【投稿日】 2022年12月9日 【最終更新日】 2022年12月10日

新型コロナや円安による原材料価格の高騰などの影響による倒産が増えており、さらに取引先の影響を受けて倒産する「連鎖倒産」の増加も懸念されます。

そこでこの記事では、「連鎖倒産」とは何か、「連鎖倒産」が起こる理由、そして「連鎖倒産」のリスクを軽減したり回避したりするための方法について解説します。

そもそも倒産とは?

「倒産」という言葉は、ニュース報道などでもよく聞く言葉ですが、これは法律用語ではありませんし明確な定義もありません。

しかしながら、一般的には個人や法人などの経済主体が経済的に破綻しており、弁済期にある債務を弁済できない「債務支払不能に陥っている状態」や「経済活動を継続することが不可能な状態」あるいは「経済活動を継続することが不可能になる恐れがある状態」にあることを言います。

「経営破綻」という言葉も耳にすることがあるかと思いますが、これは経済主体が法人の場合の倒産のことを言います。

なお倒産には、「法律上の倒産」と「事実上の倒産」という区別があるので、詳しく見ていきましょう。

「法律上の倒産」とは?

まず「法律上の倒産」とは、法的手続に基づき裁判所によって「倒産状態にあると認められた」状態のことで、「破産手続」「特別清算手続」「民事再生手続」「会社更生手続」の4種類があります。

破産手続 破産法に基づく倒産手続です。
裁判所から選任された破産管財人が、破産者の財産を処分清算し、得られた金銭を債権者に弁済または配当します。
特別清算手続 会社法の特別清算に関する規定に基づく倒産手続です。
法人・会社の資産や財産をすべて処分清算し、その法人・会社は消滅します。
破産手続と異なり、基本的に清算人が手続を行います。
民事再生手続 民事再生法に基づく倒産手続です。
法人・会社の存続を前提として、一定の財産の保有を認めながら債務を圧縮して、法人・会社の経済的な更生を図ります。
裁判所から選任された監督委員が手続の進行を監督しますが、実際には法人・会社自身が手続を行います。
会社更生手続 会社更生法に基づく倒産手続です。
法人・会社の存続を前提として、一定の財産の保有を認めながら債務を圧縮して、法人・会社の経済的な更生を図ります。
大規模企業を想定しており、原則として経営陣の刷新が必要とされます。
裁判所から選任された更生管財人が手続を行います。
株式会社しか利用できませんので、会社更生手続は民事再生手続の特別類型ということができます。

「事実上の倒産」とは?

次に「事実上の倒産」とは、法的には「倒産状態にあると認められていない」のですが、現実的には「法律上の倒産」と同等の状態にある場合のことを言います。

「事実上の倒産」の最も典型的な例は「手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けた場合」です。

ここで「銀行等取引停止処分」とは、正式には「手形交換所取引停止処分」と言い、手形交換所規則に基づき手形交換所加盟銀行が取引を停止することを言います。

法人や個人が振出した小切手や手形の支払期日に支払義務を果さず不渡りを出した場合、「不渡届」が提出されて加盟金融機関に通知されますが、その後6ヶ月以内に再度「不渡届」が提出されると「手形交換所取引停止処分」を受けます。

この処分を受けてから2年間は、当座勘定や貸出しの取引をすることが禁止されますので銀行取引ができなくなり「事実上の倒産」の状態となってしまう訳です。

なお、「中小企業倒産防止共済法」や企業信用調査会社においても、手形不渡りによる「銀行等取引停止処分」を受けたことが「事実上の倒産」の類型として挙げられています。

連鎖倒産とは?

では「連鎖倒産」とはどのような倒産のことを言うのでしょうか?

