【投稿日】 2022年10月21日 【最終更新日】 2022年10月27日
行方不明者の生存率をご存知でしょうか。
行方不明者とは、警察に「行方不明届」が出された人のことを言います。
単に「どこにいるのかわからない」だけでは、行方不明者とは言いません。
したがって、行方不明者の生存率は、基本的に「行方不明届が出されてから何日経ったか」で判断されます。
行方不明届を出すのが遅れれば、それだけ生存率も下がると言われています。
また、認知症の方とそれ以外とでは、生存率も違ってくるでしょう。
この記事では、行方不明届が出されてから、所在確認ができるまでの期間、行方不明者の所在確認数と死亡確認数などから、生存率を出し、いかに早く捜索を開始するかを解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
行方不明者の所在確認までの期間
以下の図は、警察庁からの平成30年中に所在確認された行方不明者の、所在確認までの期間を表しています。
引用元:警察庁「平成30年における行方不明者の状況について」
これを見て読み取れることを、以下に分析していきます。
約8割が受理当日から7日目までに確認
これを見ると、行方不明者全体のうち、約半数が受理当日、2日~7日が3割となり、行方不明届を警察が受理した当日から一週間のうちに、約8割が所在確認されていることがわかります。
しかし、8日を過ぎると、一気に確認率が低くなり、およそ4%以下になってしまいます。
したがって、行方不明者は、一週間以内に見つからないと、発見が難しくなってしまうと言えるでしょう。
認知症の行方不明者は受理当日に約7割が所在確認
近年では、認知症の徘徊による行方不明者が年々増加しています。
警察庁の調査によると、認知症による行方不明者は、令和3年の1年間で、17,636人に上るということです。
しかし、行方不明者全体に対し、認知症の行方不明者は、73.4%が行方不明届受理当日に所在確認されています。
また、2~7日目には26.0%が所在確認されており、合わせてほぼ99%が発見されているということになります。
したがって、認知症の行方不明者は、そのほとんどが所在確認されていると言えるでしょう。
一方、8日を過ぎると1%を切り、3ヶ月を過ぎると0%になることから、認知症の行方不明者は、発見が遅れると、ほぼ所在確認ができないと言えます。
行方不明者の死亡確認数とその期間
では、行方不明者の死亡確認数はどうなっているでしょうか。
以下の図は、行方不明届を受理してから、所在確認までの期間を表しています。
これは、令和2年中に所在確認などがなされた期間です。
令和2年の行方不明者の総数は、77,022人ですが、令和2年中に所在確認がなされた行方不明者は、79,640人となっています。
これは、所在確認をした年次以前に受理した届出分を含むからです。
ここに、死亡確認数も記載されていますので、これを見てみることにしましょう。
引用元:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和2年における行方不明者の状況」
これを見て読み取れることを、以下に分析していきます。
受理当日から7日目までの死亡率が高い
これを見ると、令和2年中に所在確認された79,640人中、生存して所在確認されたのが66,166人で、およそ83%、死亡確認されたのが3,830人で、およそ4%であることがわかります。
この死亡確認された人数のうち、2,537人、およそ66%が受理当日から一週間以内に死亡確認されています。
特に、2日目~7日目の死亡確認率が高く、全体の半数弱を占めていることがわかるでしょう。
このことから、死亡確認される行方不明者は、受理当日から一週間以内に死亡している確率が高いと言えます。
認知症の場合、5日目以降だと生存率はゼロ
先に述べたように、認知症の行方不明者は、その99%が一週間以内に所在確認されています。
しかし、所在確認された認知症の行方不明者のうち、3%は死亡確認されています。(警察庁調査:平成30年)
すなわち、99%のうち、3%は、残念ながら亡くなってから見つかったということです。
また、2016年の桜美林大学老年が総合研究所の調査によると、行方不明届を出すのが、行方不明になってから5日間経過してしまうと、生存率はゼロになるとされています。
桜美林大学の鈴木研究所長らは、2013年に認知症などで行方不明になった10,322人のうち、204人(生存117人、死亡87人)からの有効回答を得ました。
警察に行方不明届を出したのは、生存者の場合、当日が60.9%で、死亡者の場合は39.1%、発見までの期間は、生存者の場合、当日の発見が82.5%であったが、翌日は63.8%、3~4日目は21.4%と大幅に低下し、5日目以降では生存者は0%であったということです。
認知症の場合は、確実に日を追うごとに生存率が低くなります。
