【投稿日】 2020年6月2日 【最終更新日】 2021年10月21日

暴力団対策法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)と暴力団排除条例が施行されてから、暴力団及び暴力団と繋がりがある人は「密接交際者」と認定され、警察からの勧告を受けたり社会的に排除されるようになりました。

しかし暴力団側も組織的に正体を隠しているため、一般人だと思っていた社員や友人、取引先が暴力団と繋がっていた、ということも少なくありません。

実は密接交際者と認定される条件は理解するのが難しいため、どんなお付き合いをしたら警察から勧告されるのか、リスクを回避するためにはどのようなことに注意するべきか悩んでいる人が増えています。

そこで今回は、密接交際者に認定されないための具体的な方法と、密接交際者と認定される範囲について詳しく解説していきます。

警察が暴力団の密接交際者と判断する(認定する)基準とは

暴力団の密接交際者と聞いたとき、多くの人が「世間話をすることも駄目」と思い込んだり、逆に「このくらいの関係なら大丈夫だろう」と安易に判断してしまいます。このような自己判断は、もしものときに自分の社会的立場をおびやかしたり、せっかく築き上げてきた信頼を崩すので大変危険です。

では警察が密接交際者と判断する基準とは、一体どのようなものなのでしょうか。ここでは暴力団の密接交際者について、警察の判断基準で詳しく解説します。 

利益供与の関係にある人物や企業

暴力団の存続を阻止するために重要とされているのは、資金源の根絶です。暴力団対策法が施行されて以降、暴力団は直接的に資金を集めることが難しくなったため、準構成員やフロント企業と呼ばれる「一般人にしか見えない存在」を生み出し、資金確保のルートを作りました。

一般人にしか見えない準構成員やフロント企業は社会に紛れて稼いだ利益(お金)を暴力団に供与する(渡す)ので、暴力団の資金源として警察の取り締まり対象になります。

ポイントとなるのは「利益が暴力団に渡っているかどうか」なのですが、一般・一般企業 → 準構成員・フロント企業 → 暴力団という流れは見えにくいため、知らないうちに利益供与してしまう可能性も少なくありません。

ただしお付き合いのある人物や契約先の会社に対し、準構成員やフロント企業かも知れないという疑惑を持った段階で警察に相談しておくと、警察から勧告を受けることもなく密接交際者とは判断されません。大切なのは、早い段階から暴力団及び反社会的勢力を排除する姿勢を示すことです。

協力体制にある人物や企業

暴力団への利益供与がなかったとしても、暴力団及び反社会的勢力に協力的だと判断された場合には密接交際者となります。暴力団関係者に対する協力体制の具体例は、以下のようなケースです。

  • 自分名義の銀行口座を作って暴力団関係者に渡した。
  • 自分名義で土地を買い暴力団関係者へ貸した。
  • 自分名義のマンションを購入し暴力団関係者へ貸した。
  • 相手が暴力団関係者だとわかっている上でパーティー会場を貸した。
  • 相手が暴力団関係者だとわかっている上で車のレンタルを受け付けた。

上記のような例は暴力団の活動を補佐しているので、暴力団に協力する密接交際者とみなされます。「暴力団なのはわかっているが、お金を渡すわけではないし大丈夫だろう」と思ってしまう人もいますが、警察の目的は暴力団の活動を封じ込めることなので、暴力団の活動を補佐する行為も取り締まりの対象となります。

「長い付き合いがあるから断れない」「すぐに断つことは難しい」という意見もありますが、一度密接交際者と判断されると経営している会社や自分自身が取り締まりの対象となりますので、悩む場合は警察に相談して暴力団及び反社会的勢力を排除する姿勢を示すようにしましょう。

共生状態にある人物や企業

共生状態と聞くとちょっとわかりにくいかも知れませんが、簡単に言うと「持ちつ持たれつの関係」です。たとえば次のような例の場合、警察は共生状態にあると判断し密接交際者に認定します。

