【投稿日】 2018年8月7日 【最終更新日】 2021年10月21日

いじめ問題を刑事事件として捉え、実際にいじめ加害者を刑事告訴するケースが増えています。その背景にあるのは、子ども同士のケンカと認識するにはあまりにも陰湿・悪質ないじめが増えてきたという状況です。

  • いじめで片付けてしまうのは目に余る怪我をさせられた
  • 組織的な恐喝で子どもが怯えている
  • いじめ加害者の認識に問題がある

こうした状況を打開するためには、いじめを刑事事件として立件し、いじめ加害者とその保護者の認識を改めさせる必要性があります。いじめ問題を刑事事件として告訴するためにはどのようにすれば良いのか、具体的な方法を詳細に解説していきます。

いじめ被害のほとんどは刑法に触れる犯罪である

いじめを刑事事件として告訴することの最大のメリットは、いじめが犯罪であることを認識させることが出来るという点です。

残念ながら、そこまでしなければならないほど罪の意識が薄れているのが、現代社会においてのいじめ問題なのです。いじめに対する子どもたちの考えやその保護者が持っている認識の甘さをひもときながら、いじめを刑事告訴する意味を考えていきましょう。

いじめが犯罪だと認識させるために刑事告訴する

  • 笑いながら言えば「死ね」「ブス」「殺す」と言っても問題ない
  • 「◯◯ごっこ」と名前をつけて遊びにすれば集団暴行にならない
  • 本人の許可なく個人情報を写真付きで出会い系サイトに登録しても良い
  • チャットグループ内の画像や情報は個人情報に入らない
  • 自分が楽しいのだから相手が嫌がってる方がおかしい

これらはすべて、実際にいじめ問題に取り組んだ被害者の親が、いじめ加害者の子供やその保護者に言われた意見です。実はこのような加害者側の意見は大変多く、それが元で問題解決が長引くことも少なくありません。

例え相手が遊びのつもりであったとしても、被害を受けたお子様やそのご家族にとっては大変心の苦しい問題です。いじめ加害者を刑事告訴するということは、いじめが犯罪であることを認識させる上で大きな効果を期待できます。

いじめ問題解決をはばむ主観的考えの差を刑事告訴で埋める

いじめ問題の話し合いで一番揉めるのが、いじめに対する主観的な考え方の差です。

  • 通り過ぎざまに頭を叩くのは挨拶
  • 背負ったランドセルを掴んで引き倒してもそれは遊びである
  • 相手が泣くまで冷やかして不登校になっても、それは学校に来ない方が弱いだけ
  • 子どもが階段で突き落とすなんてよくあることだから親に言いつける方がおかしい
  • 同級生同士なんだからメアドや携帯番号を勝手に教えても問題ない

地域同士の繋がりや付き合いの長さによって、なんとなく確立されてきた「いじめの線引き」はただの慣習であり、決して一般的な常識とは言えません。しかし、この主観的な考えを平気で押し通す人も少なくないため、違う考えを持つ当事者同士で話し合いをしても平行線を辿ることも多いのです。

刑事告訴をすることで、こうした主観的考えの差を刑法にのっとった形で埋め、法のもとに平等な立場からいじめ問題を解決することも一つの方法です。

犯罪性が高い場合はより早い対応が必要となる

中学生や高校生になってくると、犯罪であることがわかった上でいじめを行うケースがあり、それがエスカレートして取り返しのつかないことになることもあります。

  • 万引きの強要
  • 組織的な売春の強要
  • 暴力事件への関与
  • 金品の要求
  • 強姦やわいせつ行為の動画撮影

こうした犯罪行為は、すでにいじめで片付けられるものではありません。これは実際にあったケースですが、本人に無断で出会い系サイトに顔写真を乗せて同意と見せかけ、電車内で痴漢行為を行おうとしたところを寸前で食い止めたという例もあります。

大切なお子様を守るためには、このような犯罪性の高いいじめに対して早い段階から刑事告訴する準備を進め、いじめ加害者の逮捕・補導を要求することが大切です。未遂で終わったとしても、犯罪行為となるいじめを計画した段階で逮捕・補導の対象となりますので、いじめの内容に危険を感じた時には、躊躇せず警察へ相談するように心がけましょう。

