【投稿日】 2022年9月19日 【最終更新日】 2022年9月28日

皆さんは、ご自分の建物(物件)の不動産価値がどのくらいか、ご存知でしょうか。

建物(物件)の現在価格(積算価格)は、基本的に以下のように算出できます。

積算価格=再調達価格×(残法定耐用年数÷法定耐用年数)

このように、現在の不動産価値を算出するためには、「再調達価格」という指標が必要になります。

建物の再調達価格とは、建築物においてその建物の再現における評価基準となるものであり、その建物と同等の建物を建築する場合にかかる費用を指します。

通常、建物構造ごとに定まっている建築単価(1㎡当たりの建築費)に延床面積を掛け算して、算出します。

例えば、建築物が火事で全焼してしまった場合などに、焼失したものと同一の質・用途・規模・型・能力のものを再現するのに必要になる費用が、再調達価格となるのです。

本記事では、建物の再調達価格の基準単価から、再調達価格の調べ方、算出方法を詳しく解説し、建物の再調達価格が何に使われるのかまでお伝えしていきます。

建物の再調達価格の基準単価

建物の再調達価格は、再調達単価×延床面積で求めることができます。

この再調達単価とは、建物の構造によって決まるものであり、金融機関によって設定単価が異なりますが、目安としては、以下の通りです。

 構造 再調達単価(1㎡あたり)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)
RC造(鉄筋コンクリート)
16~20万円
S造(重量鉄骨造) 13~18万円
S造(軽量鉄骨造) 12~17万円
W造(木造) 10~16万円

しかし、上記の価格は、あくまで目安の参考数値であり、実際には、この単価よりも安く評価されることが多くなっているようです。

鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの違いは、鋼材が鉄骨(スチール)で作られているかどうかによります。

鉄骨鉄筋コンクリートは、鉄筋に加え、さらに太くて頑丈な鉄骨でコンクリートを補強するため、しなやかさと強度が増すことが大きな違いです。

重量鉄骨造と軽量鉄骨造との違いは、使用される鋼材の厚みによって決まります。

厚さ6㎜以上の鋼材が使用されていれば重量鉄骨造、厚さ6㎜未満の鋼材が使用されていれば、軽量鉄骨造となります。

重量鉄骨造は、厚みがあって頑丈なため、マンションやビル、大型店舗、体育館等の大型の建物で、軽量鉄骨造は、薄くて軽いので、賃貸アパート等の小規模な建物で取り入れられていることが多いです。

再調達価格は、上記の単価に、建物の延床面積を乗じれば、算出することができます。

例えば、RC造で延床面積1,000㎡の建物があった場合の再調達価格は、最大で20万円×1,000㎡=2億円となるのです。

このように、再調達価格というのは、あくまでも基準となる構造別の単価によるものです。

したがって、建物を細部までこだわり、設備機器も高価なものを使った豪華な造りの物件であっても、公団仕様で設備機器も廉価なものを使った造りである物件であっても、同じRC造で同じ用途・規模・型・能力であれば、同額になってしまいます。

しかも、この再調達価格に使われている平米単価は、地域差が考慮されておらず、実情に合っていません。

RC造の鉄筋コンクリートの再調達単価は、18万円~20万円で見積もっている金融機関が多いですが、実際に建物を建てようとすると、20万円では全く足りません。

建築会社や地域にもよりますが、30万円~40万円はするでしょうから、担保評価はかなり低く見積もられていることになります。

また、実際に現在のRC造の建築単価は、首都圏では安くても25万円/㎡以上となっていますし、地方でも22万円/㎡以上が普通ではないでしょうか。

単価だけ見ると、20万円と22万円でたった2万円の差ですが、2万円の差を延床面積で乗じると、非常に大きくなることが重要になります。

1,000㎡ともなると、2,000万円の評価損となりますので、かなり大きな損失になってしまうのです。

建物の再調達価格の調べ方

建物の再調達価格の調べ方ですが、再調達価格は先ほど述べたように建物の構造で決まりますので、まず建物の構造を調べることが必要になります。

建物の構造が、SRC造かRC造かS造かW造かであることがわかったら、次に建物の延床面積を調べます。

延床面積とは、「1階の床面積+2階の床面積+3階の床面積…」といったように、すべての階層の床面積を合計したものです。

各階の床面積は、壁又は柱に囲まれた部分で計算します。

延床面積は、建物の登記情報などでわかります。

これがわかったら、あとは再調達単価と延床面積を掛ければ、再調達価格が調べられることになるのです。

建物の再調達価格の算出方法

建物の再調達価格の調べ方は前項で述べましたが、正確な再調達価格を算出するには、建物の建築価額、建築年、延床面積、世帯主の年齢、家族構成等の情報が必要になります。

建物が新築物件の場合は、その建築価額がそのまま再調達価格となりますが、建築価額には土地代を含まないため、不動産の購入価額から、土地代を差し引くことが必要です。

一方、建物が新築物件でない場合の再調達価格の算出方法は、建物を建てた年や当時の建築価額がわかる場合とわからない場合とによって違い、以下の2通りがあります。

  • 年次別指数法(取得価額法)
  • 概観法(新築費単価法)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

年次別指数法(取得価額法)

