【投稿日】 2021年11月20日 【最終更新日】 2023年2月16日

「取引を検討している会社に支払い能力があるかどうかを知りたい」「裁判で請求訴訟を行いたいがそもそも取引先に回収できるだけの資産はあるのだろうか」という場合に行われる資産調査。

信用調査(与信調査)として取引前に調査するケースもありますが、債権回収を目的として行われるケースもあります。

この記事では、企業(取引先)の資産調査の方法や適切な依頼先について解説いたします。

そもそも企業の資産調査とは?どんな目的で行うもの?

企業の資産調査とは、主に銀行口座や郵便局の預金残高や不動産、有価証券など、取引先が所有している資産を調査するものです。

例えば掛け売りで取引をした場合、取引先にサービスや商品を提供したにもかかわらず代金が支払われなければ、債権回収を行う必要が生じます。

しかし、例えば裁判所へ支払い請求訴訟を起こして勝訴したとしても、取引先に支払い能力がなければ代金を回収することができないどころか、裁判費用や弁護士費用が水の泡になってしまいます。

そのため、取引前に取引先の持っている資産を把握しておく必要があるのです。

資産調査は信用調査の一環として新規取引前に行われるケースもありますが、強制執行や差し押さえなどの債権回収を行う前に、「そもそも代金を回収することは可能なのか」「回収できるだけの資産はあるのか」などを確認する目的で行われるケースもあります。

一般的に資産調査のみを行う場合は債権回収が目的である場合が多いです。

企業の資産調査を行う方法

企業の資産調査は以下の3つの方法を組み合わせて行います。

それぞれの詳しい内容を解説します。

方法1:決算書・会計帳簿を確認する

決算書からは資産の内訳や資産の具体的な内容を知ることができます。

例えば貸借対照表には、現金、売掛金、預金、商品、原材料、機械設備、土地、建物、有価証券などが勘定項目ごとに帳簿価額が記載されています。

そのため、取引先が所有している大体の資産を把握することが可能です。

また、勘定科目内訳書からは資産の内容を把握することができます。

例えば売掛金では、売掛先の名称、住所、期末残高が記載されており、有価証券の場合は、区分・種類・銘柄・期末残高、期中増の明細などが記載されています。

決算書の内容は会計帳簿の内容と照らし合わせることで信ぴょう性を確認することができます。

調査の際は決算書と会計帳簿を併せて確認するとより確実に資産を把握することが可能です。

ただし、会計帳簿や決算書は閲覧請求を行わなければ確認することができません。

決算書は債権者に計算書閲覧請求権が認められているため、権利に基づいて閲覧を請求しましょう。

一方で、会計帳簿は債権者には請求権が認められておらず、株主等にのみ認められています。

そのため、もし取引先の株主になっている場合は株主の立場から閲覧請求を行いましょう。

方法2:不動産登記簿謄本をチェックする

不動産登記簿謄本からは不動産の所有者や抵当権などの情報を把握することができます。

不動産は重要な資産となるため、取引先が所有している不動産を把握することは取引先の資産を把握する上でとても重要です。

不動産登記簿謄本は最寄りの法務局、出張所、支局やオンラインで取得することが可能です。

以前は不動産を管轄する法務局へ出向いて取得する必要がありましたが、現在はデータ化された登記簿謄本を全国の法務局のコンピュータで共有するシステムが構築されているため、どんな場所の不動産登記簿謄本でも取得できるようになっています。

不動産登記簿謄本で特に重要なのは「権利部」の欄です。

権利部では、不動産の所有権や抵当権、債権額についての登記が記載されています。

必ず確認しておきましょう。

方法3:第三者から情報を取得する

第三者からの情報とは関係者から提供された情報や、信用情報機関のデータベースから得た情報を指します。

信用情報機関には、帝国データバンクや東京商工リサーチなどが挙げられます。

帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用情報機関は独自のデータベースを持っており、売上高や利益を確認することが可能です。

信用情報機関からの情報は資産調査を効率的に行う上で役立ちますが、ある程度の費用がかかります。

利用する際は債権額や債権回収が本当に実現できそうかどうかを含めて検討しましょう。

また、関係者から情報提供を受ける場合は、信ぴょう性が高い情報かどうかを見極めることが大切です。

しかし、「業績が悪化して赤字が続いている」「社長のワンマンぶりが原因で役員がどんどん入れ替わっている」などの噂程度の情報でも、会社の風評や信用性に関わる重要な情報になります。

真偽に関わらず、噂からの情報を含めて慎重に資産について把握をしていくのがよいでしょう。

企業(取引先)の資産調査はどうやって行うの?

