【投稿日】 2021年12月26日 【最終更新日】 2022年1月10日
デューデリジェンスはM&A(買収と合併)などを実施する前に行う、事前調査のことです。
特に買収側の場合には、売り手側から提示されている買収価格が適切なのかどうか、買収後に狙った効果が出るかなどを調査するために、次のように様々な種類のデューデリジェンスを、実施する必要があります。
- ビジネスデューデリジェンス
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
- 知財デューデリジェンス
- 不動産デューデリジェンス
- 税務デューデリジェンス
- 環境デューデリジェンス
- 犯罪デューデリジェンス
このようにあらゆる角度、あらゆる面で買収先の企業を精査する必要があるので、自社のスタッフだけでは量、また専門性という観点から、とても対応しきれません。
そのため、一般的には弁護士や税理士、などその道の専門家に依頼して、しっかりと精査してもらいます。
今回はそんな各デューデリジェンスを行う際の主な外部委託先について、また、依頼した際の費用相場について、詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
デューデリジェンスの外部委託先は、行うデューデリジェンスの項目によって違う!
デューデリジェンスの種類はビジネス、財務、法務、人事、IT、知財、不動産、税務、環境、犯罪など実に様々です。
そのため、どのデューデリジェンスをどの程度行うかによって、外部委託先が異なります。
しかし、それぞれのデューデリジェンスを、それぞれ専門家に依頼するとなると、そうれ相応の依頼費用と時間がかかるため、どのデューデリジェンスを優先的に行うべきかどうかを、買収先の企業の形態や事業内容などによって見極めることが非常に重要です。
そうすることでデューデリジェンスの費用を最低限におさえつつ、必要なデューデリジェンスを行うことができます。
特にスモールM&Aなど規模の大きくない企業買収などに関しては、デューデリジェンスにかけられるお金も限られてくるので、特にこういった「優先度」「重要度」という観点が重要になってきます。
それを大前提とした上で、各デューデリジェンスの主な外部委託先と一般的な費用相場をみていきましょう。
ビジネスデューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
ビジネスデューデリジェンスは、買収・合併先の企業の将来のポテンシャルやリスクなどを評価する目的で行われるデューデリジェンスです。
主に調査するのは、企業概要や事業内容、財務内容、過去の大規模リストラや大型訴訟歴、その他(新製品、他社との業務提携など)です。
デューデリジェンスの中でも、企業の価値などに大きく影響を及ぼす、特に重要なものの1つです。
ビジネスデューデリジェンスの場合には、主に次のような外部委託先が候補として考えられます。
- リサーチファーム
- 戦略コンサルティングファーム
- 会計系ファーム
それぞれ依頼先によって得意分野や費用感や力量などが違ってくるので、どの依頼先にするかはM&Aの規模や予算、ビジネスデューデリジェンスで特に重要だと感じる項目の調査に強いかどうか、などで判断するのが良いでしょう。
費用相場もどの外部委託先に依頼するかによって、またビジネスデューデリジェンスをどこまで行うかによって変わってきますが、中小企業に対するデューデリジェンスであれば数十万〜数百万程度、大手企業や海外企業に対するデューデリジェンスであれば数百万〜数千万程度かかると言われています。
財務デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
財務デューデリジェンスは、買収・合併先の企業の財務リスクを見極める目的で行われるデューデリジェンスです。
主に調査するのは、買収・合併先企業の財務諸表です。
財務デューデリジェンスを行うことによって、買収・合併先の企業の粉飾決算や、会計上の調整、財務諸表には計上されていない資産・負債が存在するかどうかを事前に見極め、買収・合併後に大きな問題に発展しないようにします。
また、財務デューデリジェンスの結果は、企業の価格に大きな影響を及ぼすため、デューデリジェンスの中でも特に重要な調査と言えます。
財務デューデリジェンスは、自社内に経理部門がある場合には、経理スタッフが行います。しかし、財務デューデリジェンスは短期間で行われることが多いため、経理スタッフだけでは難しい場合には、次のような外部委託先の専門家にも依頼し、共同で行うのが一般的です。
- 大手コンサルティングファーム・監査法人系の専門家(公認会計士・税理士など)
- 証券会社系の専門家(公認会計士・税理士など)
