【投稿日】 2022年8月21日 【最終更新日】 2022年9月4日

創業者利益とは創業者が株式譲渡などを行う際に得られる利益のことで、創業者利益が増えることで融資を受けずに新事業を立ち上げることが可能となり、会社にとって非常に有益なものになります。

創業者利益を得るためには、主に2つの方法があります。これらのメリットデメリットについて、詳しく解説していきます。

創業者利益とは?

創業者利益とは会社を創業した人が株式を譲渡や売却することで得ることができる利益のことを言います。

創業者利益は、よく次のような方程式で表されます。

売却額-(資本+株式資本)=創業者利益

創業者利益を得るための、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 資本金を準備する
  2. 会社を創設する
  3. 経営を行い、企業として業績を収める
  4. 企業価値が高まったら株式を譲渡する
  5. 譲渡した価格から資本金を引いた金額が創業者利益となる

創業者利益は会社の経営状態・企業価値によって左右されるため、経営状態・企業価値を高めておく必要があります。

創業者利益を得るための2つの方法

創業者利益とは一体どういうものか分かったところで、具体的にはどんな方法をとれば創業者利益を得ることが出来るのでしょうか。

創業者利益を得る代表的な方法は以下の2つになります。

  • IPO
  • M&A

これらについて、メリットデメリットも含めて詳しく解説していきます。

IPO

1つ目は「IPO」です。IPOはInitial Public Offeringの略称で日本語では「新規株式公開」や「新規上場」という意味になります。

株式市場に上場して株式を新規公開し、市場に流通させるという方法です。株式市場へ上場することで金融市場より直接融資を受けることが出来、資金を集めるのに最適です。

上場の準備はもちろん、維持費などがかかるため、メリットデメリットをしっかり抑えて行うべき取引です。

IPOにおけるメリット

IPOは、主に企業・従業員・株主の3つそれぞれに次のようなメリットがあります。

メリットの対象 メリットの内容
企業 ・資金調達のしやすさ
IPOを行うことでもたらされる大きなメリットの1つは、資金調達のしやすさです。増資によって新たに株式を発行することで資金調達がしやすくなります。
また、IPOを行うにあたって、取引所が定めた基準をクリアする必要があるため、IPOを行っている企業というだけで信頼を得ることが出来ます。

・知名度向上
IPOでは、市場へ進出することで知名度を向上させることが出来ます。知名度の向上は、知ってもらう機会が増えるだけではなく、世間からの信頼を向上させることにもつながります。世間への信頼が高まれば、新規取引の拡大にもつながります。

・信頼度が強固なものになる
IPOのためには、クリアしなくてはならない基準がたくさんあります。上場後も経営情報や株価を一般公開しなければなりません。このように開示されている情報が多くなる為、健全な経営をしている証明になり、信頼が強固なものとなります。

・人材採用の質が向上
IPOを行った後には、知名度の向上や、信頼度の高まりによってその企業で働きたいと考える人が増加する傾向にあります。優秀な人材を採用することで企業の質がより高くなっていくでしょう。

従業員 ・報酬の付与
従業員の持ち株制度などを設けることにより、従業員の報酬を上げることができます。従業員自身の努力で業績が上がった場合、株価も上昇することとなり、報酬アップにもつながります。

・ストックオプションの付与
ストックオプションとは、従業員に付与される新株予約権のことを言います。株式を一定額で購入し、株価が上昇したタイミングで売ることで大きな利益を生む可能性もあります。
会社の株価を上げなければ利益を得ることができないため、従業員自身の向上心が高まる傾向にあります。

・職場環境の向上
IPOを行うにあたって、企業は内部管理体制を整える必要があります。職場環境の改善にもつながり、従業員の働きやすい環境に転じていくでしょう。
上場企業になったという点で従業員のモチベーションが向上する場合もあります。

・上場に従事した実績
上場企業で従事することは転職等にも大きく有利に働きます。上場を経験することは一般的に少なく、それらで経験を積んだり、責任を負った経験を持つことは評価されるものとなります。

株主 ・株式の流通拡大
株式市場は取引される流通性の拡大につながります。流通が拡大することで、株式売買がしやすくなり、資金調達の幅が広がります。

・資産価値の向上
株式の流通拡大によって株式の資産価値が向上します。また、上場に成功すると、株価の上昇も見込むことができ、結果的に資産価値が向上することにつながります。

