【投稿日】 2023年1月19日 【最終更新日】 2023年1月19日

裁判を行う上で有利になる情報を集めることは非常に大切になります。

皆さんは調査嘱託というものを聞いたことがあるでしょうか?調査嘱託は、裁判に必要な調査を委託し、その調査報告を証拠資料として扱うための調査方法のことを指します。

裁判を行うために必要なものである調査嘱託。

今回はこの調査嘱託について必要条件や手続きに必要な流れをご紹介していきます。

調査嘱託とは?

調査嘱託とは、簡単に言ってしまえば裁判所が必要な調査を委託して、その調査によって獲得した調査報告を証拠資料として扱うための手続きです。

例えば、離婚調停中に夫が自分の預金額や退職金の額を開示してくれない時に、妻が銀行や会社に開示を問い合わせたとしても、個人情報保護のために回答してくれません。

その場合に、裁判所の方から銀行や会社に対して情報開示をするように求めるのが調査嘱託の制度になります。

調査嘱託自体、裁判所が自動的に行ってくれるものではないので、当事者が裁判所に対して調査嘱託をするように申し立てを行わなければなりません。

しかし、この申し立てを行ったからといって必ずしも裁判所が動いてくれるとも限らないのも事実です。

裁判所に調査嘱託をしてもらうためには、申立書を記入し、細かな情報を共有しなければなりません。

文書送付嘱託とは異なり、調査の結果を証拠とするには、当事者の意見陳述の機会があれば足り、当事者による証拠提出は不要とされています。

調査嘱託について、簡単にまとめると以下のようになります。

  • 調査嘱託とは、裁判所を通じて第三者に対し、裁判中に必要な情報に関しての質問・問い合わせを行う手続き。
  • しかし、第三者へ負担をかけることは許されていない。
  • 調査嘱託を行う際には、裁判中に、一方の当事者が申立書を提出し、もう一方の当事者に「資料や証拠の取り寄せが必要か」「一切不必要か」の意見を聞いて裁判所が判断するというものになります。
  • 裁判所が決定した場合には、裁判所から各機関に質問書が送られます。
  • 類似した事項に、文書送付嘱託というものがありますが、これは第三者から文章を取り寄せる手続きのことを指します。調査嘱託は、第三者に簡単に質問をする手続きという形になります。

概要がわかったところで、詳しい手続き方法について見ていきましょう。

調査嘱託に必要なもの

調査嘱託を行うにあたり、手続きを進めていく際に必要なものが存在します。

明確な質問内容と調査嘱託先の時間によってはそもそも手続き自体が採用されない場合もあることを覚えておきましょう。

必要なもの1:明確な質問内容

まず必要なものとして、裁判中の内容についての明確な質問を用意する必要があります。

裁判所は、捜索的な質問を嫌う傾向にあります。

「~はどうなってますか?」というような曖昧な内容ではなく、「本件の争点は○であり、これに対して▲という事実があります。▲であるかどうかの事実確認がしたいです」というようなわかりやすい質問を用意しておくと、申請が通りやすくなります。

