【投稿日】 2018年8月4日 【最終更新日】 2021年10月21日

いじめにより受ける被害は、物理的な損害から精神的な苦痛まで幅広く存在します。それらをお金に換算することは大変難しいですが、民事訴訟という形でいじめ加害者や問題を放置した学校側を訴えることで、いじめ問題の責任追及を行う方も増えてきました。

もし民事訴訟を起こしたいと思ったとき、どのような行動を起こせばよいのでしょうか。いじめによる被害の民事訴訟について、準備する項目や手順を詳しくご説明していきます。

いじめで受けた被害を民事で解決する方法とは

民事訴訟による責任追及では、いじめを受けたことによる被害を損害賠償や慰謝料の請求という形で行うことになります。したがって、誰にどのような内容の要求を行うのかという点をはっきりさせることが不可欠です。

具体的に誰を相手にするのかを例にしながら、その内容を詳しく解説していきます。

いじめ加害者に損害賠償・慰謝料を請求

いじめ加害者本人に対し、損害賠償や慰謝料を請求する方法です。

いじめという不法行為を行ったことと、それによる損害を弁償しなければいけないということを認識出来る能力(事理弁識能力)がある相手であれば、未成年であっても請求する事は可能です。一般的には小学生であっても認識能力はあるとされているので、いじめ加害者が小学校以上の年齢であれば訴えることは可能ということになります。

しかし、認識能力があることと請求された金額を支払う能力があるかどうかはまた別の問題です。

  • 加害者が義務教育の年齢で働いていない
  • 加害者が高校生で働いていない
  • 加害者は成人しているが大学生で働いておらず収入がない
  • 加害者の認識能力に問題がある
  • 加害者本人が払うだけの能力がない

このような例の場合、訴えることは可能でも請求された金額を支払う能力がないため、民事訴訟を起こしても無駄に終わってしまいます。未成年でもすでに就職しており支払い能力がある場合をのぞき、いじめ加害者本人への損害賠償・慰謝料請求は注意が必要です。

いじめ加害者の保護者に損害賠償・慰謝料を請求

支払い能力がないいじめ加害者本人に代わり、いじめ加害者の親権者や保護者に対して損害賠償・慰謝料を請求する方法です。

未成年のいじめ加害者に対し、その親権者や保護者は監督義務を負っています。その義務を怠ったことによりいじめが発生したという因果関係を立証した上で、いじめ加害者の親権者や保護者に対して損害賠償・慰謝料を請求します。

  • いじめ加害者に非行歴があるかどうか
  • いじめ加害者の学校や公共の場での態度
  • いじめ被害者からいじめ加害者の親権者や保護者に対して改善の申し入れをしたか
  • いじめ被害者が学校にいじめ問題を相談したか
  • 学校側からいじめ加害者への指導があり、親権者や保護者がそれを認識していたか

簡単に言うと、「いじめがあった事を把握していたのに対処が不十分であった」という点を立証した上で、加害者の親権者や保護者を訴えるのです。これを行うために必要となるのは、いじめ加害者の特定や早い段階からの学校への相談、そして証拠集めといった地道な努力です。

いじめ問題を放置した学校に慰謝料を請求

学校は生徒・児童が安全に過ごせる場所でなければなりません。いじめといった不法行為などによりその安全が脅かされ、学校がきちんとした対応をしなかった場合、安全配慮義務違反を犯したとして債務不履行を理由に学校を訴えることも出来ます。

  • いじめにより怪我をしたがいじめ加害者を別室指導するなどしなかった
  • いじめの事実を被害者側から相談されていたのに放置した
  • いじめ問題をなかったものとして隠蔽しようとした
  • いじめ問題を相談した後も加害者による被害が続いていた
  • 明らかないじめ行為を担当教職員が無視していた

このような事実がある場合には、学校が安全配慮義務を怠ったことによる損害賠償・慰謝料の請求を起こすことが出来ます。いずれの場合においても必要となるのは、「学校側がいじめを把握していたのにたいしょをしなかったという証拠」です。

