2015年に個人情報保護法が改正され、情報漏洩に真剣に取り組む企業も増えてきましたが、企業機密や個人情報の漏洩事件は後を絶ちません。記憶に新しいのは、2014年に発生したベネッセの元従業員による顧客情報流出事件ではないでしょうか。

本事件では、グループ企業の元派遣社員が約半年に渡って最大約2,070万件の顧客情報を不正に持ち出し、名簿業者に転売していました。事件発覚後に元派遣社員は逮捕され、ベネッセは顧客離れによる大幅な経営赤字への転落や、プライバシーマーク(個人情報を適切に取り扱う事業者であることを証明する制度)の取り消しなど、大打撃を受けています。

さらに、顧客情報を流出された顧客からの損害賠償請求訴訟においても、大阪高裁判決では被害者の請求が棄却されましたが、最高裁が高裁の判決を違法として高裁に差し戻し、審理のやり直しを命じました。

ベネッセの顧客情報流出事件で被害が拡大した一因は、情報の流出の早期発見に至らなかったことが挙げられます。情報漏洩の予防対策であれば、社員教育や社内体制の整備、社内ルールの制定などによって、情報漏洩リスクを回避することは可能です。

ですが、実際に漏洩問題が起きてしまった場合は、企業はどう対応すべきなのでしょうか。

そこで、今回は企業機密や顧客情報の漏洩にまつわる刑事責任や民事責任について理解したうえで、情報漏洩事件が起きてしまった時や、漏洩の疑いがある時に企業がまず掴むべきである「情報漏洩の実態と証拠」を中心に解説します。

さらに、証拠収集や実態解明のプロセスでの活用が期待できる、探偵の社内調査について詳しくご紹介します。

企業機密や顧客情報の漏洩によって問われる法的責任

ここからは、企業機密や顧客情報の漏洩に関わる刑事・民事責任について、事例を交えながらご紹介します。

これらは企業が法令遵守するうえで最低限理解しておくべきことです。法律関係は業務とは無関係なので弁護士に任せておけば良いという認識は危機意識に欠け、万が一情報漏洩が発生した時の初動の遅れにも繋がりかねません。

刑事責任

まずは情報漏洩に関わる刑事罰を、事例ごとにおさえていきましょう。

●アクセス権限を持たないデータベースに侵入して顧客情報を不正に取得
●不正入手した顧客情報を名簿業者に転売

  • →「個人情報の保護に関する法律」(通称:個人情報保護法)により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(同法第83条)
    ※ただし、規制対象は「個人情報取扱事業者」に限られる(個人情報保護法 第2条5号)
●入手した顧客情報の第三者への開示により、顧客の権利侵害や名誉損害などの不利益が生じる

  • →名誉毀損罪により、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金(刑法第230条)
●アクセス権限を持たない社員が社内システム・データベースへ不正侵入(不正アクセス)

  • →不正アクセス禁止法に基づき、3年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法第11条)

さらに以下の不法行為が認められる場合:
→1年以下の懲役または50万円以下の罰金(不正アクセス禁止法第12条第1~4号)

  • 不正アクセス目的で、他人のパスワードの入手する(第4条違反)
  • 業務など正当な理由なく、アクセス権限を持たない人物にパスワードを伝達する(第5条違反)
  • 不正アクセス目的で入手したパスワードを保管する(第6条違反)
  • 不正にパスワードの入力を要求する(なりすましなど)(第7条違反)
●他人の個人情報あるいは個人情報に紐付く情報を不正に入手
→以下の刑事責任に問われる。

  • 窃盗罪により、10年以下の懲役または50円以下の罰金(刑法235条)
  • 業務上横領罪により、10年以下の懲役(刑法253条)
●営業担当者が競合企業に自社の顧客リストを売却して、会社に損害を与えた

  • →背任罪により、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法247条)

背任罪とは「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と刑法で定められています。

●情報の不正入手目的で立ち入りが制限された場所へ侵入
●盗聴器や隠しカメラの設置目的で会社の建造物に侵入

  • →住居侵入罪により、3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法第130条)
●盗聴器や隠しカメラを設置するために、会社所有の建造物に傷をつける

