【投稿日】 2022年12月17日 【最終更新日】 2022年12月22日

新型コロナ関連の倒産件数は2020年の約800件から年ごとに増加しており、2022年は2,300件に達すると予想され、新型コロナ関連倒産が本格化しているものと考えられます。

この記事では、新型コロナ関連倒産の発生状況、倒産した企業の特徴、新型コロナの影響による「連鎖倒産」を防ぐために注意すべきことなどについて解説します。

「新型コロナ関連倒産」の発生状況

帝国データバンクの調査データ(2022年12月2日時点)「新型コロナ関連倒産の発生状況」によると、

全国の累計発生件数は4,636件(うち法的整理は4,309件、事業停止は327件)となっています。

全国の累計発生件数4,628件のうち、負債1億円未満の小規模倒産が2,730件(58.9%)を占めているのに対して、負債100億円以上の大型倒産は8件(0.2%)に留まっているということは注目すべきことだと思われます。

つまり、新型コロナの影響を受けて倒産しているのは圧倒的に中小企業が多く、大企業はほとんど倒産していないということが分かるのです。

全国の累計発生件数を年別に見ると次の通りとなり、年を追うごとに「新型コロナ関連倒産」が増加していることが分かります。

備考
2020年 838件
2021年 1,743件
2022年 2,054件 最終的に2300件前後になると予想

業種別の発生件数は次の通りで、飲食業が最も多く、次いで建設・工事業となっています。

飲食業と建設・工事業が突出している

業種 件数 備考
飲食業 675件 飲食業と建設・工事業が突出している
建設・工事業 580件
食品卸業 241件
食品小売業 191件

また、業種別発生件数を別の切り口で示すと、次の通りとなります。

業種 件数 備考
食品関連業 552件 製造・卸・小売の合計
アパレル関連業 328件
観光関連業 322件 宿泊業、旅行業、観光バス、土産物店など

発生件数を都道府県別に分けると次のようになりますが、この5都府県の合計件数2,084件が全体の45.0%を占めていることが分かります。

都道府県 件数 備考
東京都 862件 5都府県合計2,084件で全体の45.0%を占める
大阪府 483件
神奈川県 268件
福岡県 254件
兵庫県 217件

なお、帝国データバンクの「新型コロナウイルス関連倒産」は、次に該当する件数をカウントしたものです。

  • 原則として新型コロナウイルスが倒産の要因となったことを当事者または代理人(弁護士)が認めて法的整理または事業停止となった倒産を対象としています。
  • 事業停止後に法的整理に移行した場合は、法的整理日を発生日としてカウントしています。
  • 個人事業主および負債1000万円未満の倒産もカウントの対象としていますが、銀行取引停止処分は対象外です。

参考元:帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産」

新型コロナの影響で倒産した企業の特徴

新型コロナの影響で倒産している企業の多くは、新型コロナに伴う緊急事態宣言や、行動制限などにより事業活動を停止・制限せざるを得なかった飲食業や観光関連業や、そういった会社と取引をしていた卸売業などです。

また、世界中の新型コロナによる事業活動停止に伴い部品や材料が手に入らなくなってしまい仕事ができなくなってしまった建設・工事業などの会社も多くなっています。

特徴1:飲食業や観光関連業の倒産が多い

帝国データバンクの調査データ「新型コロナ関連倒産」の発生状況」(2022年12月2日時点)によると、新型コロナの影響による倒産の多い業種は飲食業や観光関連業(宿泊業、旅行業など)だということが分かります。

これは、新型コロナの流行によって、飲食店への時短営業要請が行われたことや消費者の外出自粛、感染リスクを恐れての旅行控えが起こっているからだと推測できます。

現時点では、飲食店への時短営業要請や外出自粛要請はありませんが、消費者の外出控えの傾向は依然として続いているのが現状です。

また、新型コロナの流行は、日本だけではなく世界レベルで発生していますので、海外からの観光旅行客も減っており、観光関連業は大きな打撃を受けて倒産に至った例が多いと考えられます。

特徴2:食品関連業の倒産が多い

同調査データによれば、食品関連業(製造・卸・小売の合計)の倒産件数も多いことがわかります。

食品の製造業においては、飲食店の時短営業やテレワークの普及によって業務用加工食品の需要が低下して、反対に巣ごもり需要や内食化の拡大による市販用食品の需要が増加しています。

