【投稿日】 2021年12月17日 【最終更新日】 2022年1月10日
企業を買収する際には、当然のことながら、買い手と売り手双方にメリットとデメリットが発生します。
そこでこの記事では、買い手側と売り手側双方から見た、企業を買収するメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
企業を買収するメリット(買い手側)
買い手側から見た、企業を買収するメリットは、以下の10項目です。
メリット①企業買収によるシナジー効果
企業を買収するメリットとして最も大きいのは、「シナジー効果」と呼ばれるものです。
企業買収におけるシナジー効果とは、2社以上の企業の能力や資源を結合することにより、各社それぞれが単独で生み出し得る価値の合計を上回る大きな価値を生み出す効果のことであり、以下の8つのシナジーが挙げられます。
生産シナジー
生産シナジーとは、会社規模が大きくなり、市場占有率がアップすることで、原料の大量購入が可能になることや、工場の稼働率が向上して、コストが削減できることを指します。
販売(売上)シナジー
販売(売上)シナジーとは、販売ネットワークが広がり、クロスセルや両社のブランドイメージの利用によって売り上げが増加することです。
販売シナジーは、以下のようなものが挙げられます。
- 同じ市場・顧客に対する商品・サービスの拡充(クロスセリングを含む)
- 販売チャネルの獲得(川下への進出)
- 営業ノウハウの移植
- ブランド力活用
- 会社の知名度、信用力を活用
- 商品・サービス開発力の向上
- ・シェア向上による市場支配力、価格支配力アップによる売上・利益の向上(業界シェア上位企業同士のM&Aの場合)
投資シナジー
投資シナジーとは、研究開発費が増えることで、時代の流れや市場の変化に対応できる商品開発ができるということです。
両社の技術の融合による新たな価値(製品・サービス・技術)の創造や、研究開発のための投資余力の増強、研究開発の共同化や、研究施設の統廃合によるコスト削減なども含まれます。
経営シナジー
経営シナジーとは、相手先の企業から経営ノウハウを得られ、より一層経営力がアップすることです。
また、買収対象企業を子会社化して企業をグループ化すれば、足りない部分を補い合って、より効率的な経営が実現できることもあります。
コスト削減シナジー
コスト削減シナジーとは、企業買収により、様々なコストを削減できることです。
削減できるコストには、以下のようなものが挙げられます。
- 仕入れコスト(規模の拡大による交渉力アップ、川上への進出など)
- 販売コスト(販売拠点の統廃合や組織の合理化、マーケティングコストの削減など)
- 物流コスト(物流ボリューム増加によるボリュームディスカウントの実現など)
- 製造コスト(外注作業の内製化など)
- 研究開発の合理化(開発人員の削減、開発の効率化など)
- 技術・ノウハウ・資源の共有による業務効率化
財務シナジー
2社が統合することで財政基盤が強化されて、信用力がアップすれば、より大規模で柔軟な資金調達が可能になり、事業のための投資を拡大することができます。
また、信用力が上がれば、より低い金利で融資を受けたり社債を発行したりできるため、資金調達のコストも下がります。
リスク分散効果
多くの経営者は、事業間のリスクを分散して、中長期にわたって安定的に会社を経営したいと思っているでしょう。
一つの事業、一部の顧客に売り上げが集中していると、業界が不況になったり、主要顧客が倒産したり離れたりすることで、たちまち経営危機に陥ってしまうため、いくつもの事業を並行して行い、顧客も分散させることで、リスクを分散できる効果があります。
経営手法の導入・社員の意識改革(売上アップまたはコストダウンにつながる)
経営管理手法の導入による業務効率化や無駄の排除、また企業文化の移植による社員のモチベーション・生産性の向上も、シナジーに含める場合があります。
メリット②事業規模の拡大
企業買収により、買収対象企業が保有する不動産や事業用資産、設備などの有形の資産はもちろんのこと、優秀な人材、技術、ノウハウ、流通網、顧客基盤などといった無形の資産も取り込むことができます。
こういった事業に必要なリソースの量が増えることで、既存事業を買収前よりも大幅に拡大させることができるでしょう。
