【投稿日】 2022年6月10日 【最終更新日】 2022年6月21日

企業間で取引などをしていると、売掛金が発生することがあります。

売掛金とは、代金後払いの取引で生じる債権のことです。

売掛金は取引先に商品やサービスを販売・提供後、一定期間を経て、その代金を受け取るというシステムになります。便利なものではありますが、回収が滞ると経営が悪化してしまうため、回収不能にならないように心がけたいものでもあります。

しかし、売掛金回収不能になってしまうというトラブルも起こりかねません。売掛金回収不能になってしまう原因と、その予防方法と対処方法をご紹介します。

売掛金回収不能になる主な原因4つ!

売掛金回収不能になる原因は主に「支払い忘れやミス」「資金繰りが苦しい」「相殺を考えている」「請求内容、請求金額に疑問がある」の4つに分けられます。

これらはどうして起こってしまうのか、その理由もみていきましょう。

1:支払い忘れやミス

期限が来ても支払われないことの原因のひとつとして、単純に支払いを忘れているというのがあります。担当者の方が支払いそびれていたり、伝達ミスなどで支払いが滞ってしまっていたりします。

継続的に取引をしている場合はあまりそういったミスは起こりませんが、単発的な取引の場合、支払担当者が忘れていたりミスをしてしまったりすることも少なくありません。

単に忘れていた、ミスをしていたというケースでは、電話などで催促をすればすぐに回収できることが多いでしょう。

2:資金繰りが苦しい

売掛金の未払いの原因として最も多いのが、資金繰りが難しいというものになります。

商品を販売する会社であれば、売上代金を回収する時期と仕入れの返済時期との間にタイムラグがあるため、売掛金が支払えないということ自体が起こり得ます。

たまたま予定していた入金がないなど、短期間で解決する資金繰りの悪化であれば問題ありませんが、頻繁に売掛金が滞納されるようであれば注意しなければなりません。

頻繁に滞納されてしまう場合は取引先の経営状況が悪く、倒産の可能性もあるからです。取引先が倒産してしまうと、売掛金の回収が出来なくなり、未回収となってしまいます。

すると自社の資金繰りが悪くなり、自社も経営悪化となってしまう可能性があります。そのため、頻繁に支払いが滞る場合には、支払いがあるまでは新たな取引を行わないなどの予防策をとることが大切になります。

3:相殺を考えている

会社同士で同額の債権を持ち合わせている場合、相殺をすることが出来ます。

A社がB社に100万円の金銭債権を持ち、他方、B社もA社に100万円の売掛債権を有する場合、お互いに100万円ずつ支払うのは無駄になります。そのため、相殺してお互いに債務を支払わないという方法があり、これを考えている場合があります。

売掛金回収という形ではなく、自社の債権もなくなるという形になるので、実害はありませんが、キャッシュが欲しい場合には厳しいかもしれません。その時は、相手に相談してみるのがおすすめです。

4:請求内容、請求金額に疑問がある

請求内容、請求金額について、当初の取引と違う、何か違和感がある、などの理由で支払いを保留している場合もあります。

この場合、請求金額について説明したり、商品やサービスについて説明しなおしたりしなければなりません。相手方の疑問について会社としてどのように対応するのか検討する必要があります。

また、商品に難癖をつけて代金を支払わないというクレーマーや不誠実な業者もあります。

自分の会社に落ち度があるのか慎重に見極め、その後の対応をきちんとしなければなりません。自社に落ち度がないのであれば踏み倒されないような対応をしていく必要があります。

売掛金回収不能になった事後の対処方法!

回収が不能になってしまった場合、貸倒損失を計上します。

貸倒損失とは、売掛金が回収できなくなった際に、その損失額を処理する勘定科目のことになります。貸倒損失には認められるケースと認められないケースがあり、法人税法上、貸倒損失の計上が認められるのは次の3つのケースです。

