最近、ネットやテレビでよく耳にする「粉飾決算」。これは、会社の規模に関わらず、意図的に不正な会計を行ってそのまま決済してしまうことを指します。

表面的には問題解決に導けているようで、問題を先送りにし、実態とはかけ離れた嘘の決済を報告するという犯罪行為になります。会社経営を行っている経営者は、決して許してはいけない行為な上、こういった行為を行っている会社は黒字倒産のリスクが高いのが特徴。

実際に2019年に帝国データバンクが行った調査によれば、企業倒産件数8,354件のうち、粉飾行為が合った企業の倒産は85件にもなり、前年比で26.9%も増加しているそうです。

粉飾決算を行っている会社が主要取引先、事業提携先や出資先、投資先となってしまった場合には、後々粉飾が発覚した際に、大きな損失を被ることになってしまいます。

このようなリスクを発生させないためにも、取引先や事業提携先、出資先、投資先の企業についてはより一層のチェックが必要となります。

本記事では、粉飾決算の基本的な内容から、その手口や見抜き方、処罰の有無、そして粉飾決算を行っている企業かどうかのチェック方法などについて詳しく解説していきます。

粉飾決算とは?

粉飾決算とは、不正な会計処理を行い、事実とは異なる内容の会計処理を行ったり、収支報告の偽装、虚偽の決算報告を行うことを指します。

粉飾決算は、株価の操作や経営責任の回避、助成金や銀行からの融資などを受ける際に必要な条件の達成、などを目的として行われることが多い不正です。

他の人を騙して金銭の授受をしたりする詐欺行為に当たるため、粉飾決算は決して許されるべきものではありません。しかし、近年、粉飾決算は増加の傾向にあります。

また、粉飾決算はその場しのぎの行為なので、後処理やバレた時の対応なども大変になる以外に、一度行うと後戻りができなくなってしまいます。

銀行を騙して融資を不正に受けたり、税務署を騙して税金を誤魔化したり、投資家を騙して企業価値を取り繕ったりなどのメリットは一時的に生まれるかも知れません。

しかし、後になって行為が判明した後には大きな罰が待っています。

企業の規模に関わらず、経営者の交代や企業制度の見直しなどで簡単に判明してしまう行為です。会社自体の信用を下げ、企業の衰退のきっかけも作る悪質な行為になります。

粉飾決算の代表的な手口と事例

粉飾決算の代表的な手口としては、在庫の水増し、売上の水増し、循環取引、架空取引、換金取引があります。

圧倒的に多いと言われる粉飾決算の手法は売上の水増しであり、売上の架空計上や売上の前倒し計上といった形で計算され、捏造されたものが報告されるケースです。

在庫の水増しは、そのままの通り、在庫を水増しすることで売上が上がったように見せることになります。これらの手口について詳しく解説していきます。

粉飾決算の代表的な手口1:在庫の水増し

在庫の水増しは最も多い粉飾決算の手口となります。

例えば、期末在庫が200しか無いのにもかかわらず、架空の在庫を100増やして300にした場合、利益はプラス100になりますが、売り上げ原価はマイナスです。

このように、在庫の水増しは利益を増額させるための粉飾決算行為となります。

一度在庫の水増しを行ってしまうと、水増し在庫を抱えたまま翌年、翌々年と、延々と粉飾を抱えた状態で経営していくことになります。

そのため、経営方針が変わって見直しがされる段階で発覚することが多いです。

粉飾決算の代表的な手口2:売上の水増し

架空の売上を計上したり、売上を隠すことで売上を水増しする方法も良く使用されます。

売上の水増しをする場合には、架空の取引先を設定して、取引をしているかのように見せるのが一般的です。その場合には架空の取引先との契約書を作り、架空の売り上げを計上します。

売上を隠す場合には、取引先と協力して銀行口座を開設し、そこに売上を振り込んでもらうという方法を取ります。売上を操作した場合、仕入れ値から割り出されて売上の隠ぺいが発覚するケースが殆どです。

