【投稿日】 2022年3月5日 【最終更新日】 2022年3月18日

M&Aを行う際には、各専門分野別に行われるデューデリジェンスによって、買収対象企業に隠れたリスクが存在しないかどうかの事前調査を行います。

多くのリスクの中で、デューデリジェンスにおいてなかなか判明しにくく、またM&A実施後に判明した場合に最も大きな損失を与えるのが、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴です。

この記事では、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴は調査可能なのかどうか、また出来る調査と出来ない調査があるのかどうか、さらにこのような調査を依頼するにはどうすれば良いのかなどについて解説していきます。

M&Aの買収対象企業の社長の前科や逮捕歴は調査可能?

M&Aを行う際には、買い手側企業が経営上の専門性の観点から、法務デューデリジェンス、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンスなどを行い、買収対象企業の実態を正確に把握し、抱えている潜在リスクを洗い出すために詳細な調査を行います。

これらのデューデリジェンスは、一般的に社外の専門家に委任して行うことが多く、買収対象企業に資料や情報などの開示請求を行って、開示された資料を精査して行います。

しかしながら、これらのデューデリジェンスでは把握できない重大なリスクとして、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴があります。

これらのリスクは、他のデューデリジェンスと異なり、買収対象企業としては表沙汰にしたくない事実ですので開示請求を行ったとしても開示されることはありません。

また、あくまで社長個人の前科や逮捕歴である場合は、買収対象企業も会社として認識していないケースもあります。

もし、このような負の事実を事前に把握することなくM&Aを行って、その後に公になってしまうと買い手側企業の信用を傷つけたり企業イメージを毀損することにもなりかねません。

では、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴は、どのようにして調査すれば良いのでしょうか?

また、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴を調査することは可能なのでしょうか?

結論から言いますと、前科や逮捕歴に関しては出来る調査と出来ない調査があり、確度の高い調査をするためには、それなりの調査機関に依頼する必要があります。

そもそも前科とは?逮捕歴とは?

まずここでは、「前科」と「逮捕歴」の意味について確認しておきたいと思います。

この2つの言葉は日常的に良く耳にするかと思いますが、厳密には違った意味があります。

「前科」とは、犯罪を行ったという嫌疑をかけられて「被疑者」として警察などの捜査機関に「逮捕」され、その後の裁判で「有罪判決」を受けて「刑事罰が確定した経歴がある」ことを意味しています。

刑法の規定により刑事罰の種類には,「死刑」「懲役刑」「禁固刑」「罰金刑」「拘留」「科料」があり、執行猶予がついた場合や、病気を理由に刑が免除された場合などでも「前科」はつきます。

つまり「前科がある」とは、「刑事罰が確定した経歴がある」ということです。

一方「逮捕」とは、犯罪を行ったという嫌疑をかけられて「被疑者」として警察などの捜査機関によって強制的に身柄を拘束されることです。

しかし、その後不起訴となったり、裁判の結果「無罪判決」を受ける場合もあり得ますので、「逮捕歴」があるからといって必ずしも有罪になって刑事罰が確定したとは限らないということになります。

従って「逮捕歴がある」とは、「逮捕された経歴がある」ことを意味していますが、必ずしも「刑事罰が確定した経歴があるとは限らない」ということになります。

凶悪事件や社会的関心度の高い事件であれば自力で調査することができる

「前科」や「逮捕歴」に関する情報は公表されていませんので、正確な調査を行うことは基本的には不可能と考えられます。

しかし、凶悪犯罪や社会的に関心度の高い事件の場合は、警察から公表されることがありますし報道機関の報道で公表されることもあります。

また、限られた地域内では暗黙の了解的な事項として認知されていることもあります。

このように、何らかの形で公表されている事件であれば、自力で調査することも可能となります。

M&Aの買収対象企業の社長の前科や逮捕歴を調べる際に出来る調査・出来ない調査

次に、「前科」と「逮捕歴」の調査について説明します。

「前科」について調査ができるのは、警察と市区町村のみです。

「前科」の情報を保管・管理しているのは検察庁で、警察や市区町村など特定の機関から「前科」の照会があった場合にのみ回答しており、一般人からの「前科」の照会に応じることありません。

