一方的な恋愛感情から特定のターゲットにつきまといや嫌がらせを行うストーカー。ストーカー規制法の施行と改正により、警察がストーカー問題に初期段階で介入しやすくなりました。

しかしそれでも、警察はストーカー被害に対応してくれないという印象を持っている人もいるのではないでしょうか。

実はそれは、あながち間違いではありません。警察はストーカー問題に対し大きな権限を持ってはいますが、組織の性質上、どうしても動けない場合というのは少なからずあります。

ではそんな場合にどうすれば警察が動いてくれるのか、どうやって解決を目指せばいいのかについて説明します。要件を満たさなくては警察に適切な対処をしてもらうことはできません。そのためには探偵や弁護士といったプロの力が大きな手助けとなります。

ストーカーの解決に最も強力なのは警察

2018年現在、ストーカー被害の解決に警察の介入は必要不可欠です。

ストーカーは恋愛感情や恨みで冷静さを失っている場合がほとんどなので、示談や民事訴訟での解決はまず望めません。物理的に被害者と接触できない状態にする、ストーカーにカウンセリングを受けさせるくらいしか、有効な解決法はないのです。

それができるのは、警察だけです。

まずは警察がストーカーに対してどんな場合に何ができるのかを知っておきましょう。

警察の取り締まりを可能にしたストーカー規制法

ストーカー規制法における「つきまとい行為等」

  • つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつき等
  • 行動監視をしていると告げる行為
  • 面会・交際等の要求
  • 著しく粗野・乱暴な言動
  • 無言電話、拒否後の連続電話、ファクシミリ、電子メール・メッセージの送信等
  • 汚物などの送付
  • 名誉を傷つける事項の告知
  • 性的羞恥心を害する事項の告知

被害者が拒否の姿勢を見せているにもかかわらずこれらの行為が繰り返し行われた場合、加害者はストーカーとみなされます。

どれもストーカー規制法が施行される前であれば警察は動かなかったような行為ばかりですが、ストーカー行為はエスカレートすれば被害者が命を落とすこともあるため、それを防ぐために早い段階で取り締まれるようになりました。

また2017年の法改正でストーカー行為罪は非親告罪になったので、被害を受けている本人と親族以外の誰が通報しても警察は適切な対応をとることができます。しかしもちろんそれも、警察が動けるだけの要件を満たした場合だけです。

警察がストーカーに対してできること

ストーカー行為が認められれば、警察は様々な働きかけができます。

警察によるストーカー問題の解決法

アドバイス:
ストーカーに対してすべきこと・してはいけないことの助言。今後の対処法の提示。適切な相談機関や避難先のあっせん。
周辺のパトロール:
自宅付近やストーカー被害を受けた場所周辺のパトロール回数を増やすなどの措置。
警告:
犯人への「被害者に対しストーカー行為をこれ以上繰り返してはならない」旨の警告。
禁止命令:
主に犯人が警告に従わなかった場合、公安委員会から犯人に対して発せられる禁止命令。これを無視すれば犯人に2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科すことができる。
逮捕:
被害届を出し、その内容が明確であり真実と認められれば、犯人の逮捕が可能。ストーカーが逮捕された場合、拘留手続きが取られることが多く、被害者と物理的に距離をとることができる。
犯人へのカウンセリング:
警察がその他の専門機関と連携して、犯人のカウンセリングなどを行ってストーカー行為の再発防止をする。

中でも警告、禁止命令、逮捕は強力な手段です。禁止命令は緊急性が認められれば、警告をしていなくても出せますし、そのまま刑事罰も適用できます。

ストーカーに適用できるその他の罪名

ストーカー行為罪以外にも、ストーカーに適用できる罪名はあります。

ストーカー行為に適用できる罪名

住居侵入罪:
ストーカーが許可なく住居や敷地に侵入したときなど(刑法第百三十条))
信書開封罪:
ストーカーが勝手に手紙などの郵便物を開封し、中を見た場合(刑法第百三十三条)
逮捕・監禁罪:
ストーカーに無理やり連れていかれる、身柄を拘束されるなどの場合(刑法第二百二十条)
脅迫罪:
ストーカーに具体的な内容の脅迫をされた場合(刑法第二百二十二条)
名誉毀損罪:
ストーカーに不特定多数の目に触れる形で悪い噂を流された場合。ネット掲示板やSNSなども対象(刑法第二百三十条)