食品卸業では、飲食店の時短営業やテレワークの普及により、店舗や社員食堂からの食品の注文が大幅に減少してしまい、食品在庫を大量に処分するということも発生しました。

このような新型コロナの流行による需要の変化についていけなかった食品関連業者の中には倒産に至った例があるようです。

また、倒産した食品関連業者の中には、飲食業や観光関連業の倒産に引きずられる形で、食品の製造や卸・販売を行う事業者が「連鎖倒産」してしまったものが含まれています。

特徴3:建設・工事業の倒産が多い

同調査データによれば、倒産件数が2番目に多いのが、この建設・工事業です。

これにはいろいろな要因があるのですが、新型コロナ感染によって海外の資材工場が操業停止となり建材や部材が入手できなくなったという事例や、三密回避のために工期が延長になったり工事そのものが中止になったりするなどの影響があったようです。

建設・工事業の場合も体力のない中小企業が倒産してしまったということが考えられます。

さらに、前項の飲食業や観光関連業からの設備点検・メンテナンスなどの依頼が減少したことによる倒産事例もあり、これはまさに「新型コロナ関連の連鎖倒産」ということができます。

特徴4:アパレル関連業の倒産が多い

新型コロナの影響で倒産件数が多い業種として、アパレル関連業もあります。

テレワークの普及や外出自粛によって外出する機会が減ってしまいましたので、出勤用のスーツや外出用の衣類を購入する頻度が減少しているものと思われます。

その結果として、アパレル関連の需要が全体的に減って倒産につながっているのです。

新型コロナの影響による「連鎖倒産」はどの程度あるのか?

新型コロナの影響によって、どの程度の「連鎖倒産」が起こっているのかが気になるところですが、残念ながら「連鎖倒産」に関する直接的なデータはありません。

しかしながら、前項でも説明したように、食品関連業者や建設・工事業者の中には、飲食業者や観光関連業者から多くの注文を受けていたところもあり、飲食業や観光関連業の倒産による「連鎖倒産」が起こっていることは間違いありません。

「連鎖倒産」を防ぐために注意したいこと

そもそも「連鎖倒産」とは、販売先や仕入先が倒産したことによって、売り上げが減少したり売掛金の回収ができなくなったり、あるいは原材料の仕入れができなくなって自社製品が販売できず売上が激減したりして、経営が悪化して倒産することを言います。

連鎖倒産を防ぐために、次のような事に注意しましょう。

注意点1:事前に行っておくべき対策を確認

今後コロナ関連倒産が増加して本格化してくることが予想されますので、特に中小企業の方は「連鎖倒産」を防ぐために事前に次の3つの血浅くを行っておきましょう。

対策1:「中小企業倒産防止共済」に加入しておく

取引先が倒産した際に、中小企業が「連鎖倒産」や経営難に陥ることを防ぐ制度として「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」があります。

この共済に加入しておくと、取引先企業が倒産した場合に8,000万円を限度として、無利子・無担保・無保証で融資を受けることができます。

中小企業基盤整備機構が運営しているもので、商工会議所や商工会又は金融機関などで申し込み手続きをすることができ、毎月の積立金は5,000円~200,000円、積立限度額は800万円です。

この共済制度に加入することができる中小企業は、次のような条件を満足していなければなりません。

業種 資本金額 従業員数
製造業、建設業、運輸業その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

対策2:販売先や仕入先の集中を避ける

中小企業の特徴として、主要取引先(取引金額が最も大きい取引先)に対する依存度が高く、その主要取引先との取引年数が長いということが挙げられます。

これは、景気が良いときには何も問題はなく非常に効率が良い経営方法なのですが、コロナ禍などによって大きな需要変化が起きて主要取引先がその渦中に巻き込まれて倒産してしまうと、自社の売上げや仕入れに支障を来すことになってしまいます。

あくまで一般論となってしまいますが、販売先や仕入先の集中を避けて、社会変化や需要変化が起こってもその影響を分散できるようにしておく必要があります。

対策3:主要取引先の動向をよく把握しておく

販売先や仕入先の集中を避けることは重要ですが、短期間で行うことは難しく、またコロナ関連の「連鎖倒産」のリスクは現在進行中で高まりつつあります。

この状況で取り得る方法としては、現在の主要取引先の動向をよく把握しておき、倒産のサインを1日でも早くつかむということが挙げられます。

そのためには、主要取引先を担当する営業マンが頻繁に足を運んで、社内状況を確認し自社の経営者に報告するような仕組みをつくり、早めに対処できるようにしておくことが必要です。

