【投稿日】 2022年7月30日 【最終更新日】 2022年8月26日

以前は大企業が実施するものと思われてきたM&Aですが、現在では中小企業を中心に事業継承に利用されることもあり、また技術革新に伴ってスタートアップ企業のM&Aも増えています。

M&Aを実施するプロセスでは、弁護士をはじめ、財務アドバイザーや公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士など様々な専門家が関わります。

M&Aの規模が大きくなればなるほど、様々なリスクを想定していく必要があり、必要とされる専門家の種類も多くなるでしょう。

そんな専門家の中でも、弁護士の担う役割は大きく、それだけに弁護士選びは慎重にならざるを得ません。

本記事では、M&Aにおける弁護士の役割や依頼するメリット、M&Aに強い弁護士事務所の選び方や費用相場について、詳しく解説していきます。

M&Aにおける弁護士の役割と必要性、メリット

M&Aにおいて、弁護士の担う役割はたくさんあります。

まずは、M&Aにおいて弁護士の担う役割と、M&Aにおいて弁護士に依頼する必要性、そして弁護士に依頼するメリットについて説明します。

M&Aにおける弁護士の役割

M&Aにおける弁護士の主な役割は、法的な側面からのサポートです。

M&Aにおける各種手続きのサポート、法務デューデリジェンス、法的拘束力を持つ契約書をはじめ数々の書類作成とそのチェック、M&Aにおける企業価値評価、会社法に則った手続きを行えているかの判断、相手企業やステークホルダーとの交渉やアピールなど、法律の専門家としての業務やアドバイスを行います。

M&Aにおける弁護士の必要性

M&Aを実施するにあたっては、各種法的書類の作成や価格交渉、相手先企業へのアプローチなど、様々な手続きを踏む必要があるため、その際に弁護士のサポートを受けることで、正確且つスムーズに手続きを進めることができます。

M&Aの手続きの中でも重要な法務デューデリジェンスにも、弁護士の法的な専門知識と経験が不可欠です。

また、M&Aを進める中で、相手企業とトラブルになってしまうこともあり、その時に知識や経験のある弁護士がいれば、法的トラブルの未然回避も望めます。

M&Aを弁護士に依頼するメリット

M&Aを進める上で、弁護士に依頼するメリットは3つあります。

メリット1:相手企業との対等な取引の実現

弁護士は法務だけでなく交渉の専門家でもあり、相手企業とのやり取りでも重要な役割を担います。

M&Aにおける契約の内容に不平等さがあった場合、想定していた目的が得られないことも考えられます。

しかし、M&Aを専門とする弁護士と連携することで、専門性の高い契約書の内容を精査できるなど、相手企業と対等な取引が行えるのです。

弁護士は依頼人の利益のために仕事を行うため、依頼人の把握できていない状況で進行することもなく、不利益を被る可能性のある交渉を未然に防ぐこともできるでしょう。

メリット2:法的トラブルの未然回避

M&Aのプロセスでは、法的な拘束力を持つ様々な書類を作成して締結します。

また、M&Aスキームによっては、債権者保護の手続きや登記なども必要です。

こうした法律に従う必要がある対応を、弁護士の支援によって適切に行えることも、M&Aにおいては重要です。

また、M&Aは成立することがゴールではなく、成立後にどのようなトラブルや摩擦が起こるかも想定して、法的に備えておくことが重要になります。

これらを担えるのがM&Aを専門とする弁護士であり、法的トラブルの未然回避に不可欠な存在と言えるでしょう。

メリット3:問題の早期解決

M&Aでは、売り手側も買い手側も自社の利益を重視して、慎重にプロセスを進めていくことが一般的であり、場合によっては1年以上の時間をかけて成立することもあります。

しかし、長い時間をかけて成立しても、成立後に多くの優秀な人材がノウハウとともに離職した場合などは、契約違反とされるケースも見られます。

成立後であっても、想定外の不利益が発生した場合は、訴訟問題に発展するリスクもあるのです。

したがって、事前に弁護士と対策を練っておき、問題発生時には弁護士が間に入ることで、両者の妥協点が探りやすくなり、和解や示談など問題の早期解決がしやすくなります。

M&Aに強い弁護士事務所とは?

