【投稿日】 2022年12月5日 【最終更新日】 2022年12月7日

新しく社員を採用する時、履歴書や面接時の回答を全て本当だと信じ切っていませんか。

採用試験で経歴詐称をする人がいるとは夢にも思いませんが、時々嘘の情報で応募してくる人がいないとは言い切れません。

少しでも自分をよく見せたくて経歴を真実よりも良く書いてしまう気持ちがわからないわけではありませんが、経歴詐称は許される行為ではありません。

この経歴詐称とは一体どのような種類があるのか、発覚した際の実際の流れはどのようなものなのか、経歴詐称について解説していきます。

経歴詐称とは

経歴詐称というのは、学歴や職歴、免許取得歴、犯罪歴などについて虚偽の申告をし、隠ぺいや改ざんをすることを指します。

採用選考時に、採用されたいという気持ちから自身の経歴を良く書いてしまうということは少なくありません。

しかし、虚偽の申告で採用され、入社を果たしたとしてもその後の会社での動きで詐称がバレてしまうというケースも多いです。

企業側は、その人の言動や同僚との証言などを参考に、詐称を暴いていきます。

経歴詐称をしている人を採用してしまうと、能力に見合っていない待遇を行ってしまったり、企業としての信頼に傷がついてしまったりするので、注意しましょう。

経歴詐称の典型的なパターン4つ!

経歴詐称と簡単に言っても、いくつかパターンがあります。

詐称されることの多い経歴を4つほどご紹介いたします。

【パターン1】学歴詐称

学歴詐称は、新卒採用時の経歴詐称として最も多いものになります。

具体的な例は以下の通りです。

  • 実際に卒業したのとは違う大学の名前を偽って記載する
  • 実際に卒業したのとは違う学部名を偽って記載する
  • 最終的な学歴が高校卒業なのに大学卒業と偽って記載する
  • 留年や浪人をしているのにあたかもしていないかのように入学・卒業年度を偽って記載する
  • 大学を中退したという事実を記載しない
  • 海外などへの留学歴を偽って記載する

学歴を詐称することにより、高学歴という印象を企業側に与え、採用に有利になるという意識が働いています。

学歴詐称は、実際に卒業した大学よりも偏差値の高い大学を卒業していると偽るパターンが最も多いです。

しかし、ときどき有名大学を卒業していても高校卒業であるという風に偽ることもあり、これは逆学歴詐称と呼ばれています。

学歴詐称に関しては、会社の雇用条件をどのように公募しているのか、条件を規定しているのかによって処分の下し方が変わってきます。

採用するにあたって学歴を問わないと記載している場合には、学歴詐称が業務に影響しないと判断され、解雇処分を下せないことがあるので、注意しましょう。

【パターン2】職歴詐称

職歴詐称は、新卒ではなく中途採用などの場合に最も多くみられる詐称です。

具体的な内容としては以下の通りです。

  • 実務経験がないのにあると偽って申告する
  • フリーターの期間を隠すために退職日・入社日を偽って申告する
  • 以前に在籍していた企業を退職した日を改ざんする
  • 懲戒解雇処分などを受けている場合、それを隠ぺいして申告する
  • 前職の年収額を偽って申告する
  • 非正規雇用で働いていたのに、正規雇用で働いていたと偽って申告する
  • 非正規雇用だった期間を偽って申告する

中途採用の場合、会社にとって即戦力となる人材を見極める必要があります。

しかし、そこで職歴詐称をしている人を採用してしまうと、会社にとって不利益になりかねません。

重要な役職に就けてしまった時には、会社にとって大打撃になってしまうでしょう。

少しでも自分の経歴をよく見せようとする人がいるのも確かです。注意して見極める必要があります。

学歴詐称と同様に、必須条件などに職歴不問と記載がある場合には解雇処分が認められないことがあります。

【パターン3】免許・資格詐称

新卒採用時にも、中途採用時にも免許・資格について記載する箇所があります。

これらも経歴詐称されがちな項目となります。典型的な例は以下の通りです。

  • 国家試験を受験し、資格を得ていると申告していたのに実際には不合格であった
  • 簿記検定3級を取得していたのに、履歴書には1級取得と申告する
  • TOEICの試験で獲得した点数を水増しして申請する