  • →器物損壊罪により、3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料(1000円以上1万円未満の財産刑)(刑法第261条)
●社内に設置された電話機に盗聴器を設置して、会話を傍受する

  • →有線電気通信法違反により、1年以下の懲役または20万円以下の罰金(同法第9条・第14条)
●盗聴によって得られた情報を第三者に漏らす
●盗聴の録音音源を他人に販売する行為

  • →電波法違反により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(同法第109条第1項)
    ※盗聴した者が無線通信業務に就いている場合→2年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法第109条第2項)


ここまでご紹介した刑事責任は、現行犯であれば警察が逮捕し、それ以外は捜査機関に提出した被害届や告訴・告発状が受理されれば捜査が行われ、容疑が固まり次第、逮捕状が請求されます。

民事責任

次に情報漏洩によって発生する損害賠償責任などの民事罰を、事例別にご紹介します。

●持ち出し禁止の開発データを不正に入手して競合他社に売却
●退職時に会社の営業ノウハウを無断で持ち出し、ノウハウを用いて会社を起業

  • →これらは不正競争防止法の「営業秘密の不正取得行為および不正利用行為」に該当し、損害賠償責任を負う(同法第2条 第4号~10号、第4条)
●顧客情報が漏洩された顧客本人が名誉毀損やプライバシーの侵害で提訴
→以下の民事責任に問われる。

  • 名誉毀損により、損害賠償請求(民法第710条)
  • プライバシーの侵害により、損害賠償請求(民法第709条・第710条)
●顧客情報の漏洩によって社会的信用を失い、会社が経営赤字に転落

  • →民法が定める「不法行為による損害賠償」に基づき、会社から損害賠償請求(同法第709条)
●営業秘密や機密扱いの技術情報を盗撮

  • →知的財産権の侵害にあたり、差し止め請求や損害賠償請求(知的財産基本法第2条2項「知的財産権の保護」違反、日本国憲法第29条「財産権の侵害」違反)
●労働契約や就業規則に守秘義務規程の記載がある場合

  • →債務不履行による損害賠償(民法第415条)

民事責任は裁判所への提訴以外にも、調停や示談などで解決を図ることも可能です。問題の深刻さにもよりますが、情報漏洩が発覚した場合は速やかに専門家に相談すべきです。

探偵の社内調査を使って社内情報の漏洩を立証

捜査機関に提出する被害届や告訴状・告発状は、刑事罰を証拠によって立証できないと、受理されにくいのが現状です。また、民事で損害賠償を請求する際にも、主張の裏付けとして不正行為の証拠を提出しなければなりません。

情報漏洩の証拠を固めることは、不正行為の実態解明にも繋がります。調査にかかる時間や費用を惜しまず、自社での実施が難しい調査は専門家に委託すべきです。特に調査が困難になりがちな内通者の社外・プライベートでの行動の監視は、探偵事務所の社内調査を活用することをおすすめします。

そこで、ここからは探偵事務所の社内調査の具体的な方法や、社内調査で得られる証拠について徹底解説します。

探偵事務所が行う社内調査とは

まず、不正行為の立証には2通りの方法があります。

<情報やデータの監視>
パソコンのデータ、社内システムのアクセス履歴、メールの送受信、インターネット閲覧履歴などを監視します。

これらは専用ソフトウェアで対応可能で、IT・情報セキュリティ担当部署が行うのが一般的です。

<内通者の監視>
内通者や内通が疑われる人物の行動や交友関係を監視します。内通者は現役社員に限らず、情報の漏洩ルートから退職者の関与が疑われるケースもあります。

ただし、内通者が社外にいる間や業務時間外となると、プライバシーなどの理由から監視の継続は不可能と言っても過言ではありません。

探偵の社内調査であれば、内通者の社外・業務外での行動や退職者の状況把握など、自社では調査が困難な場合でも証拠を収集することが可能です。

それでは、探偵事務所の社内調査が具体的にどのような調査を行うのかを見ていきましょう。

素行調査

内通が疑わしい社員や役員の社外での行動は、自社ですべてを掌握することは不可能です。また、退職者の所在(自宅や就職先)や現状となると、さらに把握しにくいため、情報漏洩の実態解明が困難になりがちです。

