【投稿日】 2018年9月25日 【最終更新日】 2021年10月21日

結婚詐欺で逮捕された場合、どのような刑罰があるのかご存知でしょうか。被害者の立場で考えると「二度とやらないと思うくらいの刑罰を受けて欲しい」思ってしまいますが、実は結婚詐欺の刑罰は驚くような内容となっているのです。

結婚詐欺で受ける刑罰の内容と、加害者へできる請求について詳しく解説していきます。

結婚詐欺の罪の重さはどのくらい?結婚詐欺に関わる刑罰を詳しく解説

刑罰とは、犯罪を犯した者に対する制裁のことを言います。結婚詐欺という罪を犯した者対し、自分が受けた被害に匹敵するだけの罰を受けて欲しいと思うのは、被害者にとってはごく当たり前の感情です。

しかし、実際に結婚詐欺の刑罰を調べてみると、とても被害者が納得がいくとは思えない内容となっています。結婚詐欺に関わる刑罰について解説をするとともに、どうすれば被害者が納得のいく結果を導き出せるのかを考えていきましょう。

結婚詐欺に適用されるのは詐欺罪

結婚詐欺は、それ単体での法律があるわけではありません。結婚詐欺は大きく「詐欺罪」のくくりに入り、刑法第246条に従って判断されます。刑法で定められているのは、以下のような内容です。

  • 誰かを騙してお金や財産を取った場合には10年以下の懲役刑となる。
  • お金や財産を騙し取るために協力した人も同じ罪となる。

ポイントとなるのは、「相手を騙すこと」と「お金や財産を取ること」です。この二つを結婚詐欺に当てはめると、「結婚する意思がないのに結婚すると見せかけて相手を騙して信用させ、お金や財産を騙し取る行為」が結婚詐欺と認められることになります。

罰金刑はなく懲役のみ

刑法246条をみてみるとわかるように、詐欺罪の刑罰は刑務所での懲役のみで、罰金刑の記載はありません。しかも、最長でも10年で社会に出ることになり、場合によっては模範囚として刑務所をすぐ出所し、結婚詐欺を繰り返すという犯人もいます。

結婚詐欺の犯人として有名なのは、1970年代から約20年間にも渡り結婚詐欺を繰り返し、総額1億円以上を騙し取ったとされる「クヒオ大佐」です。アメリカ軍人を装い壮大な経歴詐称で多くの女性からお金を騙し取り、懲役となっても刑期が明けて出所するとまた同じ方法で結婚詐欺を繰り返しました。

このような例をみると、結婚詐欺の被害者にとって、懲役刑だけしかない詐欺罪では納得いかないという人もいます。今後の状況によっては変化があるかも知れませんが、現段階では結婚詐欺師を逮捕するためには詐欺罪を適用するしか方法がありません。

「判例」詐欺の規模によって刑罰の重さが決まる

詐欺罪による懲役は10年以下と定められており、罪の重さによって懲役期間が長くなります。

実際の判例を元に例を挙げると、以下のようになっています。

初犯で騙し取った金額が少ないケース 執行猶予・もしくは数ヶ月の実刑懲役
初犯だが騙し取った金額が多いケース 数ヶ月から数年の実刑懲役
再犯で騙し取った金額が少ないケース 前回よりも長い期間の実刑懲役
再犯で騙し取った金額が多いケース 最長期間の実刑懲役

騙したこと自体も許される行為ではありませんが、詐欺罪で重要なのは「悪質さ」「騙し取った金額の多さ」です。

悪いとわかっていながら詐欺を繰り返したり、組織的に動いて犯罪を誤魔化すなどの行為が悪質とみなされ、結婚詐欺における「男女の気持ちを利用している点」はあまり注目されません。結婚詐欺師が逮捕されても被害者の気持ちが収まらないのは、刑法と被害者の間で問題視される点にズレがあるからなのです。

示談により刑罰が軽くなることもある

結婚詐欺は、心の被害と金銭的被害を受ける行為です。これを解決するために、刑罰・民事訴訟という形で訴えることになるのですが、どちらの訴えも相手に対する制裁行為になるので、民事訴訟の結果次第では刑罰が軽くなることがあります。

具体的には次のような例です。

  • 結婚詐欺師を刑事事件と民事事件の両方で訴える。
  • 詐欺で騙し取られた金額は200万円で、そのうち150万円は残っていた。
  • 結婚詐欺師は初犯であり、刑罰としては実刑懲役2年の可能性がある。
  • 被害者が民事訴訟を起こし、騙し取られた金額全額返金と慰謝料100万円を請求。
  • もし実刑懲役2年になった場合、出所するまで慰謝料回収は難しい。
  • 手元に残っている150万円返済と、出所後に慰謝料を分割払いすることを交渉。
  • 被害金額を最終的に上回る方法なので被害者側が納得して同意。
  • 示談が成立したので刑罰は軽減されて執行猶予となり懲役はつかない。