  • 地域の祭りでいざこざが起こらないよう、暴力団にお酒を差し入れて見回ってもらった。
  • 暴力団の事務所なのはわかっているが、同じ地域だし気前がいいので注文を受けている。
  • 暴力団に駐車場を貸しているが、不法駐車の車を追い出してくれるので契約を継続している。
  • マンションの部屋を貸したら暴力団の事務所だったが、賃貸料を2倍払ってくれるのでそのまま貸し続けている。
  • 暴力団関係者の会社と取引しているが、長い付き合いだし今まで問題なかったのでそのままにしている。

このような状態を放置していると、警察から暴力団の密接交際者と認定されデータベースに登録されます。警察の情報は申請すれば照会できるので、密接交際者とわかった段階でさまざまなリスクを背負うのです。暴力団対策法と暴力団排除条例が施行された今、少しでもリスクを減らすために早急な対策が必要です。

警察に暴力団の密接交際者と認定された時のリスクとは

暴力団の密接交際者に認定された場合、警察のデータベースに登録されてしまうという点は多く人が理解しています。しかし実際にどのようなリスクがあるかと問われると、すべて答えられる人はなかなかいません。

実は暴力団の密接交際者と認定された場合、日常生活においてさまざまなリスクがあります。具体的にどのようなリスクがあるのかを詳しくご紹介します。

銀行口座が作れない

暴力団の密接交際者と認定された場合、銀行口座が作れません。暴力団排除条例が施行されて以降、多くの銀行では金融庁の指針に沿って「反社会的勢力に属していると判断された場合、勧告をせず契約を解除できる」といった条項を盛り込んだ契約書を導入しています。

密接交際者は反社会的勢力なので、密接交際者と判断された段階で銀行口座を作ることは不可能となり、さらに現在持っている口座についても調査・契約解除される可能性があるのです。

クレジットカードが作れない

クレジットカードは金融商品なので、各信販会社は銀行と同じく金融庁の指針に沿って運営しているのですが、金融庁は各信販会社に対して反社会的勢力の排除努力をうながす指針を出しています。

金融庁の指針を受け、多くの信販会社では契約の際に事前に身元を調べたり、契約後に反社会的勢力と分かった場合は勧告なく解除できるよう、暴力団排除条例に基づいた誓約書を導入しています。したがって、密接交際者と認定された場合には反社会的勢力と認定されクレジットカードが作れず、さらに契約が解除される可能性があります。

ローンが組めない

ローンも金融商品なので、銀行・信販会社・保証会社といったローンを扱っている企業はすべて、金融庁の指針に添って運営します。金融庁は金融に関するすべてにおいて暴力団を含めた反社会的勢力の排除を指針として打ち出しているので、密接交際者と認定された場合はローンを組むことができません。

ローンは高額商品を購入するときに利用されますが、自動車の購入や携帯電話の分割支払い、高額な家電商品などローンを組むことができません。ローンは信用の上で成り立っている金融商品なので、反社会的勢力である密接交際者はローンが利用できないのです。

不動産の売買や賃貸が出来ない

不動産の売買や賃貸の契約締結は、宅地建物取引業の免許を持つ不動産会社が行います。宅地建物取引業は国土交通省の管轄ですが、国土交通省は暴力団対策法及び暴力団排除条例の施行のともない、反社会的勢力の排除努力を推進しています。

もともと不動産業界は暴力団との関わりが多く、地上げ屋と呼ばれる行為も横行していました。不当な値上げや取引を正常に戻すためにも反社会的勢力の排除は不可欠で、現在多くの不動産会社が暴力団排除条例に基づいた誓約書を導入しています。

もし密接交際者と認定された場合は反社会的勢力となるため、不動産の売買や賃貸はできません。仮に個人で不動産売買を行った場合、不動産登記のために調べられたときに相手に情報が渡るので、売買契約が解除されるだけではなく、身分を偽ったとして訴えられる可能性が出てきます。

就職が難しくなる

暴力団排除条例は社会から暴力団及び反社会的勢力を排除するために施行されており、各企業が暴力団排除のための努力義務を行なっています。暴力団及び反社会的勢力との関わりを持たないため、近年多くの企業が導入しているのが暴力団排除条例に基づいた誓約書です。