「連鎖倒産」とは、取引先(販売先)が倒産してしまったことによって、債権(売掛金)の回収ができなくなり、自社も資金繰りが苦しくなって倒産してしまうことを言います。

例えば、元請け会社が倒産したことによって下請け会社が「連鎖倒産」することや、親会社が倒産したことによって子会社が「連鎖倒産」するようなケースが一般的です。

「連鎖倒産」は、不況の時に発生することが多く、業種としては建設業や製造業に多い傾向があります。

連鎖倒産が起こる主な理由

メインの取引先(販売先)が1社~数社に限られている場合に、その主な取引先(販売先)が倒産してしまうと、売上が激減してしまいます。

さらに、倒産した取引先(販売先)の売掛金が回収不能となってしまうこともあります。

このように、取引先(販売先)の倒産の影響を受けて、自社の資金繰りが苦しくなり、最悪の場合は倒産してしまうのです。

「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避する方法

中小企業においては、主な取引先(販売先・仕入先)の倒産の影響には計り知れないものがあり、「連鎖倒産」は絶対に回避しなければなりません。

ここでは、「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避する方法を4つ紹介します。

方法1:取引先(販売先・仕入先)を分散させる

「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避する方法の1つ目は、取引先(販売先・仕入先)を分散させることです。

例えば、販売先が1社だけに集中している場合は、その販売先が倒産したからといって、すぐに他の販売先を見つけることができずに「連鎖倒産」する可能性が高くなります。

倒産だけではなく、支援災害や事故、販売先の方針転換などによって影響を受けることも少なくありません。

また、仕入先が1社だけに限られている場合も、仕入先が倒産すると原材料の仕入れができなくなって「連鎖倒産」することがあり得ます。

複数の取引先(販売先・仕入先)を持つようにすれば、もしそのうちの1社が倒産したり契約が切れたりしても、他の販売先や仕入先があるので経営を持ちこたえることができます。

なお、販売先については、景気の悪化や特定の業界だけが不振に陥るようなことが考えられるため、理想的には業種の異なる販売先を持つことが望ましいと言えるでしょう。

方法2:取引先の倒産の予兆を早くつかむ

「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避する方法の2つ目として、取引先(販売先・仕入先)の倒産の予兆を早くつかむということが挙げられます。

倒産の予兆を早く知ることができれば、それに巻き込まれないような対策を講じたり、適切な手を打ったりすることができ、「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避することができるからです。

以下に、代表的な倒産の予兆をいくつか紹介します。

支払い時期の変更の要請がないか

取引先(販売先・仕入先)の倒産の予兆として最も一般的なのが、経営状態の悪化や資金繰りの悪化です。

販売先から支払猶予(支払期日の延長)を求めてきた場合は、支払期日までに資金が集まらないということを表しており、資金繰りが苦しくなっている可能性があります。

このように、販売先からの支払いが遅れだしているということは、資金繰りの悪化や売上減少などによって経営が苦しくなっている可能性があります。

また逆に、仕入先から支払期日を早くしてほしいという要請があった場合も、仕入先の資金繰りの悪化の可能性を考えるべきです。

このような要請が来る原因としては、他の取引先や金融機関に対する支払期日までに資金が確保できていない可能性が考えられます。

役員や従業員が辞めていないか

役員は経営状態が良くないこと、資金繰りが悪化していることなどが分かっていますので、会社が倒産してしまう前に辞めてしまうことがあります。

役員が独立のためや役員間の対立などの理由もなく突然辞めてしまう場合や、複数の役員が同時期に辞めてしまうというような場合は注意が必要です。

また、経理部門の担当者などが辞めていく場合も要注意です。

資金繰りが悪化してくると、経理部門の担当者は取引先や金融機関への支払いのために走り回らなければならなくなり、会社の現金や預金の減少を知ることとなります。

そのため、他の従業員より先に辞めていく場合があるのです。

従業員の解雇や希望退職募集がないか

経営状態が悪化してきた会社は、人件費の削減のため従業員を解雇することがあります。

会社都合の解雇は法的に難しいため、人件費削減のために希望退職者を募るのが一般的です。

希望退職の場合は退職金を支払う必要がありますので、まだその余力はある状態ですが、先の見通しは明るくないということを示しています。

社長・役員や従業員の不在が増えていないか

経営が悪化してくると、社長や役員、従業員が取引先や金融機関への対応に追われて会社にいなくなるということも珍しくありません。

自社の営業担当者が取引先を訪問する際には、社長や役員、従業員が不在がちではないか、態度や様子に変化がないかどうかなどをチェックしておき、何らかの変化があった場合には社内に伝達するような仕組みにしておくことが重要です。

