【投稿日】 2023年2月3日 【最終更新日】 2023年2月5日

「債権者代位権」によって、債務者が第三債務者に対して有している権利を、債権者が第三債務者に対して直接行使することができ、「債権者代位権」によって債権を回収することができます。

この記事では、「債権者代位権」とは何かについて図を使って分かりやすく解説するとともに、行使するために必要な要件や実施事例についても紹介します。

「債権者代位権」とは?

「債権者代位権」とは、「被保全債権(債権者が所有する債権)」を保全する(回収する)ために行うもので、「被代位権利(債務者が所有する権利)」を、債権者が代わりに行使することができる権利のことです。

これを分かりやすく図で示すと、次のようになります。

つまり、債権者(A)が所有する「被保全債権」を保全するために、債務者(B)が保有する「被代位権利」を、債権者(A)が代わりに行使することができるということです。

債務者が所有する「被代位権利」の具体例としては、財産の所有権、債権などがあります。

「債権者代位権」の行使には裁判所の手続きや債務者の許可が必要ないので、債務者が所有する債権が時効になる前に権利を行使することによって、債権が回収できなくなることを回避することができます。

「債権者代位権」を行使するための要件

「債権者代位権」を行使するためには、次の6つの要件を満たす必要があります。

要件1:債務者が無資力であること

「債権者代位権」の行使は、「被代位権利」を行使しないと弁済できないことが前提となっており、債権者が「債務者が無資力であること」を証明しなければなりません。

この要件は、「債権を保全する必要があること」と表現されることがありますが、これは債権者が債務者に対して「金銭債権」を有している場合に、債務者が無資力であれば、その「金銭債権」を保全する必要があると言うことができるからです。

要件2:債務者が権利を行使していないこと

債務者(B)が第三債務者(C)から既に債権(被代位権利)を回収している場合は、「債権者代位権」を行使することはできません。

要件3:被保全債権の弁済期が到来していること

返済期日前には「債権者代位権」を行使することができません。

ただし、訴訟手続を行って裁判所の許可を得た場合は、弁済期が到来する前であっても「債権者代位権」を行使することができます。

要件4:被代位債権が債務者の一身専属権ではないこと

「債権者代位権」を行使する対象が、債権者の「一身専属権」であるときには「債権者代位権」を行使することができません。

「一身専属権」とは、その権利者だけが行使することができる権利のことで、他の人には移転することができない権利のことです。

「一身専属権」の具体例としては、扶養請求権、年金受給権、生活保護受給権、人格権侵害の慰謝料請求権、遺留分侵害額請求権などがあります。

要件5:被代位権利が差押え禁止債権でないこと

「債権者代位権」は、強制執行に備えて債務者の責任財産を保全するためのものなので、債務者が有する「差押え禁止債権」については、「債権者代位権」を行使することはできません。

「差押え禁止債権」の具体例としては、給与・賃金・退職金等の4分の3相当、年金受給権、生活保護受給権などがあります。

要件6:被保全債権が強制執行により実現することのできないものでないこと

自己破産で免責された債権のように、強制執行により実現できない債権の債権者は、「債権者代位権」を行使することはできません。

「債権者代位権」の事例紹介

ここまで債権者代位権の行使について詳しく説明をしてきましたが、具体的にどのようなケースで、どのように債権者代位権の行使が行われるのかを、実際の事例を交えながら詳しく見ていきましょう。

事例1:売掛金回収のための商品差押え

債権者(A)は、取引先の債務者(B)に対する債権(売掛金200万円)を所有していますが、債務者(B)には弁済の動きがないので、債権者(A)は、債務者(B)が自社内に所有する未売却の商品を差し押さえることによって、債権の弁済に充てることができます。

この「債権の弁済に充てる権利」は、「債権者代位権」になります。

事例2:第三債務者からの売掛金回収

債権者(A)が取引先の債務者(B)に対する債権(売掛金200万円)を所有しており、債務者(B)が第三債務者(C)に対する債権(売掛金100万円)を所有している場合は、債権者(A)は第三債務者(C)に対して債権(売掛金100万円)を回収する権利があります。

この「第三債務者に対して売掛金100万円を回収する権利」は「債権者代位権」になります。

「債権者代位権の転用」の事例紹介

「債権者代位権」は、本来債権者の有する「金銭債権」を保全するための権利です。

しかし、「金銭債権」以外でも保全すべき債権があり、債務者の同意を得ずに「債権者代位権」を行使した事例もあります。

このように、「債権者代位権」を拡張したものが「債権者代位権の転用」です。

具体的な事例を交えて、債権者代位権の転用について詳しく見ていきましょう。

事例1:建物の明け渡し請求

建物の賃借人(A)が、賃借権を保全するため、所有者である賃貸人(B)に代位して、建物の不法占拠者(C)に対して、その明け渡しを請求する場合には、直接自己に対して明け渡すべきことを求めることができます。

事例2:不動産の移転登記請求

売主(C)が不動産を買主(B)に売却し、さらにその買主(B)が売主(B)として買主(A)に売却したときに、その不動産の登記が売主(C)に残っている場合、買主(A)は売主(B)に対して売買契約に基づく「移転登記請求権」を有しており、同様に買主(B)は売主(C)に対して売買契約に基づく「移転登記請求権」を有しています。

このとき、買主(A)は売主(B)に対する「移転登記請求権」を「被保全債権」として、買主(B)の売主(C)に対する「移転登記請求権」を行使して、直接自己に対する移転登記を請求することができます。

「債権者代位権の転用」によって幅広い活用が可能となる!

今回は、「債権者代位権」について図解を用いてわかりやすく説明し、その行使に必要な要件と実施事例について紹介しました。

「債権者代位権」は、売掛金などの債権を回収するための有効な手段ですが、「債権者代位権の転用」によって、さらに幅広い活用が可能になることがご理解いただけたと思います。

債権代位権行使前の相手側の資産や債務・債権調査は探偵事務所SATまで!

債権者代位権は、債務者から債権の回収ができない時に使われる債権回収手段の1つです。

しかし、これらを行使するためには、債務者の債権の保有状況や保有資産などをすべて把握する必要があります。

債務者側が自主的に教えることはほとんどないので、債権者側が事前に調査する必要があります。

隠し資産などがある可能性もあるので、債権回収前のこういった資産調査は何より重要です。

探偵事務所SATでは、債務者の隠し財産を含む保有資産状況や、債務・債権の状況などの調査を承っております。

債権回収を検討されている方は、まずはお電話・メールにてご相談ください。

※探偵事務所では調査のみを承っております。資産・財産調査以外の手続きや申請の代行、債権回収の実行などはできません。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00

※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。