ただしこれらはどれも軽犯罪であり、ストーカー規制法で取り締まる方がストーカー問題の解決には有効です。もしこれらの罪でストーカーを訴えるとすれば、弁護士の協力を得て民事で戦わなくてはならない場合もあります。

関連リンク:e-Gov「刑法」

警察がストーカー被害に動けない・対応できないパターンとは

さて、ストーカー問題に対し、警察は多くの有効な働きかけができることはわかっていただけたと思います。2017年のストーカー規制法の改正以降さらに警察の権限は拡大し、警察なしでストーカー問題を解決するのは極めて困難です。

しかし警察も万能ではなく、問題解決に介入できない場合もあります。

犯人がわからない

ストーカー被害は、犯人が知らない人物であったり犯行を目撃していないために犯人の特定ができなかったりということが往々にして起こります。そんな場合はたとえ被害届を出しても、警察は積極的には動けません。

犯人がわからない段階で警察にできることは、パトロールの強化くらいです。パトロール中に暴行されるなどの緊急性の高い状況に出くわせば現行犯逮捕ができますが、そんなタイミングのいいことはあまり期待できません。またパトロールに気づいて犯人がストーカー行為を中止することもありますが、やり方を変えたり中止してもまた再開したりする可能性が高いです。

証拠がない

警察がストーカーに対処するために必要な証拠

  • つきまとい行為が繰り返されているという証拠
  • 拒否しているのに続いているという証拠

警察は犯罪が行われた場合にのみ捜査や逮捕の権限が与えられます。それはストーカー問題にしても同じで、ストーカー規制法によって介入できるパターンが増えたからといって、犯罪が行われたことの証拠がなくては何もできないのです。

またつきまとい等は繰り返されて初めてストーカー行為と認められます。よって警察が介入するには、1度きりのつきまとい行為の証拠だけでは不充分です。

つまり怪我を負うなどの最悪の事態に至る前に確実に警察に動いてもらうためには、被害届を出す前に充分な証拠をそろえる必要があります。

ストーカー被害で警察を動かす(捜査する)ために被害者ができること

ストーカーの迷惑行為のひどさを最もよく知っているのは被害者です。よって被害者はストーカー行為に遭うたびに、それを証明する証拠を残していかなくてはなりません。

物的証拠の保全

ストーカーが置いていった手紙や贈り物などはできる限り証拠として保管しておきましょう。それ自体がストーカー行為の証拠になりますし、贈り物には盗聴器が仕掛けられているかもしれません。犯人が誰かわからない場合には、盗聴器から犯人の特定につながる場合もあります。

もし汚物などの保管が難しいものであれば、写真に撮っておいてください。

その他、嫌がらせ電話や暴言の音声データもできる限りたくさん残せるよう、普段からICレコーダーを持ち歩いたりスマホの録音アプリを利用したりすることも必要になります。

ストーカー行為の記録

ストーカー行為に関して記録しておくべきこと

  • ストーカーから受けた迷惑行為の内容
  • 迷惑行為を受けた日時・場所・当日の天気
  • 迷惑行為への自分が行った対処(拒否した・警察に相談した など)

ストーカー行為の内容、日時、自分が行った対処などについてノートやスマホに記録しておけば、ストーカー行為が繰り返されたことの証明になります。できるだけ詳細に記し、当日の天気なども書き留めておけばその日に書いたという信憑性が高まります。

相手の言動とともに、それに対して自分が拒否の姿勢を示したこともちゃんと記録しておいてください。

ストーカー問題の解決に探偵ができること

ストーカー行為の証拠がそろっていない初期段階では、警察は捜査に充分な人員を割くことはできません。そんなとき、警察に代わって調査を行うのが探偵です。

犯人の特定

警察に動いてもらうために最大の要件が犯人の特定です。探偵は依頼人からの情報をもとに、定点撮影や張り込み、行動調査、指紋鑑定・声紋鑑定、盗聴器発見調査などを行います。

ストーカーは確実にターゲットの周辺で何らかの行動を行っているため、特定できる可能性は高いです。

証拠集め

犯人が残した物品を保管し、記録をつけるのは被害者本人にもできますが、ストーカー行為の写真や動画を撮るのは素人には難しいです。機材の質の問題もありますし、そもそも自分がストーカー行為をされているときに撮影していては、相手を逆上させたりカメラを取り上げられたりされる危険もあります。