IPOにおけるデメリット

一方でIPOによって生じる、デメリットは主に次の4つです。

デメリット 内容
上場準備に数年かかる(3年〜5年) 一般的に上場には長い期間が必要になります。この期間に行わなければならない準備も多くある為、それらの管理だけでもかなりのコストや労力がかかることになります。

・パートナーの選定
IPOは自社だけで達成できることではなく、多くのパートナーと連携していく必要があります。そして、IPOを成功させる上で、監査法人や主幹事証券会社の選定を行わなければなりません。
主幹事証券会社は、公開準備指導、公開審査、株式の引き受け及び販売を主な役割としています。
監査法人は、上場するにあたって財務諸表等について『金融商品取引法』に準ずる監査を行う法人です。上場を行うには監査法人と監査契約を締結する必要があります。

・監査法人への中間審査準備
IPOの準備が順調な場合、証券取引所による中間審査を受けなければなりません。IPOを行うにあたって、進捗状況などを把握していく必要がある為です。
実際の審査だけでも約3ヶ月、準備まで含めればさらに長期間にわたって手続きをしていかなければなりません。審査には、書類作成・提出・ヒアリング調査などが行われていきます。
通常の業務を行いながら中間審査の準備を行わなければならないため、かなりの労力を必要とします。

・外部からの人材確保等
IPOの準備を行っていくにあたって、初めて行う作業や業務が増加することになります。これらを行うにあたって、管理部門についてはかなり難しい業務が増えるでしょう。そうなると、社内だけで対応するには限度がある為、外部からの人員確保を行い、不足部分を補う必要があります。

上場準備中のコストが増大 上場準備にあたってコストの増大は必要不可欠なものです。企業の規模などによっても変化してきますが、準備にかかるコストは数千万円程度必要と言われています。コストがかかることは、大きなデメリットにもなります。

・準備費用も高額になる(監査法人、社内外の監査役の設置など)
準備の費用は非常にかかります。監査法人への報酬や、証券会社の引き受け指導料といった費用がプラスされることも懸念しておく必要があります。
IPOを行う上で、通常業務以外の業務が増えるため、社内でのコストも増大することを念頭に入れておきましょう。

・社内体制の見直しと管理コスト
上場にあたって社内体制の見直しが必要となります。管理部の強化などを行わなければならないため、コストが増大することが予想されます。

・失敗した場合の損失も大きい
準備に費用が掛かると言う事は、失敗してしまった際の損失も大きくなります。長い目で見て、上場すべきかどうかをきちんと考えていく必要があります。

社員のモチベーションに変化 IPOを行うにあたり、社内体制も整頓して変化させていく必要があります。そうなると、管理部が強化されて今までより厳しい管理をされるようになり、それについて不満を抱く社員がいる可能性もあります。また、体制が変わることに対してマイナスな感情を抱く社員がいないとも限りません。
上場後の企業にもリスクは残ります。無事上場したからといって安心してはいけません。上場後に懸念されるリスクもご紹介していきます。・買収されるリスク
・上場維持コスト
・自由度の制約
・情報公開への対応

M&A

「M&A」です。M&AはMergers and Acquisitionsの略称で、会社の合併や買収による創業者利益を上げる方法です。2つ以上の会社を合併・又は買収し、利益を上げていきます。

