【投稿日】 2018年6月5日 【最終更新日】 2021年10月21日
いじめを行った加害者に対し、何かしらの責任追及をしたいと思う気持ちは、いじめ被害を受けたお子様やその保護者の方にとってごく当たり前の心境です。
- 責任の追及先をはっきりさせたい
- 相手が逃げられないように準備をしたい
- 納得のいく結果を出したい
しかし、いざ各方面へ責任追及の手を伸ばそうと思うと、対応をたらい回しにされたりはぐらかされることも少なくありません。このような状況にならないようにするためにはどうしたら良いのか、実際にいじめ問題の責任追及を行った方々の具体的な例を挙げながら、詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
いじめ被害の責任追及として実際に起こっているケースとは
いじめ被害を受けた時、一番最初に考えるのは「誰にどのように訴えれば良いのか」という点ではないでしょうか。問題を早急に解決するためには、原因となっている点をはっきりとさせて的確に訴えることが必要です。
しかし、現代社会におけるいじめは人間関係も複雑化しており、原因と考えられる相手が複数存在するためなかなかはっきりと責任追及することが出来ません。
そこで、まずは具体的にどのような責任追及の方法があるのか、訴える相手と責任追及の方法別に詳しくみていきましょう。
いじめ加害者を刑事事件として立件する
いじめという表現でオブラートに包まれていますが、刑法に当てはめるといじめ行為のほとんどは犯罪になります。
- 持ち物を壊される → 器物破損
- 黒板や掲示板などに悪口を書かれる → 名誉毀損
- 無許可でネット上やチャットグループ内で写真を回される → 個人情報保護法違反
- 嫌がっているのにヘアメイクをすると言って髪の毛を切る → 傷害罪
- 持ち物を取られたり持ち帰られる → 窃盗罪
- 「お金を持ってこい」と言われる → 恐喝罪
- 乱暴な遊びに強制的に付き合わせて怪我をさせられる → 暴行罪
基本的な考え方としては、いじめ被害者が嫌がっているのに強制的に行われている行為のほとんどが犯罪になる可能性があります。その中でも、暴行・障害・恐喝といった行為はエスカレートする傾向が強く、最悪の場合取り返しのつかない事態となることも少なくありません。
いじめ被害を確認したら、すぐに詳細な日時やいじめの内容・いじめの証拠となるものを集めておき、警察に相談するようにしましょう。
いじめ被害で受けた損害賠償や慰謝料を民事事件として加害者側に請求
いじめを受けたことによる被害をお金に換算し、損害賠償や慰謝料という形で民事訴訟を行う方法もあります。
- いじめにより汚されたり壊された物を弁償してもらう
- いじめを原因とした通院に掛かった費用の請求
- いじめが起こったことで保護者が仕事を休まざるを得なかった分の金額を請求
- いじめ問題で学校に行けなかった間の授業料や給食費などの請求
- いじめによる精神的被害を慰謝料として請求
訴訟というと身構えてしまう方も多いのですが、こうした内容はいきなり裁判で争うということはなく、最初は内容証明書を弁護士や行政書士を通して相手側に送るというケースがほとんどです。その上で話し合いが行われ、相手が納得しなかったり話し合いが決裂した場合には裁判で争うことになります。
しかし、普段法律と接する機会がない人たちにとって「弁護士」「行政書士」の名前が書かれた内容証明書が届くことは大変がインパクトがあり、事の重大さを示すという点で大きな効果があります。
教職員の処分要求
いじめ問題は、児童・生徒に限ったことではありません。学校の教職員の対応が明らかに不適切であったり、いじめを助長させるような対応があった場合、学校側に訴えて教職員の処分を要求するといったケースもあります。
- ひどいいじめを「子ども同士のケンカ」として隠蔽しようとする
- 教職員が児童の家庭環境で差別を行う
- 教職員が公私混同をして児童に対し不公平な態度を取る
- 部活動における行き過ぎた行為を「指導」として強要する
- 問題のある教職員に対し学校側が何の対策も行わない
現代における教職員は教育委員会を筆頭とした完全な縦社会で、報告書などの書類により教職員の質が評価され、それにより地位や給料に差が出てきます。学校や教職員の評判を明らかに悪くするいじめ問題を隠蔽するのは、このような個人的事情を多量に含んだ背景があるからなのです。
