ある特定の人物からしつこいメールが来たり、断っているのに何度もデートに誘われたり、別れた恋人から脅すようなことを言われたり…。「これってストーカーなの?」「こんなことで警察に相談していいの?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

結論からいえば、そういった強引な事例のほんとんどは、ストーカー規制法に違反したストーカー行為です。

ストーカー規制法は、ストーカー行為によって命を落とすなどの最悪の事態を未然に防ぐために作られた法律です。つまりその前段階となる些細な迷惑行為こそ取り締まりの対象なのです。

この記事では、ストーカー規制法とストーカー行為の判断基準についてわかりやすく解説しています。自分が実際に受けた被害や交友関係と照らし合わせて、少しでも心当たりがあるようならぜひ警察などのしかるべき機関に相談してください。

ストーカー行為となる判断基準は?ストーカー規制法における定義

ストーカー規制法は正式には「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といい、この法律では「つきまとい等」を1度でなく繰り返し行うことをストーカー行為と規定して罰則を設けています。

「この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。」

以前は、特定の相手へのつきまといや嫌がらせなどの行為は、軽犯罪法でしか取り締まることができませんでした。

しかし2000年にストーカー規制法が施行されたことによって、それらの行為が「恋愛感情その他の好意の感情」に基づく場合にのみ、より重い罰を課したり警察からの警告を出したりできるようになりました。さらに2017年の法改正後は、警察は警告なしでストーカー行為の禁止命令を出せるようになっています。

単なる恨みや営利目的の嫌がらせなどとは異なり、恋愛感情やそれが満たされないことによる恨みが原因となる行動は、犯人が正常な判断力を失いがちです。自分が犯人だとバレても嫌がらせを続けたり、無理心中を図ったりすることもあります。

そういった事態を防ぐためにできたのが、ストーカー規制法です。さらに2017年に改正され、時代の変化に合わせて脅迫する内容の電子メールやリベンジポルノなども適用内となりました。

ちなみにストーカー行為の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、禁止命令に違反した場合は2年以上の懲役または200万円以下の罰金と定められています。また時効は刑事訴訟法に基づき、ストーカー行為が終わった時点から3年以内です。

ストーカー規制法の対象となる条件①「つきまとい等」

ストーカー行為とみなされるのは、「つきまとい等」にあたる行動を繰り返して行った場合です。その場合のみ、警察から警告や禁止命令を出すことができます。

「つきまとい等」に該当する行動は以下で紹介する8つに分類されています。具体例も挙げていますが、これ以外にも当てはまるパターンはあります。

つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつき等

  • 尾行する・付きまとう
  • 行動先を調べて先回り・待ち伏せする
  • 進路に立ちふさがる
  • 自宅・職場・学校などで見張る・監視をする・勝手に押し掛ける
  • 自宅・職場・学校などの付近をみだりにうろつく

ターゲットの周辺について回ること全般です。2017年の法改正で、うろつくことも規制の対象となりました。

あくまで繰り返し行った場合ですが、こういった直接的に害にならない行動でもストーカー規制法で裁くことができます。

行動監視をしていると告げる行為

  • 「いつでも見ているぞ」などと口頭・電話・メールで伝える
  • ターゲットの行動や服装などを電話やメールなどで告げ、監視をほのめかす
  • 帰宅直後に「おかえり」など、リアルタイムで行動にそったメッセージを送る
  • お店などよく行く場所(ネット掲示板を含む)にメッセージを残す
  • いつも使っている車や自転車などにメッセージや訪れた痕跡を残す
  • すぐそばに来たことを、知人などを通じて伝言する

実際にどの程度監視しているかは問題ではなく、「行動を監視している」ということをターゲットに伝え、恐れさせる、あるいは自分が近しい存在であるとアピールするような行動はすべてこれに当たります。

面会・交際等の要求

  • 会うように要求する
  • 交際・復縁を要求する
  • 手紙やプレゼントのやり取りを要求する

義務のないことを行うように要求することがこれに当たります。特にはっきりと拒否の意思を示しているのに要求を続けた場合、それが判断の材料となります。

犯人からの直接的なはたらきかけなので、言葉と態度ではっきりと拒否することが大事です。ただしあくまで相手を刺激しすぎないように気を付け、頼りになる人物に同席してもらうなど対策をしましょう。

