【投稿日】 2022年4月1日 【最終更新日】 2022年4月4日

会社を経営する上でリスクの1つとなるのは、代金や売掛金が未払いとなることです。

特に資本が安定していない中小企業にとっては、代金や売掛金の未払いはキャッシュフローの悪化に繋がりかねません。

もしも、すでに未払金が発生している場合は、債務者から確実に債権を回収したいと思うのではないでしょうか。

そこで今回は徹底的かつ合法的に債権回収を行うための手段を解説いたします。

そもそも債権回収とは?

債権回収とは、未払いになっている売掛金を回収するための活動です。

ビジネスでは、商品やサービスを提供すると、受け取った側は一定の対価を支払わなければなりません。

受け取った商品やサービスに対し一定の対価を支払う義務は「債務」と呼ばれ、債務を負う人に対して支払いを請求できる権利を「債権」と呼ばれています。

ビジネスでは、商品やサービスを受け取った後に対価を支払う「掛け取引」で取引を行うのが一般的です。

掛け取引では、商品やサービスの提供者は受領者に対して債権を保有することになります。

商品・サービスの提供者である債権者が支払いを要求し、期限までに支払いが行われれば問題はありません。

しかし、債務者の資金不足や一方的なクレームによって対価の支払いが滞ると、交渉や民事訴訟などの手続きによって債権回収を進めていくことになります。

債権回収の時効期間は5年もしくは10年

債権には消滅時効期間が設定されており、消滅時効期間が過ぎてしまうと、債権者は債権を回収できなくなってしまいます。

2020年に行われた民法改正後の債権の消滅時効期間は以下の通りです。

  • 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年
  • 債権者が権利を行使することができるときから10年

ただし、2020年3月以前に発生した売掛金の時効は「債権者が権利を行使できることを知った時」から2年です。

時効期間が異なるのは、2020年4月に民法改正が行われたことが理由です。

民法改正以前は、債権の時効期間は債権の種類によって1年〜5年に細かく分けられていましたが、民法改正後は消滅時効期間が統一されました。

民法改正後の条文にある「権利を行使することができる時」とは、支払い期日になった時のことを指します。

現行民法では「権利を行使することができる時」とは、権利の発生原因と権利行使の相手を知った時であるとされています。

売掛金に言い換えれば、商品やサービスを提供(権利の発生原因)しますが、提供した相手を知らないということはないはずです。

そのため、支払い期日を過ぎてから5年が経ってしまうと時効が成立してしまいます。

債権回収を行うための事前準備

交渉を行っても債務者が支払いに応じない場合は、法的措置を取る必要があります。

しかし、そもそも債務者の現住所や財産状況などを知らないまま進めてしまうと、債権回収を行うことができません。

そのため、債権回収を行う前に以下の2つの事前準備をしておく必要があります。

その1、債務者の財産を把握する

例えば債権回収のために民事訴訟を起こし、勝訴したとしても、取引先に債権を支払えるだけの財産がなければ、債権回収を行うことができません。

本来は取引前の段階で、支払い能力の有無についての調査を行うことが推奨されていますが、すでに取引を行い債権が発生している場合は、債権回収の手続きを行う前に債務者に対して資産調査を行う必要があります。

民事訴訟で勝訴しても債務者が支払いに応じず、強制執行を行うことになっても、債務者が債権を支払えるだけの財産がなければ、債権だけではなく弁護士費用でさえも回収できなくなる場合があるため注意しましょう。

債権回収において必要となるのは、「どの金融機関に預貯金講座を持っているか」「どこにどのような不動産を保有しているか」などの具体的な情報です。

このような財産についての情報を集めることを「資産調査」と言います。

自社で行うことも可能ですが、探偵に依頼した方が、情報に偏りが生じることなく調査することができる他、隠し財産についても調査することが可能です。

その2、債務者の現住所を把握する

債権者が債務者にお金を貸した後に債務者が住所を変更するなどして行方不明になってしまうと、債権回収に関する文書を発送しても本人に届きません。

そのため、債権回収の手続きを行う前に、債務者の現住所を確認しておく必要があります。

債務者がすでに転居していて現住所が分からない場合は、「住民票の除票」または「戸籍の附票(ふひょう)」を取得して現住所を調査しましょう。

ただし、債権者が債務者の住民票の除票や戸籍の附票を取得するためには、探している人物との関係を示す書類(契約書など)が必要です。

関係を示す書類が用意できない場合は、弁護士や司法書士に依頼することで住民票の除票や戸籍の附票を取得することができます。

また、前の住所も分からない場合は、弁護士会の照会手続きを利用して電話番号で照会することが可能です。

もしも、上記のような方法を使っても現住所が把握できない場合は探偵に依頼しましょう。

債権回収を行うための2つの手段と方法

債権回収を行うための手段には個人で行う方法と、法的手段を行使して行う方法があります。

個人で行う場合でも法的手段を行使して行う場合でも共通するのは、弁護士や債権回収代行会社など、債権回収の専門家の手助けが必要であるということです。

個人で行うことができる手続きの中には、自分で書面を作成して手続きを進められるものもありますが、契約書の内容や制度を細かく把握しておく必要があるため、全くの素人が行うのは難しいでしょう。

