幸せな未来を夢見てお付き合いをしていた人にとって、結婚詐欺は大きな心の痛手となります。結婚の話が嘘であったという悲しみと、お金を騙し取られたという怒りは簡単に収めることは出来ません。

結婚詐欺による被害は刑事事件・民事事件として訴えることが出来ますが、特に民事事件は慰謝料請求などで金銭的被害を回復させるために重要な項目です。結婚詐欺にあってしまった時、相手に慰謝料を請求するまでの流れを解説していきます。

結婚詐欺で訴え慰謝料請求するには立証できる証拠が必要

結婚詐欺は、刑法に基づき詐欺罪に問われる犯罪です。詐欺罪とは「最初から嘘の理由で相手に近づきお金を騙し取る行為」を指しますが、結婚詐欺は男女の関係性を証明することが難しく、多くの証拠を用意しなければ立証することが出来ません。

では、相手を結婚詐欺で訴え犯罪であることを立証するためには、どのような証拠が必要となるのでしょうか。具体的な例を挙げながら解説していきまししょう。

相手が結婚する意思がなかったことを示す証拠

結婚詐欺で捕まった犯人の多くが口にするのが、「本当に結婚するつもりはあった、お金が必要になり嘘の理由を言っただけだ」というような言い訳です。詐欺と認められるためには、「最初から結婚するつもりはなかったのに結婚すると嘘をついた」ということを立証しなければなりません。

相手が結婚する意思がなかったという証拠としては、次のようなものが挙げられます。

  • 相手が既婚者である証拠
  • 相手には婚約者がいたという証拠
  • 複数の異性と付き合いがあり結婚をほのめかしていたという証拠

この他にも、結婚相談所などで嘘の身分証明をしていたり、住所や勤め先の情報を偽っていたという事実も証拠として提出出来ます。

しかし、最近では自己防衛の一つとしてわざとこのような行為をする人もいますので、状況によっては「結婚詐欺の立証」にはならないこともあります。ただし、結婚詐欺にならないというだけで、嘘の理由でお金を騙し取っただけでも詐欺罪になりますので、些細なことであっても詳細な証拠を集めることが重要です。

結婚を前提とした動きがあったことを示す証拠

「結婚するとは言っていない」「勝手に結婚すると勘違いしただけ」というのも、結婚詐欺師に多い証言です。お金を騙し取っただけですでに有罪なのですが、受ける刑罰を少しでも軽くするために、「結婚をほのめかすような言動・行動はしていない」という主張をするのです。

悪質な方法の詐欺であるほど刑罰も慰謝料も重くなりますので、結婚詐欺による慰謝料請求では「いかに悪質な詐欺であったかの立証」として、「結婚を前提としていた証拠」が必要となります。具体的な例としては、以下のようなものです。

  • 婚約者として親に挨拶を済ませていた
  • 結婚を前提としたお付き合いであることを友人に話していた
  • ブライダルサロンへの登録
  • 式場の予約
  • 結婚相談所へお付き合いの報告をしていた

この他にも、結婚を意識した会話を録音したデータや、「この借金が片付けば結婚できる」といった、結婚をからめた借金の申し込みメールなども重要視される証拠です。協力して貰える友人からの証言も有効となりますので、思い出せる限りの証言や証拠を集めるようにしましょう。

妊娠は結婚詐欺の証拠としては弱い

最近では授かり婚なども良く耳にするようになりましたが、「婚前交渉による妊娠」を結婚詐欺の証拠とすることがあります。しかし、実は妊娠は結婚詐欺の証拠としては弱い部分があるのです。妊娠していることを証拠とした場合、裁判所や相手の弁護士は次のような可能性を考えます。

  • 結婚するつもりがあったのに妊娠を知って怖くなり逃げた可能性
  • 結婚するつもりはなく妊娠は受け入れられないので逃げた可能性
  • 最初から騙すつもりだったので、妊娠は関係なく逃げた可能性

つまり、「妊娠はお付き合いの中の結果の一つ」であり、その結果を受けて相手が逃げたという状況が出来ただけと判断します。問題となるのは「騙す意思があったかどうか」なので、妊娠が直接証拠として認められるかは微妙なラインです。

それだけならまだいいのですが、妊娠していることが「真剣にお付き合いをしていた証拠」と逆に捉えられてしまい、結婚詐欺として認められなかったケースもあります。証拠として妊娠していることを報告する前に、結婚詐欺について詳しい探偵事務所などに相談して、よく考えた上で判断するようにしましょう。

相手が既婚者である場合には要注意

結婚詐欺の被害者が逆に訴えられる可能性があるのが、「結婚詐欺の犯人が既婚者であった」というケースです。騙されたのになぜ?と思われるかも知れませんが、訴えてくるのは犯人ではなくその配偶者です。