他にも、仕入れや外注費を捜査して売上を改ざんする方法もあります。売上金と売掛金とのバランスが悪くなる為、発覚しやすいものになっています。

売上水増しを行う具体的な手口は、循環取引と架空取引の2種類といわれています。

それぞれ、どのような取引なのか、具体的な手口を見ていきましょう。

循環取引

循環取引とは、子会社を使った売上水増しに使用する具体的な手口です。

循環取引の仕組みは次のようなものになります。

  • A社がX社から X社の商品を1,000円で仕入
  • A社からB社へ X社の商品を1,200円で転売(伝票のみ)
  • B社からC社へ X社の商品を1,400円で転売(伝票のみ)
  • C社からA社へ X社の商品を1,600円で転売(伝票のみ)
  • A社からZ社へ X社の商品を2,000円で販売

A社の商品は動かず、伝票上のみA社→B社→C社→A社と循環していきます。

A社はZ社にX社の商品を販売して取引を最終的に終わらせますが、本来であれば1,000円で仕入れて2,000円で売るので、1,000円の利益が出るはずです。

しかし、循環取引を行ったことで、400円の利益を損失していることになります。

一方で、中間のB,C社は商品を持たない状態で転売し、売上の水増しと利益の確保をすることができている状態です。

最終的にB,C社どちらかが販売していれば粉飾取引とはなりませんが、A社→B社→C社→A社と循環させてからA社が最終的に販売しているため、循環取引とみなされます。

循環取引は、親会社の利益を圧縮し、子会社へ資金を支援する目的で行われることの多い粉飾決算の手口です。

架空取引

架空取引も、子会社を利用して売上の水増しを行う方法になります。

架空取引の仕組みは下記の通りです。

  • A社:B社と月額100万円の業務委託契約を結ぶ
  • B社:A社から毎月100万円を受け取るが、業務委託内容の仕事は行わない

B社は売上の水増しにあたり、粉飾取引とみなされます。

架空取引とは、その名の通り、資金を受け取っているにもかかわらず商品の提供などがないことを指します。

これらも、親会社から子会社への資金支援の目的で使用されることが多い粉飾取引の手口です。

実態を掴むことができない架空取引は、非常に悪質なものとなります。

粉飾決算の代表的な手口3:換金取引(逆粉飾)

換金取引は、税金の免除や脱税などを目的として、利益をマイナスにし、報告書の内容を粉飾する手口です。

実際の経営成績より悪く見せることを逆粉飾取引と呼びます。

具体的には、会社の費用などで商品券などを大量購入し、現金化をするというものや、本来であれば経費で落とした商品券などは取引先などに贈答しなければならないところを自分のものにして領収書を二重取りするなどの方法があります。

商品券だけではなく、切符や航空券、新幹線のチケットなどを用いた逆粉飾の方法も良く使用される手口です。

粉飾決算を見抜く方法

様々な方法で利益を増減させる粉飾ですが、会計処理をきちんと行っていればすぐに発見できるものがほとんどです。

会社経営を行うにあたり、会計の処理上では、「在庫」「売上」「仕入」は完全に紐づけされています。

例えば在庫を水増しした場合には仕入に矛盾が生じ、売上などを水増しすれば在庫などとの矛盾を発見することができます。

現金の動きや商品の動きを明確にする他に、粉飾決算を見抜く方法や気を付けるポイントをいくつか見ていきましょう。

粉飾決算を見抜く方法1:売掛金分析を行う

架空の売上高を計上すると、回収されない売掛金が計上されます。

そのため、売掛金の分析を行うことで、売掛金が増加していることがわかります。

売掛金が増加していると、回転期間が延びるので、回転期間の増加からも不正が行われていることに気付くでしょう。

増加理由を確認して合理的な理由がない場合、粉飾の可能性が高くなります。そこから原因究明を行うことで粉飾を見抜くことができます。

粉飾決算を見抜く方法2:利益率の分析を行う

架空計上を行っている場合、通常は利益の獲得も目的となっています。

そのため、利益率が高い取引などがあった場合には利益率の分析を行いましょう。

利益率があまりにも高い取引が認められた場合、架空取引のケースがあります。

循環取引の場合には、利益が乗って自社へと還ってくるため、利益率自体は高くなりませんが、通常であれば、安定した経営を行っているときに企業の売上高の利益率は安定します。

それを基準に、年単位で売上高の利益率が異常な月がないかを確認しましょう。

特に理由もなく売上高利益率が増減しているところには、不正が発生している場合があります。慎重に理由の分析を行いましょう。

粉飾決算を見抜く方法3:残高確認を行う

得意先に残高確認を実施し、架空の売掛金を発見する方法もあります。

残高確認の方法は、得意先・取引先に対して、自社の売掛金の認識と相違ないことを文書で送り、相手方に確認する作業となります。架空の売掛金があれば、相手先が認識していない金額が明確になるため、その差異から判明するパターンが多いです。

