【投稿日】 2022年7月26日 【最終更新日】 2022年8月26日
財務デューデリジェンスは、M&Aにおいて、買収対象企業の財務状況・正常収益力などを把握し、財務面のリスクを洗い出し、適正な企業価値を算定するため、収益性や設備投資の負担、業績の推移、自社との相性や最終目標とのマッチ度などを詳細に調査するものです。
貸借対照表や損益計算書といった財務諸表等を検討する中で、簿外債務や偶発債務の洗い出しも実施します。
キャッシュフローの分析や、会計処理の正しさのチェックなどには専門知識が必要なため、公認会計士など専門家のサポートが必要です。
この記事では、財務デューデリジェンスを依頼できる公認会計士の報酬相場と、依頼先の選び方などについて解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
財務デューデリジェンスの報酬相場
財務デューデリジェンスの報酬相場は、だいたい決まっています。
まずは、財務デューデリジェンスの報酬相場と、その費用が決まる要素、費用の決め方について解説します。
財務デューデリジェンスの報酬相場
財務デューデリジェンスの報酬相場は、公認会計士1人1時間あたり2万円~5万円程度が相場となっているようです。
1日7~8時間と考えると、1日あたり14万円~40万円程度かかります。
財務デューデリジェンスは専門性が高い分野であるため、通常の公認会計士の報酬相場よりも少し高くなっているのです。
また、財務デューデリジェンスはどんなに小さなM&A案件であっても最低1人×5日はかかるため、最低でも70万円~200万円はかかると思っていた方が良いでしょう。
では、このような報酬相場は、どのようにして決まるのでしょうか。
財務デューデリジェンスの費用が決まる要素
費用の決まる要素には、以下の6つがあります。
- コンサルタント企業(公認会計士事務所)の規模
- プロフェッショナル度
- 買収対象企業の規模
- 買収対象企業の業種
- 業務の範囲
- 報酬体系
この項では、これら一つ一つについて見ていきます。
コンサルタント企業(公認会計士事務所)の規模
財務デューデリジェンスの費用を検討するには、まず、どれくらいの規模のコンサルタント企業・会計事務所に依頼するかによって、相場が異なります。
当然のことながら、大手のコンサルティングファームや監査法人等に依頼すると費用は高くなり、中小のコンサルティングファームや会計事務所に依頼すれば安くなるのです。
大手は一般的に人材が豊富で、一定以上の品質管理ができているため、安心して任せることができる反面、単価が高めで、また細かな手続きの実施や上司のチェックの実施が社内で要求されるため、長い作業時間が必要となり、料金が高くなる傾向にあります。
一方、中小のコンサルティングファームや個人の会計事務所は、大手と比べると品質にバラつきがありますが、小回りや融通が利き、単価も低めで作業時間も短くなるため、料金は安くなるでしょう。
また、担当の公認会計士が何人つくかによっても、かなり費用は変わってきます。
大規模なM&Aであれば、大手は10名以上の公認会計士を投入するでしょうし、小規模な案件であれば、中小の会計事務所で1人~数人で済むかもしれません。
そういったことも加味すると、費用相場は、大手であれば最低500万円以上、中小であっても、最低100万円以上となります。
プロフェッショナル度
同規模のコンサルティングファームや会計事務所であっても、それぞれに特徴があります。
M&Aのマッチングに強みを持っている場合や、財務デューデリジェンスを得意としている場合、税務顧問をメイン業務としているが、財務デューデリジェンスも行う場合など、財務デューデリジェンスに対するプロフェッショナル度が大きく異なります。
財務デューデリジェンスを専門にしている事務所など、プロフェッショナル度が高い事務所ほど、費用は高くなることが一般的です。
買収対象企業の規模
財務デューデリジェンスを行いたい対象企業の規模によっても、費用は異なります。
調査項目の大枠は、規模の大小にあまり影響されませんが、一般的に、規模が大きくなると、子会社を保有していたり、事業を複数行っていたり、海外展開していたりするなどの場合があり、これらの調査も必要であれば、数社分の財務デューデリジェンスを行うことになるため、当然費用も高くなります。
小さなM&A案件なら最低公認会計士1人×5日で終わることがあっても、中小企業でも規模が大きくなり、公認会計士4人×5日、或いは公認会計士1人×20日の作業が必要になれば、4倍の費用がかかることになるのです。
また、対象企業の売上高によっても、費用が異なってきます。
当然、売上高が高い方が費用も上がります。
例えば、売上3億円の会社と、売上30億円の会社の財務デューデリジェンス費用は約2倍程度、売上3億円の会社と売上300億円の会社では3~5倍程度の差となることが多いでしょう。
買収対象企業の業種
買収対象企業が営んでいる業種によっても、財務デューデリジェンスの費用は異なります。