誓約書の内容は各企業によって多少の違いはありますが、主な内容として次のような項目盛り込まれています。

  • 反社会的勢力に属してないこと
  • 反社会的勢力と密接に関わってないこと
  • 虚偽の申告をした場合には勧告なく契約終了できること

この誓約書は取引先との契約や雇用している社員との間で取り交わされますが、もし密接交際者と認定されている場合、誓約書に反するため就職できません。仮に内緒にしていた場合、虚偽の申告として雇用を切られるだけではなく、詐欺罪が適用され逮捕される可能性もあります。

企業が密接交際者と認定されるリスク

企業が暴力団及び反社会的勢力との密接交際者と認定された場合、次のようなリスクがあります。

  • 金融機関から融資を断られる
  • 取引先との契約を解除される
  • 警察に企業名を公表され社会的信用を失う

一度密接交際者と認定されてしまうと警察に登録されたデータを消すことは難しく、たとえ暴力団及び反社会的勢力との関係を絶ったとしても、経過観察で数年はデータが消えません。

しかし警察もすぐに密接交際者と認定するわけではなく、まず企業へ勧告して交際を断ち切ることをうながし、それでも改善しないようならデータ登録して公表するという段階を踏みます。暴力団及び反社会的勢力を見抜くことは難しいかも知れませんが、真実を知ったときが一番早いときと考えて、警察に勧告されたらすぐに対応しましょう。

暴力団の密接交際者と「判断されるケース」と「判断されないケース」の具体例

警察の判断基準による密接交際者がどのようなものなのかがわかっても、実生活に当てはめて考えると該当するかしないかの判断はつけにくいものです。中には家族、親戚、友人関係まで駄目と判断してしまい、警察に相談する人も少なくありません。

では実際に密接交際者と判断される人物や企業とはどのようなケースなのか、具体的な例を挙げてみていきましょう。

密接交際者と判断されるケース

密接交際者と判断される人物や企業には、暴力団及び反社会的勢力だとわかっていながらあえて付き合いを続けるという特徴があります。具体的な例としては以下のようなケースです。

  • 暴力団や構成員、準構成員、反社会的勢力が運営している団体、企業、店舗だとわかっているが、給料などの見返りがあるのであえて所属している。
  • 暴力団や構成員、準構成員、反社会的勢力に所属している人だとわかっているが、仕事ができて便利なのであえて雇用してしている。
  • 暴力団や構成員、準構成員、反社会的勢力の存在を固辞すれば物事が思い通りに進むので、あえて付き合いを続けている。
  • 相手が暴力団であることを認識しているが、売り上げになるのであえて暴力団の事務所を用意したり会場を貸したりする。
  • 暴力団や構成員、準構成員、反社会的勢力の集まりだと認識しているが、招待された結婚式やお祝い事の行事、お通夜や葬儀などの弔事には出向く。

先にも述べた通り、警察は暴力団との付き合いがあるからといって、すぐに密接交際者と認定するわけではありません。まず最初に「このまま交際を続けていると密接交際者に認定します」という勧告をして、それでも付き合いを続けるようなら密接交際者と認定するのです。

しかしお付き合いを続けることで何かしらの見返りがある場合、「自分が暴力団というわけではないから」という理屈で交際をやめない人も少なくありません。本人が暴力団でないと思っていても、周囲から見ると暴力団関係者であり排除の対象になってしまいます。密接交際者かどうかを見極めるときは、「周囲の人が見たらどう思うか」という視点を持つことが大切です。

密接交際者とは判断されないケース

密接交際者は暴力団への利益供与・協力体制・共生状態で判断されますが、暴力団員や準構成員が普通に生活すること自体を禁止しているわけではありません。さらに暴力団への利益供与・協力体制・共生状態がお付き合いの中で発生しないのであれば、密接交際者と判断されないケースもあります。具体的な例としては以下のようなケースです。

  • 暴力団員が転んだ子どもを助けてくれたのでお礼を言ったら、密接な付き合いがあると噂されてしまった。
  • 高校時代からの親友が暴力団員になったが、昔話をする程度の付き合いをしている。
  • 居酒屋で知り合い趣味の話で盛り上がった相手が暴力団員だったが、趣味の話しかしていないし連絡先も知らない。
  • スポーツジムで知り合い何度かお茶を飲んだことがある人が暴力団員だった。
  • 家族や親族に暴力団員がいる。

