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事業におけるシナジー効果とは?具体例を交えて解説
【投稿日】2022年7月14日
複数のものを組み合わせたときに、足し算以上の効果が得られることがありますが、この効果のことを「シナジー効果」と言います。
ビジネス分野においては、「シナジー効果」を享受するための手段として、業務提携やM&Aが利用されることがよくあります。
この記事では、事業における「シナジー効果」について、具体例を挙げながら詳しく解説していきます。
シナジー効果とは?
「シナジー効果」とは、複数の異なる事業や商品を組み合わせることによって、単体で得られる以上の効果を生じることで、日本語では「相乗効果」と言います。
もともと「シナジー」は、生理学分野で「ある動作を行うときに多くの筋肉が協調しながら連携して動くこと」を指す言葉でしたが、現在ではビジネス分野で多く使われる言葉です。
企業が新しい事業を始めるときに取り得る方法としては、「自社でゼロベースから事業を始める方法」と「すでに事業を行っている企業を買収する方法」があります。
両者を比較すると、後者の方が事業の立ち上げや成長にかかる時間を大幅に短縮することができ、新しい市場にスムーズに参入することができたり、既存事業との「シナジー効果」によって、より大きなメリットを得て、その後の企業の発展につながる、などのメリットがあります。
スケールメリットとの違い
「シナジー効果」が複数の異なる事業や商品を組み合わせることによって生じる効果であるのに対して、「スケールメリット」とは同じ種類の物を多く集めて規模を拡大することによって得られる効果です。
例えば、飲食チェーンでは店舗数を増やすことによって売上増や利益増を図ることができますし、製造業であれば生産数を増やすことによって製品1個当たりの固定費を削減することができます。
シナジー効果の反対語は?
企業同士がシナジー効果を狙って業務提携やM&Aを行ったとしても、必ず成功するとは限りません。
場合によっては相互にデメリットが生じることがあり、このようなシナジー効果の反対語が「アナジー効果」です。
「アナジー効果」のことを「マイナスシナジー」「ネガティブシナジー」「負のシナジー」などと言うこともあります。
シナジー効果の種類
シナジー効果には、視点の違いによりいくつかの分類方法や種類があります。
ここでは、分類方法の視点別に代表的なシナジー効果の種類について説明します。
企業活動における事業活動か、支援業務かによる分類
企業の内部で行われている活動を大別すると、「商品を作ってから売るまでの事業活動」と「事業活動が円滑に行われるように支援する活動」に分けることができます。
前者に関わるシナジーが「事業シナジー」、後者に関わるシナジーが「支援業務シナジー」です。
事業シナジー
企業の本業である事業活動に関わるシナジー効果のことです。
業種によって事業活動の内容には違いがありますが、代表的な事業活動としては、「購買」「製造」「物流」「販売」があります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
【1】購買シナジー
「購買シナジー」は、企業が購入する原材料・部品・商品などの調達に関わるシナジー効果のことです。
購入先の一元化や共同購入などによって、価格交渉力を強化してボリュームディスカウントを図ったり、原材料・部品・商品などの調達を効率化したり安定化したりすることができます。
【2】生産シナジー
「生産シナジー」は、企業における生産活動に関わるシナジー効果のことです。
工場や生産設備の稼働率を高めることによる生産能力の向上やコスト削減、生産拠点の統廃合や組織合理化などによるコスト・人員削減、技術やノウハウの共有による業務効率化などがあります。
【3】物流シナジー
「物流シナジー」は、企業における物流活動に関わるシナジー効果のことです。
物流量が増加することにより、外注物流費のボリュームディスカウントを実現することができます。
物流倉庫などの物流設備の統廃合によるコストや人員の削減、技術やノウハウの共有による業務効率化などを図ることができます。
また、物流を事業としている企業では、取扱量の増加による売上増加やサービス向上、物流網の最適化などの効果が得られます。
【4】販売シナジー
「販売シナジー」は、企業が行う販売活動に関するシナジー効果のことです。
店舗拡大や従来販売対象ではなかったエリアへの販路拡大などによる売上拡大、取扱商品のラインナップ拡充、買収対象企業のブランド活用によるブランド力の向上などがあります。
支援業務シナジー
「支援業務シナジー」は、企業における支援業務に関わるシナジー効果のことです。
【1】財務シナジー
「財務シナジー」は、資金調達や会計に関わるシナジー効果です。
複数の企業が合併したり業務提携したりすることによって資本金が増加し財政基盤が強化され、株式市場や金融機関に対する信用力がアップしますので、より多額の資金調達が可能になります。
また、金融機関から融資を受ける際にもより低い金利が適用されることになりますので、資金調達コストを削減することができます。
【2】研究開発シナジー
「研究開発シナジー」は、企業の研究開発に関わるシナジー効果のことで、事業シナジーに含める場合もあります。
複数の企業が保有している技術やノウハウにより新たな価値を創造して、新しい商品やサービスを創出することができます。