- 独立系の専門家(公認会計士・税理士など)
- 個人事務所(公認会計士・税理士など)
費用相場は、大手コンサルティングファームや監査法人系の専門家に頼むほど高く、中小になればなるほど、費用は安くなります。価格は大手に依頼した場合で500万円以上、中小に依頼した場合で100万円以上が一般的な相場です。
法務デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
法務デューデリジェンスは、その名の通り、買収・合併先の企業が「きちんと法律を遵守してきたかどうか?」「買収・合併後も企業活動において何か影響を及ぼすようなことはないか?」などを調査するデューデリジェンスです。
主に調査するのは、買収・合併後の事業継続に大きく影響を及ぼす次のような項目です。
- 許認可・届出
- 契約内容
- 法令遵守
- 役員および従業員に関する法的リスク
- 偶発債務
- 訴訟
- 外資規制および独占禁止法の制約
- その他
法務デューデリジェンスで仮に何か法令違反などが見つかると、その程度によっては、M&A自体の話が白紙になってしまうことも十分考えられます。
そのため、法務デューデリジェンスはビジネスデューデリジェンスや財務デューデリジェンスと同様に重要な調査です。
法務デューデリジェンスは、会社の法務部門で対応可能な場合もありますが、M&Aのような非常に多角的な法的検証を必要とするケースは外部の次のような委託先に依頼するのが一般的です。
- M&Aに強い弁護士法人
- M&Aに強い弁護士事務所
人事デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
人事デューデリジェンスは、主に買収・合併先の企業の人事や労務など「人」に関して「財務」「法務」「ビジネス」という3つの面で次のような調査をしていきます。
- ビジネス:買収・合併先の企業の人のスペックや将来性、人材の過不足など
- 財務:人件費や退職金など
- 法務:人材雇用に関する法的なトラブルの有無、リスクの有無など
企業によって、人事デューデリジェンスを個別に行うかどうかは判断が分かれます。
人事デューデリジェンスが個別に必要な場合には、次のような委託先が候補として挙げられます。
- M&Aに強い社会保険労務士法人・社会保険労務士事務所
- M&Aに強い弁護士法人・弁護士事務所
- M&Aに強い税理士法人・税理士事務所
- コンサルティングファーム(大手・中小)
そのため、「財務デューデリジェンス」「法務デューデリジェンス」「ビジネスデューデリジェンス」でそれぞれ人事デューデリジェンスのビジネス面、財務面、法務面を一緒に行うケースもあります。
費用相場は、ビジネス・財務・法務デューデリジェンスと一緒に行う場合にはそこに加算、独自で行う場合には大手で数百万、中小で100万円程度が相場です。
ITデューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
ITデューデリジェンスは、買収・合併先の企業の情報システムについて調査するデューデリジェンスです。
主に、M&Aにおいて企業の情報システムにどんな制約条件があるのか、M&A後にどれぐらいの情報システムへの投資が必要になるのか、などを調査します。
具体的には、企業の情報システムの構成図や主要ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションについて、情報システムを運用する人員体制、主要な発注先やベンダー、今後の投資予定などを調査するのが一般的です。
ITデューデリジェンスは、企業によってはビジネスデューデリジェンスと一緒に行うケースもあります。
外部委託先としてはITコンサルティング会社に依頼するのが一般的です。
費用相場は、企業の情報システムの規模などによって大きく変わるので、一般的にいくらとは言えません。
知財デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
知財デューデリジェンスとは、買収・合併先の企業が保有する知的財産を把握する調査です。
知的財産を主に「ビジネス」「法務」「財務」という3つの観点から調査していくため、企業によっては主要なビジネス・法務・財務デューデリジェンスと一緒に行う場合もあります。
知財の専門家は弁理士なので、独立して行う場合には弁理士法人をはじめ、弁理士をパートナーとして持つ弁護士法人などが依頼先として一般的です。
費用相場は保有する知的財産の数などによっても大きく変わるため、これといった相場はありません。
不動産デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