大切なお子様を守れるのはご両親や保護者の方々であり、教職員はあくまで対等の立場です。いじめに対応しない学校側に対し、教職員の処分や学校側の対策改善を要求することも大事な選択肢と言えます。
いじめ被害を認めさせるための証拠をケース別に解説
いじめ被害を加害者や学校側に認めさせるために必要なのが、いじめがあったことを裏付ける証拠です。証拠となるものは様々ですが、誰にどのように責任追及をしたいかによってその証拠も少しずつ変わってきます。では、実際にいじめ問題で証拠集めをした人たちはどのような証拠を集めたのか、各ケース別にみていきましょう。
刑事事件の場合
刑事事件の場合に一番重要なのは、いじめ加害者といじめが行われたことがはっきりとしている証拠です。実際に証拠を集めた人たちの例をみてみましょう。
- いじめ加害者の声や名前が入っているいじめ現場の音声
- いじめ加害者が映っているいじめ現場の画像
- 恐喝や万引きなどの犯罪を強要するようなメールやチャットの記録
- 「いつ」「どこで」「だれに」いじめられたかといった内容を詳細に記録したメモ
- いじめによる怪我の写真
- 誹謗中傷のメモや落書き
- 壊されたり汚された物品や洋服
この中でも特に重要なのは、いじめ加害者がはっきりと分かっている証拠です。例えば音声録音の場合でも、声で特定出来たり「◯◯君やめてよ!」と名前がはっきり入っているものだとより警察も介入しやすくなります。
ご自身で判断することが難しくても、どんな証拠が重要となるかは分かりませんので、少しでも気になったものや証言は証拠として集めておきましょう。
民事訴訟の場合
民事訴訟は「被害を金額に換算して相手に請求すること」になりますので、いじめを原因とした被害金額がはっきりとわかる証拠を集める必要があります。
- 通院した日時が記載されている病院の領収書
- 汚されたり破損した洋服や物品(購入した値段がわかるとなお良い)
- いじめによる不登校で通学出来なかった機関の定期代や授業料
- いじめ問題で仕事を休まざるを得なかった日時の記録
- いじめ問題解決のために購入した器材の代金の領収書
- いじめ問題を相談した有料機関に掛かった費用の明細書
- いじめによる精神的被害の慰謝料
簡単に言うと、いじめ問題がなければ掛からなかった費用を加害者側に請求することが民事訴訟の目的です。
精神的苦痛をお金に換算することは非常に難しいため、請求金額によっては相手側と裁判となる可能性もあります。ご自身で請求を行うことも勿論出来ますが、法律の専門家である弁護士や行政書士に依頼するとよりスムーズになり、いじめを受けたお子様やそのご家族の精神的負担を減らすことにも繋がります。
教職員の処分要求の場合
いじめ問題を放置したり隠蔽しようとした学校側に対し、教職員に何らかの処分を求める保護者の方もいらっしゃいます。
学校はある意味密閉された空間で、組織的な力が非常に強い面があります。このような場合に効果的なのは、誰が見ても明らかに不当な発言や行動を証拠として集め、学校組織の外側から行動を起こすことです。
- 子どもに対する暴言などを記録した音声
- いじめ問題を相談している間の詳細なメモ
- 教職員の普段の態度や日常的に行われていたいじめ放置の現場を抑えた画像や音声
- 教職員が行なっていた差別的態度や発言の記録
- 教職員や学校側とのやり取りを記録した画像や音声
基本的に教育委員会は学校の現場を把握出来ていないので、学校側から提出された報告書をそのまま鵜呑みにする傾向があります。
教職員や学校側の対応を改めさせるためには、このような証拠を集めて市や県の教育委員会に訴えたり、法務局に相談して法律的な揺さぶりを掛けることも視野に入れる必要性があります。
目的に合わせた適切な相談先を選ぶことが大切
いじめ問題を解決するためには、責任追及を行う相手をはっきりとさせた上で適切な相談先を選ぶことが大変重要となります。
特に法律が絡むと相談内容が複雑化し、相談する側が混乱することも少なくありません。どのようなケースにどこに相談すれば良いのか、実際にいじめ問題に取り組んだ方々を例にその詳細をみていきましょう。
いじめ加害者を刑事事件で立件する時には警察へ
いじめ加害者を刑事事件として立件したい場合には、警察署へ出向き被害届を提出する必要があります。
