価格×100(%)

これを計算するために行う手順は以下の通りです。

STEP1:地震ハザード曲線を作成 計算を算出するにあたり、起こり得る全ての地震を対象に、その可能性を確率面から見て評価し、地震ハザード曲線を作成します。
STEP2:地震ロス関数を作成 対象施設に考慮すべき損傷状況を、イベントツリーを用いて分類する事により、地震に対する損傷期待値の評価を行います。その後、地震ロス関数を作成していきます。
STEP3:STEP1とSTEP2を組み合わせる 地震ハザード曲線と地震ロス関数を組み合わせることで、建物と建設地それぞれの特性を加味したリスクカーブが出来上がります。
リスクカーブは、縦軸が年間地震発生率、横軸が地震発生によって見込まれる損失額を表しています。地震が大きければ大きいほど発生確率が低く、損害が多額になることがわかります。

地震リスク評価(PML評価)算出の手段

地震リスク評価の算出は、主に設計会社や建築業者に依頼して行ってもらうことになります。

建築物の築年、構造、用途を設計図書と実地調査により調べ、また過去起きた地震の震度、震源の深さ、地盤、断層の位置を調査した上で行うのが主流です。

この調査自体、不動産購入に必須な調査とされることも多く、そのためゼネコンや大手設計事務所が数十万〜数百万円ほどで調査自体を請け負うことが多くなります。

一方で、GIS技術(地理情報システム)の進歩により、簡単なものであれば地図上で場所を指定し、建物属性を入力するだけですぐに地震PML値の算出を行ってくれる格安のWEBサービスも普及しつつあります。

こちらは数千円程度でレポートの提出も行ってくれる優れモノではありますが、あくまで簡易的なものであると考えておきましょう。

地震PML値は、不動産投資などでは重要なものとされていますが、会社によって基準値に差が生まれたり、新しい計算方法が開発されたりする結果、標準的な算定方法が確立しきれていないことが問題とされています。

以上のことを表にまとめてみると、以下の通りになります。

PML計算方法 最大予想損失額/再調達価格×100(%)
対象とする地震 建物の建物使用期間中50年で予想される最大規模の地震(再現期間 475年相当=50年間で10%を超える確率。建物の使用期間を50年とし、50年間に10%の超過確率で発生するであろう地震に相当します。これは、年超過確率になおすと0.0021となり、実際にPML値を算出する際には、地震リスクカーブの年超過確率0.0021の期待損失額を読みとることにより算出します。)
対象とする損失 予想される最大の損失(90%非超過確率 )

地震リスク評価(PML評価)の目安

地震リスク(PML)の目安は、建造物の築年数によって変わってきます。

1981年以降の建築基準法(新耐震設計法)により設計された建物は、PMLが10~20%程度になるように設定されていることが一般的です。しかし、1981年以前の旧建築基準法に則って設計された建物は、PMLは20%以上の大きな値となるものが多くなっています。

近年ではPMLは不動産の新しい評価基準となっていることが多く、PMLが20%以上と判断されている建造物は証券化の格付けが低迷する可能性があります。

そのため、建物を証券化したい場合には、不動産価値を上げなければなりません。そのために、PMLを図り、基準よりも高かった場合には耐震補強工事などを行ってPML値を適正レベルまで低下させていかなければなりません。

新築の建物では特に顕著に現れる傾向にあり、免震・制震といった最新の構造技術を採用した建物はPML値が小さくなるため、将来、建物を証券化する場合の価値が格段に向上します。建物を建築する上では重要な基準となり、購入を促進する一つの要素としても取り入れられていることは明白です。

建物の適正な価値を表す新しい指標として、PMLは今後も注目を集めていくことになるでしょう。

ひとつの企業が提示しているPMLの予想被害について表にしてみました。おおよその数値と、その被害目安を知っておきましょう。

PML(%) 危険度 予想される被害
0~10 きわめて低い 軽微な構造体の被害
10~20 低い 局部的な構造体の被害
20~30 中位 中破の可能性が高い
30~60 高い 大破の可能性が高い
60~ 非常に高い 倒壊の可能性が高い

あくまでひとつの企業が示している目安であるので、調査を依頼する上でその建築業者がどのような指標を持っているのか、よく確認しておく必要があります。

日本の業界における地震リスク評価(PML評価)

日本の業界では、主に保険業界、建築業界、不動産業界でPMLは重視されています。これらはほかの業種に比べて地震リスクを加味した営業をしなければならないからです。各業界におけるPMLの立ち位置を見ていきましょう。

保険業界 保険業界では、地震保険の引受業務や保有契約のポートフォリオのリスク管理にPMLが用いられています。主に損害保険の業界で重視されています。
参考にされるPMLの値としては、国内の損害保険会社では主に再現期間500年に相当する予想損失が用いられます。
建設業界 不動産業界で用いられるPMLは、「対象施設あるいは施設群に対し最大の損失をもたらす再現期間475年相当の地震が発生し、その場合の90%タイル非超過確率に相当する物的損失額の再調達価格に対する割合」か、或いは、「リスクカーブから読取った再現期間475年における予想損失額」か、そのどちらもが用いられていることが多くなります。

地震リスク評価は不動産投資を行う上で加味したい基準!

地震リスク評価は、不動産価値を上げるためにも、安全面を考慮するためにも、必ず加味しておきたい基準であることがわかりました。

数値は最大予想損失額/再調達価格×100(%)で求められ、その数値が0~20%となっていれば資産価値が高くなるものとなります。数値が高く出てしまった場合には、必ず耐震補強工事等を行い、地震が起こったときに危険でないようにしなければなりません。

PMLは、保険業界や建築業界、不動産業界などで特に重視されるものとなっています。特に地震が起きた時のリスクを踏まえ、営業を行っていかなければならない業種だからです。

勿論、業界にいない人でも、いつ起こるかわからない地震に備えて、自宅や会社がどの程度まで地震のリスクを持っているのか知っておく必要があります。

土地・不動産の実態に踏み込んだデューデリジェンスなら、探偵事務所SATまで!

地震リスク評価などは、土地や不動産の売買の際に一般的にデューデリジェンスなどで算出される指標ですが、土地や不動産の価値はそれだけでは決まりません。

実際に、過去の利用者の使い方(犯罪に使用していないか、過去の利用者が反社会的勢力とつながっていないかなど)や、周辺環境について、さらには土地や不動産の売主や買主の素性や信用情報、反社チェックなど、一般的なデューデリジェンスでは判明しづらいものも土地や不動産の評価に大きく影響してきます。

探偵事務所SATでは、通常の土地や不動産のデューデリジェンスなどで判明しづらい項目について、実態に踏み込んだ調査を承っております。

さらには、売主や買主がきちんとした人なのかどうか、信用情報や経歴、過去の犯罪歴なども探偵業法に基づき調べることが可能です。土地や不動産の売買の際には、探偵事務所SATまで一度ご相談ください。

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