弁護士にはそれぞれ得意とする分野があり、刑事事件や民事訴訟に強い弁護士がいるように、M&Aに強い弁護士もいます。

したがって、M&Aにおいては、M&Aに強い弁護士が在籍していて、M&Aの業務実績が豊富な法律事務所に依頼することが基本です。

ここでは、法律事務所を5種類に分けて、それぞれのM&Aに対する専門性の違いを見ていきます。

大手法律事務所

大手の法律事務所は、グローバル企業を含む大企業を顧客とし、在籍する弁護士も多数いるようなところです。

在籍する弁護士には海外のロースクールで弁護士資格を取得した方も多くいます。

M&Aの実績があるだけでなく、「クロスボーダーM&A」という、海外企業とのM&Aの実績もあるのが一般的です。

取り扱う案件としては、50~100億円以上という大型案件が多く、10名~100名単位など多数の弁護士が必要な案件を担当するため、弁護士費用も高額で、数千万円の費用がかかる場合もあります。

大手事務所への依頼を検討する際は、事務所の解決実績と、自社の相談したいM&Aの規模が合うかどうかを確認しましょう。

外資系法律事務所

外資系法律事務所は、先に述べたクロスボーダーM&Aにおける実績が豊富です。

国内のM&Aを扱うこともありますが、基本的には海外企業とのM&Aを扱います。

現地の法律や言語を熟知している日本人の弁護士が多数在籍しているため、海外展開を狙う企業にとっては有用な法律事務所です。

グローバルベースで人材を招集することも可能であり、国内の外資系企業とのM&Aにも力を発揮してもらえるでしょう。

自社がクロスボーダーM&Aを検討している場合には、実績の豊富な外資系法律事務所を候補に入れることも考えましょう。

中堅法律事務所

中堅法律事務所は、大手ほどの規模はないものの、実績の豊富な法律事務所です。

在籍する弁護士には、大手法律事務所や大手証券会社、メガバンクの出身者もいます。

中堅法律事務所は、大規模なM&A案件を豊富に取り扱った経験があり、且つ中小企業のM&Aのノウハウもあることが特徴です。

また、大手や外資系に比べて費用が安く、小回りが利くというメリットがあります。

M&Aの実績が少ない事務所もある一方、M&Aを得意としており、解決実績が豊富な事務所もあるので、中堅法律事務所を検討する場合は、必ずM&Aの解決実績を確認しましょう。

小規模法律事務所

個人事務所などの小規模な法律事務所でも、M&Aを得意とする事務所から独立して、新しく事務所を立ち上げた、というパターンもあります。

そのような場合、M&Aの経験豊富な弁護士から、小規模な案件でも専門的なアドバイスが受けられるというメリットがあるため、自社のM&Aが小規模な場合は、検討してみると良いでしょう。