  • 法律的に金銭債権が消滅する場合
  • 金銭債権の全額が回収不能である場合
  • 一定期間取引停止後弁済がない場合

この3ケースについて、どのような場合適応され、どのような取り扱いになるのかについて以下のように表にまとめてみます。

項目名 項目名
区分 事実 取り扱い
法律的に金銭債権が消滅する場合 次の理由により法律的に金銭債権が消滅する場合
・更生計画認可の決定
・再生計画認可の決定
・特別清算に係る協定の認可の決定
・債権者集会の協議決定
・債務超過の状態が相当期間継続し、弁済を受けることができない場合で、債務免除を書面により通知
切捨額や免除額を貸倒損失に計上
金銭債権の全額が回収不能である場合 債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収不能の場合 全額を貸倒損失に計上
※一部のみを貸倒損失に計上することは不可
一定期間取引停止後弁済がない場合 ・売掛債権で、取引停止後、1年以上経過した場合
・債権金額より取立費用のほうが多くかかる場合
備忘価額1円を残して、貸倒損失を計上することが可能
※貸付金などの債権は対象外

1:法律上の消滅に該当する場合(法律上の貸倒れ)

法律上、債権が消滅している場合、回収できなかった売掛金は、貸倒損失として損金算入として扱われます。これを、法律上の貸倒れといいます。

債権の消滅が認められるケースは、裁判所による認可決定を経て債権が消滅したことを認められます。

貸倒損失として会計処理をしていなくても、税務署への申告書上で所得を減額することが可能というかたちになります。

2:金銭債権の全額が回収不能である場合(事実上の貸倒れ)

債務者の資産状況や支払い能力などから、売掛金の回収が不可能であると判断できる場合もあります。そのときには、金銭債権の全額を貸倒れとして損金経理することが可能です。

これを、事実上の貸倒れといいます。

ただし、担保がある場合にはその担保を処分した後でないと貸倒損失として計上ができません。

3:一定期間取引停止後弁済がない場合(形式上の貸倒れ)

取引停止から1年以上が経過しても売掛金が支払われておらず、督促をしたにも関わらず弁済がない場合にも貸倒れ扱いにすることができます。

この場合には、「備忘価額」を設定し、損金経理処理によって貸倒損失を計上する形になります。これを、形式上の貸倒れといいます。

備忘価額とは、何らかの事由で価値を失った資産などを帳簿などに記載する金額のことです。

回収不能になる前にできる予防方法!

売掛金の回収は、払う側に問題もありますが、回収側の企業も売掛金管理の仕組みを構築しておく必要があります。

回収不能にならないためにも、与信管理や請求管理、未回収売掛管理、定期的な見直しなどが大切になります。

1:与信管理

与信管理とは、新たに取引を開始する場合に、取引先の支払いに対する信頼度やリスクなどの評価を行うことをいいます。

与信管理の大切なステップは、「情報収集」です。

決算書・事業報告書・財務諸表などを参照して、その取引先がどれくらい信用出来る企業なのかをチェックしておきましょう。これらを徹底していくことで、売掛金未回収のリスクはかなり下げることが出来ます。

相手企業が信頼のおける企業であることが発覚したら与信限度額を設けるのも大切です。

与信限度額とは、取引金額や売掛金の上限金額です。

相手企業の売上や信頼度によって社内で決定する必要があります。売掛金は取引先の経営状況によっては回収が難しくなってしまう事もあるので、与信限度額の設定は慎重に行いましょう。

与信管理は、一度だけではなく継続的に行っていく必要があります。

具体的にはこういった与信管理は、民間の調査会社(探偵事務所や調査会社など)が行っているので、活用してみると良いでしょう。また、書面や公開データなどで分からないような事柄(過去に犯罪歴のあったり、訴訟歴などを持つ相手かどうか?など)も、売掛金回収リスクという面では大きく関わってきます。

こういったデータや書面では出てこない事柄については、探偵事務所などへの依頼がおすすめです。

2:請求管理

取引が発生する時には、正しい請求書を早期に出しておく必要があります。

請求書発行システムで請求書発行が売上と連動するなどの自動化が行われていれば、請求漏れやミスなどの問題は発生しにくくなるでしょう。

支払い期限などの設定も適切に行い、請求書を出した期日などを記録しておくとトラブルになりにくくなります。

請求日、発送日、入金確認日なども併せて記録しておくのが良いでしょう。

請求には、締め請求、都度請求、定時定額請求、分割請求など様々な発行方法があるため、企業ごとに違う方法で出す場合にはよく確認しておきましょう。

請求管理は、システムによる効率化と正確性が求められるものになります。請求書に不具合があると振込が出来ていなかったり、相手方に不安を抱かせてしまったりします。

相手に不信感を抱かせない姿勢も大切なため、請求管理はきちんと行いましょう。

3:未回収売掛金管理

未回収の売掛金がいつ支払われるのかは今後の資金繰りに大きく影響します。

回収不能になってしまった売掛金の発生には色々な原因があり、取引先との交渉、法的手段の検討などの対応が必要となる為、それぞれの売掛金がどのような状態にあるのか、常に確認できる状況にしておく必要があります。