企業(取引先)の資産調査には3つの実施方法があります。

実施方法には自社に依頼する方法と外部に依頼する方法があります。

外部に依頼する場合は探偵か弁護士のどちらかに依頼するのが一般的です。

それぞれの実施方法の特徴を見ていきましょう。

【1】自社で行う

資産調査は自社で行うことが可能です。

自社で資産調査を行う際は決算書や不動産登記簿謄本を確認しながら不動産を把握していきます。

外部に依頼するよりも費用がかからない点はメリットですが、資産調査のために人員を割く必要があったり、思わぬところで時間がかかったりすることがある点はデメリットであると言えます。

また、自社で行う場合は資産調査の専門的な知識がない場合もあります。

専門的な知識がない場合は、どこかで抜け漏れが発生してしまう可能性があるため、偏った調査結果になってしまう可能性が高いです。

担当者が資産調査に慣れている場合は自社で調査するのも一つの方法ですが、慣れていない場合は外部に依頼するのがよいでしょう。

【2】弁護士に依頼する

弁護士は弁護士会照会制度により、正当な理由があれば相手の口座情報の開示を銀行に申し立てることができます。

ただ、情報を提供することによって顧客が不信感を抱き契約を解消してしまう可能性があるため、弁護士が開示を請求しても応じないことがあります。

開示請求を拒否したとしてもなんの罰則もないため、実際は銀行側が拒否するケースが多いのが現状です。

探偵に依頼するよりも1口座あたりの料金が安い点がメリットですが、残高の確認ができないというケースがある点はデメリットであると言えます。

【3】探偵に依頼する

探偵は決算書や不動産登記簿謄本から行う基本的な資産調査の他に、隠し口座や預金など調査を行うことが可能です。

依頼者から提供された氏名、住所、生年月日などの事前情報を基に行動調査や身辺調査を行い隠し口座や預金の有無を調査することが可能です。

ただし、隠し口座や預金の有無は調査することができても、口座の残高を確認することはできません。

以前は探偵が内通者を通じて口座の残高を調査することが黙認されていましたが、現在は法規制が強化され、口座の残高を得ることは違法行為となりました。

残高を確認することはできませんが、隠し口座や預金が存在するのかどうかという情報を得ることは債務回収を行う上で需要な情報となります。

現在は、「第三者からの債務者財産に関する情報取得手続き」の開設により、隠し口座がある銀行名が分かれば個人で対象の銀行口座の情報を入手することが可能になりました。

すでに債務者となっており、債権回収や強制執行のために資産調査を行う場合は利用できる方法です。

探偵に依頼して銀行名を特定したら裁判所に申し立てを行いましょう。

隠し口座や不動産などを含めた正確な資産調査を行いたいなら探偵に依頼しよう!

資産調査を外部に依頼する場合、探偵または弁護士に依頼するのが一般的です。

弁護士は法律行為を行うことができるため、弁護士照会制度を利用して真っ向から金融機関に開示請求を行うことが可能ですが、実際は金融機関が開示を拒否されるケースが多いのが現状です。

一方で探偵は法律行為を行うことはできませんが、基本的な方法を用いた資産調査はもちろん、聞き込み・張り込み・尾行によって隠し口座不動産の有無まで調査することが可能です。

弁護士と探偵は資産調査自体への対応力に関してはそれほど違いはありません。

しかし、法的手段を行使しながら調査を進める弁護士と、利用できる各種手続きや聞き込み・張り込み・尾行を駆使して調査を行う探偵では探偵の方が細かい部分まで調査する能力には長けています。

隠し口座を含めたより正確な資産調査を行いたい場合は探偵に依頼するのがよいでしょう。

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