特に、優秀な人材や、自社にないノウハウや販売網を獲得できれば、ただ単に規模が拡大するだけでなく、収益性や生産性の強化にも繋がります。
一般的に、事業規模が拡大され、取引量が多くなれば、取引先に対する交渉力が強化され、様々な仕入れコストを引き下げられるため、利益を増大させることができます。
メーカーであれば、コスト削減による設備の稼働率の上昇が望めるでしょうし、小売業やサービス業であれば、取引顧客が増加し、知名度やブランド力の向上も行いやすくなり、集客力に大きく寄与すると言えるでしょう。
取引先を一から開拓するのは容易ではありませんが、企業買収により、既に構築された顧客基盤やマーケットをそのまま取り込むことができれば、自社のビジネスを一気に拡大させることができます。
つまり、事業規模の拡大によって収益率を高めることができる「規模の経済性」を短期間で享受することができるのです。
メリット③事業の多角化
ターゲットとなる顧客のニーズなどを絞り込む「一点突破型」のビジネスモデルは、非常に高い収益性をあげられる可能性がある反面、大きな損失を出してしまうリスクもあります。
したがって、事業における収入源を安定的に確保するためには、事業の多角化が必要になってくるでしょう。
業種や事業内容の異なる企業を買収することで、これまで自社にはなかった分野への参入や、川上から川下へのバリューチェーンの拡大が図れます。
また、自社とは異なるビジネスモデルを持つ会社を取り込むことで、事業の多角化にかかる時間やリスクを大幅に減らすことが可能です。
メリット④新規事業への参入
自社で一から新規事業に参入しようとすると、様々なリスクが付きまといます。
ノウハウや技術など何も有していない状態からスタートするため、失敗する可能性が高くなりますし、一から事業用資産の取得や顧客獲得、商品(技術)開発、資格の申請などを行わなくてはならないため、失敗した時の損失も大きくなるのです。
一方で、既に事業を軌道に乗せ、実績を上げている企業を買収すれば、最初から全て揃った状態で新しい事業分野に参入することになるため、上記のようなリスクを大幅に軽減できるでしょう。
メリット⑤既存事業強化
既存事業の強化のために、魅力的な技術やノウハウを持っている新興企業などを買収することで、自社の弱点を補強したり、さらなる技術の向上を目指すことが可能になります。
また、自社の主要事業のバリューチェーンの中で弱い部分、或いは外部へ委託している部分を自社事業として強化することで、競争力を上げ、利益を増大させることも可能です。
メリット⑥事業成長の短期化・迅速な事業展開
新規事業の立ち上げや、事業の拡大を自社単独で行おうとすれば、マーケティングや技術開発、従業員の教育まで、多くの時間がかかります。
しかし、既に事業運営の基盤がある会社を買収することで、自社が負担するはずであった、「事業を育てるための時間」を大幅に削減することができます。
こうしたことから、企業買収は「時間をお金で買う」とも言われているのです。
メリット⑦施設や設備などを低コストで獲得
ある地域に企業が進出する度に、わざわざ事業展開にふさわしい施設や設備を建築しているようでは、迅速な事業展開が図れないばかりか、コストもかさんでしまうでしょう。
しかし、その地域にもともとある企業を買収すれば、その企業の施設や設備をそのまま利用できるので、新しく建物を建てる出費が抑えられ、非常に低コストで事業が展開できます。
メリット⑧経営状態の改善・経営の健全化
株主の交代が発生することで、経営改善が実現でき、企業価値の向上を図れます。
オーナーや経営陣の意向によって効率的な経営が行われていない企業の場合、買収することで株主が交代し、効率的な経営へのシフトが可能です。
メリット⑨競合他社の吸収
市場における需要がピークに達して「成熟期」に入ると、それ以上の市場の成長は見込めず、競合他社同士によるシェアの獲得競争が盛んになります。
この状態では、より多くの顧客を獲得するために、商品価値の値下げ競争なども発生し、市場全体が疲弊してしまうリスクもあるのも特徴的です。
しかし、企業買収によりライバル企業を取り込めば、「業界再編」が可能になります。
また、競合他社を取り込むことで、市場における価格競争から抜け出せるため、業界内での持続性も保てるでしょう。
メリット⑩節税対策(租税回避)