取得していない資格について詐称するケースもあれば、受験して不合格だった試験を合格だったと申告するケースもあります。最も多いのは、得点や取得階級を少し多く見積もって申告するケースです。

【パターン4】犯罪歴詐称

採用面接の際に犯罪歴が明らかになってしまうと受からない可能性の方が高い為、犯罪歴を隠そうとする人が多い傾向があります。

面接を受ける人が犯罪歴を隠ぺいするのは法律的にどうなのかと思うかもしれませんが、有罪判決を受けていないものは申告しなくても良いと取り決められているため、経歴詐称という扱いにはならないこともあります。

不起訴処分になったり、起訴猶予のまま釈放されたり、公判中の事例だったりする場合には有罪という扱いにはなりません。そのため、犯罪歴については他の詐称行為とは異なる措置・考慮をしなければなりません。

経歴詐称が発覚した時の対処の流れ

では、経歴詐称が発覚した場合にはどのような手順で処分を決めるべきなのでしょうか。

企業の方針によって異なりますが、一般的には経歴詐称が発覚した場合、次のような流れで対処をしていきます。

STEP1:事実確認

もしなにかの噂を耳にして経歴詐称の疑いがある場合、まずは事実確認が必要です。

詐称されたとされる内容、採用時の資料などを元に対象人物の調査を始めます。

学歴の場合は卒業したとされている学校に事実確認を行ったり、職場の場合には前職とされている職場に聞き込みなどを行ったりします。

今までどのように業務に取り組んでいたか、成績や実績、給与などについても調査し、企業内での働きを確認します。

STEP2:本人への聞き込み

本人から、詐称の事実があるのかどうかを確認します。

ここで弁明を行う場合には弁明の余地を与えましょう。

STEP3:処分通知

処分については社内で話し合った内容を下す必要があります。

会社の規約・条件などを元に下し、重大な場合には、解雇も視野に入れましょう。

解雇には懲戒解雇と普通解雇の二種類があります。

懲戒解雇

懲戒解雇は、労働者が違法行為や非行を行った場合や、重大な規約違反をした場合に下される解雇のことを指します。

懲戒処分自体は企業によって異なります。

懲戒処分の中で最も重いのが懲戒解雇とされており、会社側から労働契約を解約する制裁行為です。

懲戒解雇は、就業規則に明記されていることが前提となっておりますので、規則に則って処分を下さなければなりません。懲戒解雇を行った場合には、退職金の支給が不要になることもあります。

懲戒解雇にする場合は、その事由が就業規則などで明記されていることが前提であり、相当の根拠を予め労働者に明示し、弁明の機会を与えることが必要です。

退職金制度がある会社の場合、退職金規定などで「懲戒解雇の場合には退職金を支給しない」と定めている場合は、退職金を不支給とすることができる場合があります。

懲戒解雇をするまえには必ず本人に弁明の機会を与えなければならず、場合によっては弁護士や警察とも連携を行う必要があります。

会社側から一方的に契約を切られる形になるものですので、慎重に行い、懲罰委員会を開くなどとし、きちんと順序だてて行わなければなりません。

経歴詐称により業務や経営に重大な影響が及ぼされる場合には就業規則に記載がなくても懲戒解雇の処分を下すこともありますが、これはきわめて稀な事例で、重大な影響を証明することが難しいとされています。

したがって、基本的には就業規則に則らなければなりません。

懲戒解雇処分を下すためには、以下の3点を重視しなければなりません。

  • 会社の経営に重大な影響を及ぼした経歴詐称であったかどうか
  • 企業内における秩序を乱し、業務に支障を及ぼしたかどうか
  • 本人の労働力を誤って評価するに値するものであったかどうか