M&Aは資金調達や創業者利益を短い期間で得ることができ、シナジー効果も期待できる方法となります。

M&Aにおけるメリット

M&Aにおけるメリットは主に5つあります。

メリット1:事業承継問題の解決

中小企業においては経営者の高齢化が問題となっており、それにより事業継承者が見つからないという問題も発生しています。

M&Aを行い、第三者に事業を譲渡・売却することで廃業を防ぎ、事業を続けることが出来るというメリットがあります。

親族や役員の中から後継者が見つからない企業にとっては非常に有効な方法といえるでしょう。

メリット2:雇用維持・取引維持

M&Aであれば、従業員や設備、不動産、技術、ノウハウなどといったすべての資産を引き継ぎ、従業員や取引先との関係をそのままにすることができます。

M&Aを行うことにより、取引先や従業員への損害を最小限にとどめることが可能となります。

廃業選択をすると、従業員は職を失い、取引先も取引相手を失うこととなってしまいます。

メリット3:金銭的収入

M&Aにより会社や事業を売却すれば、事業の現金化ができ、金銭的なメリットを受けることができます。

獲得した資金の使い道は自由なので、利益としてカウントできます。

企業価値が高く評価されればされるほど、金銭的な額面も大きくなるので、企業価値や経営状態を高くしておく事が高い創業者利益を得るコツです。

一方で、廃業選択を取る場合、従業員への保証や処分などによってコストがかかることがあります。

メリット4:責任開放

中小企業では特に、個人資産を担保として融資を受けている場合もある為、経営への責任が重大なものとなります。

経営権が移行することでそれらの責任から解放されることになります。事業の継承や経営についても関与しなくて良くなるため、プレッシャーをなくすことができます。

メリット5:事業の成長・発展

M&Aにより会社を売却すれば、他会社と合わさり、業績の向上なども期待でき、事業の発展・成長を促進することができます。

自社よりも大きな会社と合併・買収されることにより、その企業の良いところを活用しながら生産体制を強化できたり、営業が円滑に進むこともあります。自社の弱点を活かしながら事業を発展させる見込みがあります。

M&Aにおけるデメリット

M&Aを行う上ではデメリットが3つ、挙げられます。

デメリット1:最適な相手先が見つからない可能性がある

M&Aは、売り手側と買い手側のバランスで成り立っています。買い手がいなければ創業者利益を得ることもできません。

売却するにしろ、相手の条件を見極めなければなりませんが、そもそも条件に合う相手が現れるかどうかもわかりません。お互いに納得しなければM&Aは成り立たないのが現状です。

外部のネットワークも使用しつつ、自社にとって有効かつ条件の良い相手を探さなければなりません。

デメリット2:思っていたほど会社に価値がつかない可能性がある

M&Aにおいて、将来的な利益が見込める企業でなければそれなりの価値がありません。

将来的に収益が大きくなることを予測した企業にしておかなければ買収時にそれなりの値段がつかず、創業者利益として見込めません。

営業体制を強化したり、新規取引先を開拓したりして将来性を築き上げておくことが大切になります。

デメリット3:取引先との関係が悪化する可能性がある

M&Aによって別の企業の傘下になった場合、その企業の方針に則って取引先などとの契約内容が変化する場合もあります。それによっては、取引先などからの反発を受ける可能性があります。それらを防ぐためには、きちんと取引先との話し合いを行っておく必要があるでしょう。

創業者利益を得るうえで注意したいこと

創業者利益を得るためには、注意すべきことは次の3つです。

注意点1:市場が伸びている時や好業績のタイミングで売却する

売却のタイミングには注意したいものです。市場が伸びていたり、好業績のタイミングで売却すると企業価値が上がり、高額になる可能性があります。売却のタイミングを逃さないように市場チェックをしておきましょう。

注意点2:予想額の創業者利益を得られない場合もある

予想していた創業者利益を得られない可能性があることも充分に注意しておきましょう。

会社の価値を高めてから売却しても、将来性などから鑑みて、買い手が提示した金額と売値をすり合わせなければなりません。相手の条件などを見ながら、交渉していくうちに予想よりも安くなってしまったという事も起こり得ます。

注意点3:IPOは現金による創業者利益が少ない

IPOの場合は現金による創業者利益が得にくい場合があります。

創業者自らが自社の株式を全て売却した場合、経営状況の悪化などを連想し、株価が暴落する可能性もあるので、創業者利益が少なくなる可能性もあります。

創業者利益を得るハードルが比較的低いのがM&A!しかし、M&Aは売り先の相手の調査もしっかりと!

会社を売却することで得られる創業者利益は高額になることが多いです。

そのため、企業価値を高め、良いタイミングで売却・譲渡する事で創業者利益を得ることが可能です。

その方法としてはIPOとM&Aがありますが、IPOは現金化しにくいという特徴があります。従って、どちらかと言えば簡単にできる企業合併・売却のM&Aの方が、創業者利益を得るハードルが低いという意味でおすすめです。

しかし、どちらの方法をとるかは、会社の業種や経営状態、企業価値などによって三者三様なので、事前に社内での検討を重ねる必要があります。より高い創業者利益を得るためにも、専門家などと相談しながら決めていくべきでしょう。

また、M&Aは大きなお金が動きますし、社員などがいる場合、社員を売り手側に託すことになります。そのため、売り先の相手が信用に足る企業、個人かどうか素性や経歴などをしっかりと調査しておくことが重要です。

探偵事務所SATでは、こういったM&Aに関する相手先企業の素性や経歴、反社会的勢力とのつながりなどを調査する事が可能です。

もし、創業者利益を得る方法としてM&Aを選択した場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

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