【投稿日】 2022年9月25日 【最終更新日】 2022年9月28日

人口の世代分布の中でも特に団塊の世代は人数が多いとされています。さらに団塊の世代が「後期高齢者」である75歳前後の年齢に達してしまうのは2025年です。

このため2025年を皮切りに、認知症リスクがある高齢者の数は非常に多くなると考えられており、社会へ重く負担がのしかかるだろうと予想されています。2015年に500万人を越えた認知症患者人口は、2020年にはすでに600万人にも達してしまいました。

高齢者が認知症を発症して直面する問題は、「徘徊してしまったらどうすべきか」です。

徘徊は本人や周囲の人々含め、多大な危険が伴う行為です。徘徊はできるだけ事前に防ぎ、事後も然るべき対応をとらなければなりませんが、本人の周りの素人だけで解決するには難易度が高すぎる問題でもあります。

増加する高齢者人口、および徘徊の可能性がある認知症患者に対しては、介護施設が最終的なセーフティーネットであるといえます。しかしながら、認知症患者が引き起こす徘徊についての対策ができていなければ不安が残ります。

そこで本記事では、「社会における代表的な高齢者受け入れ施設でもある老人ホームが、どのような認知症患者に対する徘徊防止の対策をとっているか」について解説します

老人ホームの徘徊対策

主に高齢者などの介護施設である老人ホームでは、高齢者が発症しやすい認知症を原因とする「徘徊」の対策もいまや必須と言えます。

警視庁の調べによると、令和2年における認知症による徘徊が理由で行方不明者となったケースは17,565人にも及んでいるとのことです。(※1)

しかもこの合計数には、警察が把握していない届け出外の数は含まれていません。つまり実際はより多くの認知症徘徊を原因とした行方不明者がいると考えられます。

一体、老人ホームでは認知症患者受け入れ施設としてどのような準備がなされているのでしょうか。

※1:警視庁:令和2年における行方不明者の状況

【1】IoTを利用したシステムによる徘徊対策

介護業界も人員不足が叫ばれる中、IoTなどのテクノロジーを導入しは徘徊対策などを行っている老人ホームも増えてきているようです。

IoTとはInternet of Thingsの略称です。Internet of Thingsとは、インターネットに接続されたデバイス全般を指します。

具体的にはIoTの顔認証システムや、入退出管理システムによる出入り対策、マグネットセンサーによる抜け出し対策などがメインです。

【出入り対策】顔認証システム

施設における人の出入りについて、玄関口を閉ざしてしまえば根本的に徘徊を防ぐことはできますが、全く現実的ではありません。

夜間は入眠していることも多く、なによりも施設を物理的に施錠してしまいますので、認知症患者が外出してしまうリスクは徹底的に抑えることができます。

しかしながら、特に日中は徘徊の可能性がある認知症患者自身も活発に過ごしていることが多いため、施設の玄関が自動ドアなど簡易なものである場合、簡単に出入りできてしまいます。

特に介護施設はバリアフリー化が徹底されていることもあり、どのような障害を負っている方でも容易に行き来できるような設計となりがちです。徘徊患者がいる場合、これが裏目に出てしまいます。

そこで老人ホーム側が導入するのが顔認証システムです。

顔認証システムの仕組みは、あらかじめ老人ホームに入居している方々の顔を登録しておいて、もし登録した、いずれかの方が玄関から出ようとした場合に防犯カメラなどで検知し、スタッフに通知を飛ばすといった形が代表的です。

通知を受けたスタッフがいち早く玄関へ行き、認知症患者を保護できればその場で徘徊を防ぐことができるのです。

【出入り対策】入退室管理システム

出入り口にはセキュリティ会社を介入させる入退室管理システムを設置することも可能で、採用している老人ホームも非常に多くスタンダードとなってきました。

入退室管理システムを導入すると、IDカードなど専用の手段がなければ出入り口の鍵を開けられなくなります。つまり関係者以外は確実にシャットアウトできるシステムと言えます。

もし徘徊者が、あるいは不審者が無理矢理にでも入り口をこじ開けようなどとした場合には、スタッフに通知が行くだけでなく、セキュリティ会社側へも連絡が行き、警備員などの派遣がスムーズに行われることになります。

配送業者や点検業者を入館させる場合は、外から本部へ連絡してもらって開場するなどシステムごとに異なりつつはあるものの対応手段が存在します。

【抜け出し対策】窓など玄関以外の出口にマグネットセンサー設置

出入り口以外にも認知症患者が抜け出してしまう危険性があるのが施設内の窓です。

窓に有効な徘徊対策はマグネットセンサーの設置です。窓にマグネットセンサーを取り付けると、窓が開けられたなどのタイミングで管理者へ通知を飛ばすことができます。

届く通知には、施設内のどの箇所が突破されたのかがひと目でわかるようになっており、すぐに駆けつければ徘徊を事前に阻止できます。

【2】生活習慣維持・改善に基づく徘徊対策

これまで解説したように、老人ホームなど介護施設では専用のシステムを導入して事前に徘徊を防ぐ対策を何重にも備えています。

これらは、いわば物理的な徘徊対策であり、徘徊する可能性がある住人を抱える施設を運営する上で必要なことでした。ただ、徘徊対策として挙げられる、専門施設ができる方法はそれだけではありません。