被害者側の心情としては、刑罰もしっかりと与えた上で金銭的被害を回避することが一番望ましいですが、加害者の支払い能力などを考慮してこうした示談交渉を行い、被害者が少しでも救済される方法を模索するケースもあります。

お金はいらないのでとにかく刑罰を、と考えるのであれば話は別ですが、金銭的被害だけでも救済されると精神的な苦痛が和らぎますので、「被害者にとってより有利な条件となる目的」で示談交渉が行われることもあります。

刑罰の重さだけが制裁行為ではない

10年以下という懲役罰しかない結婚詐欺の刑罰は、最悪の場合被害者が泣き寝入りするしかない状況になってしまうこともあります。金銭的被害が救済されることもなく、刑罰も納得のいく刑期ではないとなると、多くの被害者が怒りを感じることでしょう。

より重い刑罰をと考えてしまいがちですが、刑罰の重さだけが結婚詐欺師を制裁する方法ではありません。執行猶予のついた結婚詐欺師を逃がさないようにしながら、時間をかけて被害金額を返済して貰うことも重要なポイントです。

刑事訴訟と民事訴訟のバランスをよくみながら、弁護士と話し合って一番納得のいく結論を出すようにしましょう。

結婚詐欺で被害者が泣き寝入りしないためにやっておくべきこととは

結婚詐欺にあった被害者にとって一番最悪なケースは、「騙し取られたお金や財産のほとんどが手元に戻らず、加害者の刑罰も軽い」という結果が出ることです。

このような状態を少しでも回避するために、被害者側でやっておくべきこととはどのようなことなのでしょうか。具体的な方法について解説していきます。

最初から騙すつもりがあった証拠を集めておく

結婚詐欺で詐欺罪を適用するためには、「明確な詐欺の意思があったこと」を証明する必要があります。つまり、「お金を騙し取るために結婚したいという嘘をついたことを示す証拠」です。

具体的な例としては、次のようなものが証拠として有効です。

  • 結婚詐欺師が実は既婚者であったという証拠
  • 伝えられていた住所や勤め先が嘘であったという証拠
  • 複数の女性と結婚を前提にしたお付き合いをしていたという証拠
  • 結婚相談所などに登録されていた個人情報が嘘であったという証拠
  • 結婚詐欺師が持ちかけてきた投資の話が嘘であったという証拠

この他にも、お付き合いをしている中で違和感を感じた会話を録音したデータや、メールのやり取りを残しておくことも有効です。悪質さを訴えることが結婚詐欺の刑罰の重さを決めるポイントにもなりますので、可能な限り証拠を集めて刑事・民事の訴訟で有利に働くよう準備をしましょう。

お金に関係することはすべて細かくメモを残す

結婚詐欺ではなかったとしても、婚姻前に築いた財産や預貯金はお互いの個人資産となるので、勝手に処分したり引き出したりすることは窃盗罪になります。もしお付き合いの段階で借金の申し込みや投資の話などが出た場合には、資産の名義などをはっきりさせるためにも借用書や契約書を作成することが望ましいです。

また、騙し取った金額の多さは刑罰の重さにも関係してくるので、詳細な被害額がはっきりしていることは大変有効に働きます。もし借用書や契約書を作成していなかったとしても、いつ・どんな目的で・いくらを貸したのかを細かくメモに残しておきましょう。

おかしいと思った段階で身辺調査を行う

結婚詐欺は、気付くまでの時間の長さが被害の大きさに比例します。気付くまで時間が掛かってしまうと、次のような状態を引き起こすことも少なくありません。

  • 結婚詐欺だと気がついた時にはすでに犯人が行方不明になっていた。
  • 結婚詐欺だと気がついたがすでにお金を使われてしまっていた。
  • 気がつくのが遅かったので証拠が集めにくく、思ったような判決が出なかった。

もしこのような状態になってしまうと、結婚詐欺を行った犯人に対する制裁が思うようにいかなくなってしまいます。こうした状況を回避するためには、おかしいと思った時点で相手を身辺調査することが有効です。

最近では結婚調査として相手の身元確認を探偵事務所に依頼する人も増えており、決して珍しいことではなくなってきました。何もなければ結婚へ向けての安心材料にもなりますので、少しでも気になった時には相手の身辺調査をしてみましょう。