亡くなった方の4割以上が「軽い認知症」であったということを鑑みても、認知症の行方不明者に関しては、その症状の重い軽いにかかわらず、行方不明になったら、すぐ当日のうちに行方不明届を出し、捜索を開始することが重要であると言えます。
捜索段階別の生存率・死亡率
また、別の調査では、捜索段階別の生存率と死亡率を出しています。
それによると、生存での発見確率は、捜索初期段階(1日~7日)では93.4%、捜索中期段階(8日~1ヶ月)では78.3%、捜索末期段階(1ヶ月~1年)では59.7%と徐々に低下していくことがわかります。
また、発見時死亡確率は、捜索初期段階では4.2%、中期段階では9.3%、末期段階では6.1%となっており、8日を超えると、死亡率が格段に上がるということです。
いかに早く捜索を開始するかが生存率を高めるカギ
上記のように、認知症をはじめとする行方不明者は、いかに早く捜索を開始するかが、生存率を高めるカギであると言えるでしょう。
では、どうしたら早急に捜索を開始することができるのでしょうか。
この項では、どのようにしたら、極力早く捜索を開始できるかを解説していきます。
いなくなったらすぐに行方不明者届を出す
まず、家族などがいなくなったら、すぐに警察に行方不明届を出しましょう。
ただし、行方不明届を出せるのは、以下の関係者のみになります。
- 親権者、配偶者、後見人など親族や監護者
- 行方不明者の福祉に関する事務に従事する者
- 同居者、恋人、雇主など、行方不明者と密接な関係を有する者
つまり、友人や地域の近隣の人がいなくなっても、そういった関係だけでは、行方不明届は出せないことになっているのです。
したがって、上記の関係にあたらない人は、上記の関係者に協力を頼み、行方不明届を出してもらう必要があります。
また、行方不明届を出す場合には、行方不明者の写真と、届出する方の印鑑が必要です。
この他に、警察が行方不明届を受理する際は、以下のようなことを聞かれます。
- 行方不明者の本籍、住所、氏名、生年月日、血液型
- 行方不明者の体格、身体的特徴
- 行方不明となった時の服装、所持品
- 行方不明となった時の使用車両に関すること
- 行方不明になった日時と場所
- 行方不明者のよく行く場所、行くと思われる場所
- 行方不明者の精神病の既往歴、薬物の使用歴の有無
- 行方不明になった原因として考えられること
以上のようなことは、あらかじめ調べておき、すぐに言えるように準備しておきましょう。
警察が探してくれる場合、探してくれない場合
警察に行方不明届を出しても、警察がすぐに探してくれる場合と、すぐには探してくれない場合があります。
それは、「特異行方不明者」と、それ以外、また、行方不明者本人が行方不明届の「不受理届」を出している場合で違ってくるのです。
ここでは、それぞれがどのような場合なのか、見ていきます。
特異行方不明者
警察がすぐに捜索を開始してくれるのは、「特異行方不明者」のみです。
特異行方不明者とは、行方不明者本人には失踪の意思がなく、何らかの外的要因(事件や事故)によって行方不明になった場合や、本人に生命の危険がある場合を指します。
警察庁の「行方不明者発見活動に関する規則第2条第2項」では、以下の者を特異行方不明者としています。
1.殺人、誘拐等の犯罪により、その生命又は身体に危険が生じているおそれがある者
2.少年の福祉を害する犯罪の被害にあうおそれがある者
3.行方不明となる直前の行動その他の事情に照らして、水難、交通事故その他の生命にかかわる事故に遭遇しているおそれがある者
4.遺書があること、平素の言動その他の事情に照らして、自殺のおそれがある者
5.精神障害の状態にあること、危険物を携帯していることその他の事情に照らして、自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある者
6.病人、高齢者、年少者その他の者であって、自救能力がないことにより、その生命又は身体に危険が生じるおそれがあるもの引用元: 警察庁「行方不明者発見活動に関する規則第2条第2項」
こうした特異行方不明者に分類された場合は、時間的猶予がないことから、すぐに捜索が開始されることになります。
捜索される場合は、主に公開捜査、事情聴取(聞き取り調査)、鑑識捜査、警察犬捜査などが行われます。
しかし、特異行方不明者が成人の場合は、警察が居場所を把握した場合でも、強制的に連れ帰ることはできません。
その場合は、行方不明届を提出した時に、「生存連絡のお願い」をしておくことで、発見された時に警察から連絡が入ります。
一般家出人
特異行方不明者以外の、「一般家出人」と分類されるケースは、事件や事故に巻き込まれた可能性が低く、自分の意思で失踪した人のことです。
例えば、家族とトラブルがあって家出したり、借金を抱えて夜逃げしたりした場合は、事件性が低いと判断され、一般家出人として扱われます。
家出の場合も、18歳未満の年少者であれば、特異行方不明者に該当しますが、成人の場合は一般家出人になります。
行方不明者届が出されても、事件性の低い一般家出人は、民事に該当するため、民事不介入の原則を持つ警察が、積極的に捜索してくれることはありません。