しかし、残高確認時の差異が全て架空取引によるものではありません。

相手方の締め日などの影響で変化することもあるので、差異が生じた場合には架空取引だと決めつけるのではなく、理由を調査しましょう。

理由のない差異が生まれている場合には、粉飾取引の可能性があります。相手方の協力を得ながら慎重に進めていきましょう。

粉飾決算を見抜く方法4:相手先の確認を行う

売掛金の得意先を明確にするために一覧などにまとめ、自社での取引がわかるようにしましょう。異常な取引先が認められた場合、相手方について調査する必要があります。

本来は仕入れ先になるべき会社が売掛金の相手先となっている場合、循環取引が行われている可能性が高くなります。循環取引の可能性が高いと思われる取引先を見つけた場合、慎重に相手先に連絡して事実を確認しましょう。

取引先を明確にしておくことは、その他の不正を防止するのにも役立つため、早期のうちに取引先の透明化が必要です。

粉飾決算を見抜く方法5:キャッシュフローの確認を行う

業績が良い会社は主に営業活動でキャッシュを獲得しています。

しかし、売上金の水増しや架空取引などで業績を上げている場合には、キャッシュを得ることができません。

そのため、営業活動でのキャッシュフローがマイナスになってしまいます。

営業利益は挙がっているのに、継続してキャッシュフローがマイナスの場合には不正が発生している場合がある為、理由が正当なものであるかの確認をしましょう。

粉飾決算を見抜く方法6:進捗の確認を行う

これは、工事やソフトウェア開発会社での粉飾決算を見抜くための方法です。

通常の場合、工事やソフトウェア開発を行う場合の原価は安定的していることがほとんどです。

しかし、急激に原価が多額になる進捗が発生した場合には不正を行っている場合があります。仕入れや技術費などをよく確認し、進捗をこまめにチェックしていく必要があります。

粉飾決算を行った際の罰則

粉飾決済は、法律では「利害関係者保護」により、「刑事罰」「行政罰」「民事責任」など厳しい罰則規定を設けています。

上場企業で粉飾決算が発覚した場合、「有価証券報告書」の虚偽記載とされ、金融商品取引法に基づき、刑事罰、行政罰、民事罰が課せられます。

刑事罰に関する法律

「重要な事項につき虚偽の記載のあるもの」を提出した者に対し「十年以下の懲役若しく は千万円以下の罰金」に処され、懲役と罰金、またはその両方を科される場合がある

また法人の代表者、代理人、使用人、その他従業者が有価証券虚偽記載をした場合は、その行為者を罰するとともに法人に対しても7億円以下の罰金刑が科される

行政罰に関する法律

発行者が、「重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている」有価証券報告書等を提出した場合、

1. 600万円

2. 発行する株券等の市場価額の総額×10万分の6

のうち高額の課徴金を国庫に納付しなくてはならない。

民事責任に関する法律

有価証券報告書等に虚偽記載が行われた場合、発行会社は、虚偽記載のある有価証券報告書等が公衆縦覧されている間に、発行有価証券を募集・売出しによらずに取得した者に対して損害賠償責任を負う。

他にも、会社法第963条による違法配当の禁止や会社法の第960条の特別背任罪などに抵触するため、民事責任に問われる可能性があります。

疑わしい企業の粉飾決算は、決算書や企業の信用調査などで見抜ける!

取引先や、業務提携先、投資先、出資先の企業が粉飾決算をしているかどうか、また過去に粉飾決算をしていたかどうかは、基本的には、決算書や企業の信用調査などで明らかにすることができます。

探偵事務所SATでは、企業の過去の粉飾決算による行政処分の有無、民事訴訟の有無、過去3年分の決算書などを元に、粉飾決算を行っている企業かどうかの調査依頼をお受けしています。

粉飾決算を行っている企業は、いつ倒産をしてもおかしくありません。また、発覚時には社会的な信用を大きく失うことになるので、そういった世論からのバッシングに巻き込まれてしまう可能性もあります。

そうならないためにも、取引相手や業務提携先、投資先、出資先など深くお付き合いをする企業に関しては、しっかりとチェックしておきましょう。

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この記事を書いた人

探偵事務所SAT 野村
探偵事務所SAT 野村
探偵事務所SAT京都支部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。