企業買収にあたって、買収対象企業が赤字を抱えていた場合、選択したスキーム次第では、買い手企業がその負債を引き継ぎます。
赤字は発生した年から7年間は繰越可能で、翌年に繰り越された赤字は「繰越欠損金」と呼ばれ、自社の黒字売上と相殺できるため、マイナス分だけ企業の法人税を削減することが可能になるのです。
また、海外で話題になった企業買収を利用した節税方法として、「タックス・インバージョン」(租税地変換)もあります。
これは、より税率の低い国の企業を買収することで、第3国に新本社を設立し、合法的に節税を図るというものです。
ただし、この手法は、近年では規制が強化されています。
企業を買収するメリット(売り手側)
売り手側から見た、企業買収のメリットは、以下の7項目です。
メリット①事業継承問題の解決
少子高齢化の日本において、特に中小企業では、後継者が見つからず、現在の経営者が引退するとともに会社が廃業になってしまうケースが多くなっています。
これでは、その会社が培ってきた貴重な技術や事業運営のノウハウは消滅してしまうでしょう。
しかし、第三者からの買収が実施されれば、会社は新たな経営者(買収者)に事業承継されたことになり、会社が存続できるのはもちろんのこと、技術やノウハウも継承されるのです。
事業自体は好調であるものの、後継者不足から廃業を検討している場合も、企業買収による事業承継は有効な選択肢となります。
メリット②雇用維持・取引維持
企業買収であれば、不動産や設備、従業員、技術、取引先といった全ての資産を引き継ぎ、従業員の雇用や取引先との取引関係を維持することが可能です。
仮に廃業を選択した場合、従業員は職を失い、路頭に迷ってしまいますし、取引先は、最悪の場合事業継続が不可能となってしまう可能性もあります。
企業買収で新たな後継者に事業を承継することで、従業員や取引先への影響を最小限に抑え、迷惑をかけずに引退することができます。
ただし、買い手企業側からすれば、企業買収の目的は人材の確保ではなく、単に売り手企業の事業や既存の顧客である可能性も考えられます。
そのため、売り手企業側が従業員の雇用を守りたい場合は、売却の条件に、自社の従業員を買い手企業に雇い入れることを明示しておきましょう。
メリット③売却による金銭的収入
企業買収により、会社の全て若しくは事業の一部を売却した場合の対価として、売り手企業は買い手企業から現金若しくは新株式の発行などの形で支払いを受けます。
もし、自社が負債を生み出す事業を抱えていた場合、この譲渡金を使って事業を立て直せるのです。
また、廃業・清算する場合、有形資産を処分する費用や、解雇する従業員への補償、税務処理の依頼費用など、多くのコストがかかります。
しかし、売却してしまえば、これらのコストはかからないことになります。
さらに、獲得した現金を、残っている借入金の返済や、引退後の生活資金に充当し、経営者としてハッピー・リタイアが可能となるでしょう。
もちろん、企業価値が高く評価されればされるほど、享受できるメリットも大きくなります。
メリット④経営者の責からの解放
特に中小企業においては、経営者やその家族が、金融機関借入の連帯保証を負っていたり、個人資産を担保として提供していたりする場合が多くあります。
企業買収の成約によって経営権が買い手側に移動すれば、これらの連帯保証や担保提供は解除されるのが一般的です。
また、経営者は歳を重ねるにつれ、事業の承継や自身の健康面などへの不安を抱え、それがプレッシャーとなってしまうこともあります。
しかし、企業買収すれば、そういった経営者の責から解放され、リタイア後の生活を楽しむことができるのです。
メリット⑤事業の成長・発展
企業買収により会社を売却すれば、売上アップやコストダウンなど、買い手側との間で事業上のシナジー効果が期待でき、事業のさらなる成長・発展を実現することができます。
また、自社よりも規模が大きく堅実な企業の傘下に入り、その企業が持つ資本やインフラを活用できれば、円滑な資金調達や生産体制の強化、販路の拡大など、自社の弱点を補い、激化する市場競争に勝ち残ることが可能となります。
もし、先行に不安がある事業であれば、企業買収により従業員に安心や希望を与えることもできるのです。
メリット⑥独立した経営の継続
企業買収は、合併と違って消滅会社はありません。
したがって、売り手企業は買収の実施に影響を受けることなく、買収後も独立した経営を継続できます。
