「パートナーがいるにも関わらず、風俗通いをするのは不倫かどうか」と、そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、夫の風俗通いに悩んでいる方向けに、「風俗」に関する法律的な見解について詳しく解説します。

そもそも風俗とは?

まず最初に、そもそも「風俗」とは何かについて理解しておきましょう。

現代では「風俗」というと、性的な接待をする店や、それに準ずる営業形態を指すことが多くなっています。

しかしながら、もともとは社会の風習やしきたり、習わしなどを意味する言葉です。

しかし、1948年に「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」が施行されたことなどをきっかけに、性的な接待をする風俗営業店のことを「風俗店」や「風俗」と呼ぶようになりました。

現在の「風営法」では次のように区分されています。

風俗営業 ・スナック・キャバクラ(キャバレー)・低照度飲食店・区画席飲食店などの接待飲食等
営業 ・パチンコ・麻雀・ゲームセンターなどの遊技場営業
性風俗特殊営業 ・ソープランド・ファッションヘルス・ラブホテルなどの店舗型性風俗特殊営業
・デリバリーヘルスなどの無店舗型性風俗特殊営業
・映像配信型性風俗特殊営業

これらの中で、不倫に該当するとして問題視されやすいのは「キャバクラ(キャバレー)」「ファッションヘルス」「デリバリーヘルス」「ソープランド」などの店舗です。

不倫は法律上の「不貞行為」に該当する

実は、法律上には「不倫」という言葉はありません。

法律上、「不倫」に該当する用語は「不貞行為」です。

「不貞行為」とは、「配偶者としての貞操義務に違反する行為」を意味します。

具体的には、不貞行為とは既婚者が配偶者以外の異性と自由意思で「性的関係」をもつことです。

不貞行為における「性的関係」とは「性行為」や「性交類似行為」を行うことです。

「性交類似行為」とは手淫や口淫等を行うことを指し、キスやハグは含まれません。

また、「不貞行為」には「相手の合意がない性行為」や「対価として金銭を支払う性行為」も含まれます。

風俗は不貞行為(不倫)になるの?

法律上における風俗と不貞行為(不倫)の定義について解説してきましたが、結論から言えば、風俗で「性的関係」を持つことは法律上の「不貞行為」に該当します。

たとえ風俗で対価としての金銭を支払って「性行為」や「性交類似行為」を行ったとしても、法律上の「不貞行為」に該当します。

つまり、風俗での「性行為」や「性交類似行為」などの「不貞行為」は「不倫」に該当するということです。

ただし、キャバクラでキャバ嬢の隣でお酒を飲んだり、キャバクラの外で飲食をしたり、キスしたりハグしたりしても「不貞行為」には該当しません。

このように、「性行為」や「性交類似行為」などの「不貞行為」を行わない限りは不倫にならないということになります。

風俗通いだけでも離婚原因になり得る

たとえ風俗であったとしても、「性行為」や「性交類似行為」など「不貞行為」の事実が不倫の成立の可否に影響を及ぼします。

そのため、ソープランドやファッションヘルス、デリバリーヘルスのような性行為や性交類似行為などを行う風俗に夫が通っていた場合には、「不貞行為」に該当する可能性が高いと言えます。

一方で、キャバクラやガールズバー、性行為や性交類似行動などのない風俗に通っている場合は、「不貞行為」に該当しない可能性が高くなります。

しかしながら、たとえ不貞行為に該当しない風俗店に夫が通っていたとしても、妻が我慢できず、夫婦関係に悪影響を及ぼす展開は考えられることです。

この場合、夫の風俗通いの頻度や期間等によって、法律で定める離婚事由の中の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断される可能性があります。

つまり、「性行為」や「性交類似行為」などの「不貞行為」がなかったとしても、風俗通いが原因で離婚になった場合は、離婚に対する慰謝料を請求される可能性があるということなのです。

風俗で慰謝料請求はできるのか?

夫の風俗通いが原因で離婚に至った場合、考えておくべきが慰謝料請求です。

誰に対して、また、どのぐらいの金額の慰謝料が請求できるのか、また慰謝料請求ができるか否かの法律的な判断基準はどこにあるのか、についてある程度把握しておきましょう。

【1】夫に慰謝料は請求できるのか?