著しく粗野・乱暴な言動

  • 「バカヤロー」など大声で罵倒する
  • 汚い言葉遣いで怒鳴ったり、メールや手紙を送ったりする
  • 大きな音を立てる
  • 物を殴る・蹴る

もちろん物を壊せば器物損壊罪、人に暴力をふるえば傷害罪(暴行罪)に問えますが、ストーカー規制法ではそこまでの物理的な被害がなくても取り締まることができます。

無言電話、拒否後の連続電話、ファクシミリ、電子メール・メッセージの送信等

  • 自宅・職場などに電話をかけて何も言わない(無言電話)
  • 拒否されてもしつこく自宅・職場などに電話をかける
  • 拒否されても何度もファックス・電子メール・SNSを用いてメッセージを送信する
  • 拒否されてもターゲットのブログやホームページに書き込みをする

しつこい嫌がらせ電話・メールの類が当てはまります。2017年の法改正で、SNSなどによるインターネット経由のメッセージ全般が対象となりました。

ただし電話であれSNSであれ、はっきりと拒否していることが条件です。警察や弁護士に訴える意思を伝えるなどすれば、拒絶が本気であることを強調できます。

汚物などの送付

  • 汚物や動物の死体などを自宅や職場に送り付ける
  • その他、不快感を与えるものを自宅や職場に送り付ける

汚物などの送付はストーカーに多い行動のひとつです。こういったことが起こった場合、すぐに捨てたりせずに必ず写真に撮って日時や状況を記録してください。警察に届け出るにも弁護士に相談するにも役に立ちます。

名誉を傷つける事項の告知

  • ターゲットの名誉を損なうようなことを言う・メールなどで送信する・ネットに書き込む
  • 根拠のない悪いうわさをターゲットにも伝わるように流す

いわゆる誹謗中傷にあたる行為のことです。

性的羞恥心を害する事項の告知

  • わいせつな写真・画像を自宅や職場などに送り付ける
  • 電話や手紙でわいせつな言葉を伝えて嫌がらせする
  • わいせつな内容をメール・SNSなどで送信する
  • ターゲット自身あるいはそう思われるわいせつな画像などをインターネットにアップする・人目に触れる状態にする

性的な内容の嫌がらせは、ストーカー特有ともいえる行動です。最近ではリベンジポルノによる被害も取りざたされるようになり、2017年の改正ではその点も考慮して追加されました。

しかし取り締まれるようになったとはいえ、リベンジポルノは被害に遭ってしまえば完全に収束することはありえません。たとえ交際相手であっても、全裸・半裸などの人に見られたくない写真は他人の手に渡さないようにしましょう。

ストーカー規制法の対象となる条件②「ストーカー行為」

「つきまとい等」を同一の者に対して繰り返して行うことをストーカー行為といいます。被害者にとっては「つきまとい等」のひとつでも不快なものですが、繰り返し行われなくてはストーカー行為と判断されませんし、警察に取り締まってもらうこともできません。

つまり、

  1. 同じ人物が
  2. 何度も
  3. 「つきまとい等」にあたる行為を繰り返している

という証拠をそろえる必要があります。

そのため手紙・メールや送付物は証拠としてとっておき、日時などの記録もつけておきましょう。また何か起きるたびに警察に相談しておくと、次に何か起こったときに動いてもらえる可能性が高いです。

ストーカー行為の前兆!加害者となる人物の言動・特徴、被害に遭ってしまうパターン

ストーカーとなるのは、交際相手や元交際相手がほとんどです。ほとんど接点のない相手である場合もありますが、どちらにせよ「まさか」としか思えない人物がストーカーになるのです。

ではどんな人がなりやすいのか、どういった場合にストーカー被害に遭ってしまうのでしょうか。その前兆となるものをまとめたので、自分の交友関係などと照らし合わせてみてください。

ストーカーになりやすい人物の特徴

交際相手や元交際相手をはじめ、知人や行きつけの店舗の店員などに対し、怖いと感じることはないでしょうか。

ささいなことで舌打ちをする、睨んでくる、暴言を吐かれる、やけに体を触るなど、普通とは違う対応をする人物がいれば、あなたに対してストーカー行為をはたらく可能性があります。念のため記録をとりつつ、自然に距離をとるようにしましょう。

また勘違いされがちですが、男性が女性にストーカー行為をするばかりではありません。女性が男性に対して、あるいは同性を相手にストーカー行為をはたらくこともあるのです。

交際相手がストーカーになる前兆

交際相手がストーカーになりやすいパターン

  • 相手の行動を細かく知りたがる
  • 相手を外で見かけても声をかけずに後をつける
  • 電話などをこっそり盗み聞きする
  • インターネットの検索履歴や閲覧履歴をチェックする
  • 思い通りにならないと怒る
  • 暴力をふるうことがある
  • 乱暴な言葉遣いをしたり怒鳴ったりすることがある