経歴詐称が発覚すると、信頼関係が崩れ、雇用しておきたくないという意識が生まれてしまうのも事実です。

そのために経歴詐称を行った人物を就業規則に則らない形で懲戒処分としてしまうと、解雇権濫用となってしまいます。

懲戒処分・懲戒解雇処分を行う場合には慎重に取り扱う必要があるでしょう。

普通解雇

普通解雇とは、懲戒解雇と整理解雇以外での解雇処分のことを指します。

労働者の行動が原因で雇用契約が継続できない場合に解雇処分を下すものとなります。

普通解雇の場合には退職金などは通常通りに支払われるケースが多いです。

STEP4:交渉

本人が処分についてどのように考えているのか、もし不服がある場合には交渉を受ける必要があります。

内容によってはお互いに譲歩することもありますが、交渉が決裂した場合には裁判に発展する可能性があります。

STEP5:処分実行

交渉などを経て最終的に合意した処分を実行します。

経歴詐称で解雇できないケースもある!

経歴詐称は解雇できるケースと出来ないケースがあります。

解雇できないケースは、主に「業務に直接関係ない詐称の場合」「求人情報に明記されていない場合」「面接で確認していない場合」「業務成績が良い場合」などが該当しています。

ケース1:業務に直接的には関係のない物を詐称していた場合

必要のない資格を詐称していた場合には、業務に影響はないと判断されます。

例えば、調理師免許が必要ない事務業務がメインの職場で調理師免許取得と詐称した場合。解雇には至らないと判断されるケースがあります。

ケース2:募集時に求人情報に明記していない場合

企業側が採用募集を行っている際に、求人情報に必須資格や必須学歴を記載しておらず、「未経験者大歓迎」「経験者不問」と記載して募集している場合には、経歴詐称を重大な物とはみなさず、解雇には至らないケースがあります。

ケース3:面接で経歴や資格について触れていない場合

面接時に経歴や資格についての質問が面接官からされなかった場合、応募者が意図的に申告しなくても良いとされています。

質問されなかった場合には、企業側が質問を怠ったとされるため、面接時の内容についても充分注意する必要があります。

ケース4:業務成績が高く、経歴詐称が問題ない場合

学歴詐称や職歴詐称があったものの、業務成績が高く、企業に利益をもたらしていると判断された場合、経歴詐称が原因で解雇することはできません。

経歴詐称の見抜き方

経歴詐称の事実確認を行う上で必要なのが「資料の照合」と「聞き込み調査」になります。

これらを留意して、どのように見抜いていくのか、ポイントを解説していきます。

資料の照合

経歴詐称を見抜くためには、採用時の履歴書などの本人が作成した書類や、雇用保険被保険者証(前職の会社やその退職日が記されています)や源泉徴収票(職歴情報を収集することができます)を確認して本人書類との照合をとらなければなりません。

聞き込み調査

前職とされる職場への聞き込み調査を行ったり、本人の能力についての他者評価を行ったりする必要があります。

これを「リファレンスチェック」といいます。

リファレンスチェックのメリットは、前職での仕事ぶりや人柄、評価を直接確認出来る点です。

デメリットとしては個人情報を含むものになりますので、答えてもらえない可能性がある、聞いた人の主観が入っている可能性があることなどがあげられるでしょう。

本人に直接聞き込みを行うのも有効的です。前職に関わる業務的な内容を質問してみて、具体的な回答が得られなかった場合には注意が必要です。

探偵への調査依頼

お金はかかりますが、探偵など民間の調査期間に依頼するのが、経歴詐称を最も見抜ける可能性が高い方法と言えます。

探偵は、独自の情報網へのアクセスや、張り込み・尾行、聞き込み調査など、探偵業法に基づくあらゆる調査手法で、その人の本当の経歴を明らかにしていきます。

やはり、お金がかかってきてしまうので、全ての社員を満遍なく調査をするというよりは、

役員や機密情報を取り扱う重要な社員などに対してピンポイントで行うのがベストです。

経歴詐称は犯罪なのか?