いじめ被害を刑事告訴するまでの流れについて

いじめ被害を刑事事件として訴えたいと思う反面、その流れがわからず悩む保護者の方も多くいらっしゃいます。

  • 証拠がないと話を聞いてもらえないのではないか
  • 警察に行っても本人同士でと言われるのではないか
  • 警察に行く前にどのような準備をすれば良いのかわからない

近年のいじめ問題の深刻さを受け、各都道府県の警察ではいじめ相談の窓口を設置しているところも多くなってきましたが、刑事告訴するまでの流れが分かっていると、刑事事件として立件するまでがよりスムーズになります。

具体的にどのような準備をしながらどのように相談していくのか、その詳細を詳しく解説していきます。

被害届の提出や告訴・告発が受理されると捜査が開始される

いじめ被害を刑事事件として警察に申し出る場合、主に三つの方法があります。

被害届の提出

被害を受けた者が、その内容を捜査機関に申告するのが被害届の提出です。警察署や交番に常備されている書類に必要事項を記入して証拠などを提出し、受理されると捜査が開始されます。

告訴

被害を受けた者や法定代理人が、加害者に対し処罰を求めて捜査機関に申告するのが告訴です。確実に犯罪が行われたことがわかる証拠などがなければ受理されることが難しいため、告訴したい場合には弁護士などに相談するのが一般的です。

告発

被害を受けた本人及び法定代理人以外の第三者が、犯罪が行われたこと捜査機関に申告するのが告発です。こちらも確実性が問われるため、より明確な証拠があることが重要となります。

いずれの方法でいじめ被害を報告する場合でも、証拠の有無が受理されるかどうかを左右します。いじめ被害があるとわかった段階で、どのように些細な証拠であっても物品をとっておいたり音声や画像などの記録を行い、警察に届け出る際に証拠も提出出来るよう準備をしておきましょう。

裁判所に提出するための証拠集めが行われる

警察に届け出が受理されると捜査が開始され、裁判で有罪となる証拠を集めることになります。被害を届け出た時に提出された証拠は勿論ですが、より確実に有罪である証拠が必要となるのです。

  • いじめ加害者を特定出来るだけの証拠
  • いじめ被害が犯罪であることの証拠
  • いじめ加害者が処罰されることが確定となる証拠

証拠集めはご自身で行うことも出来ますし、警察の捜査によってより明確な証拠を集めることも勿論可能ですが、探偵事務所により集められた証拠を報告書として提出することで一連の流れがスムーズになり、加害者の逮捕・補導もその分早く行われます。冤罪となり逆に訴えられる可能性を防ぐためにも、証拠集めは慎重に行うようにしましょう。

犯罪性が認められた場合にはいじめ加害者が逮捕・補導される

警察による捜査が行われ、集めた証拠を元に裁判所が判断して令状が出されると、いじめ加害者が逮捕・補導されることになります。

逮捕の令状は裁判所から出されますが、実際に令状を請求したり逮捕を行うかどうかは警察の判断に委ねられることになります。この段階で気をつけなければいけないのは、いじめ加害者側が示談を申し入れる場合です。

  • 慰謝料や反省文といった示談を申し入れられる
  • いじめ被害者側の落ち度などを理由に被害届の取り下げを要求される
  • 反省をうながし更正することを条件に被害届の取り下げを願い出る

前科がつくことを恐れ、加害者側からこうした示談が警察を通して申し入れられることも少なくありません。もしこのような示談が来た場合にはどのようにしたいか、ご自分では判断が難しい時には弁護士などの専門家とよく相談して決めるようにしましょう。

いじめ問題を刑事告訴する時の注意点

いじめを犯罪として刑事告訴することは、いじめ加害者に事の重大さを示すために大変有効な手段です。しかし、せっかくの刑事告訴もちょっとした不注意から思うような結果に繋がらなくなることもあります。