交際相手に対して出来心でしてしまいがちな言動もありますが、それが何度か繰り返されたり、言葉にできない違和感があったりする場合は特に気を付けてください。また別れる際は、頼りになる人に同席してもらうなどの注意が必要です。

交際を断った相手がストーカーになる前兆

交際を断った相手がストーカーになりやすいパターン

  • 拒否しても電話やメールが送られてくる
  • 約束などをせずに一方的に会いに来る・接近する
  • 交際を断ったことなどを責める・脅す
  • 断られた相手の周りの人間に連絡を取る・取ろうとする

交際を断った相手の場合、「拒否しているのに接触してきた」という条件を満たしやすいです。「つきまとい等」に当てはまらない行為であっても、不快だと思ったらできるだけ早くにはっきりと拒絶してください。

誰かに付きまとわれている気がする

ストーカーは顔見知りの人物とは限りません。こちらが覚えていない、あるいは会ったり言葉を交わしたりしたことがなくても、相手が一方的に恋愛感情を抱いて執着してくるパターンもあります。

つきまとわれている疑いのあるパターン

  • 同じ人に出先などでよく会う
  • 近所でよく同じ人を見かける
  • しょっちゅう誰かに見られているような気がする
  • 帰り道など毎日同じくらいの時間につけられているような気がする
  • 同じ人とよく目が合う
  • 無言電話やいたずら電話がかかってくる
  • 自宅のポストや職場のデスクやロッカーに覚えのないものが置かれている
  • 差出人不明の手紙やメールが送られてくる
  • 自分の情報がネットなどの不特定多数が見る場所に書き込まれていた
  • 自分の周りで自分に関するうわさが流れている(恋愛関係のことなど)

同じ人を見かけたりつけられている気がしたりする程度では、まず警察は動いてくれませんが、物証があれば被害届を受け付けてくれる可能性は高くなります。怪しいと感じたら証拠を保管しておくのは大事です。

また証拠や物理的な被害がなくても、狙われているような気がしたらできるだけ1人で行動しない、夜道をあまり歩かないようにするなどの対策をとってください。

交際相手などが過去にもストーカーしていた人物である

過去にストーカーをしていた人物が再びストーカー行為をはたらく可能性は高いです。一方的に好意を抱かれるのを防ぐことはできませんが、交際相手であれば慎重な付き合いをする、相手の家に簡単に上がらないなどの対策があります。もちろん相手が過去の恋人にストーカーをしていたことを知っていたなら、できるだけ接触を控える方が安全です。

しかし交際を断ったことでターゲットにされる場合もあるので、必ず安全が保障されるというやり方はありません。

ストーカー行為をはたらいていた過去を知らずに交際してしまったら、別れるときには信頼できる人物の助けを借りてください。また相手の過去についての情報を集めることも、対策を立てる材料になります。

ストーカー行為罪の非親告罪化

2017年のストーカー規制法改正における大きな改善点の1つに、ストーカー行為罪の非親告罪化があります。

これまでストーカー行為を罪に問うには、被害者自身(とその親族)が訴え出なくてはなりませんでした。しかし法改正以降は、当事者以外の通報によっても警察が警告や禁止令を出したり、場合によっては公訴したりすることが可能になっています。

つまりどんな些細なことでも警察や周囲の人間に相談していれば、それだけストーカー行為を止められる可能性が高まるということです。また当事者が報復などを恐れて行動できない場合であれば、周囲の人間が警察への通報や法的措置の手助けができます。

ストーカー行為と判断するポイントは「拒否しているのに繰り返し行われること」

ストーカー規制法における「つきまとい等」には、親しい間柄であればまるで問題にならないようなことも含まれています。そんな些細なことがストーカー行為と認められるための要件は、こちらが拒否しているのに行われることと、繰り返し行われることの2つです。

よって相手からの行為を嫌だと思ったらまずははっきり拒絶し、相手が接触してきた証拠はできるだけたくさん残しておきましょう。それがストーカー問題を解決する第一歩となります。

それでもストーカー行為かどうかわからない、ストーカー行為にうまく対応できないという場合は、証拠がそろっていなくても警察に相談してみてください。警察には被害者自身ができるストーカー対策に関するマニュアルがありますし、パトロールの回数を増やすなどの対策をとってくれることもあります。そして警察への相談実績自体もストーカー行為の証拠になります。

あまりにストーカーの情報が少なく、警察にも打つ手がない場合は探偵に調査を依頼するのも1つの方法ですし、弁護士を介して警察に適切な対応を促すこともできます。自分1人で我慢せず、公的な相談先や調査・解決のプロを利用しましょう。