また、研究開発リソースの有効活用や知識・ノウハウの集約による研究開発の成功率の向上、研究開発拠点や設備の統廃合による効率化・コスト削減などの効果が得られます。
売上拡大か、コスト削減かによる分類
シナジーを、売上拡大につながる「売上シナジー」とコスト削減につながる「コストシナジー」に分類することもできます。
売上シナジー
「売上シナジー」とは、売上拡大につながるシナジー効果のことです。
販売エリアの拡大や販売チャネルの拡大などの他、クロスセリングやアップセリングなども売上シナジーに含まれます。
ここで、クロスセリングとは「既存の商品やサービスに付加的なものを併せて販売すること」を言い、アップセリングとは「ユーザーが検討中の商品やサービスよりも単価が高いものを販売すること」を言います。
コストシナジー
「コストシナジー」は、原価やコストを下げたり、経費を削減したりするようなシナジー効果です。
複数の企業の総務・管理・人事などの共通機能を一元集約化することによって、人件費などのコストを削減することができます。
また、原材料の大量仕入れや備品などの共同購入などによって仕入れ価格を下げたり、購入コストを削減したりすることも「コストシナジー」です。
シナジー効果を生み出す方法と具体的事例
シナジー効果の種類について説明してきましたが、ここではシナジー効果を生み出すための方法を4つ紹介します。
また、それぞれの方法について代表的な事例も紹介します。
業務提携(アライアンス)
「業務提携(アライアンス)」とは、競合しない企業同士が提携をすることによって、親和性の高い商品やサービス、技術、ノウハウなどを持ち寄って、お互いの短所を補うことによってシナジー効果を得るものです。
主に、新しい市場の開拓、新商品の開発、新規事業の立ち上げに強い効果を発揮しますので、お互いの事業を加速することができます。
トヨタとスズキのシナジー効果の事例
トヨタとスズキは、2016年から業務提携に向けた話し合いを行い、2019年に自動運転分野を含めた新たな分野での協力を進めていくための資本提携で合意しました。
トヨタの持つハイブリッドカーや電動自動車などの技術とコンパクトカーの製造技術と販売チャネルを持つスズキの間でのシナジー効果を狙ったものです。
この結果、トヨタのハイブリッド技術の供給、スズキのインドやアフリカでの市場シェアの共有、部品仕入れの共有化などが行われました。
M&A
「M&A」とは、企業を買収したり合併したりすることによって、自社が保有していなかった事業分野や技術、ノウハウなどを獲得して、シナジー効果を狙うものです。
また、M&Aでは同業者を買収することによって、シェア拡大や売上増加、コスト削減などのスケールメリットを狙うこともあります。
ソフトバンクのシナジー効果の事例
1981年に設立されたソフトバンクは、1990年に米国Yahoo!を買収し、その後も2001年にブロードバンド通信事業に参入、2004年に日本テレコムを子会社化して固定通信事業に参入、さらに2006年にボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業者となりました。
ソフトバンクは、これらの買収を行うことによってインターネットのポータルサイト・固定通信網・携帯通信網のすべてを手に入れて莫大なシナジー効果を生むことに成功しました。
楽天のシナジー効果の事例
楽天もM&Aを利用することによってグループ内の事業を多角化して、シナジー効果を得ながら発展してきた企業です。
2003年にマイトリップ・ネット、2004年にDLJディレクトSFG証券、あおぞらカードなど多種多様な企業を買収してきました。
これによって、楽天ユーザーに消費サービスと金融サービスを提供できるようになり、「楽天経済圏」という戦略を成功させました。
多角化経営
「多角化経営」とは、自社の主力事業である本業以外の分野の事業を始めることによってシナジー効果を得ようというものです。
「多角化経営」は、さらに次の4つに分けることができますので、それぞれ簡単に説明します。
水平型多角化
「水平型多角化」とは、既存の顧客を対象として同じ商品やサービスの市場を拡大するもので、既存の技術や流通経路などを活用することができます。
例えば、一般消費者向け自動車メーカーが業務用の自動車やバイクを生産・販売するケースが考えられます。
垂直型多角化
「垂直型多角化」とは、技術の関連性は低いものの、既存の市場に近い市場に商品やサービスを展開することです。
例えば、飲食チェーンが食材の生産や流通・販売などを行うようなケースがあります。
集中型多角化
「集中型多角化」とは、技術の関連性が高い商品やサービスを新たな市場に投入することです。
例えば、テレビの生産技術を応用してカーナビを生産するようなケースです。
集成型多角化
「集成型多角化」とは、技術も市場も関連性がない新規事業を展開することです。
例えば、コンビニが金融業を始めたりするようなケースです。
鉄道会社のシナジー効果の事例
従来ら多角化経営によってシナジー効果をあげているのは鉄道会社です。
鉄道会社は、鉄道沿線の駅周辺にデパートやスーパーマーケットなどを持っています。
例えば、京王電鉄の京王百貨店、西武鉄道の西武百貨店、東急電鉄の東急百貨店・東急スーパーなどです。
また、鉄道沿線の不動産開発(東急不動産、西武不動産など)を行ったり、遊園地(西武遊園地、京王よみうりランドなど)などを作ったりして、鉄道利用者を増やしてシナジー効果をあげています。