法的手段を行使する手段についても、申立書や添付書類の作成には法律や制度に関する知識が必要です。

債権回収を進める際は、信頼できる弁護士や債権回収代行会社を利用しましょう。

【1】個人で行う

個人で行う債権回収の手段には、「相殺」「債権譲渡」「代物弁済」「債権者代位権」という4つの手続きがあります。

債権回収において有効なのは法的手段を取る方法ですが、体力的・精神的に負担がかかりやすいものです。

一方で、相殺や債権譲渡などの個人で行う手段では、話し合いによって債権回収を行うことができるため、裁判所への申し立てなどの手続きを行う手間がかからない点で負担の少ない手段であると言えます。

個人で行う債権回収手段の詳細は以下の通りです。

相殺

相殺とは、自社が相手方に対して保有する債権と相手方が自社に対して保有する債権同士を打ち消し合うことで、精算することを指します。

例えば、AがBに対して500万円を貸し付けていて、BがAに対して500万円の商品を提供し代金を回収できていなかったとします。

このような場合に、意思表示のみで債権を回収(精算)できるのが相殺です。

お金を直接やりとりする必要がなく、意思表示のみで債権回収が完了することから、個人でも簡単に行うことができる債権回収方法となっています。

相殺は当事者間で「相殺可能」という契約を交わしていない場合でも行うことが可能です。

一方からの意思表示のみによって行うことができますが、一方的に通知して相殺をする時はその旨を内容証明郵便にして送付しましょう。

債権譲渡

債権譲渡とは、債務者が債務者の取引先などに対して保有している債権を譲渡してもらい、債務者の代わりに債務者の取引先などからお金を回収できるようにする制度です。

例えば、AはBに対して債権を保有していますが、Bには支払い能力がないとします。

しかし、BはBの取引先(第三債務者)に対して商品を提供しているため、回収できていない債権があることが分かりました。

そのような場合に、Bが回収できていない債権をAが譲り受けることで、AはBの取引先からお金を回収することができるのです。

債権譲渡は、債権回収できないことが分かってから申し出ることが可能ですが、事前に債務者が保有している債権を担保にして契約することもできます。

債権を担保にして契約する方法には、「質権」または「譲渡担保制度」を用いるのが有効です。

債権譲渡は債権回収の選択肢を増やせることや、債務者が破産しても第三債務者から取り立てができるため、債権回収できないリスクを防ぐことができます。

代物弁済

代物弁済(だいぶつべんさい)とは、債務者が未払い代金をお金で支払うのではなく、特定の資産を債権者へ譲渡することで債権を弁済する制度です。

例えば、AがBに対して500万円の債権を保有しているとします。

しかしBは500万円を金銭で弁済することができません。

そのような場合に、500万円の価値がある車や土地などの資産を代わりに譲り渡すのが代物弁済です。

代物弁済で注意したいのは、債権額と譲渡された資産の価値が釣り合わないケースがあることです。

ただし、資産の価値が債権額に満たなくても債務の弁済が完了したことになりますが、債権額よりも資産の価値が大きい場合は、差額分を債務者へ支払うことになるため注意しましょう。

代物弁済を行うためには、当事者間の合意が必要となります。

相殺のように一方からの意思表示のみでは行うことができません。

債権者代位権

債権者代位権とは、時効などによって債権を回収できなくなるのを防ぐために、債務者が保有する権利を債権者が代わって行使することができる権利です。

例えば、債権者は債務者に対して500万円の債権を保有しているとします。

債務者にはお金で支払う能力はないものの、自社内に売却していない商品を所有していました。

債務者は商品を売却して債権を弁済する気配がないため、債権者が債務者の保有する商品を差し押さえることで債権の弁償に充てるというものです。

債権者代位権は対象の財産が債権以外であった場合は強制執行の申し立てをする必要があります。

一方で、対象が債務者が保有する債権であった場合は、強制執行の手続きや債務者から許可を得ることはせずに権利を行使することが可能です。

【2】法的手段を行使して行う

法的手段を行使して行う債権回収方法には、「交渉」「民事調停」「仮差押え」「支払督促」「少額訴訟」「民事訴訟」「強制執行」があります。

債権回収の大きな流れとしては、債務者に内容証明郵便を送付しても債権を支払わない場合に法的手段を行使して債権回収を行うのが一般的です。

債権回収の法的手段として代表的なのは「民事訴訟」ですが、民事訴訟の前に行っておいた方がよい「仮差押え」や訴訟後に行うことができる「強制執行」についても把握し、事前に検討しておくことが大切です。