高齢者の生活習慣対策という観点からも徘徊対策を行っています。

【生活習慣対策】専門スタッフを配置することで無理に徘徊をやめさせない

徘徊とは、認知症患者の認識機能低下により起こってしまいます。実際には目的も理由も説明できないことが通例なのですが、本人は認知症を発症してしまう以前と全く同じ意識で、自分にとって必要な行動だと思って徘徊しています。

そこで、迷惑だからと無理矢理に徘徊をやめさせてしまうと本人にとってかなりのストレスとなるばかりでなく、必要な行動が妨げられたとして保護者に対する不信感、不安を抱くことになります。

場合によってはより強固な意志で徘徊を断行しようとしてしまったり、より認知症が進行してしまう事態を招いてしまうこともあるのです。

老人ホームは一般的に個室が与えられるため、もし認知症患者が徘徊の兆候を見せ始めると、介護職員はともに室内を伴走するなどの対応をとり、徘徊を見守ります。

【生活習慣対策】夜に徘徊できないように適度に疲れるような生活習慣で、セロトニン生成を促す

前段落とも共通しますが、日中に認知症患者が適度に疲れることで夜はぐっすり寝て、徘徊をしないようになってくれる可能性があります。

このため老人ホームでは介護職員が付き添い、昼間に軽く運動したり、集団でレクリエーションなどイベントを開催してくれることがあります。

日中に外で運動すると、認知症患者を疲れさせることができるというメリットが得られるだけでなく、太陽光の摂取によるセロトニンの分泌も期待できます。

一般的にセロトニンは15~30分ほど日光を浴び続けることで体内で生成されるとされています。セロトニンは、神経伝達物質として働きうつ病を防ぐ効果があります。

冬は日照時間が少ないため、日本でもより北に位置する地方では日光の摂取時間の少なさによるセロトニン分泌量の低下で季節性情動障害(うつ病の一種)を発症してしまう例も珍しくありません。

またセロトニンは、質の高い睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌も促進します。

メラトニンは、一般的に起床後14時間程度の経過で分泌され始めるとされています。メラトニン分泌量が多ければ多いほど、快適な睡眠に直結するとされています。

つまり運動習慣の継続により、安定した質の高い睡眠の継続も期待できるということです。

睡眠により深夜の徘徊リスクを減らしつつ、メラトニンによるアンチエイジングの効果も享受しながら、認知症の進行を遅らせられれば理想的です。

このように、日中に運動やレクリエーションイベントを開催するなど、高齢者の質の高い睡眠とセロトニン分泌を促す行動も、IoTによる徘徊対策と同時に行われています。

老人ホームでもIoTなどシステムを導入し、入念な徘徊対策が行われている!

今回は老人ホームにおける徘徊対策について解説しました。

老人ホーム業界の昨今の状況として、それぞれ防犯対策にも使われるような最新のIoTシステムを導入し、入念な徘徊対策を取り入れている施設が増えていることが挙げられます。

それだけではなく、認知症ケア専門職の知見を活かし、生活習慣に基づいたケアをしてくれる施設もあります。いずれも見学によりある程度確かめる事ができます。

近年、認知症ケアは個々のパーソナリティに寄り添うことが重視されています。ぜひ自分の環境を振り返り、本ページで解説した項目に基づきベストな施設を探してください。

万が一徘徊による失踪が起きてしまった場合には、警察だけではなく探偵事務所SATにご相談を!

IoTや、生活習慣対策など、高齢者の徘徊対策に力を入れている老人ホームが増えてはいますが、どれだけ対策をしても、100%徘徊による失踪が起きないとは言えません。

そのためにも、万が一の事が起きた場合のスピーディーな捜索対応も合わせて準備しておくべきです。

実際に探偵事務所SATでは、高齢者の方の失踪・捜索相談を数多く頂いております。失踪から時間が経てば経つほど手がかりすら見つけるのが難しくなり、時間が経過すればするほど、発見される確率は下がってきてしまいます。

万が一徘徊による失踪が発覚した場合には、一刻も早くあらゆる捜索手段を用いて、探し出すことが重要です。

探偵事務所SATでは、探偵業法に基づき、あらゆる調査手段を用いて、対象者を捜索いたします。メール、または電話などでご連絡ください。

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