ただし、警察は何もしてくれないわけではなく、警察本部のデータベースに家出人の情報が登録され、全国の警察署や交番などで、データが閲覧できるようになるため、全国の警官が、パトロールや補導、交通取り締まり、職務質問などで家出人と接触したり、閲覧者から何らかの情報提供があったりした場合は、発見に繋がる可能性もあります。
失踪者本人から行方不明者届の不受理届が提出されている場合
行方不明者届の「不受理届」とは、失踪した本人が、探さないように警察に提出する届出のことです。
この不受理届が提出されていると、警察は行方不明者の捜索を行うことができません。
通常、警察が行方不明者届を受理すると、行方不明者のデータは警察のデータベースに登録され、発見後は、失踪者の現住所や現在の状況が、行方不明者届を出した人に知られてしまうことになります。
しかし、もし失踪者が、自分の身を守るために失踪していた場合、捜索することで、逆に失踪者を危険な目にあわせてしまうかもしれません。
こうした状況を想定して、失踪者の意思や権利を守るために、「不受理届」というものがあるのです。
不受理届を提出することが認められるのは、以下のような場合です。
- 配偶者やパートナーからの暴力があり、そこから逃げるために失踪している場合
- ストーカーによる被害で、身の危険を感じて逃げている場合
- 怪我や病気などを放置され、生命の危険があるため逃げている場合
- 子どもに対する虐待から守るために、子どもを連れて逃げている場合
- 家庭内で暴力行為が日常的に行われ、安全な場所へ避難したい場合
こういった場合は、失踪する前に警察の窓口で事情を説明し、正当な理由があることが認められると、不受理届が受理されます。
その後に、残された人から行方不明者届が出されても、不明者届の方が優先されるため、警察は捜索を行わないことになっているのです。
ただし、未成年者の場合は、どのような理由があっても、不受理届を提出することはできません。
しかし、家庭内での虐待やDVが理由で、警察が「家庭が安全でない」と判断した場合は、未成年者を保護するために、行方不明者届を出した親や家族に居場所を教えず、児童相談所などに一時保護される場合もあります。
警察活動以外で見つかる場合が約半数
身近に行方不明者が出た場合は、警察に行方不明届を出すことはもちろんですが、それだけでは十分ではありません。
実は、所在確認された方の約半数は、警察活動以外で発見されているのです。
以下の図を見ると、それがわかります。
引用元:警察庁「平成28年における行方不明者の状況」
上記図は、平成28年における警察庁のデータです。
警察活動において「発見」された行方不明者は、総数83,865人のうち、36,428人で、「帰宅等確認」が35,892人となっており、ほぼ同数と言えるでしょう。
「帰宅等確認」は、「自力帰宅または保護者等が行方不明者を発見した場合、警察活動以外で所在確認した者」となっており、自分で帰ってきた人を除いては、家族が自力で捜索して発見したか、警察以外の人が発見したことになります。
この場合、警察以外の人、ということで一番考えられるのが、探偵です。
探偵は、特異行方不明者も、一般家出人も関係なく、すぐに捜索を開始してくれます。
特に、事件性が低く、「警察の捜索だけではなく、自分でも探す努力をしたい・・・でも自力では捜索が難しい」という場合は、民間の調査機関である探偵に依頼するのが有効と言えるでしょう。
行方不明者は、警察に届け出るだけでなく、探偵にも相談してみよう!
行方不明者の生存率から、いかに早く捜索を開始するのが大事かということを述べてきました。
認知症の行方不明者は言うに及ばず、一般家出人でも、発見が遅れれば遅れるほど、問題がこじれたり、生命に危険が及んだりします。
したがって、行方不明者は、とにかく早急に捜索を開始することが、最も重要です。
警察に行方不明届は出したけれど、「警察だけではなく自分でも何か捜索努力をしたい・・・」という場合には、探偵が頼りになります。
探偵は、情報捜査に長けており、探偵事務所が独自に持っているデータベースをはじめ、ありとあらゆるデータから、行方不明者の所在を割り出していくことができます。
また、行方不明者の関係者を洗い出したり、尾行したり張り込んだりといった捜索方法も可能です。
身近に行方不明者が出た場合には、警察と同時に探偵に依頼することも視野に入れておきましょう。
探偵事務所SATには、警察OBの探偵が在籍しており、警察と探偵の双方の視点から、探偵業法に基づくあらゆる調査手法を用いて、失踪者・行方不明者の捜索を行っています。
失踪者・行方不明者を自分でも行いたい・・・でもどうすればいいか分からない・・・そういった場合には一度探偵事務所SATまでご相談ください。
※探偵事務所で行えるのは行方不明になった債務者の捜索や調査のみです。債権回収自体を行うことはできないのでご注意ください。
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