【投稿日】 2023年1月15日 【最終更新日】 2023年1月19日
土地や家などの「不動産」の反対語として「動産」がありますが、この「動産」を差押えて債権回収の手段とすることができます。
この記事では、最初に「動産」とは何かと種類、具体例を説明し、その後「動産」の差押えを行う際に優先的に調査すべき事項について詳しく解説します。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
動産とは?
「動産」とは、文字通り動かすことができる財産のことです。
民法では、「不動産」とは「土地及びその定着物」、「動産」とは「不動産以外の物すべて」と定義されています。
具体的には、自動車や船舶、航空機、家電品、家具、宝石、貴金属、ペットや家畜の他、機械、道具、備品類、家財道具、現金、株式、社債、約束手形、商品券などが「動産」です。
立木については、土地から分離できない「土地の定着物」ですが、伐採されると「動産」になります。
果実については、樹木から分離されていない状態では「土地の定着物」ですが、成熟して採取できるようになると「動産」になります。
現金や通帳、証書は「動産」ですが、郵便貯金や銀行預金は「動産」には含まれません。
不動産
民法では「不動産」は「土地及びその定着物」と定義されています。
ここで、「土地の定着物」とは「継続的に土地に固着し、しかも固着して使用されることが、その物の取引上の性質とみられるもの」のことで、具体例としては、建物や樹木、土地に固定された機械、取り外すことが困難な庭石などがあります。
「土地の定着物」は、土地の一部なので原則として「独立した不動産」にはなりません。
しかし、例外として「建物」と「立木ニ関スル法律に基づいて登記された立木」は「独立した不動産」になります。
不動産と類似の扱いを受ける動産
民法上は「動産」であっても、所有するために「登記」や「登録」が必要となるものは「不動産」と類似の取扱いを受ける場合があります。
例えば、「総トン数20トン以上の大型船舶」や航空機、自動車は、「不動産」と同じように登記や登録を行う必要があるため、「動産」ではなく「不動産」として扱われます。
抵当権の設定ができる動産
「抵当権」には原則として「不動産」を設定する必要がありますが、次のものは特別法によって「動産」であっても「抵当権」が設定できます。
- 農業用動産の抵当権(農業動産信用法)
- 自動車の抵当権(自動車抵当法)
- 建設機械の抵当権(建設機械抵当法)
- 航空機の抵当権(航空機抵当法)
- 船舶の抵当権(商法)
不動産でも動産でもないもの
「特許権」や「著作権」などの権利は、「無体財産権」や「知的財産権」であり「無体物」ですから「不動産」でも「動産」でもありません。
動産執行(動産の差押え)とは?
「動産執行(動産の差押え)」とは、債務者が所有する「動産」を差押えて競売にかけて現金化し、その売却代金によって債権を回収するという強制執行手続です。
「動産執行(動産の差押え)」は、執行官が債務者の元に出向いて差押えをし、競売を行い、売却代金を債権者に配当します。
「動産執行(動産の差押え)」を行うことができるのは、次のような場合です。
・裁判で債務者に支払いを命じる判決が出たが支払いをしない場合
・裁判で債務者が支払いをする和解が成立したが支払いをしない場合
・債務者との間で「強制執行認諾文言付公正証書」を作成している場合
動産執行の対象となる動産
「動産執行(動産の差押え)」の対象は、民法上の「動産」よりも範囲が広く、次の通りです。
- 民法上の「動産」
- 登記することができない「土地の定着物」
- 土地から分離する前の天然果実で1ヶ月以内に収穫することが確実であるもの
- 有価証券(裏書禁止でないもの)
しかし、債務者の日常生活や仕事、宗教上の行為に欠かせないものなどは、債務者保護のために「差押禁止財産」となっています。
「差押禁止財産」は、次の通りとなっています。
- 債務者の生活に欠かせないもの(衣服や寝具、家具、台所用具、畳など)
- 債務者の仕事に使用する器具や備品類
- 現金(66万円まで)
従って、実際に差押えることができる「動産」は、現金、株式、各種機械、商品、時計、絵画、宝石、ブランドバッグなどの高額な「動産」になります。
また、「動産」のうち自動車や船舶は、「自動車執行」「船舶執行」による差押えの対象となります。
動産執行(動産の差押え)のメリット・デメリット
「動産執行(動産の差押え)」のメリットとしては、「不動産執行」と比べて執行手続が比較的簡易で、費用も低額だということです。
また、執行官が債務者の自宅や事業所などに来て差押えをしますので、債務者に大きなプレッシャーを与えて、未払債務の支払に応じようというきっかけになることも挙げられます。
一方、デメリットとして、債務者が高価な「動産」を所有していれば差押えによって配当を受けることができますが、高価な「動産」を所有していなかった場合やすでに他の場所に移動した後であれば、ほとんど差し押さえできないということが挙げられます。
動産執行(動産の差押え)の前に優先的に調査すべきこと
「動産執行(動産の差押え)」を行うためには、差押え対象の「動産」が存在する住所を管轄地方裁判所の執行官に対して申立てしなければなりませんので、事前の「財産調査」が重要です。
「動産執行(動産の差押え)」の前に優先的に調査すべきこととしては、次のようなものがあります。
【調査すべきこと1】他の債権者の有無と数
まず「財産調査」の前に調べておく必要があるのは、他に債権者がいるかどうかとその数です。
複数の債権者がいる場合は、差押えて換金した後に、債権額に応じて財産が配当されるため、債権を全額回収できるとは限らないためです。
【調査すべきこと2】動産の種類と所在
前述のように、実際に差押えることができる「動産」は、現金、株式、各種機械、商品、時計、絵画、宝石、ブランドバッグなどになります。
債務者がこれらの高額な「動産」を保有しているかどうかと保有している場合はその所在を調べておく必要があります。
債務者が個人の場合は、自宅に保管する場合が多いと思われますが、自宅以外に保管する場合もあります。
債務者が法人の場合には、本社や他の事業所、その他の場所に動産を保管することがあります。
【調査すべきこと3】動産の資産価値の評価
「動産」の種類と所在がある程度判明したら、それらの資産価値を評価しておく必要があります。
原材料、半製品、商品などの種類によっては、各種要因による資産価値の劣化もあり得るからです。
動産執行(動産の差押え)の前には十分な事前調査が必須!
この記事では、「動産」とは何か、その種類と例、「動産執行」およびその前に調査すべき事項などについて解説しました。
一般的に動産は、不動産に比べて資産価値が低いことが考えられますし、債務者保護のための「差押禁止財産」もあります。
そのため、「動産執行」によって大きな債権回収効果が得られないことも考えられます。
これらのことから、「動産執行」に際しては十分な事前調査が必須です。
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動産執行は、不動産執行と共に、債権回収の手段として使われますが、動産の場合は「そもそも動産執行をやって、債権回収が可能なのか?」という点から調査が必要です。
探偵は人探しや浮気調査などを主な仕事とするイメージがありますが、動産のような資産調査も探偵の仕事の1つです。
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※探偵事務所では調査のみを承っております。資産・財産調査以外の手続きや申請の代行、債権回収の実行などはできません。
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