調査嘱託を行ってもらえるかどうかは、裁判所へその必要性を説得できるかどうか次第です。

裁判上の主張や関連性の強いものであれば採用されやすくなりますが、争点と違う面での質問内容や申請の場合には採用されにくくなります。

近年では、個人情報保護の観点から、採用基準が厳しくなっている傾向にある為、確固たる主張をもって申請を行うのが良いでしょう。

必要なもの2:調査嘱託の宛先の時間

調査嘱託が認められることにより、その相手先ではそれに応えるための文書の手配が必要になります。

また、文書の内容・質問の内容によってはプライバシーの侵害になりかねません。

プライバシーの侵害に当たらないかどうかを確認したり、許可を取る必要があったりする場合には時間のかかる行為です。

従って、調査嘱託で必要な情報なのかどうかとの審議の時間もかかることになります。

このことからみても、調査嘱託は簡単に行える手続きではありません。

調査嘱託における機関ごとの対応

申請を行った後は、相手先から回答が文書として裁判所に届きます。

当事者はその連絡を裁判所から得て文書をコピーし、証拠として裁判所に再び提出しなければなりません。

回答を求める相手先によって、回答してもらえること、貰えないことがあります。

今回は特に多い、銀行と医療関係についての各機関ごとの対応を見ていきましょう。

銀行の場合

銀行は、次のように調査内容によって、対応が異なります。

口座取引

銀行に向けて申請を行った場合、大抵は口座の取引についての照合を行うケースがほとんどです。

請求者本人の口座や取引については、個人情報として問題がない為、採用されやすい傾向があります。

しかし、過去の記録を一定時期以上開示を求める場合には、銀行側もすでに破棄した情報として主張し、開示したがらないこともあります。

特定の日にちの取引

特定の日にちに行われた引き出し、口座解約、送金などで取引を本人が行ったのかどうかが争点となる場合には、必要性も高いと認定されて採用されやすくなります。

また、その場合には銀行側も協力的であることが多く、証拠として入手できる可能性が高いと言えます。

相手方が法人の口座の場合

裁判中の相手方の口座については、相手が法人の場合には採用されやすいですが、個人の口座の場合には個人情報保護の観点から開示が出来ない事が多い傾向があります。

法人の口座を開示するとき、対象期間が長期間にわたる場合には記録が膨大な量になります。

そのため、全ての必要な情報が残っているとも限らず、それらをすべて銀行側が保管しているとも限りません。

また、それらのすべての記録を要求すると、費用がかさんだり、証拠として提示するために探す手間が膨大にかかります。

場合によっては、銀行側が裁判所からの送付嘱託・調査嘱託に対応する手間を省くために保管していないと申告したり、通常よりも高い手数料を要求したりする事もあるので注意しましょう。

相手方が個人の口座の場合

個人の口座への申請を行う場合、裁判上での関連性が高かったとしても対象期間を限定的にしないと採用されないという傾向にあります。

主張する内容だけではなく、相手の訴訟する態度や他の証拠状況もふまえたうえで、裁判内容に準じた期間を1週間や2週間などに限定することで、認められる可能性が高くなります。

情報不足のまま何となくで申請してしまうと、採用されません。

調査嘱託を行って申請が採用されなかった場合には、当事者の主張は根拠がないとして発言の信用度が下がる可能性もあります。

そういった事を踏まえて、調査嘱託の申請は慎重に行うべきだと言えるでしょう。

医療の場合(カルテ等)

医療記録を出す場合には、医療機関自体が裁判所からの調査嘱託を受けたとしても、患者本人の意思同意がなければ情報を表に出さないというのが基本の対応となっています。

裁判所側も、患者本人の同意を得られていなければ調査嘱託をする事はありません。

そのため、裁判中に相手の医療記録を出す場合には相手方の同意が必要になります。

場合によっては相手が同意せずに証拠が出せないということにもなりかねないのが事実です。

ただし、後ろめたいことが無ければ医療記録を出すことに抵抗しないともいえますので、同意しない時点でなにか不利な情報がある可能性もあります。

医療機関に調査嘱託の申請を行うと、資料作成や情報提供の請求をされる場合があります。

医療機関の場合、カルテやMRI画像ROMなどが証拠として提示されるため、それらを制作するのに費用が掛かることを知っておきましょう。

事前に料金を告知してくる事の方が多いですが、なかには事後報告の場合もあります。

国民生活センター

類似被害情報の多い、消費者被害事件、悪徳商法や詐欺商法の事件では、国民生活センターに依頼することで採用されやすくなります。

これは、特定の業者の被害相談状況等をPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)から抽出してほしいと申請する場合です。