例えば、製造業の財務デューデリジェンスと不動産業の財務デューデリジェンスの費用を比較すると、一般的に、製造業は確認する必要のある資産や契約書類がかなり多く、それに比例して多くの時間が必要となり、高額になりますが、不動産業は確認する必要のある資産や契約書類が少ない傾向にあることから、費用は安くなります。
ただし、不動産業においては、財務デューデリジェンスは軽減されますが、物件の調査をしっかり実施するための不動産デューデリジェンスが欠かせません。
調査範囲
一口に財務デューデリジェンスと言っても、M&Aスキームやバリュエーション方法、調査の目的、買収対象企業の業種等により、調査項目は当然異なります。
これらの調査項目を取捨選択して絞り込むことで、多少の費用削減にはなるでしょう。
しかし、会計は様々な項目と連動していることが多く、あまり調査項目を絞り込み過ぎると、会社全体としての動きを見誤ったり、見落としたりしてしまうことがあるため、注意が必要です。
報酬体系
財務デューデリジェンスの報酬体系には数種類あり、それによっても相場は変わってきます。(次項参照)
基本的には、各事務所やコンサルタント会社ごとに決められている報酬体系によることになりますが、担当の会計士との協議により決まる部分もあるでしょう。
調査のための出張に必要な旅費交通費については、別途実費精算としているケースが多いようです。
費用の決め方
前項で述べたように、財務デューデリジェンスの報酬体系には数種類あります。
ここでは、タイムチャージ式、日数計算式、固定報酬+チャージ式の3種類を見ていきます。
タイムチャージ式
タイムチャージ式は、1時間あたりの単価を設定し、そこに実際にかかった時間を乗じることで、報酬を算定します。
相場は、先に述べたように、1時間あたり2万円~5万円程度です。
見積もりの段階では、大まかな時間を提示することで、見積もり額を出してきますが、場合によっては、時間を超過することで、見積もりよりも高くなることがあり、逆に、見積もり時間に到達しないことで、見積もりよりも安くなることもあります。
日数計算式
財務デューデリジェンスの期間にかかる日数を算出し、その日数をベースに報酬を決める方法です。
財務デューデリジェンスは対象企業の規模にもよりますが、1週間から2ヶ月程度かかることが多いため、その範囲内で日数を算出して、見積もりを提出してきます。
一定時間(日数)までは固定報酬でその後はチャージ式
タイムチャージ式と日数計算式のハイブリッド形式になります。
一定時間や一定日数までは固定としており、もし追加で作業が必要な状況が生じた場合に、追加でチャージすることを定めています。
いずれの方法をとるにしても、会計士側は時間あたりの単価を設定しており、それを積み上げて見積もりを作成することが一般的です。
そのため、どの方法にしても総額は大きく変わらないことが多く、見積額が妥当かどうかは、時間あたりの単価に換算してみると良いでしょう。
財務デューデリジェンスの依頼先
財務デューデリジェンスにおいて、主に調査するのは、買収対象企業の財務諸表です。
財務デューデリジェンスは、自社内に経理部門がある場合には、経理スタッフが行います。
しかし、財務デューデリジェンスは短期間で行われることが多く、その結果はM&A自体に大きな影響を及ぼすため、経理スタッフだけでは難しい場合には、以下のような外部委託先の専門家(公認会計士・税理士など)に依頼し、共同で行うのが一般的です。
財務デューデリジェンスの依頼先の選び方
前項で挙げたような、外部委託先の専門家に依頼する場合、どのような基準で選べばいいでしょうか。
現在では、コンサルティングファームや公認会計士事務所は山ほどあるので、以下のようなポイントに気を付けて、選ぶようにしましょう。
財務デューデリジェンスの依頼先を選ぶ時のポイント
依頼先を選ぶ時のポイントは、以下の6つです。
以下、一つ一つ見ていきましょう。
M&Aの実績(財務デューデリジェンスの経験)は豊富にあるか
まず重要なのは、M&Aの実績や財務デューデリジェンスの経験が豊富にあるかどうかということです。
この時注目すべきは、自社と同じ業界でのM&A実績です。
例えば、製造業のM&Aを検討している場合、他の業界のM&Aしか実績がないところだと、売り手企業・買い手企業の選定ノウハウや、条件交渉のポイントを理解していない恐れがあります。
具体的に、どのような交渉をしたのか、売り手や買い手の目的は達成できたのかなど、掘り下げて確認することが重要です。
ポイントとしては、企業としての実績はもちろんですが、担当者がどのような考えを持ち、これまでどのような経験をしてきたか(実績を積んできたか)を確認することが必須です。
M&Aの場合、コンサルタント企業や事務所自体もそうですが、担当者の能力も結果に対して大きな影響を及ぼします。
その点では、コンサルタント企業や会計事務所だけでなく、担当者の能力や経験(実績)も重要な判断要素になります。
特に、財務デューデリジェンスに関して詳しい知識や豊富な経験、ノウハウを持っている人であれば、安心です。
経営者の気持ちに寄り添ってくれるか
専門家を選ぶ時は、必ず担当者に対面で相談しましょう。
会社や事業を売る行為は、大変大きな出来事です。
そのサポートを、顔や人柄を知らない人物に依頼するのは、非常にリスキーと言えるでしょう。