メリット⑦経営の健全化
赤字に陥っている会社ならば、買収を検討している企業へ売却を持ちかけるのもいいでしょう。
業績不振で赤字となった企業を買収すると、買収する側の企業も黒字を抑えられ、節税ができます。
買収する企業の傘下に入り支援を受ければ、経営を健全化できる効果が期待できるでしょう。
企業を買収するデメリット(買い手側)
買い手側から見た、企業買収のデメリットは、以下の6項目です。
デメリット①期待したシナジー効果が得られない可能性
企業買収において買収する企業を選ぶ場合、買収後にどれだけの利益が見込めるか、またどのくらいのシナジーが見込めるかを想定して、買収対象企業の価値を算出し、買収価格を決定します。
ところが、いざ買収してみると、期待したほどの利益が上がらない、思ったよりコストが削減できない、業務統合に想像以上の時間がかかる、などの理由から、シナジー効果を充分に発揮しないというケースも発生するのです。
さらに、シナジーが発生しないだけでなく、企業買収により事業規模が拡大した結果、会社を維持するための固定費や管理コストが膨らみ、キャッシュフローが悪化するケースも想定されます。
デメリット②簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性
会社を丸ごと買収する場合、簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性があります。
簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務であり、未払いの賃金や賞与、退職金、債務保証、回収見込みの低い売掛金などのことです。
一方、偶発債務とは、現時点ではまだ債務となっていないものの、今後債務となる恐れがある要素のことで、顧客とのトラブル、環境汚染など、訴訟により損害賠償を背負うリスクのことを指します。
簿外債務や偶発債務を引き継ぐと、買収後に多額の負債や損失を抱えるリスクがあるため、事前にディーデリジェンス(企業調査)を入念に行うことが重要です。
また、事業のみを譲り受けることで、これらのリスクを低減することも可能です。
デメリット③経営統合(PMI)の多大な負担
PMI(Post Merger Integration=買収後の経営統合プロセス)とは、買収後に売り手と買い手の経営を統合する作業です。
PMIでは、管理体制や経理・財務はもちろん、人員配置や人事制度、労働条件など、あらゆる項目をグループの方針に合わせて一つに統合する必要があります。
特に、人事制度や労働条件などの変更は、売り手から引き継いだ従業員の離職を招くリスクがあるため、慎重に実施する必要があります。
また、異なる環境で働いていた社員に対して、自社の社風を浸透させるのは、決して容易ではありません。
これらがうまくいかないと、シナジー効果が発揮されない可能性が高くなります。
デメリット④優秀な人材の流出
買収後に、売り手企業側の優秀な人材が離職するケースや、そもそも移籍を拒否するケースもあります。
優秀な人材の流出は、企業買収によって労働環境や評価制度などが変わることにより、売り手企業の従業員が不満を抱き、モチベーションの低下を招いてしまうこと、派閥ができて社内の空気が険悪になること、買収元に在籍する社員とのトラブル、などが原因となって生じます。
企業買収の目的の一つは、優秀な人材や技術の取り込みによる自社事業の強化でもあるため、人材の流出は大きな損失になります。
デメリット⑤「のれん」の減損リスク
「のれん」とは、買収価格のうち、売り手企業から取得した時価純資産を超える部分の金額を指します。
バリュエーション(企業価値評価)では、単に買収先が所有する有形資産に金額をつけるだけではありません。
目に見えない無形資産にも着目し、有形資産の時価に上乗せする金額を「のれん」というのです。
無形資産とは、買収先の顧客リストや有望な取引先との契約、研究・開発・技術力、事業ノウハウ、知的財産、さらに事業統合後のシナジーまで含まれます。
こののれんは、連結財務諸表を作成している場合はのれんとして資産計上され、作成していない場合は取得価額に含まれた状態で計上されます。