近年のいじめ問題は大人でも驚くほど犯罪性が高く、各都道府県の警察署ではいじめ問題の相談を受ける窓口を設けて、早期にいじめ問題を解決するようになってきました。
- 早い段階から相談を行うことで犯罪性を訴えることが出来る
- 相談する中で被害届を受理するために必要な証拠といったアドバイスがもらえる
- いざという時の連携が取りやすい
何度も警察に相談していたという事実が、後に裁判などで有利に働くこともありますので、少しでもお子様の安全に不安がる場合には警察に相談してみましょう。
民事事件として解決したい場合は弁護士や行政書士などへ
民事事件というと、慰謝料や損害賠償といった金銭に関するものがメインと思われがちですが、実はそれだけではありません。本来の目的は「二度とお子様がいじめられない状態を保つこと」ですから、法的拘束力のある文書を作成することも大変重要です。
- 慰謝料や損害賠償を請求
- 二度といじめを行わないという誓約書を作成
- 和解案を法的拘束力のある公正証書にして署名捺印
公正証書は法的拘束力が強いため、いじめの再発防止や被害者側の安心を約束するものとして大きな効果を得られます。
こうした書類を作成することも弁護士や行政書士に相談するメリットとなりますので、いじめ問題の解決方法で悩まれる時には弁護士や行政書士などに相談してみるのも良いでしょう。
いじめの証拠集めがうまくいかない時は探偵事務所へ
いじめ問題の解決には証拠を集めることが不可欠です。しかし、具体的な方法が分かっていてもなかなか集めることが難しく、ご家族だけで悩まれるケースも多く存在します。
- 日常生活の中で四六時中子どもを見守ることが出来ない
- 子どもが嫌がるのでボイスレコーダーを持たせられない
- 尾行や張り込みが難しい
- いじめ加害者を特定することが出来ない
- 何が有効な証拠となるのかがわからない
このような状態の時、証拠集めやいじめ問題解決に向けた相談が出来るのが探偵事務所です。
いじめ問題は大変デリケートなため、なかなか他の人に相談出来ずご家族が精神的に疲弊してしまうことも少なくありません。ご自分では出来ない部分を手伝ってもらうという気持ちで、探偵事務所に相談なさってみるのも良い方法です。
いじめ被害が深刻な場合には法務局へ
いじめを受けたお子様の多くが、心に大きな傷を負い肉体的にも虐げられた状態となっています。これは立派な人権侵害であり、法的に許されることではありません。
法務局ではこうしたいじめに関する相談窓口を設けており、状況によっては学校側に法的な調査を申し入れて、いじめ問題解決へ向けた取り組みを行っています。
このような学校外からの力を借りることも、いじめ問題を認めなかったり隠蔽しようとする学校には大きな働きかけとなりますので、いじめ被害が深刻な場合には法務局に相談してみましょう。
教職員の行動や言動に問題がある時には証拠を持って教育委員会へ
学校や教職員の行動・言動に問題がある時には、教育委員会へ状況を訴えて教職員に対する処分を要求することも出来ます。実際に証拠を集めて教育委員会へ訴えたケースでは、以下のような処分が下されました。
- いじめを放置した教職員の減給や懲戒免職
- いじめ放置を容認した校長の懲戒免職
- 問題の教職員を同県内から排除
学校と教育委員会は繋がりがあるため、市町村の教育委員会では動いてもらえない場合もあります。その時にはさらに上の県教育委員会へ申し出て、学校側に指導を入れてもらうのも一つの方法です。
まとめ
いじめ問題の責任追及について、詳しくご説明してきましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度、内容を振り返ってみましょう。
- いじめの責任追及としては「刑事として加害者を立件」「民事訴訟」「教職員の処分」という方法がある
- 責任追及を行う時には証拠をしっかりと集めておき提出することが大切である
- 誰にどのような責任を取って欲しいかを決めて適切な場所に相談する
どのような責任追及の方法であったとしても、最終的に望まれるのは「二度といじめに合わないための環境」です。それをお手伝いしてくれる機関も多数ありますので、ご家族だけで苦しまず、まずは相談をしてみるところから始めてみましょう。
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