但し、消費者生活センターの職員が相手の業者名を教えてくれるかどうかは職員によるものになります。

相談者の聞き方によっては教えてくれるところの方が多いようです。

しかし、業者自体が詐欺だった場合には、業者の被害が本当に該当業者なのかどうかが分からず、特定できないという結果になることもあります。

調査嘱託の手続き

実際に調査嘱託は次のようなSTEP1〜STEP6のような手順で手続きを行います。

STEP1:申し立て

まず、裁判中の当事者が調査嘱託の申し立てを行うことが第一になります。

調査嘱託の申し立てに必要なのは「証明すべき事実」と「嘱託先」、「調査嘱託すべき調査事項」を記載するようにしましょう。

この時、出来るだけ明確に、わかりやすいものを用意しておくのが大切です。

STEP2:裁判所の仲介

裁判所に提出し、裁判所はその申し立てを受けて、相手方の意見も聞きます。

STEP3:調査嘱託の可否

当事者と相手方、双方の話を聞いて、調査嘱託の採否が決まります。

採否については、裁判期日として口頭で決めたり、期間外に書類を作成したりして決定されます。

STEP4:裁判所から嘱託先へ

裁判所から嘱託先へ連絡が行き、申し立てについての内容の回答が来ます。

STEP5:嘱託先からの回答

嘱託先から回答が得られた場合、裁判所はこの回答を口頭弁論に検出し、共有します。

STEP6:証拠として提示

調査嘱託で得た回答を証拠にするためには、裁判所が口頭弁論で提示して、当事者に意見を述べる機会を与えれば認められます。

当事者がプラスして証拠を提示したり、情報を精査することなく、調査結果そのままを証拠資料にすることが可能です。

また、当事者がこの回答を書面にして提出したい場合にはそれも可能です。

なお、当事者は調査嘱託の結果によって申し出を取り下げることはできません。

調査嘱託にかかる費用

調査嘱託は、基本的には往復分の郵便費用のみでできます。

収入印紙などを用意する必要はありませんが、実際に情報をやり取りする際の郵便物の代金は用意しておきましょう。

しかし、嘱託先の機関によっては手数料などを請求してくる場合があります。

機関によってことなり、厳密に決められているわけではありませんので、弁護士と相談して調査しましょう。

機関や調査内容によっては数万円ほどを要求される場合もあります。

調査嘱託は調査する方法や内容によって対応が異なる

調査嘱託とは、事実に基づいた調査であっても、証拠を調べることであっても、第三者機関へ裁判所から調査・報告を要求するという手続きになります。

調査嘱託は主に、「事実の調査」「証拠調べ(職権発動)」「証拠調べ(申し立て)」という風に方法が分かれていますが、これらのどれをとったとしても回答の信用性に差が生まれるわけではありません。

ただし、裁判所の応答義務や個人に対する調査などはできることが異なります。

具体的には、下記の表を参考にして下さい。

調査嘱託の方法 事実の調査 証拠調べ(職権発動) 証拠調べ(申立て)
裁判所の応答義務 なし なし あり
意見聴取の機会付与 裁量 裁量 義務的
団体に対する調査嘱託 可能 可能 可能
個人に対する調査嘱託 可能 できない できない

このように、調査事例・方法によって可能なものと不可能なものが異なります。

調査嘱託を行う場合には注意が必要です。

調査嘱託は撤回が出来ないので注意!

調査嘱託とは、裁判所を通して第三者の機関に調査・報告を求めるものです。

調査嘱託をする事で裁判が上手く進むこともあれば、こちらにとって不利な情報が出てきてしまう場合もあります。

もし、調査嘱託を行って予想外の回答を得たとしても、調査を撤回することができないので注意しましょう。

また、調査嘱託は裁判所の可否が必要になります。

そのため、個人情報保護の観点から申し立てが採用されないということもあります。

申し立てを行ったからといって、すべて採用されるわけではないことを知っておきましょう。

調査嘱託に基本的に費用はかかりませんが、郵送代や嘱託先が提示した料金は支払わなければなりません。

事前に申告してくれる機関もありますが、そうではないところも多い傾向があります。

費用について不安がある場合には、弁護士に相談しましょう。

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また、あくまで調査嘱託は関係各所に裁判所経由で情報開示依頼をするというものですが、探偵であれば、そういった書面などでのやりとりだけではなく、張り込みや尾行、独自の情報網を活用など、あらゆる調査手法を用いて、素性や行動、交友関係、過去の経歴、資産や隠し財産の有無、証拠映像や音声の収集など、より精度の高い証拠や情報を収集することが可能です。

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