代表的な倒産のサインとしては、役員などの経営陣や経理部門の従業員の突然の退職、希望退職者の募集、給与・賞与の減額や支払延期、細かい経費の削減、恒例行事(社内旅行・忘年会・新年会など)の中止などがあります。

また、売掛金の支払いを遅らせたり、現金払いから手形払いに変更になったような場合も、資金繰りが苦しくなっていることの現れと言えるでしょう。

しかし、そういった兆候が特になく倒産してしまう場合もあります。大きな金額の取引があり、その取引先が倒産すると経営が危ない、というような企業については探偵事務所などに依頼して、企業の動向調査や信用調査などを実施してみるのも一つの方法です。

注意点2:事後に利用できる制度

どんなに注意をしていたとしても、取引先が倒産してしまうことが起こる可能性があります。

万一そのような事態になった場合は、いかにして自社を存続させるかが重要ですので、次にご紹介する制度の利用を検討してみてください。

「セーフティネット保証制度(1号:連鎖倒産防止)」を利用する

「セーフティネット保証制度(1号:連鎖倒産防止)」は、大型倒産事業者に対する売掛金などの債権を有する中小企業を支援するための制度で、信用保証協会が通常の保証枠とは別枠で借入れの保証を行う制度です。

通常の保証限度額2億8,000万円のほかに、別枠で「普通保証2億円以内、無担保保証8,000万円以内」の保証が受けられます

対象となる中小企業者は、次のいずれかに該当している必要があります。

  • 大型倒産事業者に対して50万円以上の売掛金債権などを有する中小企業者
  • 大型倒産事業者に対して50万円未満の売掛金債権などしか有していないが、当該事業者に対する取引依存度が20%以上である中小企業者

対象となる中小企業者は、本店所在地の市町村の商工担当課などの窓口に「認定申請書」を提出して認定を受けた後、希望の金融機関または所在地の信用保証協会に認定書を持参して保証付き融資を申し込むことができます。

「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」を利用する

「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」は、取引先の倒産により経営に困難を来している中小企業者を対象とする日本政策金融公庫の融資制度です。

融資限度額は別枠1億5,000万円で、返済期間は8年以内(据置期間3年以内)となっています。

対象となるのは、次のいずれかに該当しており、一時的に資金繰りに支障をきたしているが、中長期的には回復が見込まれる中小企業・小規模事業者です。

  • 倒産企業に対して50万円以上の売掛金債権などを有する中小企業者
  • 倒産企業に対する取引依存度が20%以上である中小企業者
  • 倒産企業に対して貸付金や差入保証金などの債権を有する中小企業者
  • 倒産企業の債務を保証している中小企業者
  • 倒産企業の商業施設に入居していて、倒産の影響を受けている中小企業者または影響を受けるおそれのある中小企業者
  • 倒産企業から受注した商品などが、倒産の影響により取り消された中小企業者

「連鎖倒産」を防ぐには早期把握・早期対処が必要!

この記事では、主に中小企業が「連鎖倒産」を防ぐために注意すべきことについて解説しました。

冒頭でご紹介した帝国データバンクのデータから、2022年の新型コロナ関連倒産件数は2,300件に達するとみられており、この件数のほとんどが中小企業だということが分かっています。

当然「連鎖倒産」のリスクも中小企業が高いと考えられますので、ご紹介した方法で主要取引先の動向を把握して、少しでも異変に気付いたら早期に対処することが大切です!

連鎖倒産を未然に防ぐ!企業の信用調査・動向調査なら探偵事務所SATにお任せ!

企業が倒産する兆候は、そう簡単に分かるものではありません。

営業マンが足繁く通ったり、企業の信用調査を定期的に実施しているのにも関わらず、突然倒産してしまう事もあります。

もし、その取引先が倒産してしまい、売掛金が回収できなくなると企業が存続できなくなってしまう、という様な場合には、お金はかかりますが、探偵による企業調査の実施がおすすめです。

探偵事務所SATでは、企業の信用調査はもちろんの事、張り込みや尾行、周辺への聞き込み、企業の役員の動向など、通常の信用調査では判明しづらい内情も調査することが可能です。

今後は、新型コロナ関連のみならず、新型コロナ関連のゼロゼロ融資の返済に伴う倒産も多く発生することが見込まれています。

連鎖倒産に巻き込まれないためにも、「重要な取引先」だけでも調査を行いましょう。まずはメール・お電話にてお気軽にご相談ください。

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