【投稿日】 2022年5月31日 【最終更新日】 2023年8月22日
企業が新たな企業と取引を始める際に、相手企業の支払い能力などの金銭的な信用度合いなどを調査することを「与信調査」と言います。
一般的に与信調査は信用調査会社に依頼して行い、与信調査の結果は信用調査会社による「評点」によって判断することになります。
また、信用調査会社によっては「リスクスコア」などの独自に算出した倒産リスクを提供していることもあります。
この記事では、この「評点」や「リスクスコア」について詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
与信調査(信用調査)における評点とは?
評点とは、一般的にも使われる言葉で「成績などを評価して付ける点」のことですが、与信調査(信用調査)における評点とは、信用調査会社による「格付け」のことを表します。
与信調査(信用調査)を実施する信用調査会社によって評点の対象や評価基準は異なっており、統一された基準によって評価されているわけではありません。
つまり与信調査(信用調査)を行う信用調査会社によって評点が変わってくるということです。
同様に、倒産リスクを示すリスクスコアについても、それぞれの信用調査会社による独自の基準で評価されたものですので、信用調査会社によって異なるということになります。
そこで、参考のためにいくつかの信用調査会社の評点の考え方について紹介しておきたいと思います。
<1>東京商工リサーチの与信調査(信用調査)における評点と考え方
東京商工リサーチは、信用調査会社として国内で第2位のシェアを有しており、その評点は、企業や官公庁の審査部門、経理部門、中小企業の経営者によって、取引の際の客観的な指標として活用されています。
東京商工リサーチの評点は定量データの評価に強いと言われており、報告書「TSR REPORT」は、グラフィカルで見やすいということから、定量データによる企業判断資料として重宝されています。
評点は100点満点で、対象企業を「経営者能力」「成長性」「安定性」「公開性及び総合世評」の4つの評価項目について総合的に評価したものとなっています。
4つの評価項目と配点、調査内容は次の通りとなっています。
評価項目 | 配点 | 調査内容 |
---|---|---|
経営者能力 | 20点 | 資産担保余力、経営姿勢、事業経験 |
成長性 | 25点 | 売上高伸長性、利益伸長性、商品市場性 |
安定性 | 45点 | 業歴・自己資本、決済状況・金融取引、担保余力・取引関係 |
公開性・総合世評 | 10点 | 資料公開状況、総合世評 |
評点に対する信用度は、次のようになっています。
評点 | 信用度 |
---|---|
80~100点 | 警戒不要 |
65~ 79点 | 無難 |
50~ 64点 | 多少注意 |
30~ 49点 | 一応警戒 |
29点 以下 | 警戒 |
また、東京商工リサーチでは、1年以内の倒産確率を評価した100点満点の倒産リスク「リスクスコア」も公表しています。
これは、収集した過去の倒産企業の統計分析データを元に、東京商工リサーチが算出モデル式を構築した独自評価となっています。
例えば、リスクスコアが99~100点の企業の倒産確率は0.02%ですが、リスクスコアが1点の企業の倒産確率は19.84%という高い値となります。
<2>帝国データバンクの与信調査(信用調査)における評点と考え方
帝国データバンクは、国内で約80%のシェアをもつ日本最大手の信用調査会社で、そのデータは、全国の金融機関、商社・メーカーなどの大企業から中小企業まで幅広く利用されています。
評点は100点満点で、「業歴」「資本構成」「規模」「損益」「資金現況」などの定量評価と「経営者」「企業活力」などの定性評価の7つの評価項目に、「加点・減点」という項目を加えて評点を調整したもので、企業の健全な経済活動や支払い能力などを独自基準で数値化したものとなっています。
帝国データバンクの評点は、調査報告書の他に、インターネット企業情報サービスや企業データファイルなどで閲覧することができます。
7つの評価項目と配点、評価方法は次の通りで、評価項目のことを、帝国データバンクでは「信用要素」とも言っています。
評価項目 | 配点 | 調査内容 |
---|---|---|
業歴 | 5点 | 企業運営の継続性を評価する(業歴が長いほど高得点となる) |
資本構成 | 12点 | 企業財務の安定性を評価する |
規模 | 19点 | 年売上高、従業員数など経営規模を評価する |
損益 | 10点 | 会社の損益を決算報告書などから客観的に評価する |
資金現況 | 20点 | 調査時点での業況・収益・回収状況・支払状況・資金調達余力を評価する |
経営者 | 15点 | 経営者を、個人の資産背景や経営経験、人物像などの要素から評価する |
企業活力 | 19点 | 企業活力を人材・取引先・生産販売力・将来性の要素から評価する |
加点/減点 | +1~+5/-1~-10 | 上記の7項目だけでは十分に反映されていない要素がある場合に、加点/減点によって反映する |