懲戒処分になりかねない経歴詐称は、基本的には犯罪行為とはされていません。

虚偽の申告だけでは罪に問うことができないのが基本です。

しかし、詐称した内容によっては犯罪として扱われるものがあります。

それは、「詐欺罪」「軽犯罪法違反」「私文書偽造罪」「民事責任」の4つです。これらが犯罪としてみなされるケースを解説していきます。

ケース1:詐欺罪の場合

経歴詐称が金銭目的で行われる場合、詐欺罪に当たる可能性があります。

国家資格を持っている人には資格手当が支払われるため、資格手当目的で虚偽の申告を行って手当を受け取っている場合には詐欺罪と認められます。

給与のみを受け取っている場合には詐欺罪にはなりません。

なぜなら、給与は労働という行為自体に支払われる対価だからです。

「資格を保有している」という事に対して発生する資格手当は、所有しているはずのないものに対して発生している報酬の為、詐欺罪として適応されます。

詐欺罪は10年以下の法定刑とされており、罰金ではなく懲役のみとなるので重罪です。

ケース2:軽犯罪法違反の場合

軽犯罪法違反とは、軽い犯罪を取り締まる為に設けられた法律の為、罪の意識がなかったとしても、その行為で逮捕されてしまう場合があります。

経歴詐称は、軽犯罪法第1条15号に該当します。

 

官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者

 

学位や資格を得ていないのに、あると偽る行為自体が軽犯罪法違反に該当します。

取締によっては犯罪として逮捕に至る可能性があるので注意が必要です。

ケース3:私文書偽造罪の場合

他人の名義を利用して私文書偽造を行った場合に該当する犯罪です。

この時の私文書というのは履歴書にあたります。

自分の履歴書に虚偽の資格や学歴を記載するのは私文書偽造罪にはなりません。

しかし、他の人の名前を使用したり、他人の証明書の名前を書き換えて自分のものであるようにふるまうと私文書偽造罪に該当します。

私文書偽造罪は3ヶ月以上5年以下の懲役しか刑罰がない為、前科がつくことを覚えておきましょう。

ケース4:民事責任に問われる場合

経歴詐称が犯罪になる可能性ももちろんありますが、それ以上に民事責任を問われる可能性の方が高いです。

懲戒処分は勿論、解雇や、会社に損失を与えた場合には損害賠償を請求できる可能性があります。

悪質な経歴詐称によって経営に打撃があった場合には、解雇の上に損害賠償を請求することも可能です。

経歴詐称が発覚したらまずは弁護士に!経歴詐称が疑われる場合の調査は探偵事務所SATに!

どうしても採用されたいという感情から起こりうる経歴詐称は、求人情報や面接時の対応によって処分が可能かどうかが異なります。

必ずしも懲戒解雇にできるとは限らず、状況や詐称の度合いによって判断が難しくなることがわかりました。

不当な解雇や賠償請求などを行ってしまうと、労働者側からも訴えられ、裁判などに発展する場合があります。

経歴詐称が発覚した場合には弁護士に相談し、今後の方針について決定していく必要があります。

また、同時に経歴詐称が疑われる社員の調査も探偵に依頼して行うべきです。

経歴詐称をしているという事は、「経歴詐称をしなければならない、隠さなければいけない過去があった人物」という事です。

そういった社員を役員や機密情報を取り扱う重要ポストに配置してしまい、情報漏洩やスキャンダルに繋がった事例もあります。

特に役員や機密情報の取扱いなどを行う社員については、できれば採用前に調査を行っておくのがベストです。

探偵事務所SATでは、採用予定の社員や役員、経歴詐称の疑いのある社員や役員の経歴・素性調査などを行っています。

探偵業法に基づくあらゆる手法を用いて、本当の経歴や素性を明らかにします。

まずは、お電話やメールにてご相談ください。

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