お金の貸し借りには、常に貸した相手が逃げてしまうという可能性がつきまといます。自分が貸主だった場合も連帯保証人だった場合も、借主がお金を返さないまま逃げてしまっては、自分が損を丸被りです。

しかし、そこで諦めてはいけません。相手の居場所がわからなくても、探し出す方法はあります。

お金を借りたまま債務者が逃げてしまった時のために前もって準備しておくべきことから、実際に逃げられたときに自分でできること、弁護士・探偵に依頼するメリットなどをまとめました。

お金を貸した相手に逃げられてしまったら、迅速な対応が第一です。お金を貸す時点から対策・準備をして、もしものときには冷静に対応しましょう。

お金を貸した相手に逃げられたときのためにしておくべきこと

お金を貸す段階で、お金を貸した相手に逃げられないための対策と、逃げられても探し出せるようにするための対策を講じておきましょう。相手に借り逃げされないならそれが一番ですし、もしも逃げられたなら迅速に対応しなくてはなりません。

準備をするかしないかで、逃げられたときの探しやすさや法的措置のとりやすさに大きく差が出ます。

法的に有効な借用書(金銭消費貸借契約書)を作成する

お金の貸し借りの際には必ず借用書を作成してください。ただの覚書・念書のようなものでも裁判の証拠等として有効ですが、相手が逃げた場合のことを考えれば、より詳細に合意内容を記した金銭消費貸借契約書にすべきです。

簡易的な借用書と金銭消費貸借契約書の主な違い

  • 金銭消費貸借契約書は2通作成し、双方がそれぞれ1通ずつ保管する
  • 金銭消費貸借契約書は収入印紙代が高額
  • 金銭消費貸借契約書には基本的に連帯保証人が必要

金銭消費賃貸契約書作成に関する注意点

  • 「借主(借りた側)は転居したら転居先を貸主に通知する」旨を条文として記載
  • 住民票の住所と実際の住居が異なる場合は両方の住所を記載
  • 法的効力を持たせるために公正証書化しておく

実は借用書も金銭消費貸借契約書も、それ自体には法的効力はありません。つまりお互いが書類の内容に同意したことの証明にはなりますが、借主がお金を返さず逃げてしまっても、それを罰したり強制的にお金を取り立てたりはできないのです。

そのような事態に対処するために、金銭消費貸借契約書を作成し、公証役場で公正証書にして法的効力を持たせましょう。そうすれば強制執行が可能になり、条件を満たし手続きを踏めば、財産や給与の差し押さえの形で債権を回収できます。

しかしそのためには金銭消費貸借契約書に不備があってはいけません。万全を期すために弁護士や司法書士、行政書士に作成を依頼するのがベターです。詳しい説明は関連記事にも書かれているので、是非読んでください。

参考リンク:裁判所|公正証書
参考リンク:法務省:公証制度について
参考リンク:裁判所|強制執行

相手の現住所・実家・職場の住所と連絡先を把握しておく

もしお金を貸した相手に逃げられたとしても、お金を貸した時点での相手の現住所や実家、職場などの住所・連絡先を知っているのといないのとでは大違いです。

転居先を探すにも現住所は重要な情報ですし、実家に潜伏している可能性も高いです。また職場が変わっていなければ帰り道で尾行して現在の居場所を突き止めることができます。さらにそこから家族・交友関係、生活態度などを調べて、他に隠れていそうな場所が見つかることもあります。

借用書(金銭消費貸借契約書)にはお互いの現住所を書くので、知っていて当然ですが、相手が本当の住所を書くとは限りません。お金を借りて踏み倒すような人物は、最初から逃げるつもりの常習者の場合があります。

そういった場合を想定して、まずはお金を貸した時点での相手の情報をしっかり握っておくことが大事です。探偵に依頼すれば、住所・連絡先だけでなく素行調査も可能です。

振込で済まさず定期的に連絡を取り合う

返済を振込にすること自体は問題ありません。しかし毎回期日通りに振込返済されているからといって放っておくと、相手にとって逃げやすい状態になります。知らないうちに引っ越していた、いつの間にか電話もメールもつながらなくなったというケースに陥りやすいのがこのパターンです。