対象企業の信用程度は、評点に基づいて、A~Eの5段階に格付けされます。
評点 | 信用程度 |
---|---|
86~100点 | Aランク |
66~85点 | Bランク |
51~65点 | Cランク |
36~50点 | Dランク |
35点以下 | Eランク |
また、「倒産予測値」という該当企業が1年以内に倒産する確率を%表記の値と10段階に区分した予測値グレード(G1~G10)とで公表しています。
G1~G10までの数字が大きくなるほど倒産リスクが増大することを示しています。
「倒産予測値」は、医学や薬学で用いられる基本的な統計的手法であるロジスティック回帰モデルを用いて算出しており、帝国データバンクの企業データベースの情報をもとに判断しています。
この「倒産予測値」でリスクが高いと判断された場合、対象企業との取引を速やかに停止するなどの素早い対応が必要となります。
<3>信用交換所の与信調査(信用調査)における評点と考え方
信用交換所は、繊維業界を中心に上場企業から個人企業までの企業概要、業績、格付など豊富なデータを提供しています。
評点は100点満点で、A~Eまでの6ランクの信用程度は次の通りで、ボリュームゾーンはDa~Dbです。
ランク | 評点 | 信用程度 |
---|---|---|
A | 100~86点 | 警戒を要しない |
B | 85~70点 | さしあたり警戒を要しない |
C | 69~65点 | 多少注意を要する |
Da | 64~60点 | 注意を要する |
Db | 59~55点 | やや警戒を要する |
E | 54点以下 | 警戒を要する |
また、信用交換所の公式サイトでは倒産情報についての速報を公開しています。
<4>東京経済の与信調査(信用調査)における評点と考え方
東京経済は、九州に強い基盤を持つ業界3位の信用調査会社です。
東京経済は定性データを重視した格付け評価を行っており、その評点は100点満点で、50点未満はD1、D2、D3(50点に近い方からD1、D2、D3)で表示します。
重視される定性データとしては、代表者の氏名・生年月日・現住所・経歴・公職・所有不動産・出身畑・就任経緯・人物像・趣味・家族・後継者・健康状態などです。
評点もこれらに重きをおいたものとなっており、調査報告書には代表者の詳細な人物調査レポートが添付されています。
また、東京経済ニュースというサイトでは、倒産情報を掲載しています。
<5>金融工学研究所の与信調査(信用調査)における評点と考え方
金融工学研究所では、企業リスク情報「risklick(リスクリック)」を提供しています。
これは、企業の財務データや企業情報に統計的な手法と金融工学的な手法を組み合わせることによって、企業の信用リスクを評価するものです。
全国の上場企業から中小・零細企業を対象に、高精度な評価結果を提供しています。
総合評点は、「財務」「非財務」「事業環境」の3つの企業評価要因について100点満点で表示されます。
評価要因 | 構成項目 |
---|---|
財務 | 規模、収益性、成長性、健全性、流動性 |
非財務 | 資本関係、取引関係、定性情報 |
事業環境 | 地域、業種、規模 |
また、リスク評価はC1~C10の10段階で示され、数字が大きくなるほどリスクが高いことを意味します。
また、独自の統計情報を用いて、1年間・2年間・3年間に対象企業が倒産する確率を予測することもできます。
<6>AGSの与信調査(信用調査)における評点と考え方
AGSは、金融機関の融資審査ノウハウを用いた「Neuro Watcher」という与信管理サービスを提供しています。
NeuroWatcherでは、ニューラルネットワークというデータマイニング手法を利用しており、非倒産データや倒産データなどの多数のサンプルデータからコンピュータが学習をして予測パターンを一般化し、対象企業の信用度を判定するものとなっています。
Neuro Watcherは、東京商工リサーチの企業情報・財務情報に基づき、9段階の信用格付けを行っており、数字が大きいほどリスクが高いことを示します。
「財務情報」と「企業情報」によって総合的な判定を行うAモデルと「企業情報」のみで判定するBモデルがあり、それぞれA1~A9、B1~B9と表示されます。
また、格付け評価と同時に予測倒産率を算出し、A7またはB7以下の企業は倒産確率が1.0%~7.0%の要注意と判断されます。
<7>リスクモンスターの与信調査(信用調査)における評点と考え方
リスクモンスターでは、与信管理サービスの一環として取引可否を判断できる「RM格付」といくらまで与信可能か示す「RM与信限度額」を提供しています。
リスクモンスターの格付けは倒産可能性に特化したものとなっており、非常にシンプルな指標となっていることが大きな特徴です。
取引先が倒産に近いか遠いかを表す6段階(A、B、C、D、E、F)の格付けと、さらに細分化した9段階(A、B、C、D、E1、E2、F1、F2、F3)の格付けがあり、いずれもAランクが最も倒産リスクが低く、FランクまたはF3ランクが最も倒産リスクが高いことを示します。