方法3:資金の回収は早めにする

「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避する方法の3つ目は、資金の回収を早くすることです。

これは「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避に限ったことではないのですが、特に前項のような倒産の予兆をつかんだ場合は、極力資金回収を早くするようにしましょう。

新たな売掛金が発生する場合は現金取引に切り替えたり、売掛金の支払いサイクルを短縮する方法も考えられます。

取引先(販売先)が倒産して回収できなくなってからでは間に合いませんので、できるだけ早く確実に回収できる方法を取るようにしましょう。

方法4:「中小企業倒産防止共済制度」に加入しておく

「中小企業倒産防止共済制度」は「中小企業倒産防止共済法」に基づく共済制度で、「連鎖倒産防止共済」または「経営セーフティ共済」とも言われます。

国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているもので、加入申込み手続きが行えるのは、商工会議所や商工会又は金融機関などです。

この共済制度に加入して6か月以上を経過した後に、取引先の「破産手続」「特別清算手続」「民事再生手続」「会社更生手続」が開始された場合、または「銀行取引停止処分」を受けた場合に、積立掛金総額の10倍を上限として最高8,000万円までの貸付けが受けられます。

共済金の貸付けの条件は、無担保・無保証人・無利子で、返還期間は貸付金額によって異なり5~7年です。

毎月の掛金は5,000円から200,000円までの範囲内(5,000円刻み)で自由に選ぶことができ、積立限度額は800万円です。

加入資格は、業種などによって以下のとおりです。

  • 製造業、建設業、運輸業等の場合、資本金額3億円以下または従業員数300人以下
  • 卸売業の場合、資本金額1億円以下または従業員数100人以下
  • サービス業の場合、資本金額5千万円以下または従業員数100人以下

方法5:「セーフティネット保証制度」を利用する

「セーフティネット保証制度」は、「中小企業信用保険法」で定められた要因によって経営の安定に支障をきたしている中小企業者に対して、信用保証協会が一般保証の限度額とは別枠で保証を行う制度です。

対象となる要因には、取引先企業の倒産、取引金融機関の破綻、自然災害などがあります。

「連鎖倒産」の防止については「セーフティネット保証制度」の中の「1号:連鎖倒産防止」を適用することができ、対象となる中小事業者は次のとおりです。

  • 国が指定する倒産企業に対して50万円以上の売掛債権または前渡返還請求権を有していること。
  • 国が指定する倒産企業に対して有する売掛債権等が50万円未満だが、当該倒産企業との取引規模が20%以上であること。

方法6:取引する相手を事前に精査する

一般的に経営不振などが原因で倒産するケースがほとんどです。

しかし、中には元々やっている事が詐欺まがいのビジネスだったり、会社の評判が元々悪かったり、社長や役員などに反社会的勢力との繋がりがあったり、粉飾決算や不正会計などでスキャンダルになったり、経営不振になりかねないリスクを最初から持っている会社もあります。

「反社チェック」などを含め「怪しい」と感じる取引相手を事前に調査する、というのも連鎖倒産リスクを回避する重要なポイントです。

特に、「そこからの売上が無くなるとマズい・・・」というぐらいの大きな金額の取引をする場合などには、しっかりと取引先が健全なのかを調査しましょう。

取引を始めてからだけではなく、始める前から連鎖倒産のリスク回避は始めるべきです。

「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避するには事前の備えが大切!取引先の調査は探偵事務所SATまで!

この記事では、「連鎖倒産」のリスクを軽減・回避する方法についてくわしく解説しました。

「連鎖倒産」に巻き込まれないためには「取引先を分散させておくこと」「倒産の予兆を早くつかむこと」「中小企業倒産防止共済制度に加入しておくこと」などの事前の備えが大切だということがご理解いただけたかと思います。

また、特に大きな金額の取引が発生する会社については、「事前に精査をする」ということも大事です。

探偵事務所SATでは、取引予定の会社の調査(役員の素性、経歴、過去の犯罪歴や行政処分歴など)や、会社の評判の調査、反社チェックなど、必要に応じた取引先企業の調査を行うことが可能です。

大きな金額の取引が発生する場合や、「ちょっと怪しい」と感じた場合、または既存の取引先のリスクを洗い出したい場合などには、探偵事務所SATまでご連絡ください。

メール、または電話にて相談を受け付けております。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00

※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。