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バイアウトとは?3つの手法と買い手・売り手側の長所・短所をそれぞれ紹介

【投稿日】2022年3月1日

経営者や従業員が株式取得によって対象企業の経営権を取得する、「バイアウト」。

その手法はMBO、EBO、LBO、MEBOなど細かな違いによって分かれています。

ここでは、基本的な異なる買収手法との相違点や細かな手法のメリット、デメリットについて解説するとともに、バイアウトを成功に導くための3つのポイントについてご紹介します。

バイアウトとは?どのようなもの?

バイアウトとは、英語で表記すると「BuyOut」。

会社の経営が悪化した際に、その会社の経営者や従業員が買収、つまり経営権を取得するというものです。

またバイアウトは、主に株式の過半数以上を買収することにより、企業の経営権を得る手法です。日本では、会社創業者が事業をセルアウト「SellOut」することをバイアウトと表現する場合がありますが、こちらは誤用であることが多いため注意が必要です。

M&Aとの違い

M&A(エムアンドエー)は、英語で表記すると「Merger and Acquisitions」。

「合併と買収」という意味の略語です。

直訳した意味だけを見ればM&Aとバイアウトは同一視される場合もありますが、その違いとしては『経営権の買い手が誰であるか』が重要な要素となります。

M&Aにおいては、会社の経営権を取得する相手が他社、つまり会社外部の人間であることがほとんどであるのに対し、バイアウトでは社内の人間、つまり会社内部の人間であることが多いのです。

その点が、M&Aとバイアウトを区別する大きな点と言えるでしょう。

イグジットとの違い

EXIT(イグジット)とは、会社を始動する際に事前投資した資金を回収することを指します。バイアウトは時にイグジットの手法の一つとして言われることもありますが、必ずしも同一としておこなわれるわけではありません。

その理由として、バイアウトはイグジットを目的としたM&A、合併買収以外の場合でもおこなわれる場合があるからです。

主なケースとしては、事業を継承するための方法としての活用、他社による企業買収に利用されるバイアウトなどがあげられます。

バイアウトの3つの手法と実施する目的

これからバイアウトの具体的な3つの手法についてご紹介していきます。またそれを実施する目的についても、異なっている点をまとめてお話していきます。

手法1:MBO(マネジメント・バイアウト)

MBOとはManagement BuyOutの略語です。

買収のための資金を出資する、つまり出資元は現在会社を経営している経営者です。

この手法は事業の継続を目的とし、そのために対象となる会社の株式を購入するというものです。

では次に具体的な手法について説明していきます。

まず初めに、出資元である経営者は、対象企業を買収するための新たな会社を設立するところから始めなくてはなりません。

そうした特別な会社はSpecial Porpose Company、いわゆるSPC(特別目的会社)と呼ばれます。バイアウトのために設立された会社であるため、実態はありません。

SPCができると、次にMBOをおこなうための資金を調達します。基本的には金融機関や投資ファンドから、経営陣が借り入れをおこないます。

そして資金調達を済ませたSPCは、対象となる企業の株式を取得します。さらに対象企業の子会社化をするのです。

最後に子会社となったSPCと対象企業が合併をすることで、MBOは完了となります。

手法2:EBO(エンプロイー・バイアウト)

次にEmployee BuyOut、EBOについて説明していきます。

こちらにおいて買収の為の資金を出資するのは、現在の従業員です。

事業の継続を目的とし、対象となる会社の株式を購入するという点についてはMBOと変わりありません。

あくまでも出資元がどういった立場であるかの違いが主です。

こちらも具体的な手法を説明していきます。

まず、後継者となる従業員が前述のSPCを設立します。

そしてEBOに必要な資金調達をおこなうのですが、この点が非常に重要です。

従業員個人での資金調達は多くの場合困難であることが多いです。

だからこそ、買い取り主である従業員の資金を念頭に置いた買取価格の立案が望まれます。

この場合購入するのは株式ですので、株価の調整をおこなうのです。

それでも資金に不足がある場合は、金融基金や投資ファンドからの借り入れをおこないます。

資金調達が無事済んだのち、従業員の設立したSPCが対象となる企業の株式を取得、子会社化。

そして対象企業と合併することで、EBOは完了です。

手法3:LBO(レバレッジド・バイアウト)