法的手段を行使して行う債権回収の手段について詳しく見ていきましょう。

交渉

法的手段を行使して行う方法の一つとして、交渉があります。

一口に交渉と言っても、交渉には以下の2つの種類があります。

  • 電話・面談をして催促する
  • 内容証明郵便を送付して督促する

どちらの方法でも弁護士を通して行うことで、債務者にプレッシャーを与えることができます。

内容証明郵便とは「期日までに支払いがなければ、法的手段を取る」という旨を記載し、この内容の郵便を送付したことを証明できる形式で送付することで支払いを督促する方法です。

債権者本人の名義で送付することも可能ですが、弁護士名義で送付することで債務者は「裁判に発展しかねない」と考え、支払いに応じることがあります。

民事調停

民事調停とは、裁判所にて当事者同士で話し合いを行い、債権当事者間で話し合いをする手続きです。

民事調停では、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員が仲介して補佐や助言をしながら話し合いを進めていきます。

民事調停のメリットは、費用が安く手続きが簡単な点や、企業の取引情報や内部事情が公になることを避けることができる点です。

申し立てをするための費用は民事訴訟を行う場合の半分に抑えることができるほか、書面の作成も比較的簡単に行うことができます。

また、民事訴訟は公開で行われる一方で、民事調停は非公開でおこなわれるため、第三者に債権に関する情報を知られることがありません。

ただし、民事調停は対面で行うため、債務者が出頭しない場合は話し合いをすることができません。

債務者がこれまで行ってきた交渉を無視しているような場合は、民事調停への出頭も期待できないでしょう。

また、訴訟のように判決が下るわけではないので、話し合いで解決しない場合は調停が不成立となります。

このように費用や手間の面で債権者にとって負担が少ないものの、必ずしも解決する訳ではないという点は民事調停のデメリットです。

仮差押え

仮差押えとは、将来的に債権回収を確実に行うために、債務者が財産を処分することを防ぐための手続きです。

債権回収は後ほどご紹介する「民事訴訟」という手段が効果的ですが、判決が下るまでには半年から2年という時間がかかります。

その間に債務者が財産隠しを行う可能性があるため、仮差押を行って債務者の財産を保全しておく必要があるのです。

民事訴訟の場合は半年から2年という長い期間がかかりますが、仮差押えの場合は1週間程度で結論が出るケースがあります。

仮差押えの手続きを行うには債権額の20%〜30%もしくは不動産価額の15〜20%を現金で支払う必要があるので、事前の準備が必要不可欠です。

支払督促

支払督促とは、債権を支払わない債務者に対して簡易裁判所を通じて支払いを督促する手続きです。

裁判所から債務者へ「支払督促」という書類を送付してもらい、債務者の異議がなければ強制執行を行うことができます。

もしも、債務者が異議を申し立てた場合は、支払督促の効力はなくなり、訴訟手続きに移行することとなります。

支払督促は債務者の住所地または事務所所在地の簡易裁判所に申し立てをする必要があるので、債務者の住所を知っていることが申し立てをするための条件です。

支払督促をした際に債務者が何の対応もしない場合は、債務者の財産に対して強制執行を行うことができます。

支払督促は手続きが簡単で費用が安い点がメリットですが、支払督促を出しただけで債務者が支払いに応じるケースは少ない点や、異議申し立てがあれば債務者の住所地の裁判所に出向く必要があるため、遠方の裁判所で訴訟を行わなければならない可能性が高い点はデメリットであると言えます。

少額訴訟

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを請求するための手続きです。

簡易裁判所で行われる裁判手続きで、1回の裁判期日で解決することを目指して開廷されます。

少額の債権回収を行う際に手間や時間がかからないように設けられた手続きなので、原則として1回の裁判期日で判決が下るのが特徴です。

メリットとしては、和解できる可能性が高くなる点が挙げられます。

一方で、1回で裁判が終わるように証拠や証人などを完璧に準備しておく必要がある点や、不利な判決が出たとしても控訴することができない点は少額訴訟のデメリットと言ってよいでしょう。