早い段階からの準備と行動が結婚詐欺師を逃がさないカギになる

お付き合いをしている相手を疑うことは、被害者にとっても心苦しいことでしょう。しかし、そこで躊躇してしまうともっと心が傷つく結果となってしまいます。

結婚詐欺という悪質な犯罪を逃がさないために必要なのは、早い段階からの準備と行動です。確実な刑罰と民事的制裁を行うための流れを確認していきましょう。

証拠を揃えて刑事・民事への訴えをスムーズに行う

証拠が揃わないうちは、警察や弁護士へ相談してもなかなか動いて貰えません。もしその段階で相手に気づかれてしまうと、逃げられて解決するまでに時間が掛かってしまうこともあります。結婚詐欺の証拠をしっかりと抑えておき、被害届と弁護士への依頼がスムーズになるように準備をしましょう。

相手が逃げる前に訴えて被害額を最小限に食い止める

騙し取られたお金がそのまま残っていることはほとんどありません。証拠集めや各方面への相談に時間を取られてしまうとその間にもお金を使用されてしまい、金銭的被害の回復が難しい状態となってしまいます。

早い段階で準備をし、相手が逃げたりお金を使う時間を与えないようにすることが、被害額を最小限に食い止める手段です。

  • 相手を逮捕して貰い確実に訴えられる状況を整える。
  • 被害額に近い金額を全面回収した上で慰謝料も請求する。
  • 示談により罪状が軽くなっても、民事訴訟で全面的に勝訴すれば相手への制裁になる。

民事訴訟で手に入れられるのは「相手へ慰謝料や損害賠償を請求する権利」です。つまり、請求することは正当に認められるのですが、相手に返済能力がなければ金銭的被害を回復するほどのお金は返ってこないこともあるのです。罪が思ったよりも軽いのに、金銭的被害も回復できないという状況だけは避けなければいけません。

おかしいと思ったらすぐに証拠集めを開始して、たとえ刑罰が軽くでも民事訴訟で罪の重さを訴えられるよう、早い段階からの準備をしておきましょう。

無理に自分で調査をせず探偵事務所に相談する

意図的に結婚詐欺を行なっている結婚詐欺師は、自分の嘘がバレないよう用意周到に準備をしています。そんな相手の嘘を完全に崩すだけの証拠を、個人的に集めることはなかなか難しい作業となるでしょう。

場合によっては相手に証拠集めしていることを気付かれてしまい、逃げられてしまう可能性も高くなります。結婚詐欺師は、嘘をつくプロでもあるのです。

実際に結婚詐欺を経験した人の多くは、証拠集めのために調査のプロである探偵事務所に相談しています。裁判で有効な証拠を相手に気づかれないよう集めるのは勿論のこと、被害者にとって有利になるよう様々なアドバイスを受けることも出来ます。

多くの探偵事務所では無料相談も受け付けておりますので、まずは気負わず探偵事務所に足を運んでみましょう。

まとめ

結婚詐欺で犯人に科せられる罪の重さについて、解決方法を交えて詳しく解説しましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容を振り返り、まとめてみたいと思います。

  • 結婚詐欺は詐欺罪に該当し、刑法第246条を根拠にして刑罰が決まる。
  • 詐欺罪には罰金刑はなく、最長10年以下の懲役刑が科せられる。
  • 結婚詐欺は刑事裁判と民事裁判の両方が行われるが、慰謝料請求などの民事裁判で被害者と示談が成立した場合は、刑罰が軽くなることがある。
  • 思ったような刑罰が科せられないと判断した場合には、慰謝料請求などで金銭的被害の回復を優先することも重要である。
  • 刑事と民事両方の裁判において、結婚詐欺に関する証拠は大きな決め手となってくるので、少しでも怪しいと思った時から調査や証拠集めを行うことが有効である。
  • 結婚詐欺で泣き寝入りしないためには早い段階からの準備を行い、被害額を最小限に食い止めつつ相手の嘘を突き崩すだけの証拠を集める。
  • 結婚詐欺は時間との勝負になってくるので、1人で悩まず探偵事務所などの第三者に相談することも視野に入れる。

被害者が思っているよりも罪が軽く、場合によっては金銭的被害も回復出来ない可能性がある結婚詐欺。もしかしたらという不安を抱えているとなかなか判断が出来ませんが、早い行動が被害を最小限にする方法です。

自分で気がついたことを証拠として抑えつつ、探偵事務所を上手に利用してみましょう。

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