のれんは、毎年減価償却処理をする必要がありますが、買収当初に想定していた事業の収益力が低いケースや、想定していなかった事象が生じることで業績が悪化した場合には、のれんの償却によって利益がマイナスになってしまうことがあるのです。
また、投資として企業買収にあてた費用が回収できないと見込まれる場合、回収不能額はまとめて「減損損失」として計上することになり、経営に与えるダメージはかなり大きいと言えるでしょう。
デメリット⑥複雑な手続きの煩雑さ
買収は、成約するまでの各プロセスにおいて、色々な手続きがあり、煩雑で大きな手間がかかります。
売却側と交渉を開始しても、基本合意書・最終契約書などの書類作成や、デューデリジェンスと呼ばれる企業調査など、買収側が行うべきプロセスは多いです。
また、成約後にクロージングを実施するにあたっても、会社法で規定されている各種手続きを行う必要があります。
このため、自社のみで各手続きを進めるのは困難であり、買収仲介会社などの専門家のサポートが必要になります。
この場合、買収とは別の費用が発生するので、それも計算に入れておかないと、思わぬ損失が出ることもあるでしょう。
企業を買収するデメリット(売り手側)
売り手側から見た、企業買収のデメリットは、以下の4項目です。
デメリット①最適な買い手企業が見つからない可能性
企業買収において、売り手企業が買い手企業を見つけるのは、決して簡単ではありません。
仲介会社に依頼したとしても、スムーズに買い手企業が見つからないケースが多々あり、特に経営難から自社の売却を考えている企業ほど、ネックとなるデメリットでしょう。
また、買い手となる企業が見つかったとしても、希望価格で実行できないケースもあります。
企業買収の金額は、「将来的にどれだけの収益を見込めるか」という企業価値で評価されるため、たとえ現在うまくいっている事業でも、今後頭打ちになると判断されれば、企業価値が低く評価される可能性があるのです。
そのため、希望価格で買収してくれる最適な買い手企業が見つからない可能性は大いにあると言えるでしょう。
デメリット②経営に関する権限の縮小
企業買収により大企業の傘下に入った場合、売り手企業にとっては経営者の権限が小さくなることがあります。
経営統合後は、経営方針、目標利益額、予算配分などから社内人事に至るまで、買い手企業の方針に従う必要が出てくるでしょう。
売り手企業の経営者が、経営統合後もある程度の影響力を残したい場合、買収成立前の交渉段階で、多少の譲歩を引き出せる可能性はありますが、売り手企業は基本的に立場が弱いので、あまり現実的ではありません。
デメリット③取引先との関係悪化
企業買収により別の企業の傘下に入った場合、事業内容や契約内容に大幅な変更が生じると、取引先との関係が悪化する場合があります。
信用力の高い大手が買収した場合であっても、契約内容の大幅な変更により以前より不利な取引条件になったりすると、取引から大きな反発がおこり、最悪、契約打ち切りになってしまう可能性もあります。
そのため、買収後も以前と同じ条件か、取引先が有利になる条件を提示しないと、取引先との契約の継続は困難であると言えるでしょう。
デメリット④経営方針の不本意な変更
買収された以上、経営権は買収をした企業にあります。
とはいえ、不本意な経営方針の変更を余儀なくされると、経営者だけでなく、従業員の不満も増大してしまうでしょう。
それは従業員の反発やストレスも招き、優秀な人材の流出につながる可能性もあります。
したがって、売り手企業は、買収側との統合の段階で、自社の方針や希望をはっきり告げて、買収側から認めてもらうことが大切です。
そうしないと、統合プロセスが失敗に終わる可能性も出てきます。
メリット・デメリットをしっかり把握し、目的と戦略を明確にしよう
以上、企業買収のメリット・デメリットを、買い手側と売り手側から見てきました。
企業買収はうまくいけば双方にたくさんのメリットをもたらしますが、逆に失敗すれば双方に多大な損失を招きます。
こうしたメリット・デメリットをしっかり把握し、予め買収する目的と戦略を明確にし、リスクには予め解決策を検討しておくことが重要です。
こうした点を踏まえ、企業買収を検討する場合には、M&A仲介会社や、M&Aアドバイザーなど、専門家に一度相談してみるのが得策と言えるでしょう。
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