次にLeveraged BuyOut、LBOについて説明します。

前述の2つの手法、MBO、EBOとは異なる部分が多いので、詳しく解説していきます。

これまでの手法においては対象となる企業の経営者や従業員といった、会社内部の人員が出資元となっていました。

しかしLBOでは、買収資金を主にスポンサーの融資から調達し、投資の効率を高めるために自己資金、開業資金の併用によって企業買収がおこなわれるのです。

では、具体的な手法について説明していきます。

まず、スポンサーとなる企業が、対象企業の買収を目的としたSPCを設立します。

そののちに、重要な契約を締結していく必要があります。これは外部企業とのやり取りが発生するLBO最大の特徴と言ってもいいでしょう。 結ぶべき契約は以下のとおりです。

  • 対象企業とスポンサー企業間の株主譲渡契約
  • SPCと金融機関、投資ファンド間での借り入れローン契約

この2つの契約が締結されることによって、LBOを速やかにとりおこなう状態が整います。

その後SPCが資金調達をして、対象企業の株主買収をおこないます。

そして対象企業がスポンサー企業の子会社となったのち、ローン貸付先への担保・保証提供をおこないます。

最後にSPCと対象企業が合併をおこなうことで、LBOは完了です。

手法4:MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)

最後に説明するのは、Management Employee BuyOut。MEBOです。

こちらは1番と2番で説明をしたMBO、そしてEBOの複合型の手法であると言えるでしょう。

買収する出資元は現在の経営陣と従業員の双方です。

会社全体が一致団結し、SPCを設立。資金調達、子会社化の末合併をします。

基本的な流れについてはMBO、EBOと変わりありませんが、出資元によって呼称が変わりますのでその点は注意しましょう。

【手法別】バイアウトの買い手側・売り手側の長所・短所

では続いて、「バイアウト」をおこなうにあたっての買い手側・売り手側の長所・短所について手法別にご紹介していきます。

MBOの長所・短所

MBOの長所としてはまず、会社の所有と経営を維持できるということです。

それにより経営陣が、株主の利益を犠牲にし、自己利益のために行動することを未然に防止できます。

株主と経営陣は依頼人(Principal)と代理人(Agent)の関係にあります。これをエージェンシー関係と呼びます。

その二者間の間に利害関係の不一致が生まれる問題のことをエージェンシー問題と呼びますが、MBOではこのエージェンシー問題を解決できるのです。

また、経営権が他社に移ることがないため、スムーズに主な目的である事業継承をおこなうことが可能です。

こういった点でMBOは、自社内で時間に追われることなく長期的な事業継承に取り組む猶予が生まれると言えます。ここが大きなメリットと言えるでしょう。

次に短所についてご説明します。

MBOは現在の経営者が買収元となるため、経営陣の刷新といった抜本的な改変に繋がるわけではありません。

また株式取得のための資金調達が必要となる点や、既存の株主の反発を受ける可能性については否定できません。

EBOの長所・短所

EBOの最も大きな長所としては、後継者となる従業員に対しスムーズに事業を継承できることです。

買収元が従業員であることがEBOの特徴ですから、この点を重視する場合にはEBOを手法として用いることが適切と言えるでしょう。

MBOと重なる点もありますが、この場合は経営陣の刷新についても見込める内容となっていますので、大幅な会社経営状況の改変も視野に入れた手法となる場合も少なくありません。

短所についても買収元が従業員であることが挙げられます。具体的にお伝えするならば、従業員の資金力によって株式買収のための資金調達が困難を極めることです。

金融機関から借り入れる際の審査も応じて厳しくなりますので、従業員の資金状況が非常に重要となります。

LBOの長所・短所

LBOの最大の長所は、対象企業側が少ない資金調達でバイアウトを達成できるという点にあるでしょう。

スポンサー企業に株式を取得してもらうことになるので、株式譲渡対価を得ることも可能になります。

また金融機関等からのローン借り入れに関しても、スポンサーとなる企業の現状や今後の経営方針などに基づく審査となり、またスポンサー企業側の負債となります。

そのため、バイアウトにかかる費用は他の手法に比べ格段に安くなるケースが多いです。

しかし、他社の介入があることによるデメリットも存在します。

バイアウト達成後の経営状況が改善に導かれなかった場合、スポンサー企業はバイアウトの恩恵を受けることが難しくなります。そのためLBOが用いられること自体のハードルが、他に比べ高い場合もあるでしょう。