上記のような例では、暴力団への利益供与・協力体制・共生状態は見られません。つまり相手から暴力団に関わる話や相談がなく、さらに自分が暴力団の威力によって便宜を図ってもらう事がないのであれば、警察も密接交際者とは認定しないのです。

もし一度でも暴力団に関係するアプローチを受けたときには、相手に暴力団をやめるよう進言したり、警察に相談するといった方法を取りましょう。

暴力団の密接交際者と認定されないためにやるべきこととは

密接交際者にならないためには、相手に疑問や不安を感じた時点で行動を起こすことが大切です。しかし暴力団という大きな組織に対し、知識や手助け無しで対応することはできません。密接交際者にならないためにできることとはどのようなものなのか、その内容を詳しくご紹介します。

警察に相談する

もし取引先の企業やお付き合いのある人に暴力団の疑いがあるときは、警察に相談してデータを照会してみましょう。各都道府県の警察では暴力団に関する相談窓口を設けており、相談内容に応じて適切な対応を行います。

すでに脅しやみかじめ料の要求があった場合には警察がすぐに動きますし、怪しいと思う段階であれば警察のデータを照会してくれます。その際に証拠があればさらに警察も動きやすくなりますので、相手との会話を録音したり脅されている様子をビデオに撮るなどの証拠集めをしてみましょう。

暴力追放運動推進センターに相談して対策を練る

暴力追放運動推進センターとは、暴力団の不当行為の阻止や市民が受けた被害を救済することを目的とした公益財団法人です。各都道府県ごとに暴力追放運動推進センターが設置されており、暴力団排除の意識を多くの人に広める活動をしています。

暴力追放運動推進センターでは、暴力団及び反社会的勢力から受ける不当請求や被害、対処法などさまざまな相談を受け付けています。具体的な対処法のアドバイスももらえますので、被害に悩んでいるときは一度相談してみると良いでしょう。

探偵事務所に相談して調査と証拠集めをする

暴力団及び反社会的勢力は組織的に動くため、一般の人ではなかなか自力で調べることができません。さらに暴力団かも知れないという恐怖もあるため、相手に調査をしていることがバレたらどうしよう…と不安に思う人もいます。

もし相手に知られることなく調査や証拠集めをしたい場合は、探偵事務所の相談窓口を利用してみましょう。優良な探偵事務所は探偵業法に則った調査を行なっているので、依頼者の個人情報や依頼内容が外部に漏れることはありません。

さらに反社チェック(反社会的勢力なのか調査)などの調査も扱っている探偵事務所であれば、相手に気づかれることなく安全に証拠を集められます。探偵が集めた証拠は警察に相談するときにも役立ちますので、自力での対策が難しいと思う場合には、一度探偵事務所に相談してみましょう。

まとめ

今回は密接交際者と認定される条件や範囲、密接交際者にならないための方法を詳しく解説してきました。最後にもう一度内容を振り返り、まとめてみましょう。

  • 密接交際者とは、暴力団に対し利益供与・協力体制・共生状態(持ちつ持たれつの関係)にある者を指す。
  • 密接交際者に認定されてしまうと、銀行口座やクレジットカードが作れない、ローンが組めない、不動産の売買や賃貸ができない、就職ができない、企業は取引先との契約解除や社会的信用の失墜などのリスクがある。
  • 暴力団に知り合いがいても必ず密接交際者と認定されるわけではなく、暴力団関係の話やや相談、暴力団の威力を利用して便宜を図ってもらうなどの行為がなければ認定されな
    い。
  • 密接交際者に認定されないためには、相手に疑いを持った段階で警察や暴力追放運動推進センターに相談したり、探偵に調査や証拠集めを依頼して適切な対応を取るようにする。

暴力団及び反社会的勢力の密接交際者に認定されてしまうと、さまざまなリスクを負うだけではなく、築き上げた人間関係や社会的信用も失ってしまいます。もしかしたら密接交際者になってしまうかも知れないと悩む前に、警察・暴力追放運動推進センター・探偵などに相談して、できるだけ早く対応するようにしましょう。

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