既婚者が夫や妻以外の異性とお付き合いをして性的関係を持った場合、不貞行為とみなされます。いわゆる不倫です。

不倫された夫や妻は、自分の配偶者とその相手に慰謝料請求することが出来るので、もし相手が既婚者である場合には、被害者も相手の配偶者から不貞行為による慰謝料を請求される可能性があるのです。この状況を回避するためには、次のような証拠を揃えておく必要があります。

  • 既婚者であることをまったく知らなかったという証拠
  • 結婚詐欺師が独身だと偽っていたという証拠
  • 気がついてからは一切不貞行為を行なっていないという証拠

一番確実なのは、相手が既婚者だとわかったらただちに交際を中止し、事実確認の書類を作成しておくことです。この段階で探偵事務所などに調査を依頼して証拠を抑えておくと、万が一不貞行為で訴えられた時に役立つほか、相手を結婚詐欺で訴える重要な証拠にもなります。

結婚詐欺師が既婚者の場合には、相手の悪質さを訴える証拠の他にも自分を守るための証拠をしっかりと準備しておきましょう。

結婚詐欺の慰謝料請求を裁判例から解説

結婚詐欺における慰謝料の請求は、精神的苦痛に対する制裁として大変有効です。しかし、これはあくまで「慰謝料請求の権利を手に入れた」という状態で、実際に請求金額を全額受け取れるかどうかは、結婚詐欺の悪質さをどれだけ立証出来たかに掛かってきます。

では実際に慰謝料請求をした場合はどのくらいの金額になるのか、実際に行われた裁判例からその具体的金額を紐解いてみましょう。

結婚詐欺の慰謝料の相場について

結婚詐欺の慰謝料は、多くの判例から平均すると約30万円から200万円ほどとなっています。かなり金額に幅があることに驚く人も多いのですが、慰謝料の最終的な金額は様々な状況判断により決定されるため、どうしても一律の金額を導き出すことは不可能なのです。

  • 同棲期間が長かったため結婚詐欺とは判断されず、慰謝料請求の金額が下げられた。
  • 裁判が長引くことを苦痛に感じたため、最終的に被害金額さえ回収すれば良いと判断した。
  • 騙し取られたお金はすでに使われていたため、慰謝料請求はしても思ったような金額は支払われなかった。

慰謝料の額を決める時に、とにかく取れるだけ取りたいと思うのは当然なのですが、あまり高い金額にしてしまうと調停や裁判に持ち込まれることもあります。被害総額にもよりますが、「慰謝料の損切り」も念頭において金額を考えることも大切です。

判例からみる慰謝料の決まり方

実際に起こった判例を見ていくと、慰謝料の決まり方に一定の法則があることに気がつきます。

  • 慰謝料の金額が妥当であるかどうか
  • 被害金額を証明する証拠があるかどうか
  • 犯人の支払い能力がともなっているかどうか

慰謝料の請求金額を決める上で決まりはありませんが、あまりにも高額な場合には当然相手側も「妥当な金額である証拠」を要求してきますので、話し合いがこじれると裁判に発展します。その際、被害金額を証明するものが何も残っていないと、他の要因から判断をすることになるため思った以上に低い慰謝料しか支払われないこともあるのです。

慰謝料請求の金額を決める時には、同時に次のような証拠も用意しておきましょう。

  • お金を貸した日付と金額を記載してある借用書
  • 詳細を記録してあるメモ
  • お金の振込明細
  • 預金通帳の記載
  • 結婚へ向けた準備にまつわる金銭の動きを証明出来るメモや明細

必要な証拠が分からない場合には、相談している弁護士や探偵事務所などでアドバイスを貰い、請求金額の妥当性を立証するようにしましょう。

結婚詐欺の時効が成立したら慰謝料請求は出来ない

結婚詐欺の慰謝料請求が出来る期間には時効があります。条件や時期が少し難しいのですが、慰謝料請求をする上で重要になりますので、必ず自分のケースに当てはめて考えてみましょう。

基本は結婚詐欺にあってから3年以内

結婚詐欺にすぐ気がついて行動を起こした場合、そこから3年以内に相手に慰謝料請求の訴訟を起こします。

結婚詐欺に気付かず犯人が自ら詐欺を認めた場合は3年過ぎても請求可能

被害者自体が結婚詐欺に気づかず3年が経過していても、何らかの理由で犯人が結婚詐欺を認めた場合には民事訴訟を起こすことが出来ます。

結婚詐欺に気付かず後から結婚詐欺であることを知った場合

詐欺にあった当時は詐欺だと思わなかったが、後から結婚詐欺であることに気付いた場合には、気づいた時点から5年以内であれば民事訴訟を起こすことが出来ます。

詐欺の契約取り消しから10年以内

結婚詐欺で騙し取られたお金を返還請求出来る期間です。結婚詐欺に気づいて契約の取り消しを行った時点から10年以内となっています。


結婚詐欺師の犯人が巧妙な嘘をついていると、騙されたことに気付かない被害者も少なくありません。犯人が別件で逮捕された時に自白をしたり、後から知り合いに指摘されるなどをして結婚詐欺であることを知るケースもあります。