Cランクが平均値で、Dランク以下は「支払い能力に懸念がある」かつ「倒産リスクが2%を超える」という判断になります。
<8>TMRの与信調査(信用調査)における評点と考え方
TMRの企業評点は100点満点で、次の評価要素に基づいています。
評点要素は、15万社以上の企業情報を分析し業種毎に評価基準を設定して業種間の適正化を図っています。
評価要素 | 調査内容 |
---|---|
業容 | 経営者及び役員評価、業歴及び既往の業績、事業設備 |
営業状態 | 業種及び主取扱品の市況と特質、仕入状況、販売状況、最近の業況及び収益性 |
資金状態 | 資金繰り状況、銀行関係、資金調達力 |
その他 | 将来性、風評など |
また、評点に応じて次のようなランクに分けて格付けを行っています。
ランク | 評点 | 信用度 |
---|---|---|
AA〜A | 100~76点 | 注意不要 |
BB~B | 75~65点 | 一応無難 |
CC~C | 64~50点 | 多少注意 |
DD~D | 49点以下 | 警戒 |
TMRの信用調査報告書では、評点が50点未満の企業についても実数で表示されていますので、倒産時期の予測も可能となっています。
<9>クレディセイフの与信調査(信用調査)における評点と考え方
クレディセイフ(Creditsafe)は欧州大手の信用調査会社で、国内では日本法人の株式会社クレディセイフ企業情報(福岡市博多区)がサービスを行っています。
クレディセイフ海外企業情報レポートには、北米、欧州、アジアなど世界200カ国以上、2億4000万社以上の企業情報が収録されていますので、オンラインで企業情報を照会するもできますし、新規に調査を依頼することもできます。
クレディセイフの信用格付けはスコアとも呼ばれ、今後12ヶ月間における倒産の可能性を倒産確率によって客観的に予測し、100満点のスコア値として算出したものです。
格付けは、スコア値によって次のようなA~Eランクに分類され、29点以下のDランクと20点以下のEランクは取引リスクが高いと判断されます。
Cランクがボリュームゾーンとなりますが、Cランクは決して要注意企業ではないことに注意が必要です。
これは、評点が統計学的に算出されているため正規分布となるからであり、スコア値が90点台や100点の企業も存在します。
ランク | 評点 | 信用度 |
---|---|---|
A | 100~71点 | 非常に低いリスク |
B | 70~51点 | 低いリスク |
C | 50~30点 | 均的なリスク |
D | 29~21点 | 高いリスク |
E | 20~0点 | 非常に高いリスク |
各信用調査会社の与信調査(信用調査)における評点はあくまで指標の1つとして考えよう!
各信用調査会社の評点や格付け、倒産リスクについて説明してきましたが、各社で独自の評価を行って評点を求めていることが分かったかと思います。
また、各信用調査会社は、大手企業に強い、中小・中堅企業に強い、ある特定業界に強い、海外企業に強いなどの特徴があります。
そのため、調査会社によって評点や格付け、倒産リスクに違いが出てくることがあります。
例えば、評点が良い企業であっても倒産してしまう可能性もあるわけですから、これらはあくまでも企業を評価する指標の1つとして考えることが大切です。
信用調査会社の与信調査(信用調査)以外にも行っておきたいのが反社チェックを含む探偵による信用調査
新規取引に際してぜひ行っておくべき調査項目として「反社チェック」があります。
自社の取引先が、反社会的勢力とつながりがあったり、またはつながりがあるという疑惑が流れたりすると、企業の信頼や信用が失われて企業価値が大きく失墜してしまいます。
最悪の場合は、上場廃止や倒産の危機にさらされる可能性もあります。
このようなことから、これまでに説明してきた信用調査会社による与信調査(信用調査)以外に探偵による信用調査を行うケースが増えてきているのです。
万一の場合、信用調査を適切に行っていたという事実があれば、自社が可能な限りの排除の努力をしたという証明にもなりますので、探偵による信用調査は、経営リスクを回避するリスクヘッジとしての効果もあります。
新規取引に際しては、信用調査会社による与信調査(信用調査)や探偵による反社チェック・信用調査の結果を総合的に判断することが大切です。
探偵事務所SATの与信調査(信用調査)を活用してさらに高レベルのリスクヘッジを!
与信調査(信用調査)の目的は、企業の経営リスクを回避することですが、信用調査会社による与信調査に加えて、探偵事務所による信用調査を行うことによって、よりリスク回避が可能となります。
つまり、信用調査会社の「経営状況の評点」+探偵事務所の「実態調査結果」によってさらに高レベルのリスクヘッジが可能となるのです。
探偵事務所SATでは、このようなニーズに応える与信調査(信用調査)を行っていますので是非活用してください。
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