売掛金の管理を徹底していても、相手方の企業の対応次第では全ての売掛金が確実に回収できるわけではありません。なかには、期日通りに支払ってくれない取引先もあるでしょう。

売掛金の支払いが滞っている場合には、期間ごとに区切って管理することをおすすめします。

例えば、遅延案件をひとまとめに管理するのではなく、遅延している日数ごとに区分し、30日以内、30日~60日、といった形で取りまとめておきましょう。

時間が経つにつれて、売掛金回収は難しくなっていきます。各期間ごとに対応を分けて考えましょう。

未回収売掛金の金額や期間を把握するために、現在の未回収売掛金がどういう状況にあるかを月1回まとめるなど、管理を強化する必要があります。

4:取引後も定期的な見直し

与信管理は特に、相手方の企業に対する管理になります。取引を開始したからといって、相手企業が常に信頼できる相手かどうかを確認する作業をしてかなければなりません。

むしろ、取引開始後も与信管理を継続して定期的な見直しを行っていくことにこそ重要な意味を持ちます。

取引開始時には経営状況が良かったとしても、長年の経営で悪化する可能性もあります。

そういったものを定期的に確認していくためにも、与信管理は特に重要になります。与信管理をせずに取引先の経営状況の確認を怠っていると、その間に経営不振に陥っていて売掛金が回収できなくなってしまうこともあるでしょう。

売掛金が回収不能になるリスクを避けるためには、与信の見直しを定期的に実施していきましょう。その上で取引先が支払いを滞らせないよう確実に請求書を送付したり、支払いが遅延したらすぐに督促したりする必要があります。

売掛金の滞納が続く場合には、与信限度額の見直しも行っていく必要があります。

相手企業の与信見直しだけでなく、自社で行っている請求管理や未回収売掛金管理も見直していく必要があります。自社の管理と、取引先との定期的な連絡が、売掛金回収につながるものになるので、定期的に見直しをしていきましょう。

売掛金回収不能になる前に、定期的に管理をしよう

売掛金が回収不能になる原因と、そうなってしまったらすべきこと、回収不能になる前に行いたい予防方法をご紹介しました。

売掛金が回収できないことは、会社の経営にとって大変危険なこととなります。経営していくうえで大切な売掛金回収はきちんと行っていきたいことになります。

売掛金回収不能になる原因は主に「支払い忘れやミス」「資金繰りが苦しい」「相殺を考えている」「請求内容、請求金額に疑問がある」となり、回収不能になってしまったらこれらのどの原因にあてはまるのか、取引先の企業に確認を取る必要があります。

その上で、回収不能だと判断された場合、「法律的に金銭債権が消滅する場合」「金銭債権の全額が回収不能である場合」「一定期間取引停止後弁済がない場合」の3ケースのどれに当てはまるのか確認し、貸倒損失として計上しましょう。

売掛金を未回収を防ぐためにできる予防方法としては、「与信管理」や「請求管理」、「未回収売掛管理」、「定期的な見直し」の4つになります。自社で行える管理は勿論のこと、取引先企業に対しても定期的に連絡を取り、確実に売掛金を回収できるようにしておくことが大切になります。

自社で解決出来ない事は、事前に売掛金未回収リスクがある企業なのか、探偵事務所などを活用して調査したり、実際にそのような事態を招く前に対策などを弁護士や税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

売掛金回収不能リスクの調査や、売掛金回収に関する調査は探偵事務所SATに!

探偵事務所SATでは、売掛金回収不能のリスクを取引前に事前に調査する企業の与信調査や、売掛金が回収不能になってしまった後の相手企業の調査(財産の有無など)などを行っております。

特に探偵事務所は、企業の公開データや書面に出てくる内容だけではなく、相手側企業の役員や社員など個人などにフォーカスした精度の高い調査が可能なので、金額が大きかったり、リスクが大きかったりする場合には、そういった点にまで突き詰めたリスク調査が必要不可欠と言えます。

売掛金回収は、事前のリスク管理と、事後の素早い行動が肝です。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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