いじめ問題を刑事告訴する時にはどのような点に注意すれば良いのか、その詳細をみていきましょう。

被害届を簡単に取り下げない

被害届は一度取り下げてしまうと、二度と同じ案件で訴えることが出来ません。

実際に示談に応じて被害届を取り下げた人の例をみてみましょう。

  1. 子どもが学校でいじめを受け怪我をしたので被害届を提出。
  2. 警察に受理され捜査の結果いじめ加害者が逮捕・補導されることになった。
  3. 加害者の保護者が慰謝料と誓約書を書くという示談を申し入れてきた。
  4. 被害者側は示談を受け入れ被害届を取り下げた。
  5. ところが加害者は再びいじめを行い被害者に苦痛を与えた。
  6. その旨を再び警察に訴えたがすでに被害届が取り下げられており、継続した同じ案件としては扱えないと言われた。
  7. 被害者側は弁護士に相談し、別件となるよう再び証拠集めを行い、ようやく被害届が受理されて加害者が逮捕・補導されることとなった。

このように、加害者側が反省したように見えたとしても再びいじめを繰り返す恐れがある場合には、被害届を取り下げてしまうと再度同じ案件で被害届を出すことは不可能となってしまいます。判断が難しい場合には弁護士とよく相談し、被害届を取り下げるかどうかを決めるようにしましょう。

専門家への依頼も視野に入れる

刑事事件として訴える場合、複雑な手続きや警察とのやり取りをすべて行わなければならなくなります。また、いじめの被害届を確実に受理してもらうためには、確実性のある証拠を集めることも必要です。

いじめ被害者であるお子様のケアをしながら、日常生活の中でこれらの作業を行うことは大変な重責となり、場合によっては保護者の方が精神的に苦痛を感じることも決して少なくありません。

  • 弁護士に相談をして代理人になってもらう
  • 探偵事務所に依頼して証拠集めを行う
  • いじめ問題を扱うNPO団体などに相談をしてみる

いじめの被害届を出すことがゴールではなく、いじめ問題が決着して安心した生活を送れるようになることが本当のゴールです。すべて自分で行わなければならないと気負わず、専門知識のある人たちの力を借りながら、問題解決に向けて行動することも大切です。

感情にまかせて行きすぎた行動を取らないようにする

大切なお子様がいじめの被害にあった時、強い怒りを感じるのはご両親や保護者の方にとって当たり前の感情です。しかし、その勢いに任せて行きすぎた行動をとってしまうと、逆に被害者側が不利となり刑事告訴できなくなることもあります。

  • いじめ加害者を実名でネット上に公開する
  • 証拠集めを行うために法律違反となる行為を行う
  • 守秘義務のある情報を不特定多数の人に流す
  • 加害者本人やその保護者に暴行を加える
  • 加害者とその保護者が住む地域に誹謗中傷のビラを配る

せっかく集めた証拠や刑事事件として訴えるために行ってきた準備も、間違った行動一つですべて水の泡となってしまいます。冷静さを心がけ、本来の目的である安心した生活へ向けて落ち着いた行動を取るようにしましょう。

まとめ

いじめ問題を刑事事件として告訴するための方法について、詳しく解説しましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容をまとめてみましょう。

  • 刑事事件として訴えることで、いじめが犯罪であることを加害者側に明確に伝え、いじめがエスカレートしていくことを防ぐ事が出来る。
  • 刑事事件として訴えるためには、まず警察に被害届の提出や告訴・告発を行う。
  • 被害届や告訴・告発を受理してもらうためには、証拠集めが重要である。
  • 一度被害届を取り下げると二度と受理してもらえないので、示談を申し入れられた時には慎重に判断しなければならない。
  • 弁護士や探偵事務所といった専門家への依頼も視野に入れ、精神的な負担を減らすことも大切である。
  • 感情的にならず落ち着いて行動し、被害者側が不利にならないよう冷静に準備を進める。

いじめ被害者とそのご家族の安全を確保するためには、警察の力を借りる必要性も出てきます。いじめ問題を刑事告訴することは、決して大げさな話ではありません。冷静に状況を判断し、専門家の意見なども取り入れながら準備を進めていきましょう。

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