建物を建てた年や、当時の建築価額がわかっている場合、新築した時点から現時点までの価格変動率を乗じて、再調達価格を算出する方法があります。

この方法を、「年次別指数法(取得価額法)」と呼び、再調達価格は、「新築時の建築価額×価格変動率」で計算します。

概観法(新築費単価法)

もう一つは、建物を建てた年や当時の建築価額がわからない場合、建物に使われている材料や構造によって定められた1㎡あたりの標準的な単価である新築費単価に建物の延床面積を乗じて、再調達価格を算出する方法です。

この方法は、「概観法(新築費単価法)」と呼ばれ、再調達価格は、新築費単価×延床面積で計算します。

こちらの方が、一般的に再調達価格を算出する時によく使われる方法です。

この他、火災保険などで再調達価格が使われる場合は、世帯主の年齢や家族構成などの情報が加味されることになります。

建物の再調達価格は何に使われるか

それでは、建物の再調達価格とは、いったいどんな場合に使われるのでしょうか。

それは主に2つあります。

  1. 不動産査定
  2. 火災保険

一つひとつ見ていきましょう。

不動産査定

不動産査定においては、再調達価格は必須なものです。

不動産は、その場面によって建物の評価方法が違いますが、例えば銀行などの金融機関が不動産の評価を行う場合には、「積算法」という算出方法がよく用いられます。

この積算法は、原価法とも呼ばれ、銀行などの金融機関が建物の担保評価をする時に主に用いられるものです。

実際には、建物を建築する際にかかる費用は、建築の材料や内装費用や外構工事など、さまざまな費用が掛かりますので、正確な計算をするのが難しくなります。

そのため、銀行などの金融機関では、次のような簡易的な計算方法により、建物の評価額を算出しています。

建物評価額=(再調達価格×建物面積×残耐用年数)÷法定耐用年数

つまり、建物の構造と築年数、延床面積がわかれば、簡易的に計算できるようになっているのです。

ここで、再調達価格が使われることになります。

ただし、先述したように、再調達価格は金融機関によって基準単価そのものが異なるため、同じ建物でも、金融機関が異なれば、異なる評価額が出されることも有り得ます。

火災保険

火災保険の保険金額は、契約時の評価額を基にして設定します。

火災保険において建物を評価する際の基準は、大きく分けて以下の2つの方法があります。

  1. 再調達価額(新価)
  2. 時価額

このうち、再調達価額(新価)の方に、再調達価格が使われています。

再調達価額とは、保険の対象となる建物と同じもの(構造・質・用途・規模・型・能力など)を新たに建築する場合に必要となる金額、つまり再調達価格をベースにした評価額のことです。

再調達価額を基準にした保険金額を設定すれば、火災などで住宅が損壊したとしても、損壊した住宅と同等の住宅を立て直すために必要な保険金を受け取ることができます。

時価額と比べると、保険料は高めですが、万が一のリスクに対する安心度は格段に上です。

一方、時価額は、再調達価額から年数経過・使用による消耗分(減価)を差し引いた金額をベースとした評価額のことであり、こちらの場合、火災などで住宅が損壊したとしても、損壊した住宅が建築後数十年経っていて劣化が大きかったような場合は、受け取る保険金がかなり減額され、同等の建物を立て直すことができないケースが多くなります。

ちなみに経年減価の計算方法は、「再調達価格×(経過年数÷耐用年数)」となっています。

自物件の再調達価格を知っておくことは大事!

建物の再調達価格について、その基準単価と調べ方や算出方法、何に使われるかを解説してきました。

建物の再調達価格は、その構造によって定められた基準単価がありますが、実際には金融機関によってだいぶ異なるようですし、その見積もりは、基準よりも安くなる場合も多いようです。

したがって、自分で調べて算出しても、金融機関から提示されたものとは全く異なっていた、という場合も有り得ます。

それでも、全く予想がつかないよりは、あくまで目安であっても、知っていた方がいいでしょう。

特に、不動産査定よりも火災保険の方が重要ではないでしょうか。

火災保険で減価を計算して保険をかけてしまうと、実際に損壊した時に受け取る保険金の額が、建て直し費用や修繕費用に満たないことが多くあります。

したがって、きちんと再調達価格を計算して、それによって火災保険を掛けることが大事であると言えるでしょう。

自物件をお持ちなのであれば、一度建物の構造と延床面積をきちんと調べて、再調達価格を算出してみることをおすすめします。

建物の再調達価格には反映されない、不動産の実態調査は探偵事務所SATにおまかせ!

自分で保有する建物の再調達価格を調べるよりも、金融機関など、不動産売買の際に不動産の、再調達価格を算出する需要の方が多いと思います。

それによって、建物のある程度の現在価格を見積もり、売買を行う訳ですが、不動産売買は金額が大きいので、そういった金額には反映されないような実態も、売買の前には調査しておくべきと言えます。

例えば建物の心理的瑕疵の有無や、過去の入居者の情報、建物自体が過去に犯罪に使われていなかったかどうか、周辺環境に問題がないか、近所からの評判などです。

これらは、再調達価格などには反映されづらい項目ですが、確実に不動産の価値を下げてしまう要因です。

探偵事務所SATでは、探偵業法に基づくあらゆる視点と調査方法で、不動産における「数字には出てこないマイナス要素、懸念事項」などの調査を承っております。

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