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有利子負債とは何か?見方も含めてわかりやすく解説
【投稿日】2022年8月5日
企業情報などを見ていると、有利子負債という言葉がよく出てきます。
負債、と聞くと悪いイメージを連想してしまいます。「負債=会社の借金」という印象が強く、経営状態が悪いように感じてしまうのも事実です。
有利子負債が過剰にあるならば、それは会社の経営を左右しかねない問題にもなりますが、多少の有利子負債がある場合には、逆に社会的に信用されている企業である証にもなります。
果たして有利子負債とは、どう解釈していけばいいのか、また、貸借対照表ではどのようにあらわされるのか、実際にはどのように見て行けばいいのかを解説していきます。
有利子負債とは?
有利子負債とは、利息が発生し、それを含めて返済しなければならないものになります。
具体的には以下のようなものが含まれます。
- 金融機関からの借入金
- 社債
- コマーシャルペーパー
金融機関からの借入金は、「短期借入金」と「長期借入金」という2種類が存在します。
短期借入金は、返済期限が1年以内と設定されており、長期借入金は、1年以上の返済期間が設けられています。
長期借入金の方が利率は高くなりますが、安定した資金として運用することが可能です。
社債とは、企業が発行する資産運用を目的とした債券のことを指します。
購入者は一定の期間が経つと元金と利息を受け取ることができます。社債は借入金と同じ扱いになります。そのため、返済の義務が発生し、種類も様々です。
コマーシャルペーパーとは、企業が資金調達のために発行する約束手形のことを言います。これは無担保での発行となります。社債と形は似ていますが、期間が1年未満と短くなっているのが特徴です。
負債とは?
負債とは、会社の借金・借入金など、マイナスになる資産のことです。
銀行からの融資を受けた場合、ものの代金を未払いの状態にしている場合などの返済が控えているものが負債と呼ばれています。
将来的に資産から差し引かれるものを総じて負債としています。貸借対照表では右側に記載し、流動負債と固定負債に分かれています。
負債の細かい区分
貸借対照表の右側に示されている負債 は、「流動負債」と「固定負債」の2つに分かれています。この区分は、1年が基準となります。
つまり、1年以内に支払うものが「流動負債」、支払いまでに1年以上の期間が設けられているものは「固定負債」ということです。
「流動負債」にはいくつか種類があり、「買掛金」「未払金」「前受金」「社債」「短期借入金」などに分類することができます。
「固定負債」の種類としては「長期借入金」「社債」があります。
有利子負債は、流動負債・固定負債どちらにも存在するもので、「短期借入金」「長期借入金」「社債」が有利子負債と言う事になります。
有利子負債は必ず利子が発生するものになり、「買掛金」などは利子がつかないため、有利子負債に含まれません。
無利子負債とは
有利子負債のほかに、負債には「無利子負債」というものもあります。無利子負債は、負債のうち利子が発生しない負債のことを指します。
無利子負債のなかに分類される主な項目は、「支払手形」「買掛金」「未払金」などになり、これらには利子がつきません。
社債は通常、有利子負債に含まれることがありますが無利息とされているものは、無利子負債に分類されます。
無利子負債はそこまで重視されていませんが、有利子負債は企業の財務の健全性を計るために使用されることがあります。
理由は、無利子であればその金額をそのまま返済すればよいからです。
有利子負債は実質的な借金という形になるので、経営状態に直結することになるため、キャッシュフローに問題が無いかを確認していかなければなりません。
企業の有利子負債の有無からわかる情報とは?
有利子負債は利息をつけて返済しなければならないお金であり、実質的な借金といっても過言ではありません。
借金をしたくないからといって有利子負債を負わないと、成長戦略を描くことも出来なくなります。新設備や新しい市場に展開していくには投資が必要となり、その資金の為に有利子負債を負うという形になります。
将来を考える上では先行投資に値し、有利子負債を負うことが全て悪いことだとは言えません。
有利子負債が少ないといわれている業態は、サービス業、情報通信業といわれており、これらは設備投資がそこまで大きくならないためです。
設備投資にコストがかからず、有利子負債を負っていない会社というのは、安定しており、収益が上下に大きくブレない企業で着実な成長を目指す会社だといえます。
しかし、業種によっては有利子負債を多く抱えることとなるでしょう。
例えば製造業、インフラ関連事業、薬品企業、電気小売業、自動車、電力、鉄鋼、鉄道などは先行投資をしなければ成り立たない企業だといわれています。
そのため、企業によっては莫大な金額の有利子負債を抱えるというケースも少なくありません。
この場合でも、企業に不信感を抱くのではなく、成長を見越した投資をしているのだという認識が必要になります。
このように有利子負債の金額は、企業の業態や戦略によって多額になったり、少額になったりと左右されます。
一概に悪として決めるのではなく、それぞれの企業がどのように有利子負債を負っているのかを分析しなければなりません。
しかし、過剰な有利子負債を負っている企業は返済が毎月発生し、財務を悪化させる可能性があることも事実です。
有利子負債が健全であるかどうかは他の会社との比較が必要となります。
また、会社の自己資本と比較する有利子負債比率も有効となります。
有利子負債は会社の成長に不可欠
有利子負債は社会的信用があるという証明にもなる為、一概に良くないものとして扱えないといわれています。
製造業やソフトウェア業以外でも、例えば不動産業などは有利子負債を負わなければ営業していけない業種です。
不動産業とは、大型の物件や施設を購入したり、建物の建築などを行わなければなりません。そのときに有利子負債を負うのは当たり前です。その後、収入として入ってくるテナント料からその負債を返済していくというのが大まかな流れといわれています。
この場合では、業務形態として有利子負債を負うのが必要不可欠となり、経営状態が悪いと言う事には直結しません。むしろ、有利子負債を負うことで事業の成長を促していることになります。
成長過程である企業ならば、先行投資の形をとる資金繰りをしなければならないことは一目瞭然です。実際に資金調達を有利子負債としている企業は非常に多いものです。金融機関などもその将来性を予想して融資するのが基本となります。
資金繰りの厳しい、将来的な成長があまり見込めない企業に対しては有利子負債を負わせるのは危険だと判断して融資が実行されないケースがあります。
それを考えると、有利子負債を受けられるという事はそれだけ信用があるという証明にもつながります。
つまり、企業の有利子負債は成長に不可欠なものとなり、成長の指標とも考えられる訳です。ただし、それは、あくまでも適性、あるいは標準の有利子負債比率を維持している企業に限定されます。
企業の有利子負債の割合は業種によって異なるので、他社比較をすると指標にしやすい!