また借り入れにおける金利も高くなるため、最終的な資金調達は最も必要となります。

この点を抑えたうえで慎重に契約を進めることが大切です。

MEBOの長所・短所

最後にMEBOの長所と短所について説明します。

まず長所としては、会社全体のモチベーションアップがあげられるでしょう。

経営陣のみならず従業員にも出資をつのり、会社全体でバイアウトを実現させていくというのがMEBOです。

従業員が経営に関わってくることになりますので、MEBO達成後、将来的な事業への積極的貢献によってはインセンティブ(目標達成において成果を上げた従業員に対する報奨、賞与)が発生する場合もあります。

そうした面から、社内全体の士気向上が大きく見込めることがメリットと言えるでしょう。

またMBO同様に、株主との間のエージェンシー問題を解決しつつバイアウトを進めることもできます。

ただ、やはり実現そのものが他の手法に比べ非常に難しいこと自体がデメリットと言えます。

自社株式を購入し貢献したいと考える従業員が一定数いなくては成立しないため、事前のモチベーションアップをどこまでおこなえるかが課題となってくるでしょう。

バイアウトを成功に導くための3つのポイント

それでは最後に、バイアウトを成功に導くために重要な3つのポイントについて、まとめてお伝えしていきます。

この3点を抑えておくことで、バイアウトの選択においてどうしていくべきかを明確にしていきましょう。

ポイント1:買収金額の相場や企業価値評価の算出方法を把握しておく

「バイアウト」を成功させていくうえで何よりもまず大切なこと。

それは、自社の買取金額の相場や企業価値評価をしっかりと把握しておくことです。

いったいどの程度の金額で株式が買い取ってもらえるのか?

現状把握をしないままに進めてしまえば、思うようにバイアウトを成功していけない可能性もでてきます。

企業価値評価の算出方法には、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチというように様々な種類があります。

1つの手法で算出しておくだけでなく、専門家の指示を仰ぎ、様々な角度からの相場を知っておくことが大切です。

株式の買取金額の相場は、この企業価値評価によって大きく変動します。

手法についても会社の形態や状況などに応じて異なりますので、自社がどう言った状況であるのか、そしてその場合どのバイアウト形式を用いるのかを慎重に見定めましょう。

ポイント2:バイアウトを見越した経営戦略を立てる

バイアウトの成功に向け、次に重要なポイント。

それはバイアウトを見越した経営戦略をあらかじめ立てておくことです。

戦略を立てるタイミングが早ければ早いほど、準備の時間も充分に確保しておくことができます。

経営が悪化する以前に先を見越して考えることはなかなか難しいですが、最もいいタイミングでバイアウトを成功できるよう、事前に見極めておくことが非常に重要となるでしょう。

知識を収集し、専門家との話し合いの場を設けるだけでも大きな差が生まれますから、事前に何ができるかを冷静に判断していくことが大切です。

ポイント3:バイアウトファンドを利用する

最後、3つ目のポイントはずばり「バイアウトファンド」を利用することです。

バイアウトファンドとは名前の通り、バイアウトを利用したファンドです。

バイアウトファンドは投資家から資金を集め、これまでにお伝えしてきたような、バイアウトの対象となる経営悪化した企業などに投資をおこないます。

そして企業価値評価を向上させてから株式の売却をおこなうことで、その利益を投資家へ還元していくという流れを持っています。

MBOに特化したファンド、事業継承や企業再生に特化したファンドなど、目的に合わせた様々なバイアウトファンドが存在しています。

言わば専門家でもありますから、バイアウトを成功させるためにはこういったバイアウトファンドの利用が不可欠となってくると言っても過言ではないでしょう。

自社の目的にあわせた、最適なバイアウトファンド選びが大切です。

バイアウトを行う企業は近年増加している!長所・短所を踏まえた上で適切な手法を選択しよう!

ここでは、「バイアウト」をおこなううえで重要となる、手法の違いや、成功のためのポイントについてお伝えしてきました。

バイアウトをおこなう企業は近年増加傾向にあります。

こうした様々な点に留意し、長所・短所を踏まえ適切なバイアウト方法を選択していきましょう。

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