家族や友達に頼んでも同じことで、ストーカー本人にバレては被害の拡大は避けられません。そもそも証拠写真を撮るために、つかずはなれず被害者を尾行することなど、普通の人にはできないでしょう。

そこで役に立つのが探偵のプロの技です。ストーカーが現れそうな場所を予測して張り込み、暗所にも対応したカメラを用いて、確実に警察を動かせるだけの証拠をつかみます。

早期解決には早い段階で証拠集めを行う必要があります。そのためにも探偵への依頼は早ければ早いほどいいです。

ストーカー問題の解決に弁護士ができること

法律と交渉のプロである弁護士も、犯罪行為の証拠なしには動けない警察を動かすために役立つ存在です。警察に相談したもののすぐに動いてくれそうにない、現時点ではストーカー行為と認められないと言われた場合などに、警察に対して働きかけてくれます。

違法行為に関する指摘・アドバイス

上でも説明しましたが、ストーカーはストーカー行為だけでなく他の軽犯罪を犯している可能性が高いです。勝手に住居に侵入していたり、物を壊したり、手紙を開封して中を見たりする行為はどれもストーカー行為罪とは異なり、1度でも犯罪と認められます。

弁護士はそういった軽犯罪で警察に逮捕を促し、ストーカーが拘留されているうちにストーカー行為罪での刑事告訴の準備をするなど、多角的な視点から解決を目指すことができます。

他にも警察とは異なる柔軟なアドバイスもできるので、警察がすぐに動いてくれないときは、ストーカー問題に強い弁護士に相談してみてください。

警告・禁止命令の要請

ストーカーに対して警察からは警告を、公安委員会からは禁止命令を出せることは上で説明しました。どちらも比較的容易に発せられますが、まだストーカー行為の実績が足りないなどの理由で出し渋りがある場合は、弁護士からの要請は効果があります。

とはいえその場合でも、やはり要請の前にある程度の証拠や犯人に関する情報はそろえておくべきです。探偵の集めた証拠があれば、弁護士も警察に対し強く出られます。

被害届・刑事告訴の手続き

警察にストーカー行為について訴えるには、主に被害届と刑事告訴の2つの方法があります。

被害届と刑事告訴の違い

被害届:
被害の内容を警察に申告する書類。警察はこれを受理する義務があるが、捜査の義務は発生しない。
刑事告訴:
被害者本人(あるいはその親族)が犯人の処罰を求める手続き。警察は正当な理由がなく受理することを拒否できない(明確な犯罪事実・犯罪要件がない場合は拒否できる)、受理された場合は捜査の義務を負う。

つまり警察に捜査してもらうためには、告訴の手続きをとる方が有効なのです。

しかし素人には刑事告訴の手続きは大変で、訴状の作成などは弁護士に依頼しなければまず無理です。さらに警察は告訴状を受理すれば捜査の義務を負うため、確実に逮捕・送検できる案件しか受理しない傾向にあります。

そんなときにも弁護士がついていれば、警察は弁護士に勝算がある、すなわち犯罪として立件できるだけの材料があると判断し、告訴状を受理しやすくなります。

また被害届は警察の説明のもとに作成するため誰でも簡単にできますが、その後の展開をスムーズにするためにも、弁護士についてもらった方が安心です。

示談・民事訴訟

ストーカー問題の解決に、示談や民事訴訟を考える人もいます。

示談と民事訴訟の違い

示談:
双方が話し合い、慰謝料を含む賠償の方法と今後について取り決めること
民事訴訟:
個人間で慰謝料や賠償を巡って裁判で争うこと

どちらも自分が望む形の解決を目指すなら、交渉と法律のプロである弁護士を雇うべきです。

しかし実はストーカー問題では、ストーカーを拘留できない示談も民事訴訟もあまり効果がありません。それよりは警察に動いてもらうための働きかけをしてもらう方が賢明です。

ストーカー問題で警察に適切な対処をしてもらうために

ストーカー問題に最も力を持っているのは警察です。ストーカー被害に遭ったらまずは警察に相談し、相談実績を作りましょう。

しかし警察は犯罪行為があったという証拠がなければ動けません。そのためには自分で証拠となる物品を保管し記録をとることはもちろん、早い段階で探偵に依頼することを考えてください。証拠集めだけでなく、犯人の特定に非常に役に立ちます。

警察に動いてもらうには、弁護士によるはたらきかけも有効です。

どちらがいいとは一概には言えませんが、警察がすぐに動いてくれない場合は、早めにプロに依頼してください。