M&A専門法律事務所

法律事務所の中には、数は多くないものの、M&Aを専門に取り扱っている事務所もあります。

M&A専門の法律事務所には、財務アドバイザー(FA)などの実績が豊富な専門家が在籍しているケースも多いです。

M&A専門法律事務所では、法務アドバイザー(LA)の弁護士よりも幅広い業務を担当できるため、トータルなサポートを期待できます。

ただし、専門性が高いため、相場よりも高額になる傾向があるので、注意が必要です。

M&Aに強い弁護士事務所の報酬相場

M&Aにおける弁護士費用は、総額で数百万円から数億円に上ることもあるほど高額です。

法律事務所によって、カバーする業務範囲や料金設定が大きく異なるため、事前にシミュレーションを行い、自社に合った選択をすることが重要です。

この項では、M&Aにおける弁護士費用の内訳と相場を見ていきましょう。

初回相談費用

弁護士に依頼した場合、基本的には、いきなり依頼を行うのではなく、まずは初回の面談を行い、双方において依頼の可否を判断します。

その際の費用は、1時間あたり数千円から数万円の価格帯が一般的であり、平均としては一万円くらいとされています。

ただし、相談料は無料としている事務所も多いため、費用を節約したい場合は、無料相談ができる弁護士事務所を探すのも良いでしょう。

着手金

M&Aを行う場合の法的支援に関して、弁護士法人や弁護士と業務契約を結ぶ際に発生する費用のことです。

M&Aは成立するまでに半年以上など長期間を要することが多いため、まずは着手金を支払います。

費用相場はM&Aの規模や難易度、業務内容によりますが、50万円から数百万円と大きな幅があります。

しかし、中には無料としているところもあり、そういったところは、完全成功報酬制をとっているところが多いです。

タイムチャージ制

M&Aにおける弁護士費用は、完全成功報酬制や月額制をとっているところもありますが、タイムチャージ制のところもあります。

タイムチャージ制は、M&Aに関する業務にあたる時間において、1時間あたりの単価を設定し、そこに実際にかかった時間を乗じることで、報酬を算定します。

パートナー弁護士となると1時間あたり10万円程度、その他の弁護士であれば3万円~5万円程度でしょう。

緊急対応や土日祝日の業務には、割増料金や追加料金がかかります。

契約書作成料

基本合意書や最終契約書など、M&Aに必要な各種契約書の作成を弁護士に依頼した場合は、契約書作成料がかかります。

契約書作成料は取引金額が多いほど高額になることが多いですが、書式や内容によっても幅が大きく、費用相場は概ね数十万円~数百万円程度とされています。

契約書作成費用については、タイムチャージ制を採用している事務所もあり、1時間あたり数万円から、担当する弁護士によっては、さらに高額となることもあるようです。

さらに、契約書の内容を弁護士立ち合いの下当事者に説明をした場合は、その費用が別途1時間あたり数万円程度かかることがあります。

ただし、弁護士と顧問契約を結んでいる場合は、多少ディスカウントされる場合も多いです。

デューデリジェンス費用

法務デューデリジェンスの実施には、弁護士のサポートが必ず必要になるため、そこにも費用がかかってきます。

法務デューデリジェンスの費用相場は、調査内容やM&Aの規模によって変わりますが、概ね数十万~数百万円程度とされています。

デューデリジェンスに関しては、固定の弁護士費用を設定している事務所もありますが、多くの場合はタイムチャージ制で考えられ、通常1時間あたり2~5万円となり、1日7~8時間と考えても、日当が15万円~40万円程度となるため、デューデリジェンスにかかる期間を考えると、先に述べた数十万~数百万という相場になるのです。

加えて緊急の対応を依頼したり、土日祝日に作業を依頼したりする場合は、追加請求が行われる場合もあるでしょう。

また、大規模なM&Aでは、10人以上の弁護士を投入して法務デューデリジェンスを行うケースもあり、こうした場合は一千万円を超えることも珍しくありません。

中小企業のM&Aでは、多くの場合ここまでの規模にはなりませんが、事前に弁護士の投入人数を確認しておくと良いでしょう。

顧問契約料・リテイナーフィー(月額報酬)

M&Aを行う際には、成約までに半年から1年以上の期間を要するため、顧問契約を結ぶこともあります。

顧問契約料は、月額で支払うことが一般的で、最低金額を5万円前後からと設定しているところが多く、費用相場は5万円~数十万円とされています。

したがって、M&Aの期間を想定して、総額を予測・把握しておくことが必要です。

弁護士の指名の有無や、進行状況によって、月額報酬料が変動する場合もあります。

また、顧問契約料でどこまでの業務をカバーするのかも一律ではありません。

実際に相談したり、業務を依頼したりする場合には、1時間あたり数万円の手数料が追加でかかるケースもあります。

また、リテイナー契約を結ぶと、成功報酬とは別に、一定期間の調査や相手先訪問などの業務に対して、月額固定金額(リテイナーフィー)が設定されます。

こちらは月数十万円が相場とされているようです。

報酬金

アドバイザリー業務を行っている法律事務所の成功報酬に関しては、弁護士と依頼者の協議によって決められる場合や、M&Aの報酬体系によく使用される「レーマン方式」を採用している場合もあります。

レーマン方式とは、M&A成約による譲渡価格や移動総資産額(株式価格+負債総額)、或いは株式価格のみから、下の表に示したような料率で費用が発生するものです。

大規模なM&Aになるほど、手数料率が低くなります。

また、完全成功報酬制を取っている事務所もあり、その場合は着手金やリテイナーフィーを取らずに、成功報酬だけを受け取ります。

その場合も、レーマン方式が一般的です。

成功報酬は、500万円を最低額としているところが多いようです。

料金体系は事務所や弁護士によって大きく異なり、デューデリジェンスや登記などには個別の費用を必要とする場合もあるため、具体的な費用に関しては、法律事務所や弁護士に確認しましょう。

M&Aに強い弁護士事務所の選び方

M&Aの専門性が高い弁護士が在籍していても、その弁護士のスキルや実績は様々であるため、M&Aを依頼するなら、弁護士事務所としてトータルに見て、M&Aに強いかどうか判断することが重要です。

主に次のようなポイントを見極めて選びましょう。

M&Aの経験・解決実績が豊富であるか?

M&Aに強い弁護士がいても、事務所としては問題解決に不慣れなところもあります。

スムーズな問題解決を望むのであれば、事務所として複数の解決実績があるところを選びましょう。

また、M&Aは行う規模や事業毎によって必要な知識や注意すべき点が大きく異なるため、自社と同規模・同事業でのM&A経験が豊富にある事務所が最適です。

弁護士の個別案件での関わりなど、問題解決実績を記載してあるホームページなどを見比べて、検討すると良いでしょう。

幅広いネットワークを持っているか?