できるだけ電話などで定期的に連絡をとるか、顔を合わせたり家を尋ねたりするだけで、相手は借り逃げしにくくなります。相手が最初から逃げるつもりではなかったのならなおさらです。

もしどうしても連絡をとったり会ったりするのが難しいようなら、探偵に定期的に素行調査を依頼するという手もあります。

交友関係・生活態度を把握しておく

これはどちらかといえば逃げられないようにする予防策ではなく、もし逃げられてもすぐに居場所を把握できるようにするための対策です。

借金したまま逃げるといっても、完全にこれまでの人間関係を断ち切ってしまうのは難しいです。貸主であるこちらの様子をうかがうために共通の知人などと連絡をとり続けていることも考えられますし、逃げてもお気に入りの店には通い続けているかもしれません。

お金を返さないまま逃げられたときに、交友関係や生活態度は相手の居場所を特定する重要な手がかりになります。

またもし相手が借り逃げ常習者であれば、被害者を集めて協力することもできます。お互いの情報を持ち寄ったり、弁護士費用・探偵費用を割り勘したりすることもできるので、借り逃げされた際にも見つけやすいです。

実際に交友関係・生活態度を把握するには、本人に尋ねる、知り合いを当たる、探偵・興信所に依頼するなどの方法があります。

逃げた債務者を自分で探す方法

では実際にお金を貸した相手に逃げられたら、何ができるのでしょうか。自分でできる債務者の居場所の探し方を紹介します。

前の住所に書留を送って転居先を調べる

相手の逃げる前の住所(お金を貸した時点での住所)を把握しているなら、書留や特定記録郵便などを送って、配達記録(追跡サービス)から転居先を知る方法があります。

相手が郵便局に転居届を出していれば、郵便物は新しい住所に転送されます。書留などの郵便物は郵便局のサイトで配達状況が確認できるので、相手の新しい住所の最寄りの基地局がわかります。

さすがに相手も逃げてすぐに転居届を出したりはしないでしょう。最初はその住所には誰も住んでいなかったということで郵便物は戻ってくるかもしれません。しかしほとぼりが冷めた頃に、相手が転居届を出すことは充分に考えられます。それまで何度も送り続けるというのがこの方法です。

この方法のメリット

  • 比較的費用が安くつく
  • 複雑な手続きや専門的な技術がいらない

この方法のデメリット

  • 何度も書留を送るのは面倒
  • 何度も送っていると費用がそれなりにかさむ
  • 最寄りの基地局がわかっても自分で相手の居場所(住所)を特定するのは難しい

借用書を元に住民票・戸籍の附票を請求する

信憑性の高い借用書と身分証明書があれば、お金を貸した相手の住民票や戸籍の附票を請求することは可能です。住民票や戸籍の附票には相手の転出・転居の履歴が記されていて、現住所がわかります。

ただしこれも書留を送る方法と同じで、有効なのは相手が転出届や住所登録をしていた場合のみです。とはいえ現住所に住民票がなければ不便なので、大抵の場合、請求を続けていればいつかは転居先の住所がわかります。

しかしそれでも、住民票などから相手の居場所にたどり着けないケースはあります。

住民票などから相手の現住所がわからないケース

  • 転出届や転居先での住所登録がされていない
  • 住民票を移動せず家族・親族や友人の家に居候している
  • 住民票やその他の公的書類に閲覧制限がかけられている
  • 相手が海外にいる

ストーカー被害に遭っていた場合などには、自分の住民票などに閲覧制限をかけることができます。そうなると一般の個人による閲覧請求は通りにくく、弁護士や司法書士、行政書士に依頼しなくてはなりません。

またもちろん、信用できる借用書でなければ、役所も請求に応じてはくれません。そういった事態を避けるために、やはり借用書は金銭消費貸借契約書の形で作成し、公正証書化しておきましょう。

地道に聞き込み・張り込みをする

書留の配達履歴から最寄りの基地局がわかった場合などは、それを手がかりに周辺の聞き込みや張り込みをすれば、お金を借りたまま逃げた債務者の居場所を見つけることができるかもしれません。