  • 被害者側からの申し入れを記録したメモ
  • 学校側と話し合いをしている内容を記録した音声
  • メールでのやりとり
  • 連絡帳による記載
  • 相談した担当教職員や対応にあたった教職員の名前

いじめの事実が発覚した早期から、相談の記録を細かく残しておくことが重要となってきます。

いじめ被害で民事訴訟に至るまでの流れを知っておく

民事訴訟を起こすということに対し、日常生活からあまりにもかけ離れているためなかなか決心がつかないという方も多くいらっしゃいます。その一番の原因となっているのは、どのような流れになるのか掴めていないという点ではないでしょうか。

もしいじめ問題で民事訴訟を起こす場合、一体どのような流れとなっているのか、実際に訴訟を起こした人たちを例にして詳しくみていきましょう。

加害者側や学校に対して内容証明郵便を送る

内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の書類を送ったか」を郵便局に証明してもらえる配達物です。一般的には弁護士や行政書士などに内容証明書類を書いてもらい、それを加害者側や学校に送るようにします。

  • 書類を受け取っていないと言えない状況を作る
  • 法律家の名前による書類を送ることで事の重大さを伝える
  • 加害者側や学校へ心理的プレッシャーを与える

多くの場合、法律家の名前が書かれている書類を受け取ることでようやく事態の重さを理解し、それまであやふやにしていた態度を改めることも少なくありません。

  • 加害者側の態度が悪い
  • 学校側の対応が悪くはぐらかされる
  • 話し合いはしているが状況が変わらず進展しない

出来れば穏便に済ませたいと思う気持ちが働いている相手だと、被害者側の切実な悩みをまともに受け取ってもらえず、直接被害を受けているお子様やそのご家族の精神的負担が増えることも少なくありません。

法律に訴えることも辞さない、その表れである内容証明郵便は、ともすればうやむやにしようとする相手を逃がさない上でも大きな効果を発揮します。

加害者側や学校と民事調停を行う

内容証明郵便を受け取った後、多くの場合は当事者同士で話し合って示談とするか、裁判所に出向いて調停員を交えた民事調停を行います。

  • これ以上公にしたくない
  • 裁判を起こすと時間がかかるのでその間のいじめが心配
  • 裁判となった時の費用の問題

いきなり裁判にしない理由は様々ですが、基本としては「いじめ問題の当事者間で結論を出す」ことが大きな目的です。

被害者側としては、いじめがなくなり謝罪の意味で損害賠償・慰謝料請求が通れば当事者間の話し合いでも良いのですが、加害者側の対応次第によっては話し合いが長引くことも少なくありません。民事調停による話し合いが進まない場合には、民事裁判へ発展することになります。

民事調停で解決しない場合には訴訟を起こす

加害者側への通達→当事者間での話し合いで結果が出ない場合は、民事事件として加害者側を訴える民事訴訟を起こします。お互いの主張の食い違いやあやふやな部分を、それぞれから提出された証拠や証言を元に法律と照らし合わせ、司法の観点から結論を出すのです。

  • 不法行為にあたるいじめであるかどうか
  • 加害者側に責任があるかどうか
  • 証拠に偽りがないかどうか
  • 請求内容の正当性
  • 請求金額の妥当性

知っておいて頂きたいのは、民事訴訟は「双方を平等に法律で判断する」という点です。

いじめを受けたと感じていても、法的に正当性がないと判断された場合、請求が通らなかったり一部要望が変更されて判決が出ることもあります。このような状況を回避するために重要となってくるのが、裁判でも有効と判断される証拠を集めることになるのです。

民事訴訟はいじめとの因果関係を証明することが重要となる

民事訴訟でいじめ被害者側の請求を全面的に支持してもうらうためには、いじめを原因とした被害であることを証明する必要があります。

  • いじめにより物品を壊された
  • いじめが原因で怪我をした
  • いじめ問題で精神的疲労が重なり病気になった
  • いじめがなければ学校に通えたのに不登校となった
  • いじめが起こったため金銭的被害を受けた