債務者に対して支払いを命じる判決が下れば問題はありませんが、もしも証拠不十分や契約書の準備不足によって敗訴してしまっても、控訴することはできません。

もしも、少額訴訟を考えている場合は、敗訴するリスクを考慮した上で検討しましょう。

民事訴訟

債権回収における民事訴訟とは、債務者が債権を支払うよう裁判所に申し立てを行い、債権者と債務者の言い分を聞いた上で、裁判所が「そもそも債権は存在するのか」「相手方に債権の支払い義務があるのか」を判断するものです。

民事訴訟はどの手段を利用しても債権回収できない場合の最終手段として行われることが多くなっています。

その理由は、民事訴訟の訴状・呼出状が送られ、無視をすると債権者が勝訴判決を得ることになるからです。

そのため、債務者がこれまで様々な手段を使って債権回収を行っても応じなかった場合にも効果的な手段です。

また、債権者が勝訴判決を受けることができれば、強制執行を行うことが可能になります。

このように、民事訴訟はメリットが多い手段ですが、「判決までに時間がかかる」という点はデメリットです。

債権者にとって体力的・精神的な負担になってしまうことや、仮差押えを行わない場合は民事訴訟を行っている間に債務者の財産が減ってしまうことが考えられます。

民事訴訟を行うかどうかは「現実的に考えて債権回収は可能なのか」という観点で検討しましょう。

強制執行

強制執行とは、債権者が民事訴訟に勝訴した場合や、民事訴訟を起こす前の段階で和解が成立した場合でも債務者が債権を支払おうとしない時に、裁判所が債務者の財産を差押えて換金し、強制的に債権を回収する手続きのことを指します。

強制執行には「不動産執行」「動産執行」「債権執行」の3種類があります。

中でも「債権執行」は実際の債権回収でよく利用されるものです。

強制執行は強制力の高い手段ですが、差し押さえるためには、「どこにあるどの財産か」を明確にすることが必要です。

つまり、強制執行を行えるようになっても相手の持っている財産を把握できていない場合は差押えを行うことができません。

そのため、事前に資産調査を行ったり、債務者から直接情報を集めたりして財産のありかを調査しておくことが大切です。

債権回収で注意すべき2つのポイント

債権回収を行う際に注意すべきポイントは以下の2点です。

  • ポイント1:債務者が弁済に応じにくい
  • ポイント2:債権者の負担が大きい

それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。

ポイント1:債務者が弁済に応じにくい

債権回収を個人で行う場合、電話や面談、内容証明郵便での督促を行います。

特に弁護士を通さずに上記のような方法で督促を行ったとしても、債務者が弁済に応じる可能性は高くありません。

なぜなら、法的な拘束力がないからです。

一方で、同じ内容証明郵便でも弁護士名義で送付することで弁済に応じる可能性が高くなります。

また、弁護士や裁判所を介さずに話し合いや交渉をした場合は、債権額より低い条件で合意するケースが多いのが特徴です。

そのため、特に個人で債権回収を行う場合は弁護士に依頼して書面の作成や交渉を行いましょう。

ポイント2:債権者の負担が大きい

債権回収には手続きごとに申立書や必要書類の準備が必要です。

申立書や必要書類を準備するためには、それなりの手間や弁護士に依頼するための費用が必要となります。

申立書や必要書類などを準備できたとしても、書類に不備があれば書類を揃えて再度裁判所へ提出しなければなりません。

さらに、民事訴訟を起こす場合は、訴訟手続きとして請求内容や請求内容に対する法的根拠を示した訴状の作成や、証拠の準備、訴訟の提起、債務者への訴状の送付など、段階を踏んで訴訟の申し立てを行う必要があります。

また、申し立てだけではなく、裁判が開始されてからも被告からの答弁書の受領や裁判期日への出席、準備書面や書証などのやりとり、尋問手続の準備など、債権者が行わなければならないことは多いため、すべてに対応するためには、体力面・精神面ともに負担が大きくなってしまいます。

そのため、債権回収を行う際は弁護士などの専門家を上手く利用して行いましょう。

事前準備には探偵、手続きには弁護士をフル活用して徹底的に債権回収を行おう!

債権回収を行うためには、現住所の把握や資産調査などの事前準備が必要です。

事前調査を怠ると、そもそも手続きの申し立てを行うことができなかったり、民事訴訟で勝訴し強制執行を行っても、債務者の資産不足で債権回収を行うことができなかったりする場合があります。

債権回収のための事前準備に必要な現住所の調査や資産調査は探偵が得意としています。

特に資産調査は、弁護士でも行うことが可能ですが隠し財産の有無を調査することができるのは探偵のみです。

それぞれの債権回収方法を進めるための手続きに関しては弁護士に依頼することでスムーズに手続きを進めることができますが、事前準備に必要な調査に関しては探偵に依頼するとよいでしょう。

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