ホームページなどに、どれだけ素晴らしい文言が記載されていても、担当者の質を対面で直接確認することが重要です。
その際、経営者の気持ちに寄り添ってくれるかを重点的に確認しましょう。
成約を急がせるような発言が目立つ場合は、経営者の気持ちを無視しがちなため、要注意です。
親身になって対応してくれ、誠実に業務をこなしてくれると信頼できるような人物を選びましょう。
幅広いネットワークを持っているか
幅広いネットワークを持っているかどうかも重要なポイントです。
デューデリジェンスは、数多くの専門家に依頼するため、それぞれの専門家がネットワークを繋いでいると、一貫してサポートが受けられます。
独立した公認会計士事務所でも、弁護士や弁理士、探偵事務所などと繋がりがあるところだと、業務を一貫して任せられて安心でしょう。
質問に丁寧に答えてくれるか
経営者が質問した時に、丁寧に回答してくれるかどうか確認しましょう。
経営者を丸め込むような、横暴な態度で回答する会計士は避けた方が無難です。
質問への回答の姿勢からは、依頼主の利益に繋がる行動をとれるかどうかがわかります。
料金体系は明瞭か
費用相場を見てもわかるように、財務デューデリジェンスはかなりの高額な出費となります。
したがって、料金体系が明瞭かどうかは、とても重要なポイントです。
どんな報酬体系をとっているか、対象企業の規模や業種に対しての相場に合っているか、公認会計士の投入人数は妥当か、かかる見込み期間は妥当かなど、費用相場を決める要素や報酬体系に沿って、しっかりと確認しましょう。
また、実績として、今までに担当したM&Aの費用の概算などを聞くのも良いでしょう。
サポートの範囲はどこまでか
M&Aに関わる業務は、財務デューデリジェンスだけではありません。
担当してくれる公認会計士にどこまでのサポートを得られるかを確認しておく必要があります。
ここをしっかり確認しておかないと、後から「業務外」として、別途請求されかねません。
急ぎの案件で、緊急対応や土日祝日対応を望む場合は、それも伝えた上で、見積もりを出してもらいましょう。
最終的には自社のM&Aの規模とニーズに合うところを探す
これまで、財務デューデリジェンスの依頼先を選ぶ時のポイントを6つお伝えしてきました。
しかし、最終的に何を重要視するのかと言えば、自社のM&Aの規模とニーズに合うところであることと言えます。
小規模な案件なのに大手監査法人に依頼しても、費用がかさむばかりでしょうし、大規模なM&Aなのであれば、個人の事務所では対応しきれないでしょう。
また、財務デューデリジェンスの調査項目や調査内容によっても、公認会計士の得意分野とマッチしているかどうかが違ってきます。
公認会計士にも、それぞれ得意分野がありますので、あくまで自社のM&Aの規模とニーズに合うところを探すようにしましょう。
財務デューデリジェンスは経験豊富で信頼できる公認会計士に依頼しよう!
財務デューデリジェンスを依頼できる公認会計士の報酬相場や、依頼先を選ぶ時のポイントを解説してきました。
財務デューデリジェンスは、M&Aに大きな影響を及ぼすものであり、結果も大きく左右するものなので、公認会計士選びには、失敗したくないものです。
最低でも、財務諸表監査の知識と、それに関する豊富な経験があり、財務的なリスクを見抜ける能力に長けている公認会計士に依頼すると安心できます。
また、直接対面で話してみて、信頼できるかどうかを確認することも重要です。
知識と経験と能力があり、自社の利益をきちんと考えてくれるような、信頼できる公認会計士に依頼するようにしましょう。
財務デューデリジェンスと並行して、M&A相手先企業や役員の素性・実態などの調査も忘れずに!
財務デューデリジェンスなど、M&Aに際して必須だと言われるデューデリジェンスに加えて、「そもそもそのM&Aの相手先企業やそれを取り仕切る役員などが信用に足る人物なのか?」をしっかりと事前に調査しておくことも重要です。
なぜなら、たとえ今回解説してきた財務デューデリジェンスや他のデューデリジェンスでM&AがOKと判断された企業であっても、例えば役員に過去犯罪歴があったり、反社会的勢力の繋がりがあったりすると、M&A後に大きな損失やトラブルを被ってしまう可能性が高いためです。
詐欺なども巧妙化し、専門家でも見抜くことが難しくなってきている現代では、財務デューデリジェンスと合わせて、こういった相手先の企業自体や企業の役員が信用に足るかどうかをしっかりと調査することが重要視されてきています。
こういった調査に関しては、M&A関連のコンサルティング会社や弁護士事務所、会計事務所ではなく、企業や個人の信用調査に明るい探偵事務所に依頼します。
探偵事務所SATでは、これまでに数多くの企業や個人の信用調査を行っており、こういった提携前や取引前、今回の記事のようなM&A前の相手先企業の調査依頼を承ることが可能です。
今回ご紹介したような財務デューデリジェンスと並行して、探偵事務所を活用したM&Aの相手先企業や役員の信用調査を行いたいという方は、お気軽にご相談ください。
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