有利子負債の割合というのは前述した通り、業種によって異なります。
有利子負債の額や自己資本に対する割合が多い業界もあれば、ほとんど有利子負債のない業界もあります。
有利子負債は財務健全性を測る一つの指標になる為、他社との比較で自社の財務状況を確認するのが良いでしょう。
有利子負債を企業間で比較するときの注意点
自社と他社の間で有利子負債を比べるときには、どのような相手を比較対象とするかが重要になってきます。
会社の規模で測るのではなく、同一業種の企業を比較対象として選ぶ事が重要です。
理由は、業種によって有利子負債比率の傾向が大きく変わるからです。
自社が全く別の異業種であるにもかかわらず、有利子負債比率の高い業者と低い業者と比較しても何の意味もありません。有利子負債比率を比較するには、同一業種であることが必須となります。
有利子負債の企業間比較の判断基準
他社と有利子負債の比較を行う際には、有利子負債の比較はもちろん、比較対象となる企業の業務実績も確認していきましょう。同一業種かつ業務状況が似ている企業を選んで比較対象とするのが理想的です。
しかし、なかなか都合のいい企業は存在しません。
その場合には、同一業種の企業から複数を探し、そこから負債比率の比較を行っていきます。どの企業と有利子負債比率が近いかをチェックし、自社の業績などを客観的に判断することができます。
大切なのは有利子負債比率を確認した後、どのように改善していくかの具体的な行動をどうするかになります。
財務状況が健全だと判断された場合にも、その健全性を保つためにはどうしたらよいのかを考えながら経営を進めていかなければなりません。
貸借対照表における有利子負債の見方
負債は資産や純資産とともに、貸借対照表を構成する要素とされています。
貸借対照表における右側の上部は「負債の部」と呼ばれ、負債が記載される部分となります。
負債の部は、株主・会社以外からの資金調達の項目が書かれており、その時点での返済すべき金額などが明確にされている箇所となります。
負債の部は、流動性の高い負債から順に記載していくことになっているので、固定負債よりも流動負債の方が上部に記載されることになります。
負債と純資産の違い
負債と共に純資産も貸借対照表の右側にあり、こちらも同じく「外部からの資金調達」を意味します。
これらの違いは、返済の義務があるかどうかです。
その違いから、純資産は「自己資本」と呼ばれ、負債は「他人資本」又は「外部資本」という風に言われています。
有利子負債比率の計算方法
有利子負債比率とは、有利子負債が自己資本の何%にあたるかを表した指標となっています。
自己資本とは資本金などのことを指し、返済する必要がなく、支払いの利息も付かないため、安定した資本と言われています。
有利子負債比率の計算方法は以下の通りです。
上記の計算結果が100%以下であれば、特に心配のない、健全な会社であるとされています。また、300%までは標準の水準ですが、300%を越えていると要注意とされており、数値が高ければ高いほど危険であると判断されています。
一般的な目安としては、100%以下が望ましいとされています。これはつまり、有利子負債は自己資本を越さない程度が理想的だという事になります。
しかし、中小企業になると有利子負債を自己資本に収めるには難しく、株による増資なども厳しくなるため、自己資本自体が低くなりがちです。
そのため、有利子負債比率を100%以下に持って行くのが難しいでしょう。企業の規模や業種によっても、有利子負債比率は異なるので、一概には判断できないのも特徴です。
産業別の有利子負債額や自己資本額については、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」に詳しく記載されているので、確認しておきましょう。
有利子負債があるから経営状態が悪いという訳ではない!総合的、客観的な判断を!
有利子負債と聞くと、「企業の負債=経営状態が悪い」、と思いがちですが、本記事で解説したように、それは間違いです。
有利子負債は、利子の支払いが必要な負債のことを指し、「流動負債」「固定負債」の両方にあります。事業収益から有利子負債の返済を行うのは大変かもしれませんが、有利子負債があるということは、会社に対する収益の信頼ともとることができるのです。
有利子負債比率を計算し、過剰な有利子負債でなければ健全な財務状況にあるという証明にもなるので、各企業の特徴を見る一つの指標にもなり得ます。
取引先の有利子負債は確かに、取引先や投資先、業務提携先、M&A先などの企業の経営状態などを判断する1つの指標ですが、「有利子負債の有無=経営状態」ではないので、その他の指標などもしっかりと調査を行い、判断することが大切です。
探偵事務所SATでは、有利子負債なども含めた、取引先、投資先、業務提携先、M&A先などの企業の信用調査が可能です。
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