ファミリーマートのシナジー効果の事例
ファミリーマートは、2018年に24時間フィットネス「Fit&Go」を既存のファミリーマート店舗に併設する形でオープンし、フィットネス利用時に必要な商品や運動後の飲食料品の販売促進を行って収益の拡大を行いました。
また、同じ年に次世代コインランドリー「ファミマランドリー」を既存のファミリーマート店舗に併設してオープンし、待ち時間にコインランドリー利用者のコンビニエンスストア利用を促すようにしました。
グループ一体経営
「グループ一体経営」とは、複数の子会社やグループ会社を持つ企業グループが、重複する業務や共通する業務を一本化することによってコスト削減などのシナジー効果を狙うものです。
例えば、事業以外の非生産部門である経理組織、人事組織、それらシステムを本社で統括して、全ての子会社を管理しシナジー効果を狙います。
LIXILグループのシナジー効果の事例
LIXILグループは、2012年7月に子会社の会計システムの統合を行いました。
もともと建築材料・住宅設備機器の大手5社が統合してできた企業グループでしたが、その後もM&Aを進めていましたので、105社の会計システムの統合を行いました。
これによって会計部門の共通化が実現し、各社の業績がリアルタイムで把握できるようになり経営判断のスピードアップを実現しました。
みずほファイナンシャルグループのシナジー効果の事例
2011年、グループ会社として経営していたみずほ銀行とみずほコーポレート銀行の合併が発表されました。
これにより、売上向上・人員最適化・システム共通化・顧客の利便性向上などのシナジー効果を得ることができました。
シナジー効果を発揮させるための3つのポイント
シナジー効果を生み出す方法と具体的な事例を紹介してきましたが、業務提携やM&Aを行ったとしても必ず成功するものではありません。
シナジー効果を発揮させるためには次の3つのポイントを抑えることが重要です。
ポイント1:事業計画の明確化
シナジー効果を得るためには、業務提携やM&A、多角化経営、グループ一体経営などの具体的な戦略を含む綿密な事業計画が存在することが必須条件です。
自社の強みと弱みをきちんと把握して、自社の発展のためにはどのような方法で弱みを補い、どのようなシナジー効果を得る必要があるのかということを経営トップが認識しておくことが必要なのです。
ポイント2:リスクの分析
前項で説明したように、シナジー効果を得るためにはいくつかの方法がありますが、それぞれの方法には様々なリスクが存在します。
例えば、業務提携やM&Aでは相手企業の経営状況から社風などまでしっかりと調査をしたうえで決断しないと、想定外の損失が発生してしまうこともあり得ます。
M&Aのプロセスの中で実施するデューデリジェンスがこの調査に該当しますが、事業・財務・法務・IT・環境などの各分野の専門家による徹底した調査を行う必要があります。
ポイント3:PMI実行計画の策定
PMIとは「post‐merger integration」の略語で、M&Aなどの後に実施すべき経営統合作業のことです。
具体的には、経営体制や組織を統合したり、社内のインフラや業務システムの統合などを行うもので、この作業が上手くいかないと想定したシナジー効果が得られないばかりか、M&Aの失敗にもつながりかねません。
PMIは統合後速やかに始めなければなりませんので、あらかじめPMIの実行計画を策定しておくことが必要ですし、PMIを実行できる人材を確保しておくことも必要です。
シナジー効果を得るためには成功ポイントを押さえた事前準備と実行が重要!
この記事では、事業におけるシナジー効果、シナジー効果の種類、シナジー効果を得るための方法、そして成功するためのポイントについて具体例を挙げながら解説しました。
繰り返しになりますが、シナジー効果は業務提携やM&Aを行ったからといって必ず成功するものではありません。
成功ポイントでも説明したように、事業計画が明確になっていること、事前のリスク分析を徹底して実施すること、PMIの実行計画がきちんと策定されていて、確実に実行されることが重要です。
シナジー効果を目的とした業務提携やM&A前のデューデリジェンスなら探偵事務所SATにおまかせ!
業務提携やM&Aでシナジー効果を生むためにも、まずは業務提携やM&A自体を成功させなければ失敗に終わってしまいます。
業務提携やM&Aの失敗を事前に防ぐために行うのがデューデリジェンスです。一般的には、事業・財務・法務・人事・IT・環境などのデューデリジェンスを専門家を入れて行いますが、昨今では上記のみだけではなく、業務提携・M&A先の企業や業務の実態、周囲の評判、相手先社長や役員の素性(経歴、過去の犯罪歴など)など、より実態に基づく精度の高いデューデリジェンスが重要視されています。
これまで数多くの企業調査などを行ってきた探偵事務所SATでは、探偵業法に基づき、こういった企業や社長・役員などの実態に基づく精度の高い調査が可能です。
金額が大きいなどリスクの高い業務提携やM&Aの場合、または「業務提携・M&A先の企業の社長や役員がちょっと信用しきれない」などが懸念される場合には、上記ような実態に基づく調査が有効ですので、お気軽にご相談ください。
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