市町村は、検察庁から提供される情報をもとに「犯罪人名簿」を作成しており、住民の選挙権・被選挙権の有無を確認することなどに利用されていますが、一般からの照会に対して回答することはありません。

「逮捕歴」については、警察庁や各都道府県警察本部の犯歴照会センターでも管理されているようですが、これも捜査機関からの照会に応じているのみで、一般人からの照会に回答することはありません。

従って、検察庁、市区町村、警察が保有している「前科」や「逮捕歴」などの情報を、一般人が調査することはできません。

次に、一般人が「前科」と「逮捕歴」の調査をするにはどういう方法があるのかについて説明しますが、考えられる方法としては次の3つです。 しかし注意が必要なのは、必ずしも実名報道されているとは限りませんし、すべての事件や犯罪が報道されているわけではありませんので、調査には限界があるということです。

報道機関の報道情報 逮捕されたときや起訴されたときに、報道機関によって報道された内容によっては「前科」や「逮捕歴」などが判明する場合があります。 テレビ報道は一過的な報道で終わることが多いのですが、新聞記事などは過去の報道についても図書館などに所蔵されていることがありますので、一般人でもその記事を探すことによって「前科」や「逮捕歴」を調べることができます。 特に、国会図書館の新聞資料室には全国紙、地方紙、スポーツ新聞などが所蔵されています。
ネット検索 より簡単に誰でもが「前科」や「逮捕歴」を調べることができる可能性が高いのがネット検索です。 新聞社のサイトなどでは、過去に掲載されたネット記事を閲覧することができます。 新聞社のサイトには掲載期限があり古くなると削除されてしまいますが、「新聞アーカイブ」という過去の新聞のデータベースを検索できるサービスもあるようです。 また、ネット記事を引用した掲示板や個人ブログなどが存在することがありますので、これらから調査できる可能性もあります。
関係者への聞き込み 調査対象者の関係者への聞き込みによって調べる方法があります。 親族などの身内からは情報を得ることは難しく、また現在の交友関係者は犯罪事実を知らないことが考えられるため、調査対象者の過去の交友関係者、過去の職場の同僚、過去の近隣住民などへ聞き込みを行うことがポイントとなります。

M&A買収対象企業の社長の前科や逮捕歴を調査するための依頼先

ここでは、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴を調査するために、どこに依頼すれば良いのかについて説明します。

【1】自力で調査する

まず1つ目としては、自力で調査する方法が挙げられます。

具体的な方法は、前述の「報道機関の報道情報」と「ネット検索」が中心となると思われます。

【2】探偵に依頼する

2つ目としては、探偵に依頼する方法があります。

買収対象企業の社長の前科や逮捕歴などのように表面化していない事実の調査は、調査のプロである探偵事務所に依頼することが一般的です。

具体的には、前述の「報道機関の報道情報」「ネット検索」「関係者への聞き込み」などを駆使して調査を行います。

特に、探偵は「関係者への聞き込み」によって対象人物の過去から現在までの動向などを調査することを得意としていますので、かなりの精度で事実を明らかにしてくれると考えられます。

買収対象企業の社長の前科や逮捕歴はM&Aに潜むリスクの1つ!契約締結前に調査を行ってリスクを回避することが重要!

この記事では、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴は、M&Aを実施する際に大きなリスクとなりうること、その調査方法、このような調査の依頼先などについて紹介しました。

M&Aを行う際には、最終契約の締結後に想定外のリスクが発生することを避けるためにも、買収対象企業の社長の前科や逮捕歴をしっかりと調査しておくことが非常に重要となります。

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