一方、探偵事務所の素行調査なら追跡することができます。

素行調査では、探偵の調査の基本である尾行・張り込み・聞き込みによって、内通者が「いつ・どこで・誰と・何をしていたか」を監視し、証拠は記録や写真・映像として残します。

尾行は対象者の現状に応じて、以下の範囲で行われます。

張り込みでは、内通者の勤務先や出入り先で待機して、内通者を見張ります。見張りの最中に不審な行動があれば、決定的瞬間を撮影することもあります。

聞き込みはターゲットの同僚や交流がある人物に直接話を聞くため、内通者の風評などの情報を得られやすい調査方法ではあります。ただし、聞き込み対象が怪しんだり、内通者に聞き込み調査の内容を伝えたりすることで、調査に気づかれてしまう可能性もあるのがネックです。

潜入調査

素行調査は内通者の社外での行動やプライベートしか把握できないため、社内での監視や情報収集目的で、調査員が潜入調査を行うケースもあります。潜入調査であれば、部外者として行う尾行・張り込みだけではわからない社内の実態も調べることが可能です。

潜入調査では、調査員は正体を隠して依頼先企業に潜入して、内通者の職場での聞き込みが主な調査となります。内通者に直接接触して情報収集できるのが最大のメリットですが、正体が見破られないよう細心の注意を払わなければなりません。

潜入調査を行う場合、探偵は依頼先企業の社員・従業員として潜入するため、依頼先に雇用されなければなりません。調査依頼が会社の上層部に周知されている場合は、調査員は中途採用選考に通過したものとして入社が可能です。

ただし、調査が社内で極秘扱いであれば、調査員は正規の中途採用プロセスで入社するしかないため、調査開始までの準備期間が必要になることもあります。

盗聴・盗撮の探査

機密情報や顧客情報の不正入手の手段として、社内に盗聴器や隠しカメラが設置されている可能性があり、これらは速やかに設置場所と設置した人物を特定する必要があります。

盗聴や盗撮に用いられる機器は形状、有線・無線タイプ、周波数など様々な種類があり、専門知識・技術を有する人間が専用機材を使ったうえで調査しないと、盗聴・盗撮機器の発見は困難です。

専門の業者に依頼する、という方法もありますが、探偵の中には盗聴・盗撮の探査や、機器の撤去まで対応可能な事務所もあります。探偵事務所に盗聴・盗撮の探査もあわせて依頼した方が、調査に関する情報が集約できて効率的です。

社内調査でどのような証拠が得られるのか

ここからは、探偵事務所の社内調査によって集められる証拠を調査方法ごとにご紹介します。

素行調査で得られる証拠

探偵が行う素行調査は、内通者の社外・業務外のすべての行動を追跡することができます。証拠として提供されるものは、以下に関する記録や写真・映像です。

  • 勤務時間中や休日の出入り先(施設名・住所など)
  • 出入り先での滞在時間
  • 社員の交友関係
  • 社員が接触した人物(氏名・職業・勤務先など)
  • 不審な人物と接触があった場合は、その瞬間の写真
  • 接触中に金銭や物品の受け渡しが確認される時は、その瞬間の写真
  • 聞き込みをした場合は、聞き込み中の会話に出てくる人物の個人情報

また、内通者が退職者の場合は、上記に加えて以下の内容も調査・報告します。

  • 転職先(会社名・所在地・業種・本人の役職など)
  • 退職後の競業

潜入調査で得られる証拠

探偵の潜入調査では、内通者に直接接触したり、内通者と交流のある社員に聞き込みをかけたりして、以下の情報を収集します。

  • 内通者の懐事情
  • 社内で不審な行動が見受けられる場合は、その行動記録
  • 内通者に関する社内での風評など

盗聴・盗撮探査で得られる証拠

盗聴・盗撮探査では、社内で盗聴や盗撮が行われていたという事実や、機器を設置した人物の特定が行われます。

盗聴や盗撮を行った人物が特定されると、その人物に社外の協力者や内通者がいないかを追加で調べ、社外に協力者がいた場合は協力者についても素行調査を実施します。

なお、盗聴・盗撮機器は以下の理由から、発見しても即撤去というわけにはいきません。

  • 盗聴器は撤去に国家資格が必要な場合がある(第二種電気工事士、アナログ第三種工事担任者)
  • 録音・録画機器の撤去に気づかれたら、社内調査が行われていることにも気づかれてしまう