このような状況を説明して納得をしてもらうために必要なのが、いじめの証拠です。ではどのような証拠を集めて訴訟に備えれば良いのか、その詳細をみていきましょう。

いじめの証拠は可能な限り集めておく

いじめ問題が発覚した時、最初から裁判を意識する人は多くありません。また、どのような証拠であれば裁判で認められやすいのか、すぐに判断出来る人も少ないのではないでしょうか。

どのような証拠が有効であるのかという点を考え過ぎてしまうと、かえって証拠集めが難しくなってしまいます。まずはどのような小さな証拠であっても可能な限り集めておき、弁護士や行政書士・探偵事務所などに相談して判断してもらうのも一つの方法です。

  • 壊されたり汚された所持品の保管
  • いじめを受けた日付と内容を詳細に記載したメモ
  • いじめによる怪我の状況を記録した画像
  • いじめを原因とした診察の診断書
  • 髪の毛を切られた時の姿を収めた写真
  • いじめの現場をおさえた画像
  • いじめの状況を録音した音声
  • いじめ被害を訴えた時の加害者側の対応を記録したメモ
  • 話し合いの状況を録音した音声
  • いじめ問題を学校に相談した日付と話し合いを記録した音声やメモ
  • いじめ発言ととれるメールやSNSなどのデータ
  • いじめ現場を目撃した人の証言

この他、いじめに関係すると感じたものはすべて証拠として記録・保管しておき、それらを持って専門家に相談してみるのも良いでしょう。

個人での調査が難しい場合は探偵事務所に相談する

証拠集めは被害者のお子様本人やその保護者の方々によって行われますが、場合によっては証拠を集めることが難しい状況もあります。

  • 日常生活で四六時中お子様を見守ることが出来ない
  • いじめ加害者の近辺を調べることが困難
  • 音声を録音しようとしたがうまくいかない
  • お子様を刺激しないようこっそり証拠集めをしたい
  • インターネット上の誹謗中傷を見つけることが難しい

このように、個人で証拠を集めることに限界がある場合には、調査の専門家である探偵事務所に相談をしてみるのも良い方法です。どのような証拠があると裁判で有効となるのか、その内容や調査方法のアドバイスをもらえることもありますので、まずはメールや無料相談窓口などを利用してみましょう。

専門家と相談しながら準備を進めていく

損害賠償・慰謝料請求といった民事訴訟による責任追及は、多くの法律的知識と時間が必要となります。とくに民事調停や民事訴訟は「裁判所から指定された日時に出廷しなければならない」ため、時間的拘束や仕事の調整などで精神的に大きな負担となる方も多くいらっしゃいます。

  • 被害者家族の代理人として弁護士に依頼する
  • いじめ問題の裁判で有効な証拠を探偵事務所に集めてもらう
  • いじめ加害者側への法的文書を行政書士に依頼して内容証明郵便で出してもらう

専門の知識と経験のある専門家に代理で動いてもらうことで、いじめ被害をうけたお子様やご家族の負担を減らすだけでなく、訴えるために必要な準備をより確実に進めていくことが出来ます。

ご家族だけで無理をなさらず、状況をみながら専門家に相談することも視野に入れて、民事訴訟の準備をするようにしましょう。

まとめ

いじめによる被害の民事訴訟について、詳しくご説明しましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度、内容を振り返ってまとめてみましょう。

  • 誰に対してどのような内容の訴訟を起こすのかをはっきりさせる
  • 多くの場合は内容証明郵便→民事調停→民事訴訟という段階で話が進む
  • 裁判所は被害者と加害者双方を平等に司法的立場から判断する
  • 裁判所で有効となる証拠集めが重要である
  • 個人で準備をするのが難しい場合には専門家に相談・依頼して負担を減らす

ただでさえいじめ被害により精神的負担を強いられているお子様やご家族にとって、法律や証拠という単語はとても重く感じてしまうかも知れません。

しかし、現代の悪質ないじめに対して法的手段を講じることは決して大げさなことではなく、ごく当たり前の権利なのです。周囲の方々や専門家の力を借りながら、一つずつご自身の出来るところから始めてみましょう。

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