そのような場合には、「詐欺にあった時期」「詐欺に気がついた時期」を明確にした上で、弁護士に相談するようにしましょう。

結婚詐欺の慰謝料を確実に請求するための流れを作る

結婚詐欺師に慰謝料を請求する時には、ある程度の流れを把握した上で行動するとより精神的負担を軽減することが出来ます。慰謝料請求の流れをご紹介しながら、被害者が今すぐに出来ることとはなんなのかをみていきましょう。

訴える相手が逃げないうちに証拠を集める

訴える相手がいない状態では、訴訟を起こすことが出来ません。また、結婚詐欺師は特に情報が残ることを嫌うので、重要な証拠が処分されてしまう可能性もあります。このような状況を食い止めるためには、おかしいと気付いた時からすぐに証拠集めすることが重要なポイントとなります。

  • 相手の身元確認(現住所や連絡先・勤め先など)
  • 相手が嘘をついている証拠
  • 結婚詐欺であることを証明する証拠

個人で調べることも可能ではありますが、時間との勝負になる結婚詐欺はよりスピードを求められます。この点を踏まえ得た上で、被害者がよく相談先に選んでいるのが探偵事務所です。調査のプロにより集められた証拠は裁判でも有効で、相手に気付かれず素早く調査をして貰えるというメリットがあります。

多くの探偵事務所では無料相談も受け付けていますので、まずは現状を話して問題解決へむけた第一歩にしてみましょう。

結婚詐欺であることを立証して警察・弁護士に相談

結婚詐欺である証拠や証言を持って、警察と弁護士へ個別に相談をします。よく混同してしまいがちですが、法律で罪を裁く刑事訴訟と法律で慰謝料などを請求する民事訴訟は、それぞれ別の相談先になります。

結婚詐欺は男女の関係に関わってくるため、刑事事件としては罪にならないこともあります。そのような時でも、今度は婚約破棄として相手に民事訴訟を起こし、損害賠償や慰謝料請求を行うのです。

1人で警察に行くことに不安がある場合には、先に弁護士に相談して刑事・民事両方の代理人になって貰うことも出来ますので、証拠が集まったら迷わず相談するようにしましょう。

状況に応じて慰謝料の請求金額をきめる

慰謝料の請求は被害者にとって当然の権利ではありますが、相手への訴訟は権利の行使であり、実際に請求金額全額支払われるかをわかりません。ここで重要となってくるのが、「請求金額の根拠となっている証拠」です。

先に解説した通り、怒りの気持ちに任せて必要以上に高い請求金額を設定しても、相手に支払い能力がなかったり妥当だと認められなければ、慰謝料だけではなく損害賠償も難しくなるのです。示談や裁判で有利に動くためにも、可能な限り「被害の証明や証拠」を集めて状況を把握する必要があります。

  • 相手が悪質な結婚詐欺を行なった証拠
  • それにより精神的被害を受け病院に通っている証拠
  • 探偵事務所に調査を依頼した時の明細書
  • 被害額がわかる明細書やメモ
  • 相手の署名捺印がされている借用書

金銭的被害ははっきりするほど、代理人となる弁護士は判断がしやすく被害者にとっても有利な状態となります。慰謝料の請求は、相手への制裁と同時に被害者の救済にもなりますので、弁護士と相談しながらどのような結論が一番良いのか判断していきましょう。

まとめ

結婚詐欺の慰謝料請求について、具体的な流れややるべきことを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容を振り返り、ポイントを確認してみましょう。

  • 結婚詐欺は詐欺罪となるので、「相手がお金を騙し取る意思があり被害者に接近した証拠」が重要なカギとなる。
  • 結婚が前提となっているお付き合いをしていたことを立証し、慰謝料請求の金額の妥当性を示す。
  • 妊娠の事実は証拠として弱く、逆に「騙す意思がない証拠」と取られる可能性がある。
  • 相手が既婚者だった時には気づいた時点ですぐに交際をやめ、「既婚者と知らずに付き合っていた」という証拠を残しておく。
  • 結婚詐欺の慰謝料の相場は約30万円から200万円と幅が広く、悪質な詐欺であったことが証明されると高い慰謝料を請求出来る。
  • 慰謝料の請求金額の妥当性をしっかりと立証し、示談や裁判になった時の準備をする。
  • 結婚詐欺の民事訴訟には時効があるので、わからない時には弁護士に相談する。
  • 慰謝料を確実に請求するために相手を逃がさないようにし、証拠を揃えて警察と弁護士の両方に相談をする。
  • 結婚詐欺は時間との勝負なので、証拠集めに時間がかかりそうな時には探偵事務所を利用することも視野に入れる。

時間との戦いになる結婚詐欺は、ただでさえショックを受けている被害者にとって大きな負担となります。自分で準備することも大切ですが、無理をせずに探偵事務所などの第三者機関を利用して、少しでも心が楽になるように心掛けましょう。