外資系企業が関わるM&Aについては、海外の法律知識が必要な場合もあります。

そういった場合は、現地事務所とのパイプを持つ大手法律事務所や外資系法律事務所などが向いていると言えるでしょう。

M&Aにおいては、弁護士だけでなく、税務・労務・ビジネスなど、多角的な視点からチェックを受けた上で進める必要があるため、幅広いネットワークで他の専門家と連携している事務所であれば、一貫してサポートが受けられ、確実な取引の実現が期待できます。

また、意外かもしれませんが、探偵事務所などの調査機関の専門家が必要な場合もあります。

特に、デューデリジェンスにおいては、社長や社員の個人的な犯罪歴や債務履歴などを知ることは必須です。

そういった場合、探偵事務所などの調査機関と連携している弁護士事務所であれば、安心して任せることができます。

M&A以外の分野にも対応しているか?

M&Aは、事業拡大だけでなく、知的財産権の移転や不動産の流動化、事業再生・破産などを目的に行われることもあります。

また、契約が締結された後も、従業員との間で雇用問題に関するトラブルが生じることも考えられるでしょう。

そういった場合、M&Aのみに注力する事務所では、対応しきれない可能性もあります。

したがって、M&A以外の分野にも幅広く対応している弁護士事務所を選ぶと良いでしょう。

対応が丁寧か、M&Aに精通した弁護士が複数いるか?

M&Aは企業の将来を左右する重要な案件であるため、その成立に関わる弁護士には、親身になって対応する姿勢や人柄が求められます。

また、相手先企業との交渉においても、弁護士の対応や人柄で有利な条件を引き出せることもあるでしょう。

不正や不利益となる取引を見逃さず、自社の将来的な利益まで考えられる弁護士なら安心です。

弁護士事務所全体で、依頼者に対して丁寧に対応するところであれば、こういった人柄の弁護士が多いと言えます。

そうは言っても、相手も人である以上、相性というものもあります。

M&Aは長期にわたり、迅速かつ密なコミュニケーションが求められるため、人間的に相性が合わないと、M&A自体が苦痛になってしまいますし、コミュニケーションに齟齬が生じる可能性もゼロではありません。

したがって、もし担当弁護士と相性が合わなかった場合、他の弁護士に代わってもらえるかどうかが重要です。

念の為、M&Aに精通した弁護士が複数在籍している弁護士事務所に依頼しておけば、そのような場合にすぐに対応してもらえます。

自社のニーズに合った弁護士事務所を選ぼう!また、並行して企業の実態などのデューデリジェンスも進めよう!

M&Aを行う際には、スキームの検討や法務デューデリジェンスをはじめ、様々な契約や合意が行われるため、M&Aに関する法律の専門知識に精通していて、経験豊富な弁護士の参画が必要不可欠です。

トラブルのないM&Aの成立を目指すなら、実績が豊富で信頼できる弁護士と契約することが重要になります。

しかし、M&Aに強い弁護士事務所であっても、得意分野や強みがそれぞれ違いますので、その事務所が、自社がM&Aを行う目的やニーズに合っているかどうかを慎重に見極める必要があるでしょう。

M&Aは会社の将来をも左右するような重要な案件です。

自社のM&Aの規模や目的を明確にして、そのニーズにより適う弁護士事務所を選ぶようにしましょう。

また、M&Aに関するリスクが高い場合や、どうも相手先が信用できない場合には、並行してM&A先の企業の実態や、役員の素性、過去の犯罪歴や行政処分歴、反社会的勢力との繋がりなどを、企業調査に明るい探偵事務所などに依頼して、確認しておくのがおすすめです。

こういった確認を怠ってしまうと、M&A後に騙されてしまったり、繋がりたくもない反社会的勢力との繋がりを持ってしまったり、大きな損失やトラブルにつながります。

探偵事務所SATでは、企業の信用調査や実態調査などを数多く行っており、こういったM&Aに際しての企業の実態調査や役員の個人調査などを行うことが可能です。M&Aに関する詐欺被害などにあわないためにも、反社会的勢力との繋がりを防ぐためにも、M&Aにて「相手先が信用できない」「相手先の素性がしれない」という場合は、まずは、メール、お電話にてお気軽にご相談ください。

提携先の弁護士などの紹介も無料で行っています。

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