【投稿日】 2022年4月21日 【最終更新日】 2022年5月10日

裁判に勝訴したのに、相手方にお金を支払ってほしいといっても「待って欲しい」「お金がない」といわれてしまい、回収が出来ない…と言う事は良くある話です。

この場合、どうしたらお金を返してもらえるのでしょうか。今回は、勝訴したのに支払いをしてもらえない時の対処法をご紹介いたします。

勝訴した時に知っておきたい2つのこと

貸金請求や損害賠償請求を勝ち取ったとしても、相手に「支払う能力がない」「支払う気持ちがない」となると金銭の回収は難しくなってしまいます。

そのため、予め相手に支払い能力(収入や財産)があるかを確認しておく必要があります。

勝訴したとしても、「裁判の判決通りに支払わなくても問題が無い」「本人以外に支払い責任はない」ということを頭に入れておきましょう。

【1】裁判の判決通りに支払わなくても問題が無い

判決で「支払い義務がある」とされていても、支払い能力がない場合でも日本の制度では、そのような人を強制的に労働させることもできません。

判決どおりにお金を支払ってくれない相手に対し、裁判所が注意をすることもなく、利息は付くことがありますが罰金などの制度はありません。

一方で、勝訴した人が債務者宅に押し入ったり現金を盗ってしまったりすると窃盗罪などの別の罪に問われてしまう場合があります。

【2】本人以外に支払い責任は無い

相手の実家が資産家であったとしても、本人以外に支払い責任はありません。

相手が年少者であったり、相手の親が連帯保証人であったりしないと勝訴した人にお金を支払う義務を負っていないことになります。その場合、相手の親に代わりに支払ってもらうよう請求することもできません。

裁判で勝訴したのにお金を支払わない場合には「強制執行」を!

勝訴判決がでたけれど、相手が従わない(お金を払わない)ということが起こることがあります。その際、裁判の判決通りに相手方に支払いを要求することは出来ますが、現金を持ち出したり、無理矢理奪い取ったとしたら窃盗、強盗として罪に問われてしまいます。

そこで、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書、調停調書、執行証書などの証明を持っている勝訴した人からの申し出に従い、裁判所が相手に対する請求権を強制的に実現する「強制執行手続」が設けられています。

強制執行の流れ

強制執行の流れは以下のSTEP1〜STEP5の通りになります。

それぞれ、手順について詳しく見てみましょう。

STEP1:判決後、債務者が従わない

債権回収に取り合わない債務者を確認出来たら、必要書類を集めて申し立てしましょう。

STEP2:強制執行の申し立て

申し立てには、執行文、債務名義、送達証明書、財産の調査が必要になります。

申立て先は、強制執行の対象となる財産の種類により、下記のとおりとなっています。

財産の種類 申し立て先
不動産 不動産の所在地を管轄する地方裁判所
動産 動産の所在地を管轄する地方裁判所
債権 相手方(債務者)の住所地を管轄する地方裁判所

申立てをする際には申立書のほか、債務名義等準備しておいた添付書類、予納金が必要になりますが、債務者の財産によって必要なものが変わってきますので詳しくは近くの裁判所に問い合わせましょう。

STEP3:財産の差し押さえ

財産の差し押さえに入ります、差し押さえは基本的に通知をせずに行います。連絡をすると、差押えを逃れるために預金をすべて引き出されるなどの恐れがあるからです。

相手に支払いを命じる判決が出て強制執行手続をしようとしても、財産を隠すなどして手続きが出来ない状態になった場合は「仮差押え」も適応になります。

STEP4:競売または取り立て

不動産や動産の場合は競売にかけられ、そこで売却できた金額を債権回収に回します。債権の場合は取り立てを行い、必要金額を回収するという流れになります。

STEP5:配当

競売や取り立てによって得た金額を、債務名義にある金額に沿って配当されていきます。

この流れに沿って裁判所が執行していきます。

強制執行の対象となる財産

金銭の支払いを目的とする強制執行では、債務者の財産を差押さえすることになります。

差し押さえできる財産とそうではないものがありますので、知っておくと良いでしょう。

この場合も、債権者が差し押さえられるのは基本的には債務者名義の財産に限ります。

不動産(土地、建物等) 抵当権などの担保権がある場合は、その担保権者が優先します。
動産(貴金属、骨董品、裏書が禁止されていない有価証券等) 債務者の生活に欠くことのできない衣服、寝具、食料などの差押えは禁止されています。
債権(銀行預金や債務者が第三者に対して持っている売掛債権・給料債権等) 給料債権のうち一定割合や社会保障給付などへの差押さえは禁止されています。

財産ごとに執行の種類が分けられている!

不動産、動産、債権によって執行の種類が分けられます。

不動産執行

債務者の所有する土地や不動産を差し押さえ、競売手続によって売却し、その代金を債権回収に充てる。

不動産執行では、買手がつかないと売却できず債権回収できません。土地によっては買い手がなかなかつかないと言う事もありますので注意が必要です。抵当権などがついていて回収できるお金がない場合は、強制競売の手続きを取消されてしまうこともあります。

動産執行

相手の所持する貴金属や家財、商品などを差し押さえ、競売手続きで売却し、その代金を債権回収に充てる。

動産には差し押さえが禁止されている品目もあります。これは、債権者の嫌がらせなどを防ぐためです。

  • 現金66万円以上
  • 生活に不可欠な家具、台所用品、衣服
  • 職業上不可欠なもの
  • 実印
  • 仏像、位牌など
  • 勲章

債権執行

相手の動産(給与を受け取る権利や銀行から預金を払い戻す権利など)を差し押さえ、第三機関(銀行など)から代金を回収し、債権回収とする。

給料の差し押さえは、アルバイトであっても正社員であっても可能になります。給料の差押えは、原則として相手の給料の4分の1のみ回収が可能とされています。

年金や公的扶助などは全額差押え禁止のため、債務者がきちんと働いているかどうかも債権回収には重要です。

給料の差し押さえが出来たとしても、債務者がすぐに転職してしまったという場合には、差押えから退職までの給料分しか回収できません。

強制執行を行うのに必要な債務名義

強制執行を行うには、債務名義が必要となります。債務名義とは、強制執行によって実現される予定の請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書です。

債務名義にはいくつか種類があります。

確定判決 支払いなどを命じている判決で、上級裁判所から取り消しが行われないものをさします。
仮執行宣言付判決 当該判決が確定する前でも執行することのできる効力をもつ判決。
仮執行宣言付支払督促 裁判所が代わりに債務者へ支払いの督促を行う効力を持つもの。
和解調書、調停調書等 調停が成立した際に合意した内容をまとめて記載した文書。

判決が出たとしても油断は禁物!

例え判決が出たとしても、債務者に支払う気持ちがなければ債権は回収できません。訴訟を起こして勝訴したのに、手続きで時間を取られ、金銭的な負担をしたにもかかわらず思うような配当を得られない…なんてこともあり得ます。

場合によっては裁判で確定した権利の消滅時効を迎えてしまって泣き寝入りになってしまう可能性もあるため、返済されないと思ったら早めに弁護士に相談するのが良いでしょう。

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