しかし実際のところ、調査の素人がいくら聞き込み・張り込みをしたところで、見つかる確率は極めて低いと言わざるを得ません。よほどの運や偶然が重ならない限り、住所の特定には膨大な時間と労力がかかります。

貸したお金を回収するために、自分の生活を犠牲にするなんて本末転倒です。しかも素人の調査は途中で相手にバレて、今度はもっと巧妙な工作をして逃げられることもあります。

相手の居場所の見当がほぼ確実についているというケースでもなければ、当事者やその他の調査の素人による聞き込み・張り込みは得策ではありません。

警察に逃げた債務者の捜索願を出す

行方不明者の捜索も警察の仕事のひとつであり、相手の居場所がわからないなら警察に捜索願を出すことができます。

しかし捜索願が受理されても、相手の身に危険が迫っているなどの事件性がなければ、警察が成人の行方不明者を積極的に探すことはまずありません。せいぜい他の業務を行う中で見つかれば連絡をくれる程度です。

勘違いされがちですが、債務者がお金を返さずに逃げること、いわゆる「夜逃げ」は犯罪ではありません。詐欺罪が成立するのは、借主が最初からお金をだまし取るつもりだと証明できるケースのみです。

相手が詐欺罪やその他の犯罪をはたらいたことがはっきりしていないなら、基本的に警察は逃げた債務者を探してくれないものと考えてください。

弁護士の職務上請求で住民票・戸籍の附票などから居場所を調べる

弁護士や司法書士、行政書士などの士業には、業務上必要であれば住民票や戸籍の附票などの公的書類の開示・閲覧を請求できるという職業上の権限があります。一般の個人が請求するケースとは違い、相手が住民票などに閲覧制限をかけていても有効です。

ただし弁護士は、住民票などの取得だけの依頼は受けられません。債務者に対して少額訴訟を起こすなどの依頼があって初めて、公的書類閲覧の職権を行使できます。

閲覧制限などのせいで、自分で請求しても受理されなかった場合は、弁護士や司法書士、行政書士に依頼することを考えましょう。

この方法のデメリット

  • 相手が転出届も住所変更もしていなければ新しい住所はわからない
  • 相手を見つけ出す前に法的措置をとることを決めなくてはならない
  • 弁護士には他に債務者の住所を探す方法がない

弁護士は法律のプロであり、調査力はありません。法的な解決法をとるにしても相手の住所の特定は必須なので、弁護士と探偵の両方に依頼することをおすすめします。

探偵に依頼して逃げた債務者を探し居場所を特定する

債務者がお金を返さずに逃げてしまった場合、何より優先すべきは債務者を見つけ出すことです。そういった意味では、まず調査のプロである探偵に依頼すべきといえます。

探偵にできる人探しの方法

  • 聞き込み・張り込み
  • 車の特徴やナンバーから探す
  • 交友関係・生活態度から立ち寄りそうな場所を割り出す
  • インターネットやSNSの情報から探す
  • その他の依頼人から得た様々な情報から探す

探偵には弁護士のような特別な権限はありませんし、やろうと思えば素人にもできる地道な方法で人探しをします。

しかし当然ながら、聞き込みや張り込みをはじめ、すべての調査法において探偵は技術とネットワークが素人とは段違いです。自分でやるよりはるかに早く、逃げた相手にたどり着くことができますし、時間や労力を費やす必要もありません。

そして相手の居場所だけでなく、逃げた理由や返済能力なども調べられるというのは、探偵にしかはない大きなメリットです。これらの情報は、法的措置をはじめとする様々な解決法にも役立ちます。

お金を貸したまま相手に逃げられたら弁護士と探偵の協力が不可欠

お金を貸した相手に逃げられてしまったら、いくら準備をしていても本人だけで解決できる問題ではありません。さらにいえば弁護士だけ、探偵だけでも解決は難しい案件です。

お金の貸し借りの際には金銭消費貸借契約書の作成が必要不可欠であり、これを法的に活用しようと思えば弁護士やその他の士業の力が必要です。しかし逃げた相手を探すには弁護士では限界があり、探偵に住所調査・所在調査を依頼しなくてはなりません。

できればお金を貸す段階から、弁護士や探偵に協力をあおぎ、債務者に逃げられないように備えることをおすすめします。