相談・契約前に知っておきたい探偵事務所の特色

社内調査に限らず、探偵事務所に調査を依頼する時は「安心して任せられるか」という不安が常につきまといます。

そこで、探偵に相談や契約をする前に最低限知っておきたい、探偵事務所の特色を以下にまとめました。依頼先を探す時の目安にしてください。

探偵事務所に依頼するメリット

情報漏洩の調査を探偵事務所に依頼した場合、どのようなメリットがあるかを整理しました。探偵事務所に相談・依頼する際の参考にしてください。

客観的かつ具体的な事実(行動記録や証拠写真・映像)が入手できる

徹底的な尾行や張り込みによって、社外の不審な人物との接触の瞬間を押さえることができます。それだけでなく、最新の撮影機材や技術力があるので、情報漏洩の決定的瞬間も写真や映像で残すことが可能です。

極秘調査として実施することが可能であり、内通者に気づかれにくい

社内調査に気づかれた場合、内通者が証拠隠滅をはかる可能性が極めて大きいため、調査に気づかれないことが大変重要です。

探偵ならターゲットに気づかれない調査技術を有しており、また、調査を行う人物は会社から見れば第三者であることから、調査員の身元は内通者に知られません。

調査の一部をアウトソーシングすることで、自社の調査に専念できる

内通者の社外での行動監視を中心に探偵事務所に任せることで、自社で取り組むべき社内調査は、社内システムや帳簿などの精査に絞られます。

社内調査のすべてを自社で行う必要がなくなるため、調査のスピードと効率性を上げることに繋がります。

こんな探偵事務所は要注意

探偵は本来、法律に則って適正に調査を行いますが、時には違法調査を行ったり、情報の取扱いにおいて法令遵守しない事務所も存在したりします。

相談先が下記に該当するような場合は、速やかに他の探偵事務所をあたるべきです。

情報収集における違法行為

探偵はその業務の性質上、尾行・張り込み・聞き込みやこれらに似通う調査に関して、適正な業務範囲として法律で認められています(探偵業の業務の適正化に関する法律 第2条)。

ですが、たとえ調査目的であっても無断でターゲットの自宅敷地内に侵入したり、依頼人の委任状もなくターゲットの戸籍謄本を取り寄せたりするのは、違法行為です。

なお、会社の防犯カメラの映像を契約前に遡って分析する場合は、調査目的であっても探偵は許可なく行うことはできません。調査契約前の映像分析を行う場合は、裁判所に開示請求をする必要があります。

この手続きを踏まずに依頼人の会社の過去の防犯カメラ映像を分析することは、探偵であっても許されないのです。

重要事項説明義務や秘密保持義務に違反

探偵は依頼者との契約前に、個人情報保護法およびその他の法令遵守を記載した「重要事項説明書」を交付しなければなりません(探偵業法第8条第3項)。

また、重要事項説明書には調査で入手した他人の秘密を正当な理由なく第三者に開示しないことや、秘密が載っている文書や資料を適切に取扱い、保管する旨の誓約を明記しなければなりません(探偵業法第8条第1項、同法第10条)。

企業機密や顧客情報の漏洩問題は非常にセンシティブであるため、重要事項説明義務や秘密保持義務を守らない探偵事務所に安心して任せたいと思う依頼人はいないはずです。

無資格の調査員が盗聴器を撤去する

盗聴器は種類によりますが、撤去にあたって第二種電気工事士やアナログ第三種工事担任者の資格保有者にしか行えない物があります。盗聴器の撤去を行う探偵事務所にこれらの資格保有者がいるかを、あらかじめ確認しましょう。

まとめ

機密情報や顧客情報の漏洩に対する企業の危機意識が高まり、社内システムやルール面から対策を講じる企業が増加傾向にあります。それでも自社で起こってはならない情報漏洩が起こったら、被害拡大を防ぐためにも早期対応と早期の実態解明が大変重要です。

情報漏洩の事実を立証する時に探偵事務所の社内調査を利用することで、内通者の刑事告訴や損害賠償請求でも強固な証拠を提示することができるのです。