不動産デューデリジェンスとは、買収・合併先の企業が保有する不動産を把握することです。
主に不動産の所在地や権利関係、コスト、土壌汚染などの有無、不動産評価鑑定額などを中心に調査していきます。
一般的には、不動産鑑定事務所を外部委託先として依頼するのが一般的ですが、不動産活用などの観点から、不動産会社やコンサルティング会社などに依頼するケースもあります。
買収・合併先の企業が一体どれほどの量、規模の不動産を保有しているのかによって大きくかかる費用は変動するため、これといって費用相場などは存在しません。
税務デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
税務デューデリジェンスは、買収・合併先の企業が現在どんな税金をどれぐらいの額払っているのか、今後どの程度税金を支払う必要がでてくるのかなど税務リスクを調査するデューデリジェンスです。
税務デューデリジェンスは主に、会社概要(資本構成、取引状況など)や過去3〜5年分の財務諸表、過去3〜5年分の税務申告書、過去の税務調査の結果などを中心に調査します。
税務デューデリジェンスの主な外部委託先はM&Aに強い税理士法人や税理士事務所が一般的です。
費用相場は、買収・合併先の企業規模によって変わりますが、大手の場合であれば数百万円程度、中小の場合には数十万〜100万円程度が費用相場となります。
環境デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
環境デューデリジェンスは、買収・合併先の企業が社会環境や自然環境にどのような影響を与えているのかどうか、今後どれほどの影響を与えるのかなど「環境」に関するリスクを調査するデューデリジェンスです。
主に製品や製造プロセス、保有不動産(社屋や施設)、認証、その他騒音や振動などについて次のような項目を調べていきます。
- 法令や規制の動向、それに伴うビジネスの動向
- 生産設備や工場などの環境対応の現状
- 社屋や工場など保有不動産の環境基準適応
- 企業の環境対応方針、環境対応体制
- 社員の労働環境や職場環境など
外部委託先としては、次のような依頼先が一般的です。
- 環境コンサルティング会社
- 建設コンサルティング会社
- 不動産会社
- 建設会社
- 弁護士法人、弁護士事務所
費用相場は、保有する不動産や工場、施設の量や規模、事業内容、などによって大きく変動するため、費用相場などはありません。
犯罪デューデリジェンスの主な外部委託先と費用相場
犯罪デューデリジェンスとは、一般的なデューデリジェンスでは見つかりにくい対象企業の代表者や役員、または企業自体について逮捕歴や違法行為、行政処分歴などがないかどうか、または反社会勢力とのつながりはないか、簿外債務や簿外資産などがないかどうか、犯罪に巻き込まれてしまうリスクを調べるデューデリジェンスのことです。
こういった逮捕歴や違法行為、行政処分歴、反社とのつながり、簿外債務・簿外資産などは売り手側としてはM&Aの評価額下落や、M&Aの取りやめなどにも繋がってしまうので、巧妙に隠されている場合があります。
一般的なデューデリジェンスでは見つかりにくい内容なため、こういった内容は探偵事務所に依頼するのがおすすめです。
探偵事務所の場合、個人よりも法人の方が定期的に公安のチェックが入ったり厳しい制約条件の中運営されているので、信頼がおけます。
また、探偵事務所にもそれぞれ強みがあるので、企業の信用調査や与信調査実績などが豊富な探偵事務所に依頼するのがおすすめです。
費用相場は、調査内容や調査対象の規模などによって変わってきますが、一般的に数十万から数百万円程度が相場と言えます。
探偵事務所SATでは、企業の信用調査や与信調査などの実績豊富な探偵が在籍しており、一般的なデューデリジェンスでは表に出てきにくいような役員や企業の前科や反社とのつながりなど、犯罪デューデリジェンスを行うことができます。
名の知れた大手企業や上場企業というよりはむしろ、中小企業などを買収・合併するスモールM&Aなどの場合に、一般的なデューデリジェンスに加えて、「意図的に隠されたものを暴く」犯罪デューデリジェンスを行うのがおすすめです!
デューデリジェンスの外部委託先選定は慎重に!
デューデリジェンスと一口に言っても、基本的なビジネス、財務、法務とは別に様々な種類のデューデリジェンスが存在します。
それぞれ外部委託先の専門家が変わってくるので、強みや費用感などもどの委託先を選ぶかによって大きく変わります。
M&Aは大きなお金が動くリスクの大きなイベントであるが故に、その成功の鍵を握るデューデリジェンスの外部委託先選びこそ重要です。
安意に選ばずに、慎重に選ぶようにしましょう。
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