風俗通いの夫に対して慰謝料請求が可能なケースは、以下のようにいくつか存在します。

ケース1:風俗で不貞行為があった場合

夫が風俗で「性行為」や「性交類似行為」などの「不貞行為」を行った場合は、妻は夫に対して慰謝料を請求することができます。

妻が、このような夫の「不貞行為」によって精神的苦痛を受けた場合の慰謝料は、数10万円~300万円程度が相場とされています。

300万円もの高額な慰謝料になるのは、「不貞行為」が原因で離婚に至ったような場合です。

また、1回だけの「不貞行為」に比べて、継続的に複数回行われた「不貞行為」の方が、より慰謝料が高額になる傾向があります。

夫の言い分としては「風俗は遊びにすぎない」とか「不倫ではない」というものがあるかもしれません。

しかしながら、法律上は「既婚者が配偶者以外の異性と『性的関係』をもつこと」が「不貞行為」に該当します。

妻が夫の不貞行為により精神的苦痛を受けた場合は、当然ながら、精神的苦痛の原因を作った夫側に慰謝料を請求することができます。

ケース2:風俗嬢と私的に会って不貞行為を行っていた場合

夫が風俗嬢とより親密な関係になって、風俗店の外で私的に会って「不貞行為」を行うことも考えられます。

このケースは、一般的な「不倫」と扱いが同じです。

この場合、妻が受ける精神的苦痛は、風俗店で「性的サービス」として行われた場合よりも大きなものになると考えられます。

つまり、慰謝料の請求額もより高額になる傾向があります。

ケース3:風俗で不貞行為がなかった場合

夫が風俗に通っていても「性的関係」がなかった場合は「不貞行為」には当たりません。

そのため、法律上は慰謝料の請求はできないと判断されます。

しかし、夫の風俗通いの頻度や期間が長期に及んだことによって、妻がより大きな精神的苦痛を受けたと考えられる場合には、慰謝料の請求ができる可能性があります。

さらに、夫の風俗通いが長期に及んでいた場合や、妻がそれにより著しく精神的苦痛を味わった場合などには「婚姻を継続し難い重大な事由」と判断される可能性が高くなります。

つまり、「夫の風俗通い」の事実のみを理由として、妻は夫に離婚を請求することが可能な場合があるのです。

その場合は、離婚に対する慰謝料も請求することができます。

【2】風俗嬢に慰謝料は請求できるのか?

夫が「性行為」や「性交類似行為」などの「不貞行為」を行った場合、妻が風俗嬢に対して慰謝料請求ができるかどうかについては、裁判でも判決が分かれる問題です。

大きく分けると、「風俗嬢が風俗店の性的サービスとして行った行為であっても、客が既婚者であると知ったうえで『性行為』を行えば慰謝料が請求できる」という見解と、「風俗嬢の性的サービスは『業務上の行為』であるから『不貞行為』には該当しない」という見解があります。

「慰謝料請求ができる」という見解の場合でも「客が既婚者であると知ったうえで」という条件があります。

したがって、風俗嬢に慰謝料請求を行う場合は、少なくとも風俗嬢が「客が既婚者だと知っていた」ということを証明する必要がありますが、当時に遡って個人の認識を調査し、証明する難易度は高いのが実情です。

こういった条件を鑑みると、妻が風俗嬢に対して慰謝料を請求することは不可能ではありませんが、非常にハードルが高い行為ということになります。

風俗でも不貞行為があれば慰謝料請求や離婚の理由になる!

今回は、夫の風俗通いが法律上の「不貞行為」に該当すると判断される場合、妻は夫に対して慰謝料の請求ができるのかどうか、について解説しました。

風俗で「不貞行為」があった場合はもちろんのこと、「不貞行為」がなかった場合でも法定の離婚事由に該当する可能性があり、離婚が成立した場合は離婚に対する慰謝料が請求できる可能性も十分にあります。

このように「風俗通い」の事実は、内容によって慰謝料請求や離婚の理由になりうるのです。

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夫の風俗通いの内容によっては、慰謝料請求や離婚の理由に十分なり得ます。

しかし、離婚や慰謝料請求を進めていく上で最も重要なのが、証拠の収集です。

証拠がなければ、夫の風俗通いや不貞行為の証明が難しくなってしまいます。

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